日経BPが永久機関の話にだまされちゃ困るだろう
2008.06.18
「水からエネルギーを生み出して走る車」の話はあまりにも子供だましなので、スルーをしようと思っていたのだが、日経BPまでが軽率にも報道してしまったために(参照1、参照2)、米国の朝のニュースでも報道される始末。
日経エレクトロニクスの愛読者として日経BPにはいろいろとお世話になっている私だが、今回のは完全なミスなので日経BPのためにも指摘しておきたい。こんな詐欺のような話は頭から無視すべきなのは明々白々。こんなくだらない話を記事にした記者には厳重注意を与えるべき。日経BPとしてこれ以上の権威失墜を避けるためにも、ここから先の報道は控えた方が良いだろう。できることならば、「なぜこの手の永久機関が不可能なのか」を丁寧に解説して、不幸にも誤解してしまった読者を救済すべき。
エネルギーを使わずに触媒だけで水素と酸素を分解することはできないのは当たり前の話(エネルギー保存の法則)。化学反応を使って水を分解することは可能だが(例えばナトリウム)、その場合は「化学エネルギー」を消費しているわけで、決して水からエネルギーを取り出しているわけではない。
そもそも「水から発電する新エネルギー」という言葉使いがうさんくさい。日経BPの記者ならば、その言葉を聞いただけで「まやかし」だと見破らなければだめ。「水と空気だけで発電し続けます」という記事のタイトルも完全にミスリード。今回の話が可能であれば、「特殊なバネを使って『石』を高いところに持ち上げて、それが落下するエネルギーを使って発電する『石エネルギー車』」が可能になる。
まあ、どんな科学の法則でも絶対に覆せないわけではないのだが(ニュートン力学に対する相対性理論が良い例)、ニュートン、アインシュタイン以来の革新的な科学の進歩が、突然大阪のベンチャー企業によって達成されたとは信じがたい。
ちなみに、どうしても理解できないのがこの「ジェネパックス」社の狙い。ベンチャー企業として投資家からお金を集めようとしているのかも知れないが、ベンチャー投資であろうと全く科学的根拠のないエセ科学をうたって投資家からお金を集めれば詐欺罪は成立するわけで、そんな見え透いた犯罪に、こんなにおおっぴらに手を染めて来るとは考えにくい。作っている本人たち自らが勘違いをしてしまっている可能性がない訳でもないが、なんらかのエネルギーを注入しなければ車が走らないことは本人たちが一番良く知っているだろうから、それもありえないし。
【追記】何人かの人たちに、「すでに永久機関ではないことを認めているから良いのではないか」との指摘を受けたが、私が問題にしているのは、ジェネパックスが使っている「コップ一杯の水が、地球を支えるエネルギーに」「水が生活エネルギーに変わる」「水からエネルギーを取り出す過程で...」という、あたかも「水からエネルギーを取り出す技術を持っている」ように表現している部分。彼らのウェブサイトにある、「発電の仕組み」というアニメーションにも水が触媒と反応して水素と酸素に分かれるという表現があり、これも意図的なミスリーディング(「触媒」という言葉を使っている点に注目)。
化学反応を利用した水素電池を発明したのであれば、最初からどうどうと「画期的な電池を発明しました」と言うべき。そこを「水からエネルギーを取り出す」という言葉を使っては投資詐欺と指摘されてもしかたがない。
単純な化学反応を利用して水素を取り出しているので、MEA(膜/電極接合体)に含ませている水と反応して水素を取り出せる物質(恐らく水酸化物になる化学反応を利用)の寿命が来たら、燃料電池システムごと交換っておちではないでしょうか。その辺の所を記者さんには質問してほしいですね。
Posted by: ino | 2008.06.19 at 04:08
リンクされている日経BPの記事には、少なくとも私が時点では金属との化学反応を使うと明記してあり、永久機関をにおわせる記述はありません。「反応が終了すれば,水素の発生も発電もストップする。」とも書いてあります。(あまり分かりやすい書き方ではありませんが、金属が全て反応し終わったら、の意味でしょう。)
「水と空気で発電」という表現に語弊があるのは間違いありませんが、「子供だまし」「詐欺」の指摘は当たらないのではないでしょうか。
Posted by: さすけ | 2008.06.19 at 04:26
すみません、「少なくとも私が見た時点では」の間違いでした。
Posted by: さすけ | 2008.06.19 at 04:27
「続報」ってはっきり書いてあるじゃん。
Posted by: 通りすがり | 2008.06.19 at 06:43
たしかに、記事のタイトルを見たときは、あれ? と思いました。しかし、少なくともその時点で記事中にナトリウム等を使う、という記述があったので、「水素の貯蔵法」の提案であろうと納得しました。水素の貯蔵(発生)にアルミニウムと水を使う発表も最近見た記憶があります。燃料電池車の燃料タンクとして、超高圧の水素タンクを使わなくても、金属ナトリウムタンクが使えるじゃないか、という話かと。
ただ、タイトル等の表現にはミスリードを狙う意図があったのかもしれません。
Posted by: machi | 2008.06.19 at 07:07
結局、日経BPによる釣りですか?(^ー^;
それにしても、昨今の投機マネーや産油国によって蹂躙されている原油穀物高の相場テロにはウンザリなので、さっさと電池自動車の時代になって欲しいものです!!!
Posted by: eakas | 2008.06.19 at 12:01
これどう考えても詐欺ですよね。科学的に見ても彼らの行動を見ても詐欺。
私が「日経BPは詐欺の片棒を担ぐな」とコメントしたら消されましたよ。
メーカーが欠陥品を作ったら下手すりゃ訴えられて刑務所へ送られるのに、
マスコミはねつ造や誤報をしても罰せられないから調子に乗り過ぎ。
何が表現の自由だか。無責任すぎる。
Posted by: kaoru | 2008.06.19 at 14:14
【追記】を読んでジェネパックスのウェブサイトを見ましたが、こちらは確かにひどいですね。
ただ、「日経BPが永久機関の話にだまされ」ているわけではないでしょうし、日経の記事そのものには問題はないと思います。「こんな詐欺まがいの宣伝をしている会社のことを記事にするな」という指摘なら全面的に賛成です。
Posted by: さすけ | 2008.06.20 at 01:44
僕も、日経BPの記事(特に「続報」でない方)は問題あると思います。一次電池ならそうはっきり書けばよいのに、この記事では、冒頭に「燃料極に水を,空気極に空気を供給するだけで発電できることから,CO2を排出しない。」とはっきり書いている。
科学に詳しい人間は別として、一般人は、これを見て誤解する人がほとんどだろう。日経BPの記事のあり方が問われていると思う。
Posted by: komo | 2008.06.20 at 02:38
なんか中島さんの主張に違和感があります。記事の本論と追記で言っていることがちょっと違っているような。日経BPの記事が詐欺の主張をそのまま載せているから問題だと本文で言っているのに,追記ではそれがジェネパックスの主張が問題であるということにすり替わっている。あの記事を冷静に見ると,だまされてそのまま載せているようには見えません(金属なんとかが入っていると書いているので)が,もしやそこを見落としていたので主張を変えたのでは?
あの会社が詐欺まがいであることには同意ですけど。
Posted by: なんか変だな | 2008.06.20 at 08:49
はじめまして。アメリカベンチャーマニアから一言。
これが日本の詐欺ベンチャーとそれを評価できないマスコミの姿です。
アメリカのkpcbが投資した、バッテリーカーメーカーTH!NK
http://www.think.no/think/content/view/full/483
との違いです。
Posted by: 荒井裕之 | 2008.06.23 at 00:16
>まあ、どんな科学の法則でも絶対に覆せないわけではないのだが(ニュートン力学に対する相対性理論が良い例)
いやいやいや・・・。
覆されてないし。
こういう書き方するから似非科学にひっかかる人が出てくるんでしょ。
Posted by: cake | 2008.06.23 at 05:27
同社の大株主は某上場企業2社であり、
同社の社長は某上場企業の元取締役。
株価操縦を狙ったと勘ぐられても仕方ないでしょう。
以前にも無料で携帯電話を掛けられるシステムに絡み、
同じような構図がありました。
こちらは立件されています。
Posted by: tech | 2008.06.24 at 07:38
日経BBのインタビューでは、金属化合物の反応でエネルギーを取得するのを社長が”告白”しましたが
それを読まれるとミスリーディングしてもらえないので会社のリンクは、社長のインタビューのある記事だけどリンクが消されました。
http://www.nikkeibp.co.jp/news/biz08q2/575019/?bzb_pt=0
8月の上旬までは上記のページにリンクがあった。
Posted by: 通りすがり | 2008.08.29 at 00:33
Oh, its great!
Posted by: Online poker | 2009.02.01 at 14:28