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iPhoneアプリ奮闘記:宣伝用ビデオ作成中

 iPhoneアプリの開発もようやく終了し、後は一人でも多くの人が使ってくれることを祈るのみ。前にも述べたように、「直球ど真ん中」のSNSアプリなので、競争相手もたくさんいるといるはず。私なりにできるかぎりのおもてなしを提供しているつもりなのでそこでは誰にも負けないつもりだが、そもそも試してもらわなければ話にならない。

 そこで、Youtubeにアップロードするための宣伝用ビデオを作成中。それもエミュレーター上で動作するアプリをシェアウェアでQuicktimeムービーに変換したあと、iMovieで編集した上でナレーションを付けるという、ものすごく家内工業的なところがなんともベンチャー企業らしくて楽しい。

 しかし、今回のiPhone向けのapp storeのオープン。秘密保持契約があるためあまり表には出て来ないが、水面下はまるで西部開拓時代のゴールドラッシュを思わせる雰囲気ムンムン。オープンと同時に軽く千を超えるアプリが出てもおかしくない状況。私自身、この業界に入って30年近くになるが、ここまで熱くなれたのは初めてかも知れない。


書評:Fortune Favors the BOLD(知識資本主義)

 少し前のエントリーでも引用したが、Lester Thurowの「Fortun Favors The BOLD (邦訳:知識資本主義←ちなみに、この邦題はすごくセンスが悪い)」は非常に面白い。世界中のさまさまな経済の動きが分かりやすく解説してある本だが、特に目を引くのは日本の「失われた10年」に関する部分。

 驚くべきなのは、日本がバブルの崩壊で経験したメルトダウンそのものではない。どの国であれバブルの後には遅かれ早かれメルトダウンを経験するものだ。特筆すべきは、日本にバブル崩壊が残したさまざまな問題をさっさときれいにする能力が欠如している点にある

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 バブル崩壊の結果、日本の不動産ローンを抱えている人の40%は借金の残高の方がその担保である持ち家の価格より高いという債務超過の状態に陥っている。...米国であれば、そんな人はさっさと持ち家の鍵を銀行に渡して新しい人生をやり直すことができるが、日本ではそうは行かない。...日本では、実質的にその人の生涯賃金が(場合によってはその人の子供の生涯賃金までが)担保になってしまっているのだ。

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 債務超過に陥っている企業を倒産させる代わりに、日本政府はそんな会社の株式を買い支えるという行動に出たが、それは何の役にも立たなかった。...結局のところ、政府による株の購入は、そういった企業の株を持っていた人の損失の補填に国民の税金を費やす、ということなっただけだ。

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 バブルを防止することは不可能だ。バブルの崩壊を防止することも不可能だ。ただ一つだけ出来ることは、バブル崩壊後の(不良債権などの)問題点をすばやくきれいにすることだけだ。政治家の能力が本当に問われるのはまさなそんな時。日本の政府はまさにそのテストに失敗してしまったのだ。その結果、国際社会における日本政府の信用は地に落ちた。

 外から見ていてなんとなく感じていたことだが、ここまで単刀直入に言ってくれる人は少ない。


iPhoneアプリ:RC2

Blog

 週末の間、RC1(出荷候補No.1)をさまざまな環境でテストしてみたのだが、電波の弱いところではネットワークのスピードが極端に遅くなったり、とぎれとぎれになるため、妙に通信に時間がかかってしまい、通信を終了する前にiPhoneがスリープモードに入ってしまうという現象を発見。

 ちゃんとリトライの仕組みがあるので、データを失ったりはしないのだが、ユーザーから見ると、自分がした変更がリアルタイムに友達のiPhoneに反映されないというのはバグに等しい。

 出荷寸前にはしたくないたぐいの規模の変更をほどこす必要があるため、しばらく躊躇していたが、「やるしかないんじゃない」という妻の言葉に励まされて、思い切って変更。この変更をほどこしたものをRC2として再度テストをしなければならないのだが、仕方がない。

 しかし、今回のアプリは、開発期間(3ヶ月弱)、コードの規模感(一万行弱)ともに、ちょうど95年の終わりごろから年明けにかけてIE3.0を作っていた時にとても良く似ている。唯一の違いは、私自身がプログラムマネージャ、UIデザイナー、テスター、リリースマネージャのすべてをこなさなければならないこと。いくらアジャイルな開発が好きとは言え、この規模のアプリ+サービスを増井君と私のたった二人というのは少々厳しかったかも。

 特に「細かなところまでキチンと目を光らせて、着実に仕事をする」ことがあまり得意でない私には、リリースマネージャの役目は少々辛い。せっかくアプリは完成したのに、iTuneストアにアップロードするときのちょっとした手違いでストアオープン初日のリリースを逃したりしたら目も当てられないぞ、と。

 しかし、かといって人を増やし始めると、それなりのオーバーヘッドが増え始めて、「2人で3ヶ月」で出来たことがいつの間にか「8人で9ヶ月」とかになってしまうから不思議だ。このあたりがまさに「ソフトウェア・ビジネス」の難しさ。


iPhoneとハイブリッド型ウェブ・アプリケーションの話

Rc1

 デザイナーからもアイコンが届き、なんとかRC1(リリース・キャンディデート#1、つまり出荷版候補のNo.1)を達成。木曜日に追加したユーザーインターフェイスの改良が突然悪さをし始め、冷や汗ものだったが、なんとか原因を解明して解決。やはりあまり出荷寸前に機能追加をするもではないと少し反省。後は最終テストを経て出荷するばかりだ。

 二年以上前に自分で書いた「ユーザー参加型コンテンツビジネスのまとめ」を久しぶりに読み直しりしながらリリースに備える。あとはユーザーにちゃんと価値を認めてもらうことを祈るばかりだが、これだけはリリースしてみないと分からない。私なりに出来る限りシンプルに分かりやすく作ったつもりだが、だからといってすべてのユーザーが理解してくれるとは限らない。本来ならβ版をリリースしてユーザーからのフィードバックを受けながら作るべきなのだが、そうも行かなかったので、ある意味でこれがβ版。今の時代、「β版=未完成なもの」ではなく「β版=ユーザーの声を聞きながら常に改良するつもりのもの」と解釈するのが良いのか、と。

 ちなみに、「Microsoft Office」に代表されるリッチ・クライアントから、ブラウザーで閲覧可能なウェブ・アプリケーションへのシフトが急速に起こっている中で、このiPhone SDKはとても面白い存在だ。今回私と増井君が作っている「専用クライアントを持ったウェブ・サービス」は、単なるリッチ・クライアントでもなく、純粋なウェブ・アプリケーションでもない、車で言えばハイブリッドのようなウェブ・アプリケーションだが、それも本格的な非同期通信と卓越した開発環境があるからこそ可能になったもの。

 AdobeがAIRで狙っているのもまさにこのあたりだが、そのカテゴリーを先に開拓するのは実はiPhoneではないか、と感じている今日この頃である。


iPhoneアプリ開発:ラストスパートは十倍界王拳だ!

 間近に迫ったapp storeのオープンに向けて全力でラストスパート中。SNSとしての機能はかなり前から一通りそろっているのだが、いざリリースするとなると「こうした方が使いやすい」「ここはこうした方が見栄えが良い」と細かなことが気になってくるのでいつまでたっても終わる気がしない。

 そうは言ってもアップルは待ってくれないので、ここは踏ん張りどころ。最後の最後に追加することになったアイコンのデザインが外注先からまだ上がって来ないのが気がかりだが、独立記念日の休日を返上して働いてくれているデザイナーさんたちを信頼して待つしかない。

 プロジェクトの途中で色々と機能追加をしたために「当初の見積もりよりも高く請求させてほしい」と言い出したデザイン会社に対し、「請求書は当初の見積もり通りにして欲しい。そちらが要求している差額分は、満足できる仕事をこちらが要求する期間内にしてくれた時にボーナスとして払う」と交渉しておいたのでそれほど不安はない。

 しかし、今回のiPhoneアプリだが、私の得意な非同期通信を思いっきり駆使しているので、そこは期待していただきたい。ユーザーを待たせないための工夫だけでなく、電波状況が不安定な環境でも安心して自由に追加・変更・消去が出来るところがミソ。途中で電波が切れてしまったり、電話がかかってきてアプリが強制終了されてしまうような環境でも、ユーザーの入力したデータは決して失わない。それがBig Canvasのおもてなし。

 などと色々と言ったところで、結局のところは技術のことに興味なんか全くない普通のユーザーに喜んで使ってもらわなければただの床屋の満足なので、そこが難しい。あと一踏ん張り、妥協せずに頑張るぞ、と。

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