スタバとアップルの提携が見せてくれるメディアビジネスの将来
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なぜアップルにできたことがソニーにはできなかったのか

 アップルがiPod+iTunes+iTunes Storeというハード・ソフト・サービスを巧みに組み合わせてネット時代にふさわしいコンシューマ・エレクトロニクス・ビジネスモデルを見せてくれたことに関しては、ここでもさんざん書いて来たが、反面教師として注目すべきなのは、ソニーになぜそれができなかったのか?ということ。

 自分自身がメディア産業を持ち、ウォークマンというブランドを持ち、ネットビジネスに抜群のセンスを持つ出井氏を社長に据えたソニーはアップルよりははるかに良い立場にいたはずだが、なぜこんなことになってしまったのだろうか。

 メディア産業を持つことが逆に足かせになった、ソフトウェア開発力の差、たまたまラッキーだっただけ、天才スティーブジョブズがいたから、イノベーションのジレンマ、などのそれぞれの側面から考察を加えることは可能だが、あの時代のソニーに特有の問題として特に注目すべきなのは、あの時代の出井陣営と久夛良木陣営の対立に象徴される「スーツ族とギーク族の軋轢(あつれき)」ではないかと私は考えている。

 結局のところは、出井氏を中心とするスーツ族(ソニー内部では「文官」と呼ばれていたそうである)が久夛良木氏を代表とするギーク族(もしくは「技官」)の心をつかむことができず、せっかく出井氏が持っていたビジョンを実行することができなかった、というのが私なりの解釈である。

 そういう見方をすると、アップルにとってスティーブ・ジョブズの存在がとても重要だったことが逆に良く理解できる。「スティーブ・ジョブズ、偶像復活」にも書かれている通り、スティーブ・ジョブズはエンジニアではなくマーケティングの天才。その意味ではギーク側の人ではなくスーツ側の人だが、普通のスーツ側の人と大きく違うのはギークの心をつかむのが天才的にうまいこと。そんなカリスマ性を持つリーダーがはっきりと方向性を示したからこそあれだけのことをこれほどの短時間に成し遂げることができたのである。

 テクノロジーの会社が伸びるときというのは、ギーク族の心をつかむのが上手なスーツがリーダーシップをとったとき(ここ数年のアップル)、抜群のビジネスセンスを持ったギークがリーダーシップをとったとき(90年代のマイクロソフト)、ギークとスーツが絶妙のコンビを組めたとき(昔のソニー)、のいずれかが成り立った時だけなのかもしれないと思う今日この頃である。

Comments

Maki

Satoshiさん、いつも楽しいブログありがとうございます。いよいよ、Mac Worldエクスポ開催が近づいて参りました。そこで、アップルのビジネス戦略について、米国メディアも注目していることが、その情報量からも理解されます。なぜ、アップルにできたことが、なぜ、ソニーにできなくなったのか....ある米国コンサルタントは、「ソニーは大企業になったから」と述べていました。1980年代、米国企業が直面してきた多くの課題として、財務会計を中心とする事業パフォーマンス向上に注力していった・・・・ところが、現実に高いビジネス・パフォーマンスを発揮することに成功した企業は驚くほどに少なかったと予想されます。そこで、彼らはM&Aをビジネス戦略の基調に据えました。けでれも、このサイクルが上手く回転したのは、シリコンバレーや米国VCをベースに置いたビジネス・サイクルが上手く回転することが必要条件であったと思われます。しかし、少しずつではありますが、このビジネス・サイクルの支障を感じずにはいられません。ソニーは、いや、ソニー社内の単体事業部門は、本来、同社の創業時に大切にしていた「お客様ニーズ」に関して、もしかすると、いつの間にか、その前提条件として、『ソニーにとって』よりはむしろ、『(自分たちの)個々の事業にとって』の「お客様価値」や「おもてなし」に置き換えてしまった可能性があるのではないかと・・・・。当然、投資家はじめ、その他のステークホルダーたちは、「個々の事業」に対してでなく、「ソニー」という一つの組織集団に投資しているわけです。確かに、「連結経営」という評価軸はありますが、あくまでも会計上の意味合いが強いのではないかと・・・・。いま、ソニーにとっての課題とは、「カスタマー・バリュー」と「ビジネス・バリュー」二つを上手くドライブすることなのかもしれませんね、きっと。

*「Macファン vs 米国資本主義 = "顧客第一主義" vs "実利主義"?!」: http://prewire.blogspot.com/2007/12/macpc-vs.html

<< テクノロジーの会社が伸びるときというのは、
<< (中略)ギークとスーツが絶妙のコンビを組めたとき(昔のソニー)
<< のいずれかが成り立った時だけなのかもしれないと思う今日この頃である。

Satoshiさんのご意見に同感です。先日、米Economist誌は「日本の経営」の今後に注目し、この新しいステージのことを、同誌は「ハイブリッド」と呼んでいます。Satoshiさん、もしかすると、施策とは「ギークとスーツが絶妙のコンビ組む」こと・・・・?!

* 日本の経営、和洋折衷(ハイブリッド)は大きな岐路に直面している・・・・?!:
http://prewire.blogspot.com/2007/12/blog-post_18.html

shibata

"Apple Computer" と "Sony Group" の違いというのもあると思います。
Appleが今回成功したのは、すべてAppleが行ったこと。Sonyの場合はグループであり、ウォークマン作るところと、コンテンツもってるところ、などはかなり遠い場所にいるんじゃないでしょうか。

グループというのも、大きくなりすぎると、グループ内の会社でもほとんど外部の会社といってもいいくらいの距離ができてしまうのかもしれません。

身内のコンテンツを使うのは簡単ですが、それに凝り固まるとマーケットが見えなくなりますし、Appleのように、完全にゼロから多くの外部(著作者など)を巻き込んで成し遂げたことが良かったんじゃないでしょうか。


iPodまではまだしも、iPhoneまでAppleにやられたSonyは、完全にそのブランドイメージを取られてしまった感があります。

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アップルは、高い+使えない=いらない ←こういうイメージがあった(あくまで個人的解釈)
ipodにより、手が出せる値段(しかもなんか高級感あり)+使える=買い ←こうなった(パソコンは使えないが)

現ソニーは、サムスンというイメージしかない
PS3赤字で、他のを経費削減(粗悪品)にしてそうなイメージ
 というか”中国” とどのつまり”中国”

wa-ren

うちの会社は「ギーク族の心をつかむのが上手なスーツがリーダーシップをとったとき」を装いつつ内部では「ギークとスーツが絶妙のコンビを組む」という状態を作りたいなぁと思う次第です。

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