Google Chromeに関してひとこと
2008.09.02
今回Googleが発表したウェブ・ブラウザー、Google Chromeは、ひと言で言えば、「安定度・安全度を高めるために、それぞれのタブを別プロセスで走らせるタブ・ブラウザー」である。
95年にIE3.0を設計した時には、タブのコンセプトも存在せず、セキュリティの問題もそれほど強く意識していなかったので、ウィンドウごとに1スレッドを割り当てたマルチ・スレッドを選択した訳だが、ここまでウェブ・アプリケーションが重要になってくると、マルチ・プロセスに移行するのは当然。特定のページ上でのJavaScriptの挙動がおかしくなったからと言って、ブラウザーすべてが落ちてしまう今までの設計が異常。
一つのウィンドウ下で管理させるそれぞれのタブにプロセスを割り当てる、一般的に一つのウィンドウに一つのプロセスやスレッドを割り当てる通常のGUIアプリケーションとは異なるが、ユーザー・モデルとリソース管理は別物ということを意識すれば、当然との流れ言えば当然、典型的な「コロンブスの卵(=誰かがやれば当たり前のことになる)」とも言える(注:IE8はすでにそうしている、という指摘あり)。
せっかくここまでやるのであれば、同じタブ内でドメインを移動した時にもプロセスを切り替えるべきだと思うんだが、いかがだろうか。クロスドメインのセキュリティを徹底的に強化した先はそこだと思うんだが。
URLバーをタブの下に持ってくるというのも、ユーザーモデルをUIにキチンと反映させることを考えれば当然と言えば当然。既存のブラウザーがインクリメンタルに進化した結果たどりついたタブ・ブラウザーという形を、ユーザーモデルからキチンと見直した上でURLバーをタブの下に持って来た点は評価できる(注:Operaはすでにそうだ、という指摘あり)。
Googleがレンダリング・エンジンにWebKitを採用する・独自の高速JavaScriptエンジンを作っているらしい、という話は以前から業界の人々には知られていたので、目新しい話ではないが、コンパチビリティで一番苦労する作業をAppleと協力して、比較的純粋なエンジニアリングで勝負できるJavaScript VMは自分で作るあたりが、GoogleらしいといえばGoogleらしい。
ターゲットユーザーを考えれば、短期的にマーケットシェアを失うのは、IEではなくFirefoxだろう。私の場合は、すでにWebkitベースのSafariをメインで使っているので、OS-X版さえ出してくれれば乗り換えは簡単だ。当然、長期的にはIEにも影響を及ぼすだろうけど、結局は「最初から入っていたブラウザー」を使う人が多いことを考えれば、Googleがすべきことは、Dellなどのパソコンメーカーを説得して、デフォールトのブラウザーにしてもらうこと。
Googleにとって、戦略的にもっとも大きな意味を持つのは、これによりGearsの普及が大きく進むこと。Gearsの普及が進むことがGoogleにとってどうして重要なのかに関しては、長くなるので別の機会に。
Chromeは、Android用のインターフェイスを作るために用意されたと考えて良いのでしょうか? そう考えるとタブ毎に別プロセスというのは至極当然。
それよりMozillaに出資しながら、Webkitを使ったのは、なぜなんでしょうか?
Web屋さんは、また動作確認の必要なタスクが増えてかわいそうです。
Posted by: しろ | 2008.09.02 at 07:27
なに!コロンブスの卵が欲しいとな!?
つ IE8
Posted by: 台ら端子 | 2008.09.02 at 08:09
OperaはURLバーが下です。
実は今まで気がついていませんでした……。
他のブラウザを使うときの違和感はこのせいだったのか!
ごちゃごちゃいろいろあって邪魔だなと思ってはいたのですが、
その理由は、ボタン等の絶対量が多すぎることもさることながら、
よく目が行くURLバーとメインのウィンドウの間に
使用頻度の低い物があるからなのではないかと思います。
URLがそれぞれのタブに属する物だからタブの下に表示されるべきという意味では、
まあ理屈ではそうですが、実用上はそう変わらない気がします。
Posted by: TF | 2008.09.02 at 09:41
さっそく入れてみましたが、これはほんとウェブプリ実行環境ですね。
ブラウザとしてみると機能不足な部分が面がありますが、
そのシンプルさがかえってプラットフォームらしさを感じさせます。
IE,Firefox,Operaと競合すると言うより、Mozilla PrismやAdobe AIRと競合しそうな気がします。
Posted by: あばばばば | 2008.09.02 at 13:13
さっそく入れてみましたが…私は3つボタンマウスを使用しているのですが、IE等は真ん中クリックで画面がスクロールしますが、Chromeはスクロールしません…それ以外はブラウザとしてのUIは良いと思います
Posted by: やすてる | 2008.09.02 at 20:52
ウィンドウごとに1スレッドを割り当てたマルチ・スレッドだから、
ウィンドウ間のタブシート移動も可能なんでしょうけれど、しかもこころなしか動きにぬるっつるっと感が。
検索サイト自身が提供するプラウザですから、そのデスクトップ上でのタブシートのタブブックマークの
有象無象・整理整頓結果をぐぐるサーバーに見られ、お得意のpagerankテクノロジで解析。
ポジティブ妄想すると、
Step1、ストリートビューちっくに、時系列お気に入り分析されて、次の見るべき頁がタブで自動推奨されるように
(広告的なペイド頁のインサーションも)
Step2、みるべき頁推奨がさらに汎用性をまし、現在のウィンドウベースのネットの頁レイアウト概念がくずれ、
『Mozilla PrismやAdobe AIRと競合しそうな気がします。』的な概念伝達優先の・・・
よりオートマティックに結果がすべて。。
広告的(放送)と情報収受(通信)の相違・境目が、送り手と受けて同時になくなりそう。いいことですよね。
Posted by: Dub | 2008.09.03 at 04:38
>同じタブ内でドメインを移動した時にもプロセスを切り替えるべきだと思うんだが、いかがだろうか。
ドキュメントによれば、そうなっているそうです。
http://dev.chromium.org/developers/design-documents/process-models
"By default, Chromium creates a rendering process for each instance of a site the user visits."
Posted by: morita | 2008.09.03 at 05:48
よりよいUIやこのサイトでいうところの「おもてなし」はもちろん歓迎なのですが、フリーのアプリをインストールする際に、全て目を通す(もちろんそうすべきではあるのですが)人はほとんどいないであろう利用規約に、このような条文があるとやはり使用をためらってしまいます。
By submitting, posting or displaying the content you give Google a perpetual, irrevocable, worldwide, royalty-free, and non-exclusive license to reproduce, adapt, modify, translate, publish, publicly perform, publicly display and distribute any Content which you submit, post or display on or through, the Services.
mixiでもこの手の条件が問題となったことがありましたが、供給する側の万が一の時の保険的な考え方なんでしょうか。
Posted by: taki | 2008.09.04 at 20:57
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2008/09/05/20767.html
その規約は変更されるそうです。どうみたってウェブコンテンツ向けの規約で、ネイティブアプリケーションの規約じゃないですし。
ウェブのサービス側がそういう規約を作る事は問題ないと思います。サービスを開始してから「そんなの許可してない」といって作り直しになったら損ですから。
Posted by: yukichi | 2008.09.04 at 22:32
こうなってくると、Windowsのタスクバーは何のためにあるのか分からなくなりますね。
Posted by: テテス | 2008.09.08 at 00:47
エントリーへの感想。
中嶋さんはやはり"この"分野の専門家なんだ。
だから他のエントリーに比べて愛想がなくとも本質的なことをしゃべってるんだ。
Posted by: ichiro | 2008.09.08 at 19:11
Google Chrome は 確かに 良いんですけど
なんで Google tool bar を 入れることができるようにしてないんでしょうか?
はなはだ不満です。
Posted by: ampontan | 2009.07.15 at 18:12