夏野氏の本音とドコモの縦割り行政と
2008.01.26
CNetのインタビューは、夏野氏の本音が見えるなかなか良いインタビュー(永井さんNice Job!)。
ドコモから出てくるにしろ、ソフトバンクモバイルから出てくるにしろ、サービスは変わらないと思いますよ、Apple(が開発する端末)だから。そうなると後は経済条件だけじゃないでしょうか。個人的には、僕の味付けができないからそんなに興味はないですね。少なくとも今のiPhoneでは携帯電話回線を使って自由にアプリをダウンロードするといったことはできないですから。【ドコモ夏野氏に訊く:「iPhone」「ディズニー」「Google検索精度」をどう思う?:モバイルチャンネル - CNET Japanより引用】
この発言は、ドコモの内部事情をある程度知っている人たちにとってはものすごく微妙な発言である。
内部事情とは、ドコモの縦割り行政ゆえに、時々外に見えてしまう自己矛盾。iモードを立ち上げ、ドコモ内部で絶大な力を持ちつつ、端末の調達に関してはまだ100%コントロールできていない夏野氏。夏野氏が「Googleと組んでandroidを採用」と言っているにもかかわらず、ほぼ同時に広報からは「ドコモはAccessと携帯共通プラットフォームを開発」という思いっきり矛盾したプレスリリースが出てしまうのは、まさにこの縦割り行政の結果。
夏野氏の「後は経済条件だけじゃないでしょうか」という発言は、アップルと交渉しているドコモ内部にいる人たちに対する「お前たちアップルの言いなりなんかになるなよ」という牽制球。「個人的には、僕の味付けができないからそんなに興味はない」というのは本音。
サービスの顔であるデバイスを通した「おもてなし」を100%アップルにコントロールされてしまうiPhoneが、長い目で見てドコモにとって特かどうかは疑問。「おもてなし担当重役」の夏野氏としては反対して当然。夏野氏から見れば、月額データ使用料の何パーセントかをアップルに渡すなんてもっての他だ。
こうなってくると、「鶴の一声」でものが決まるソフトバンクからiPhoneが出て来る可能性が大にも思えるが、ドコモ内部に「夏野氏の力を押さえつけるためにもiPhoneを採用しよう」という不穏な動きが出る可能性もないとは言えないので、まだ決めつけるのは早い。現に、先のAccessとの提携の発表を「夏野氏のandroid戦略に対する社内牽制球」と読む業界関係者も多い。
しかし、こうやって社内で牽制球を投げ合っている姿とかを見ていると、スティーブ・ジョブズとか孫さんのように「すべてのものを決めてしまえる力を持つリーダー」がいた方が、大きく時代が変わろうとしている時には、有利なのかも知れないと思うがどうなんだろう。もちろん独裁者は抑えが効かない分、大きな間違いを犯す可能性もあるが、すばやく大胆な決断が下せるという点では圧倒的に有利。同じチーム内で牽制球を投げ合っている間にも時代はどんどん前に進むのだから。
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<< 有利なのかも知れないと思うがどうなんだろう
Satoshiさん、企業経営の事業部制アプローチとは、米GMにおいてスローンが実践したことがはじめになるのではないかと予想されます。この際、事業部制を適用した最大の理由とは、「権力の集中化を避けるため」にありました。しかし、世の中は「The World is Flat」。世界は情報に関して、水平的につながってしまった。実は、この言葉の意味は深く、そして、そのインパクトは大きい.... 昨年、ハーバード・ビジネスレビューから、新しい動きに関するレポートが公表されています。「CSO(The Chief Strategy Officer」。もしかすると、企業組織そのもの自体も、イノベーションが求められているのかもしれませんね、きっと。
「HBR CSO(The Chief Strategy Officer)」: http://harvardbusinessonline.hbsp.harvard.edu/b02/en/common/item_detail.jhtml;jsessionid=ORWCNLW5B2HAMAKRGWDR5VQBKE0YIISW?id=R0710D&_requestid=218911
Posted by: Maki | 2008.01.26 at 12:55
スティーブ・ジョブズや孫さんはそれぞれ会社の創業者(父親の存在)だから、
彼らの意思決定は部下に対して絶対的なものである。一方、歴史を持った大企業というのは別個の各事業部の長から選抜して経営者が選ばれるから、彼の意思決定は相対的なものである。縦横な協力体制を維持しなければ、会社の基盤も自身の地位も脆弱になりかねないからである。ドコモの組織事情は縦割り行政であり経営者の力量のなさ(方向性を打ち出せない)でもあると思う。
ドコモが自らの将来を携帯事業者のままでいいとすれば、競争相手をソフトバンクと見てiPhone争奪戦もアリかなと思うけど、その先の事業は国内の価格競争のみで利益も細々として大成せず終わると私は考える。一方、自らを決済業者(おサイフケータイ)として競争相手をVisaなどのクレジット会社としてそれを置き換える事業と定義すれば、世界中で商品購入の際の手数料収入を期待できる。
「世界の携帯電話加入件数が33億件に達し世界人口の半分相当する」「携帯電話の普及率が100%を上回っている国が59カ国」というニュースを聞くと、ソフトバンクとアップルのiPhone争奪を巡って国内の加入者増減数を争うことよりも、ドコモは決済サービスにもっと注力してそれを世界展開ができるレベルまでに高めるべきだと思う。
日本の人口 1.3億人(世界人口の2%)でありアップルのiPhoneは一国一キャリアである以上このiPhone争奪戦はアップルを中心とした話題ではあるが、ドコモにとっては自らが日本の井の中の蛙のままでいるのか世界の大海に出て行くのかの大きな転換点であると思う。
この辺りが、経営陣がドコモの将来の方向性をどこに持っていくのかを決めかねている理由なのかなと考えています。
Posted by: shigeki | 2008.01.27 at 08:22
不遜ながら、ソフトバンクのソンさんは"孫"という字です。
Posted by: kamex | 2008.01.27 at 09:02
>不遜ながら、ソフトバンクのソンさんは"孫"という字です。
ご指摘ありがとうございます。修正しました。
>ドコモにとっては自らが日本の井の中の蛙のままでいるのか世界の大海に出て行くのかの大きな転換点であると思う。
確かに転換点なんでしょうね。「ドコモならではの戦略」をどこに置くのかをしっかりと定めないといけない時期だと思います。
Posted by: Satoshi Nakajima | 2008.01.27 at 09:43
<< >ドコモにとっては自らが日本の井の中の蛙のままでいるのか世界の大海に出て行くのかの大きな転換点であると思う
米エコノミスト誌は、「日本の経営」の今後に注目しています。バブル崩壊後15年を経て、日本企業は従来の経営モデルを踏襲しながら、西洋の経営モデルを適用しながら、次なるステージへ歩み出していると....。われわれが現在、目にしているハイ・パフォーマンス企業とは、安価な製品よりは、むしろ、アップルやGoogleなどが提供している「差別化」「イノベーション」などに挑戦していくことなのかもしれません。そこで再考されるのが、実は「リーダーシップ」に関してです。各種資料を読む限りでは、「イノベーション」推し進めるうえで、やはり、「リーダーシップ」の存在はとても大切な意味を含んでいると予想されるからです。もし、仮に、これが正しいとしたならば、日本は大きな転換期に直面しているのかもしれません.....
*日本の経営、和洋折衷(ハイブリッド)は大きな岐路に直面している・・・・?!:
http://prewire.blogspot.com/2007/12/blog-post_18.html
Posted by: Maki | 2008.01.27 at 12:48
ドコモにとって特かどうかは疑問 > ドコモにとって得かどうかは疑問
Posted by: 訂正 | 2008.01.27 at 17:00
そもそもドコモとAppleは相容れない組み合わせのような...。
ライバルの戦力アップを阻止せんがために、他球団の4番を獲っては飼い殺しにする某球団の戦略のようなのが狙いなんじゃないかって気がしてきました。
Posted by: PowerYOGA | 2008.01.28 at 03:07
牽制球の打ち所が悪かったのか、キャチボールに疲れてしまったのか、夏野さん辞めてしまいましたね・・・。
Posted by: あばばばば | 2008.03.27 at 10:46