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「西海岸に住む日本人から見た日本」三部作

 月末になると「今月はどんな本が売れたのかな」とアマゾン・アソシエイトの集計を見るのを楽しみにしている私だが、今月は私自身が書いた本の注文も始まったため特に楽しみ。

 さっそく集計してみると、こんな結果だ。

  1. おもてなしの経営学 アップルがソニーを超えた理由
  2. パラダイス鎖国 忘れられた大国・日本
  3. イノベーションのジレンマ―技術革新が巨大企業を滅ぼすとき
  4. リッツ・カールトンで学んだ仕事でいちばん大事なこと
  5. 文章表現400字からのレッスン
  6. 理科系の作文技術
  7. 頭の良くなる「短い、短い」文章術―あなたの文章が「劇的に」変わる!
  8. 松下で呆れアップルで仰天したこと―エンジニアが内側から見た企業風土の真実
  9. ウェブ時代 5つの定理 この言葉が未来を切り開く!
  10. スティーブ・ジョブズ-偶像復活

 おかげさまで、堂々一位。あたりまえと言えばあたりまえだが、やはりうれしい。そして同時出版の海部さんの本が二位というのも予想通り。

 ちなみに、8位の「松下で呆れアップルで仰天したこと」は「絶対にテレビをあきらめないパナソニック」というエントリーを書いた時に、手持ちのパナソニック関係の本の広告を貼付けようとしているときにたまたま見つけた未読の本。あまりに面白そうなタイトルだったので、試しに貼付けてみたらこの結果である。やはりタイトルは重要だ。さっそく注文しておこう。

 興味深いのが、梅田さんの新しい本「ウェブ時代 5つの定理」がまだ紹介もしていないのに9位に入っていること。梅田さんの本に関しては、アスキーの対談でも話題になったので楽しみにしていたのだが、これは、このブログの読者に梅田さんのファンが多いという意味だろう。 

「ということは、ひょっとして...」とアマゾンの梅田さんの本のページに言ってみると、「この商品を買った人はこんな商品も買っています」コーナーに私の本がちゃっかりと入っている。海部さんの本もそこに入っていることを見る限り、この三冊をまとめて買う人が結構多いということかも知れない。

 しかし、西海岸に住む日本人ブロガー3人がほぼ同時に本を出し、それが同じような読者層に受けているというこの現象は一体何を意味しているのだろう...「西海岸に住む日本人から見た日本」の意見を参考にしてもう一度日本の世界経済におけるあり方を見直そう、という意思の現れだろうか。


iPhoneがビジネス向けにアップグレードするらしい

Apple will detail the software road map for the iPhone on March 6 at its Cupertino, California, headquarters, the company said in an invitation sent to reporters....(中略)....Apple is likely to announce improvements that could spur more businesses to use the iPhone as a company phone, American Technology Research analyst Shaw Wu said in a client note on Thursday, citing industry and developer sources.【Apple shares rise on optimism over iPhone demand: Financial News - Yahoo! Financeより引用】

 Apple の iPhone に関して、ちょっと目を引く記事があったのでメモ代わりに引用。要点は二つ、

  1. 3月6日にiPhoneのソフトウェアに関する今後の計画に関しての発表がある
  2. そこで発表されると予想されるのがビジネスユーザー向けの機能

 ビジネスユーザー向けの機能と言えば、Blackberryに対抗したExchangeサーバーとのインテグレーション。さまざまな理由で、会社のメールサーバーへ外から直接アクセスすることをを認めていない会社は沢山あるので、それをデスクトップパソコンからプッシュ型で外のサーバーにコピーすることにより会社のIT部門を通さずに会社のメールを外から読めるようにした点が元々のBlackberryの強み(ちなみに、今はExchangeサーバーからのプッシュもサポートしている)。

 そのあたりのソフトウェアにAppleが手を出してくるのかどうかはいささか疑問だが、何かしてくる可能性は確かにある。ただ、「エンタープライズはMicrosoft、コンシューマーはApple」という絶妙な住み分け戦略がせっかくうまく行っているのだから、そこから大きくぶれる戦略を採るとは思いにくい。

 まあ、私の場合は会社のExchangeサーバーにIMAPでアクセスできるから文句がないだけの話で、IT部門の頭が固い会社に務めるiPhoneユーザーにとってはそういった機能は必須なのかも知れないな、と。


「おもてなし経営学/パラダイス鎖国」トーク&サイン会

 先日アナウンスした海部さんと私との公開対談、ようやく日時・場所が確定したのでここで告知させていただく。

日時:3月11日(火)18:30〜20:00(会場18:00)
場所:八重洲ブックセンター 本店8階ギャラリー

 詳しくは、こちらを参照願いたい。

 しかし、今回の二人のブロガーによる同時出版は実際にはいくつかの偶然が重なったからこそ実現できたのだが、こんな形での相互マーケティングは、お互いの読者層を広げるという意味でもアマゾンの「合わせて買う効果」という意味でも色々とプラスになっており、今後の「ブログマーケティング」のありかたに多少なりとも影響を与えることができたら、と密かに期待している。

 まあ、そうは言っても中身が無くては始まらない話。海部さんの本の草稿を読ませていただいているのだが、「これは私がいいたかったのに!」と悔しい思いをさせられる箇所が多々あり、「相手にとって不足なし」どころか「ちょっと負けてるかも」と思うぐらいすばらしい本なので、(もちろん、私の本と合わせてだが)ぜひとも一読をお薦めする。


法律の勉強:著作権法で保護されるのは「特定の表現」であり「情報そのもの」ではない

 先日、著作権に関するとても興味深い話を弁護士の人から聞くことができた。実際にあった法廷闘争に基づく話だが、トピックは、「他の人が書いた料理の本に乗っているレシピを参考に、似たような料理の本を出版した場合、どんな法律を破っていることになるか」という話である。

 適用できる法律は、著作権、特許、登録商標の三つ。それぞれについて考察を加えるとこうなる。

【著作権】このケースで言えば、著作権で守られているのは、文章そのもの・イラスト・写真。レシピそのものは著作権では保護されない。つまり、オリジナルの料理本の文章を丸写しにしたり、イラスト・写真をそのままコピーしさえしなければ、(材料・調理方法などが)まったく同一のレシピの本を書いても著作権法違反にはならない。言い換えれば、著作権で保護されるのは、「特定の表現」であり「情報そのもの」ではない。

【特許】レシピに特許権が成立するかどうかは微妙ではあるが、オリジナルの料理本を書いた人がレシピを特許として特許庁に申請し、受理されていれば、それを元に法廷で戦うことはできる。ただし、その場合、そのレシピが明らかにユニークなもので、そんじょそこらの料理人が簡単には思いつけるものではないことを証明しなければ勝てないので、そこが難しい。

【登録商標】酷似したタイトルや表紙のデザインなどで故意に消費者を惑わせて便乗売上げを狙っていると言えるのであれば、この観点から法廷で戦うことができる。例えば、オリジナルの料理本が「ママの秘密レシピー」というタイトルで表紙にニンジンを子供から見えないように鍋に入れている母親の姿で、コピー本が「私の秘密レシピー」というタイトルで表紙にピーマンを子供から見えないように鍋に入れている母親の姿の場合、などがそうだ。

 この話で勉強になったのは、レシピのような「情報そのもの」には著作権が適用されないということ。漠然とは知っていたが、こうやって説明してもらえると、どこまでが著作権法で保護できる範囲なのかが明確になって良い。

 ちなみに、音楽の場合は「メロディー(および歌詞のあるものは歌詞)=特定の表現」というのが一般的な解釈で、他人の曲のメロディーだけをちょうだいしてオリジナルの編曲を加えて「オリジナルの曲だ」、という方便は通用しないそうである。ただし、コード進行に関しては既に同じコード進行を持つ別の曲が世の中にたくさん存在することからも(特にジャズではそれが顕著)著作権を適用すべきでない、というのが一般的な解釈。そのため、たとえ有名な曲のコード進行だけ丸ごとコピーしても、メロディさえオリジナルのものを付ければ問題ない、とのことである。


Google Analyticsを使いこなす:IEユーザーは親子丼が好き?

 先日のエントリーに書いたブラウザーのシェアの話、コメント欄でも指摘があったようにあくまで「このブログを訪れる人の間で」の話なので、そこは注意が必要だ。 

 実際、リピーターだけを抽出して統計を採ると、

  • Firefox = 43.64%
  • IE = 36.26%
  • Safari = 14.83%
  • Opera = 3.16%

となる。つまり、このブログを定期的に読んでいる人に限って言えば、既にFirefoxが優勢ということである。

 ちなみに、こんなに読者が偏ったブログであっても、ネット・ユーザー全体のブラウザーのシェアを調べることはそんなに難しくない。さっきと逆に、サーチエンジン経由で訪れた人たちを対象にすれば良いのだ。ただし、技術用語を探して来た人のデータが混ざると偏ってしまうので、ごく一般的な言葉でサーチをして来た人を対象にする。このブログの場合、「親子丼(2位)」「マルチ商法(8位)」などが適切。

 Google Analyticsを使いこなしたい人たちのために手順を解説すると、こんな感じになる。

  1. 充分な期間を設定する(このブログの場合、1ヶ月で充分)
  2. 左のサイドバーで、トラフィック→キーワードを選ぶ
  3. 表示されたキーワードの中から一般的なものを選ぶ(私の場合は「親子丼」)
  4. グラフの下に、「セグメント:なし」と表示されているので、その横の矢印をクリック
  5. するとメニューが表示されるので「ブラウザー」を選択する

 こうすると、「親子丼」でサーチしてこのブログを訪れた人たちのブラウザーの分布を知ることができる。結果はこんな感じ。

  • IE: 945人(77.5%)
  • Firefox: 162人(13.2%)
  • Safari: 91人(7.46%)
  • Opera: 22人(1.80%)

 つまり、親子丼が好きなユーザーはFirefoxよりもIEを使う傾向がある、ということが証明されたことになる...じゃなくて、これがネットユーザー全体のブラウザーの分布と見てほぼ間違いなかろう。

 しかし、これだけはっきりと違いが表れるとデータ解析が楽しくなる。Google Analyticsは使いこなすと他にも色々と面白いことが出来るのだが、今日のところはとりあえずここまで。 


私がiPhoneのSDKに注目するもう一つの理由

There’s a week to go before Apple’s commitment to release the iPhone Software Developers Kit in February runs out of room. I’m hearing from one source that its going to be late. I’m not yet hearing any reasons why, and it’s sounding like the official release date could slide by anywhere from one to three weeks.【Byte of the Apple The iPhone SDK Will Be Late - BusinessWeekより引用】

 ビジネスウィークの記事によると、iPhone用のSDKの準備は少し遅れており、2月中には出ないかも知れないとのこと。

 今回のSDKで私が注目しているのは、ウィルスなどの悪徳プログラムの実行を防ぐために、Appleがどんなセキュリティの仕組みを入れて来るか、という点。

 順当に考えると、iTunes+iTune Storeを使って、iTune Storeからダウンロードしたブログラムしか実行できないようにすることになるだろうが、そうなると、自然に「iPhone用のアプリを購入する場合はiTune Storeから買わなければならない」というビジネス上の縛りがつくことになる。ある意味で、任天堂やソニーがゲーム端末でやっているビジネスモデルに限りなく近くなるわけだ。auのBREWアプリも基本的には同じ仕組みだ。

 もう一つの選択肢としては、ドコモのiアプリのようにVMを使ってアプリをサンドボックスに閉じ込めて悪さをしないようにするという手法もあるが、SDK発表時のジョブズのセリフから推理するに、そちらの方向性は考えにくい(個人的には、思いっきり実行速度の早いJavascriptVMが作れればそれで良いじゃん、とも思うのだが)。

 ということで、今回のiPhoneのSDKは、単なるAPIの公開という話にとどまらず、iPhone向けのアプリの流通をAppleがコントロールするかどうか、というとても面白い問題が絡んでいるから注目に値する。

 


Excelのチャートを簡単にブログに貼付ける方法

 ちょっとしたチャートとかグラフを作る時にはやはりExcelが便利だが、作ったチャートをブログに貼付ける方法を知らない人が多いことを発見したので、私が採用している方法をここで披露。

1. Excelでチャートを作る
2. 作ったチャートを選択し、編集→コピー
3. Wordで新しい文書を作成
4. その文書に編集→ペースト
5. その文書に適当な名前(例えばdocument1)を付けてウェブページとして保存

 こうすると、Excelで作ったチャートが、ブログに貼付けることができるPNGというファイル形式で新しいフォルダー内(上の例だとdocument1_files内)に作られるので、それをブログに貼付ける。

 例えば、私のブログに訪れる人のOSを月ごとにグラフにしたのがこれ。

Image002

 私が使っているのは、Microsoft Office 2008 for Macだが、他のバージョンのオフィスでも基本的には同じことができるはず。

 ちなみに、上の方法だと、Wordがグラフを画像化するのだが、ステップ4でペーストの代わりにペーストスペシャルを使って画像として貼付けるとExcelがグラフを画像化する。大きさ、フォント、アンチアリアスに若干の違いがあるので、こだわる人はお好みの方法でどうぞ。

【追記】ブックマークコメントで指摘をいただいたが、Excelで「右クリック(Macではctrl+クリック)→画像として保存」を使うことによりWordを介さずに直接画像ファイルを作ることも可能。ただし、クリックする場所がチャートのどこでも良いのではなく、枠でなければならないところが、見つかりにくくしている。


春が来ると思い出す...

 シアトルは毎年、この時期になると一週間ほど妙に暖かい日が続くのだが、その時に必ず私を襲うのがクシャミの嵐。軽度の花粉症なので病院にも行かずに、ティッシュペーパーを抱えてこの時期を乗り越える私だが、この時期に思い出すのが小学生の頃に通わされた耳鼻咽喉科。

 医者は私の症状を「アレルギー性鼻炎」と診断し「週三回来る様に」と言う。塾など通っていなかった私は、遊ぶ時間が削られるのがいやで仕方が無かったのだが、「このまま放置すると蓄膿症になって手術しなければいけないかも知れない」と言われた私は手術が嫌なばかりに週三回まじめに通った。しかし、通ったからといって良くなる訳でもなく、毎年2〜3ヶ月かよううちに自然と収まる、ということを毎年繰り返していた。

 その病院の待合室は、いつ行っても鼻を垂らした子供たちで一杯だったことを覚えている。その医者は、ほかの子供たちも「手術」をちらつかせて脅して通わせていたに違いないが、今では確認するすべもない。

 てなことを毎年春になると思い出す私にとって、「耳鼻咽喉科」は春を表す季語。

♪春になると思い出す
  はなたれ小僧でいっぱいの
   耳鼻咽喉科の待合室



どんどんとコモディティ化が進むブラウザー

 去年の初めに、「今年の末までにFirefoxのシェアがIEを抜く?!」というエントリーを書いた私としては、そろそろ報告をせねばと考えていたのだが、ようやく今日になって報告。Google Analyticsでブラウザーのシェアを計測し始めた去年の2月からの1年間のこのブログにアクセスして来るブラウザーのシェアを1ヶ月単位で測定してグラフにしてみたのがこれ。

Image001

 このグラフからはっきり分かる傾向は、IEが徐々にシェアを減らしており、Firefoxとの差がほとんどなくなって来たこと。これを見る限り逆転するのは時間の問題のように思える。もう一つ興味深いのは、去年の後半からSafariのシェアがじりじりと伸び始めていること。これはMacユーザーが着実に増えていることを反映している(OSのシェアについては別途報告する)。

 わずか5%だったIEのシェアを70%超にまで伸ばしたIE3.0・IE4.0開発チームの一員としては、少し複雑な気持ちだが、これも時の流れとしては当然のことだろう。

 95年にマイクロソフトがIE3.0で第一次ブラウザー戦争の宣戦布告をネットスケープに対してした時の記憶は今でも鮮明に残っているが、その時のビルゲイツのセリフは「ブラウザーはコモディティ、もう誰もブラウザーにはお金は払わない」だった。思惑通り第一次ブラウザー戦争には勝ったものの、それを自社のウェブサービスの成功に結びつけられなかったところが痛い。

 GoogleがWebKitベースのブラウザーを出すのも時間の問題という噂もあるし、Google Gearsのポジショニングもある。マイクロソフトが今さらIE+Silverlightで第二次ブラウザー戦争を起こせるとは思いにくいが、まだまだ目が離せないマーケットではある。


成功は偶然か必然か

 だから、ほんとにね、田辺さんに出会ってなければ、中村さんにも出会ってないわけだし、このお二人に出会ってなかったら、ぴあは生まれてなかったんですね。【Musicman-NETより引用】

 昨日のエントリーにも繋がる話だが、一緒に会社をやるなら、この手の成功物語を「たんに運が良かっただけ」と解釈する人ではなく、「そんな人に出会えるまであきらめずにがんばった」とも解釈する人とやりたいな、と。