MacWorld: AppleはApple TVでキャズムを超えることができるか?
リッツ・カールトンのおもてなし

MacWorld Expo: なぜiPod touchのアップグレードのみ有料なのか?

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 スティーブ・ジョブズの基調講演でもうひとつひっかかったのが、Apple TVとiPhoneのソフトウェア・アップグレードが無料なのに、iPod touchのアップグレードが20ドルなこと。Apple TVとiPhoneのソフトウェア・アップグレードが無料なことに触れたときは、誇らしげにストップして拍手を受けたのに、iPhone touch のアップグレードに関しては、「これから販売するiPod touchには無料で新しいアプリケーションがついて来るけど、既存のiPod touchに関しては20ドル」と、あっさりと流したことに妙な違和感を感じた人も、「Appleはセコい」と思った人も多いはずだ。

 私も「アレ?」と思ったのだが、思いあたるフシがあったので、AppleのAnnual report を調べてみたところ、答えが見つかった。

 エンロン・スキャンダル以来、厳しくなった米国の会計基準が理由だ。

 あの会計スキャンダル以後、会社の業績を必要以上に良く見せる会計操作をした経営者の責任がものすごく厳しくなった。それも悪意があるものだけではなく、ちょっとした「見解の相違」でも株主を惑わしたとなれば責任を負わされる。

 そのため、多くの企業が極端に保守的な会計報告をするようになった。特にソフト・ハードを作っているメーカーが気をつけなければならないのが、売上げの計上のタイミングとソフトウェア・アップグレードの扱い。

 今までなら、消費者が購入した段階で100%計上してなんの問題もなかったが、新しい会計基準では、ソフトウェア・アップグレードを無料でするのかどうかで、売上げの計上のタイミングを調整しなければならなくなったのだ。売上げの100%を会計上計上してしまったハードのソフトウェアを、後から無料でアップデートすると、その「ソフトウェアのメンテナンス」に相当する部分の売上げを「不当に前倒しにして計上した」とSECから会計操作と見なされる危険があるのだ。

 Apple TVとiPhoneに共通するのは、売上げの計上を消費者の購入時にせずに、毎月1/24ずつ24ヶ月間にわたって計上していること。ジョブズに言わせると「売り切り型のビジネスというよりはサービスに近いビジネスだから」。その意味では、ソフトウェアのアップグレードを無料でするのは当然なのだ(以下がAppleのAnnual Reportの以下が抜粋)。

During 2007, the Company began shipping Apple TV and iPhone. For both Apple TV and iPhone the Company indicated it may provide future unspecified features and additional software products free of charge to customers. Therefore, sales of Apple TV and iPhone handsets are recgnized under subscription accounting in accordance with SOP No. 97-2. The Company recognizes the associated revenue and cost of goods sold on a straight-line basis over the currently estimated 24month economic lives of these products with any loss recognized at the timeof sale. Costs incurred by the Company for engineering, sales, marketing and warranty are expensed as incurred.

 問題は、iPod touch。これに関しては、従来のiPodと同じく消費者が購入した時点で100%を売上げとして計上してしまっているため、無料でソフトウェア・アップグレードを提供してしまうと、会計基準上「不当な売上げの前倒し」と見なされてしまうのだ。

 ということで、「会計上、売上げの前倒し計上と見なされない様にするためには、ソフトウェア・アップグレードを有料にせざるをえなかった」というのが本当の理由である。まあ、こんな形でソフトウェアのアップグレードを頻繁に行うのであれば、iPod touchもiPhoneと同じ様な会計処理をした方が良いのかも、という議論は当然Apple内部ではされているはずである。「そしてすべてはサービスになる」という流れは、こんなところにも押し寄せている。

Comments

satoshi from socal

$20ではなくて$5とかでもよかったのでは!?と思ってしまいます。
iPhone純正のアプリなわけでoverheadはほとんどないし...
Appleは安売りしないぜ!ってことですかね?

I'm so disappointed:(

芹沢

不当廉売も拙いってことなんじゃありませんかね。
単体で販売するものである以上、開発にかかったコストを売り上げでペイしなければならない、という。

Memento

私も、ちょっと訝しさを感じつつ、アップグレードをボタンを押したものです。
が、ここのご賢察で納得しました。
mailが読めるようになったのは嬉しいですが、html?だと内容が表示されないのが
残念です。
それより、ボタンの配置を換える場合にアイコンがプルプルするのがブラウン運動みたいで非常に楽しいです。
ああいうギミックが本当にApple的でいいですね。

サンディエゴ無頼

iPod Touchは、触っててて面白いですね。よっぽど買おうかなとおもったけど、止めました(笑)。iPod Touchだけアップグレード有料っていうのは、ユーザーとしてはブーイングもんじゃないですか?iPhone, iPod-Touch。ユーザーにとっては同じようなもんです。

しかし、日本の携帯電話と携帯用ウエッブサイトのユーザーインターフェイス、腹が立つほどイライラさせられます。あれはユーザー本位というよりは、制作者の都合で作ってありますな。キーワード打ち込んでリターンキーをパーン!と押すだけのgoogle.comに慣れてしますと、なんでたった検索をするためだけに、幾つものボタンを何度も何度も押さなアカンのかイライラします。

ソフトバンクなんてウエッブサービスのスタートアップアドレスが変えられないし(Yahoo!携帯に固定)。しかも、yahoo!携帯接続時にメニューを読み込んでも、それから数秒はテロップニュースを読み込むために携帯電話が応答しない。露骨なパケット消費作戦に腹が立つし、使い勝手の悪さにイライラ爆発。

また頼みのgoole携帯検索でさえも頂けない。賢いGoogleのはずなのにアホな検索で、使い物にならない。しかもgoogleのユーザーインターフェースときたら、(↓キーを押すと)、検索ボックス=>検索ボタン=>(地域指定の)変更=>はじめての方へ=>コンテンツを追加、やっとここからコンテンツ 天気予報=>付近のお店=>地図=>乗り換え。 (地域指定の)変更=>はじめての方へ=>コンテンツを追加なんていうのはそう頻繁に使わないから端っこの方に置けばよいのに。僕なら はじめての方へ=>(地域指定の)変更=>検索ボックス=>検索ボタン=>天気予報=>付近のお店=>地図=>乗り換え=>コンテンツを追加(スタートは検索ボックス)にするな。現在のgoogle携帯のGUI, 思慮に欠けるな。

携帯電話に”リターンキー”が欲しいと思うのは僕だけだろうか?こんな使いづらい携帯をつかっていて、iPhoneに触ると、そのGUIの無駄のなさ直感的さに感動する。はやくiPhoneでてきて欲しいなあ。携帯専用サイトにPCサイト並の便利さを求めるのがダメなのかな?そのあたり家主はどう思ってられるんでしょう?

それから日本のWebサービスのノロさ、使いずらさと言ったら、酷い(PCを使った)。最近、オンラインサービスが受けたくて、いろいろサインアップしたんだけど、なんとサービスが受けられるのは1週間後とか!という前インターネット時代の化石みたいなサービスが立て続けにあった。それって申し込みをオンラインで受けているだけであって、それ以外の処理って、昔と同じで人間がやっているってことだよね!これってオンラインサービスちゃうよ。だって1週間後に郵送でいろいろやってくるんやで。せめて翌日に審査・決済だろう。

こんなプアなサービスしか提供されないのに文句のでない日本。
こういう部分にも、日本の国の老化現象(硬直化)が見られると思うのは僕だけだろうか。

Satoshi Nakajima

>mailが読めるようになったのは嬉しいですが、html?だと内容が表示されないのが残念です。

設定の問題ではないでしょうか?私の場合、Gmail, Exchange, 通常のPopサーバーの三つに繋いでますけど、どれでもHTMLメールがちゃんと読めます。

TKO

本当のところ、私には「米国会計基準が理由」が正しいのか、他にも理由があるのか分かりませんが、この理由は非常に説得力のある理由だと思いました。このような視点を与えてくださってありがとうございました。目から鱗が落ちる、でした。

ちなみに、私もiPod touch 所有していますが、Update は控えています。 歌詞表示くらいしか私にはメリットがなかったので。

lat37n

こんにちは。アメリカで会計監査に携わる会計士ですが、この件、中島さんのご明察だと思います。1年くらい前のこの有償アップグレードの時は、会計ルールへの準拠のためとして広報から説明があったようです。
http://www.macrumors.com/2007/01/18/802-11n-upgrade-fee-confirmed-at-1-99/

アメリカで収益の計上基準が厳しくなったのは2001年にSAB101という会計基準が出てからです。ソフトウエアのこの会計基準はそれより前の97年にはできていましたが、運用が厳しくなったのはやはり2002年以降でしょうか。最近ではNECがこの会計基準に準拠できなかったためにナスダックから上場廃止になっていたりしますので、フォローする企業側にもなかなか大変な話です。

kenny56

iPodもこれまで、なんどなくマイナーUpdateはされてきたと思うのですが、これと今回の違いはどこにあるのでしょうか?また、PCやX-Box、PS3といったUpdate可能な機器も同じ解釈になるのでしょうか?

Satoshi Nakajima

 まず、マイナーなアップデートと、機能が追加されるアップグレード二は大きな違いがあります。マイナーなアップデート分に関しては売上げの15〜20%ぐらいを「メンテナンス費用」として先送りして会計上計上するのが一般的で、アップルもたぶんそうしていると思います。しかし、今回のようにそれで認められている範囲を明らかに超えるものの場合(この場合は機能が実際に追加されるので)、無料にしてしまうと会計上問題があります。

hoge

意味ワカンネ
メンテナンス費ってわざわざ書かなきゃいいだけじゃねーの??

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