Microsoft/Yahoo:買収はたぶん成功するだろうけど、問題はそれからだ
2008.02.01
今回のMicrosoftによるYahooの買収のオファー。ウェブの世界ではどうしてもGoogleに勝つことができないMicrosoftとしては、Yahooのビジネスはのどから手が出るほど欲しい存在。Googleに追い越され、成長に陰りが見え始めた結果株価が安くなったYahooは今がお買い得。WindowsとOfficeというドル箱を抱えながらも、そのドル箱が稼ぎだす莫大な現金をどこに投資すべきかがいまいち見いだせてないMicrosoftとしては、Yahooを買うことによりその価値を買収価格より高くする、というストーリーは説得力がある。
一方、Yahooの株主にとってみればこれは朗報。ずるずると下がり続けていた株に対してこれだけのプレミアムを付けてもらえば喜んで売るのが大半の株主。
少し悩ましい立場にいるのが、Yahooの現行の経営陣。株主利益を最大にするのが役割の経営陣とすれば、このプレミアムに匹敵する価値を生み出すプランを出せない限りはMicrosoftのオファーを支持するしかない。低迷するビジネスを立て直すためにCEOに返り咲いたJerry Yangは、会長として今まではMicrosoftからのオファーを断り続けて来たそうだが、さすがに今回のオファーは条件もタイミングも良すぎるので、他の取締役から押し切られる可能性は高い。その場合は、ロックアップ期間が終わるまでの2年間ぐらいを「引き継ぎのため」にのんびりと過ごしたあげく、「一身上の事情」であっさりと辞めてしまうというのが一番ありそうな筋書き。せっかくここまで育てたYahooを去るのは辛いだろう。
買収する側のMicrosoftとしての一番の難題はYahooの従業員をどうやって繋ぎ止めるか。シリコンバレーのエンジニアの間のMicrosoftアレルギーには激しいものがあり、せっかく買収したのに優秀な人たちから先にどんどんとGoogleやらベンチャー企業に抜けて行く、という可能性は高い。そのためには、Microsoftの株を「黄金の手錠」として与えて繋ぎ止めるしかないのだが(Restricted stock参照)、すでに9時出社5時退社のサラリーマンばかりになってしまったMicrosoftの社員と一緒にすると、「じゃあ、俺たちも株が全部もらえるようになるまで9時5時で手を抜いて働いていれば良いじゃん」となってしまう可能性もあるので、それはそれで困ったこと。
総括すると、MicrosoftにとってもYahooにとっても、戦略面・ビジネス面で言えばとても納得できるのが今回の買収のオファー。しかし、実際に買収した後に、Yahooの既存の社員たちが一生懸命にMicrosoftのために働く様になるか、という点に関しては大きなクエスチョンマーク、というのが私の感想。もし私がYahooの株主だったら、Microsoftの株ではなく、現金で受け取るな、と。
/.J で、
「これでiPhoneはSoftbankには来なくなるんじゃないか?」
という発言がありましたが、影響はあるものなんでしょうか。
Docomoは少し強気に出られてほっとするのでしょうか。
Posted by: ku_md_phd | 2008.02.01 at 20:20
<< 買収する側のMicrosoftとしての一番の難題はYahooの従業員をどうやって繋ぎ止めるか
Satoshiさん、同感です。サービス社会において、企業における「ひと」は重要な企業のアセット、「人財」であうと思うからです。米MSがYahoo!を買収する可能性は高く、今後、インターネット市場(Google、Amazon、Facebook、Apple、モバイルなど)めぐる競争は激化するのではないか、と予想されます。
*「米マイクロソフト、米Yahoo!買収提案(そのインパクトと影響とは・・・・?!)」:
http://prewire.blogspot.com/2008/02/yahoogoogle.html
Posted by: Maki | 2008.02.01 at 21:39
MSインサイダーのsatoshiさんのご意見、面白く拝見しました。ヤフーの人たちは、ジェリー・ヤンが帰ってきて「メディアだエンターテイメントだ、という騒ぎが終って、ネットギークの住みやすい会社に戻ってよかった」と言っていたのですが、一難去ってまた一難ですね・・・
Posted by: Michi | 2008.02.02 at 12:48