ゴール設定の際に意識すべき四つの点
「心地よい双方向コミュニケーション」が不可能になる臨界点の話

安倍総理への提案:「人生のやり直し」に寛容な社会作りをしませんか?

 米国で暮らし始めてもう17年になるが、つくづく感じるのは、ここが「人生のやり直し」にとても寛容な社会だということ。受かった大学や最初に就職した企業で人生が大きく左右されてしまう日本とは著しく異なる。

 私の知っている限りでも、さまざまな「人生のやり直し」をした人たちがいる。

・高校を中退してロックバンドを作り、キーボード演奏者としてそれなりに成功をおさめるが20代の半ばにグループは解散。勉強し直して音大に入り、そこでピアノを本格的に勉強し、今はピアノの先生。
・大学卒業後、IBMでプログラマーとして5年ほど働くが、出産と同時に専業主婦に。子供が大きくなったので、今度は大学院で最新のコンピューターサイエンスを勉強しなおし、そこからベンチャー企業に就職。
・大学時代にはフットボールの選手をしており、プロからも声がかかるが、選手としての寿命のことを考えて、建築業界に就職。何回か転職をするがなかなか良い仕事が見つからず、今はMBA取得のために勉強中。
・高校卒業後、ミリタリー・スクールに行き、卒業後にアーミーに入り湾岸戦争に参戦。移動中にヘリコプターが墜落し、負傷して帰国。その後、大学に入り心理学を勉強し、今はセラピスト。
・大学でマーケティングの勉強をし、広告業界に。数年経ってもうだつが上がらないので、今度は法律の勉強の為に大学院に。その後弁護士になるが、バブル崩壊の時に弁護士事務所が倒産。その弁護事務所の顧客であるベンチャー企業に採用され、ビジネス・ディベロップメントの手腕を発揮した後、そのベンチャー企業のM&Aを成功させる。その手腕を買われて、今は別のベンチャー企業のCEO。
・地元の州立大学を受験したが失敗。しかたがないので近くのコミュニティー・カレッジで短大卒に必要な単位まで取得してから州立大学へ編入。
・高校を卒業後、ボーイングに経理部門のアシスタントとして入社。働きながら大学に通い、大学の卒業資格を得て、経理部門のスタッフに昇格。そこでさらに10年働いた後に、今度も働きながらMBAの取得に挑戦。

 彼らに共通するのは、自分のキャリアに行き詰まった時に、キャリア・アップのために大学に入り直したり、MBAを取得するためにビジネス・スクールに行ったりしていること。当然、いろいろな苦労や努力もしているから可能なことだが、注目すべき点は、米国の大学がそんな人たちのために門戸を大きく開いていること。企業もそんな人たちにとても寛容だ。

 「人生のやり直し」がしやすい社会を作れば、「とりあえず大好きなロックで食っていけるかどうか試してみる」、「大企業の内定をけってベンチャー企業を起業する」、「若いうちに子供を産んでおくためにしばらく休職する」、「受験には失敗したけど、とりあえず第三志望の大学は受かったので行ってみる」、「大好きな仏文学の博士号を取得しても食っていくのは難しいことは知っているけど、とりあえず取ってみる」、などの行動をそれほど大きなリスクを負わずにすることが可能になる。

 日本の若い人たちに「直感を信じろ、リスクを追え、日本の将来は君たちにかかっている」とハッパをかけたところで、社会そのものが失敗に寛容で「人生やり直し」が可能になっていない限り、「一流大学に入ってそこから上場企業へ就職」という無難な道を選ぶ学生が大半を占め、そのレールに乗れなかった若者たちが疎外感からフリーターやニートに走ってしまうんではないだろうか。

 このあたりのところ、どう思います、安倍総理?

Comments

通りすがりの学生

「人生のやり直し」に寛容な社会とは、逆に言えば転落する可能性がある社会でもあります。

自分の地位が守られている安住感のようなものを、日本人は捨てきれないのでは
と友人と将来について話し合っているときに感じました。

ksasaki

「自分の地位が守られている安住感のようなもの」を、メンタリティの問題に落としこまないで、社会的なセキュリティにしませんか、とそれを実行可能な立場にある人(今だと安倍さん?)へ提案しているのであって、「逆に言えば転落する可能性がある社会」であることを許容してくださいな、ということの反対をこのエントリーは伝えたいのではないでしょうか。安定や安心が欲しいのは、どこの国の人でも同じではないのかな?

たとえば

最近の日経に「勤続年数が短いなど、住宅ローンが借りにくい人を対象に」などと書いてあって、改めて、へぇ、そうなのね、と思った。
寛容な社会を作る方法の提案がなされていないが、簡単にはいかないのではないか。考え方をかえていかなければならないから。

ぶらりん

人生のやり直しに寛容であると同時に「やり直しが効くのだから、失敗や挫折に対する個々人、社会のリスク認識が甘く、落とすときは落とす、落とされるときは落とされる」社会でもあるのがアメリカ。ワーキングプアという言葉が生まれたのもソチラ。

言及されている例はキャリア志向である程度のプロフェッショナルなトレーニングにも耐える教養、そして何よりも素養と経済力を持った人たちをあげているが、ではどうしてアメリカ社会の低所得者層は日本よりもひどいことになっているのか。やり直しが出来るものなら生まれる家からやり直したい人たちで溢れかえっている。

ヨーロッパでも同様で大学を出てフルタイムの就職を出来たとしても生涯労働時間のうち4割しか定職に就けていないなどという人はザラ。

日本がダメでアメリカが良くて、という思考はもうやめませんか?

007

>失敗や挫折に対する個々人、社会のリスク認識が甘く、落とすときは落とす、落とされるときは落とされる

これは最近の日本でも変わらないのでは・・・。確かにアメリカ社会は相当の行動力が必要だけど、時間制限がされてない分日本より救いがある、そういう事をこのエントリーは言いたいのでは?
不況時にはそれをやり過ごして力を蓄えておくって手を使えるのも、就職氷河期にぶつかった自分としては羨ましいなぁ。

それと、アメリカ社会とヨーロッパ社会って基本的に別物だと思います。

tsu

「人生のやり直しが出来る社会」というテーマについて大きく論じるのは置いとくとしても、
日本企業の「大卒の新卒至上主義」はやりすぎかなあと思いますね。

abc

>通りすがりの学生さん
転落する可能性は「人生のやり直し」に寛容か非寛容かは
全く関係ありません。逆に言おうが言わまいが転落の可能性はどの社会にもあります。
今の日本人で自分の地位が守られている安住感のような
ものを持っている人などほとんどいないのではないで
しょうか?

弾

今回もTB代わりに。うちからだとTB弾かれちゃうので。
http://blog.livedoor.jp/dankogai/archives/50908615.html
Dan the Blogger Non-Grata :P

sigmund

私も5年ほど米国に住んでいた期間がありますが、自分自身、「人生のやり直し」のために行ったようなものでした。
日本では大学受験に2回も失敗(2浪)し、それでどこの大学にも引っかからず、仕方なくコンピュータ関係の専門学校に入ったのですが、それもものにならず、日本での自分は行き詰まった感がありました。

そこで、私は何を思ったか米国留学することを考え、こっそり貯めていた貯金をすべて叩いてLAで暮らし始めました。そして、私が真っ先に感じたのは、LA(米国)はまさに人生をやり直そうとしている私をそのまま受け入れてくれている、ということでした。

コミュニティカレッジ→UCLAと編入でき、立派な学位を得ることができたことは、いまの私の自信となっています。

できれば、また米国で自分の人生をブラッシュアップしたいですね。

jhjhjh

筆者に同感です。

今既得権にいるひとは受け入れがたい話でしょうから無理だとおもいますが

gakusei

人生をやり直したいと思って、自殺を選ぶ人が多い今の日本はまるで反対ですね。
生まれ変わったら、他国に生まれたいと思うでしょうか。

松岡農水大臣の件の後、安倍さんは自殺対策を打ち出すと発表しましたが、それよりもまず、自殺とは反対にエネルギーを向けて成功できる国にするべきだと思います。

rintaromasuda

例えばアメリカの大学って学部の変更をしたいときでもかなり柔軟に対応してくれますよね。日本で同じ事をやろうと思ったら、ヘタすれば再入学ですし。「アメリカってやり直しに柔軟だな」と思った記憶があります。

i

結局は「隣の芝生は青い」という、いい部分ばかりを見て、裏で
起きている様々な問題に気づいていないだけなのだと思います。
成功者倶楽部の視点になってしまっています。

仕事に失敗して、人生を転落していった人たちが集まりスラム化した
アメリカの街を昔訪れましたが、今は会社が入っていない高層ビルにたくさんの
浮浪者が集まっている光景は空恐ろしいものがあり、いまだに忘れることができません。

また別の例では、非常にきれいなプラダの広告の横に座っている、靴や
スーツがぼろぼろになったサラリーマン風の男の写真がNEWSWEEK
だかTIMEに掲載されていたこともあります。

こういう現状もあるのだということは知っておいた方がいいかと思います。

アメリカがよく、日本がそれに倣うべきだということの議論はいいですが、
そのまま鵜飲みにするものではないのではないでしょうか。

Name

日本とアメリカ、総合的にどちらがいいかは別としてアメリカの方がやり直すチャンスが多いのは事実でしょう。見習うべき部分です。日本にもホームレスはいますし、30代以下ですら一度落ちるところまで落ちたら簡単には”這い上がらせない”仕組みや無言の圧力があります。

やり直すチャンスが多いということは落ちる可能性も高いという指摘がありますが、今の日本でも身分が(ほぼ)保証されてるのは公務員だけです。

ここで考えるべきは、やり直しに寛容な社会にすることが全体的な損失になるかどうかでは。これって何かと直にトレードオフするようなことですかね?

サンディエゴ無頼

僕もアメリカ在住7年目です。
庵主が言いたいのは、「アメリカには、本人にやる気と能力さえあれば、人種・性別・年齢に関係なく、新しいことにチャレンジできて、道を変えることができる柔軟さがある」ということだと思います。

日本だと、30歳を過ぎると、転職も難しい。それ以上に、学校なんかに行って自分を磨き、新しい道をチャレンジするなんて、とてもできない。日本には、見えない壁や決まりがあちらこちらにある。「結婚するなら30歳まで」、「転職するなら30歳まで」。「腐ってもT大学卒」、「大卒じゃないとだめ」。そんなシガラミやUnwritten Lawにがんじがらめにされていて、実質20歳までにその後の人生の方向が、"社会"によってほぼ”決められてしまう”。

どうして社会が決め手しまうのか?それは本人が決めるべきものであるはず。それが今の日本社会なんだろうなと思いますよ。一人一人の人生の可能性が、実質的に20歳までできめられるような日本社会。40歳からでも、いや50歳からでも再チャレンジできるアメリカ。アメリカには、大きな貧富の差など、大きな問題が多々あります。ですが、この部分に関しては、アメリカを見習うべきだと思います。

koja

まさに自分の身に覚えのあるエントリーだと思い、コメントさせていただいています。
僕の場合まず普通の4年制大学で将来や勉強のことに対する考えがまとまらないまま気づいたら卒業。フリーターに。
その後別の大学のデザイン科を受験しなおして入学、今春メーカーのデザイナーとして内定をいただきました。
来年、新卒で仕事を始めるのは27になりますね。
自分はラッキーな例かもしれませんが、日本の社会がそこまで「人生のやり直し」に厳しいというよりも、日本の若者が「人生のやり直し」に対して意識が低かったり、必要以上にネガティブな気がします。
実際、自分と似た境遇でもやれることをやる前にあきらめてニートやフリーターになってしまうような人に沢山出会います。
社会も違うかもしれませんが、若者の意識もアメリカとは違う、残念ながらそんな面もあるように思います。

J

日本という国はそう簡単に変わらない国だと考えています。
寧ろ今の世の中は以前と比較して海外で生活を始めることがずっと容易になったのですから、本気でやり直しをしたい人は日本以外の国へ移住できるよう努力をする方がずっと現実的です。
大事なのは日本人だから日本に居座り続けなくてはならないという固定観念に囚われず、自分にあった生活を世界の中で選択できる可能性がある事に気付くことだと思います。
ですから私は推進されるベクトルを「日本へ」よりも「日本から」と全く逆方向に設定されることをお勧めします。

Tetsu

おおまかに言い換えると「年齢差別を無くそう」というお話ですよね。性差別を無くすための試みなどと同じく、至極真っ当かつ大切なことと思われます。このエントリに異を唱える方々は、一体何をどうされたいのやら。。

なんという

前半にある「人生のやり直し」をした人たちは日本でも普通に成功するぜ?才能があってやりたいことのために努力もしてる人は特に日本企業は大好きだからな。

後半の「人生のやり直しに寛容な社会」は、前半の努力して社会復帰やキャリアアップした人の話とうってかわって、「好きなことや思い付きや気分でふらふら生きてても周りが受け入れてくれる社会っていいよねっ、生きやすいよねっ!」て読めるぜ?
確かに日本ではそういう人間はそれだけで拒絶されやすいけど『それは外国人が概して仕事に対していい加減だからなんだぜ?』

まあ、その分遊びに対しては真剣だからさっ、いいからお前はもうアメリカに行けよ。

最近ゆとりやニートが増えてきたから、こういう口だけ君のゆるい考えにもちょっとづつあわせていかないといけないんだなと思いますた。がんばってる人の足は引っ張らないでね?

eakas

このエントリーへの感想を考えていたら、既に辞任表明されていましたOrz

そのニュースを知ったのは深夜に帰宅して見つけた"安部総理自慰表明"という2chのスレタイXDですが、
大手ポータルのトップニュースを大きく飾るような扱いにはなっていないです・・・。

まんまと逃げられましたね(^ー^;

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