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ビル・ゲイツの引退と「ソフトウェア・ビジネスの興亡」と

 シアトルでの先週の一番の話題は、やはりビル・ゲイツの引退。すでに一年前から予告されてたと言え、シアトルの経済発展にこれだけ貢献したマイクロソフトを作った男だけに、メディアは大騒ぎだ。

 ビル・ゲイツが成し遂げたことの偉大さを最も顕著に表すのは、「Fortune Favors the Bold(邦題:知識資本主義←とても良いビジネス書なので一読をお薦めする)」の中の次の一文。

 Bill Gates stands as the symbol of this new era. For all of human history the richest person in the world has owned natural resources - land, gold, oil. Bill Gates owns no land, no gold, and no oil. Owning neither factories or equipment, he is not a capitalist in the old-fashioned sense. He has become the richest person in the world by controlling a knowledge process. As such he marks our fundamental shift to a knowledge-based economy. For the first time in human history it is possible to be fabulously rich by controlling knowledge (p.30-31).

 つまり、ビル・ゲイツは「人類の歴史始まって以来初めて、土地・金・石油などの天然資源ではなく、知的プロセスをコントロールすることより世界一の金持ちになった」という点で特異な存在だというのだ。

 確かに考えてみると、ビル・ゲイツの一番の功績はWindowsやOfficeを作ったことなんかではなく、それまではハードウェアのおまけ同然に配布されていたソフトウェアがビジネスになるということを身を持って証明したこと。それゆえに「帝国」とまで呼ばれるまでにマイクロソフトを大きくすることが出来たし、世界一の金持ちにもなれたのだ。

 しかし、そのビル・ゲイツの引退する2008年の状況を見ると、オープンソースの波は主流になりつつあるし、Googleは明らかに「パケージ・ソフトウェアの販売ビジネス」を破壊に来ている。純粋なソフトウェア・ビジネスの将来は必ずしも明るくない。

 90年代中頃のネットスケープの誕生から始まった「パッケージ・ソフトウェア・ビジネスの終焉」。それがとうとう最終章に入ろうという段階でのビル・ゲイツの引退はなんとも象徴的だ。

Comments

syaopairon

得意→特異
では?

moripc

そうですねぇ。ソフトウェアパッケージビジネスの終焉ですかぁ。彼の成功は、その時代時代でいろんな野心ある人に勇気を与えてきましたね。私もその1人だっただなぁと(既に過去形)。これからソフトウェア産業はどこへいくのでしょうか?一概にソリューションとか言われている分野もありますが、それはどの産業、業種でも存在することなので、ソフトウェアビジネス自体が持つ固有のものではないような気がします。パッケージが売れないという時代に入り、ソフトウェアの流通はどうなっていくのでしょうかね。通信を背景にしたロケーションフリーなユーザービリティ等いろいろ取りざたされていますが、まだはっきりとしたモノはみえて来ないように私には思えます。

yasuo

1つの時代が終わったという象徴的な出来事ですね。パッケージビジネスは終わるかもしれませんが、ネット経由で提供されるサービスはソフトウエアそのものでもあり、単に流通経路が変わっただけと見てもいいかもしれません。ソフトウエアの時代はまだまだ続きそうです。

DQN

天然資源の以外で金持ちになった人はビルゲイツ以前にもいっぱいいたと思います。
銀行・証券、新聞・出版、テレビ・映画・音楽・ゲーム産業・・・

知的資本はビルゲイツに始まったことではないのでは?
ウォーレン・バフェットの証券投資も知識プロセスと言えます。

さる

研究室のDEC-PDP-11みたいなミニコンや汎用大型機から、時代はマイクロ・プロセサ・コンピューティングへと移り、更にネットワークの時代へ。ネットワークとヒトクチに言っても、現在のTCP/IPのほかにX.25の時代だってあった。OS/2との決別や分散OS開発の大失敗もあった。マイクロソフトはその間、細かいけれどもいろいろとあったそれらの危機を、ホントにどうにかこうにか切り抜けてきた。その功罪は巷間さまざま取り沙汰されるけれど、高々52・3歳のこれまでのウィリアム・ゲイツの人生は、決断と不退転の覚悟の、まことに面白い人生であったろうと想像する。

(功罪はともあれ)明日死んでも悔いはない、面白かった、と負け惜しみでなく言い切れる、彼のもつ財力や影響力でなくそういう「悔い無し」な部分を立派だとすら思う。

今後はオープン・ソースの普及にもチカラを貸してください。

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