AppleをAppleにしているもの
Appleが打つべき次の一手

Appleの将来について考えてみる

 昨日のエントリーで、SWOT analysisという話をしたが、SWOTはStrength(強み)、Weakness(弱み)、Opportunity(ビジネスを延ばす機会)、Threat(ビジネスをおびやかすもの)の頭文字をとったもの。既にStrengthとWeaknessに関しては書いたので、今日はOpportunityとThreatに関して。


Opportunity

 この業界をとりまく環境でAppleにとって最も好ましい現象は、若い人たちのライフスタイルの変化。パソコンや携帯を使いこなし、CDやDVDはもう買わずにiTunes storeや携帯サイトから音楽をダウンロードし、TVの前に座っているよりもパソコンや携帯をいじっている方がはるかに長いという「デジタル・コンテンツ時代世代」が急速に増えていること。

 この手の不連続な変化のことをパラダイム・シフトと呼ぶが、これこそがアップルにとって「家電の主役交代」を起こす大チャンスである。家電業界での現在の主役はPanasonic・Sony・Sumsungなどだが、彼らのビジネスはこのパラダイム・シフト前のライフスタイルに会わせたもの。パナソニックの開発陣がせっかくネットに繋がるテレビを作っても、「ネットに繋がるなんてよけいなことを言うと団塊の世代の人たちは買ってくれなくなる」という販売網と顧客ベースに立脚しているビジネスをしている限り、パナソニックのテレビのネットへの接続率は低迷したままだ。アクトビラが成功すると思えないのも同じ理由だ。

 もう一つのOpportunityはハードと販売チャンネルがばらばらなために世界規模のコンテンツ・ビジネスを展開することが難しくなってしまい成長が止まっている携帯コンテンツ業界の現状iPhoneで携帯業界に大きな風穴を空ける可能性。iPhoneのマーケットシェアは携帯電話全体で見れば高々1%だが、アプリケーションのダウンロード数という意味で言えば、既にJavaアプリすべてを会わせた数字を上回っているというデータもある(参照←これは米国のケース)。既に「iPhoneが売れているからアプリを作る面白いアプリが沢山あるからiPhoneを買う」というサイクルが始まっており、少なくとも市場規模でSony PSPやNintendo DSと並べるプラットフォームになることは目に見えている。

Threats

 Threatsの一つ目はnetbook。Macのビジネスが着実に伸びている理由の一つはiPod/iPhoneの成功によるブランド・イメージによるものだが、注目すべきは「主にネット・写真・音楽をするんだから、Windowsアプリなんて不要」というユーザーが増えているからこそ、Macへの乗り換えがスムーズに行われている点。そんなユーザーにとっては、「格好悪いWindowsマシンよりはクールなMacBook」はコストパフォーマンスをちゃんと考慮しても魅力的だ。そこに穴馬的な存在で表れたのが、netbookと呼ばれる$200-$300の超小型で低価格のミニノートブック。容量も処理能力も高くないが「主にネット・写真・音楽をするんだから、Windowsアプリなんて不要」というユーザーの一部がこちらに流れる可能性もあるし、それが間接的にMacBookの値段に圧力をかける可能性は十分にある。

 もうひとつのThreatsはandroid。スマートフォンだけでなくnetbookにも使うことが考慮されているようだが、「ハードやソフトでは儲けなくて良い」というビジネスモデルのGoogleがOSを提供しはじめた、というのは少しやっかいだ。Androidの存在は、ただでさえ低価格化が進んでいる携帯電話やパソコンの値段にさらに下降圧力をかけることになるので、その値段競争にまきこまれないようにうまく立ち回って今の粗利益率を保つことがAppleにとってはとても大切だ。

次の一手は?

 ではこのSWOT Analysisの結果、私がたどりついた「アップルが打つべき次の一手」はなんだろうか。せっかくなので、「宿題」としてこのエントリーではまだ書かないで置こうと思う。ぜひともコメント欄なりトラックバックなりでの活発な議論をしていただきたい。

Comments

mas.

習ったと思いますが、機会と脅威は、企業の外的要因をあげます。
脅威はまだしも、機会に挙がっているのはApple側の話なので、不適切。
デジタル世代の台頭は外的要因にあげがちですが、特にAppleにとってはコントローラブルというと言い過ぎですが、そこを狙って活動しているので、受け身の「機会」ではなく、ライフスタイルに影響力があるという「強み」に分類すべきでしょう。
iPhoneの話は、ひねって考えなくても強みに分類すべき。

Seiji

一番の機会はマイクロソフトがビスタの立ち上げでもたついたことかも。
開発が遅れたり、要求されるリソースが大きすぎたり、見た目を変えすぎてユーザーの経験値がリセットされたり。
特に見た目の問題だとXPユーザーがビスタとOSXを見比べたらOSXの方が親しみを感じたりして(^_^;)

koji kumagai

iPhoneはMacbookやiMacに対してのThreatでもあると思っています。

Appleが得意なのはエンターテイメントというか個人向けコンピューティング環境なわけでその環境ならiPhoneで十分と言うのが一番インパクト大かなと。

まあ、iPhone+AppleTVが最強のエンターテイメントプラットフォームとして君臨して、iMacとMacbookはエッジな感じのPCとして損さえださなければOK(主要プラットフォームとしては考えない)という流れになるのかなと思います。

sawa

いつも楽しく拝見しております。

次にすべきことは、Apple TV の普及促進ではないでしょうか。個人的には任天堂が好きなので、両者が協力する形でゲーム機のstb化を進めて欲しいと思っております。wiiでは成し遂げれてない感もありますし。

僕の場合、わざわざテレビで見る必要があるのか分からないフォトやyoutubeのためにApple TV を買う気はしないけど、ゲーム機と言われれば買ってしまうと思います。iTunes storeというソフトを売り買いする仕組みがあるなら尚更。

ネットを楽しむための敷居が少しでも低くなればいいですね。

fukuyas

Apple社への投資暦14年になるものです。
iPhone後の成長性が今のところよく見えていないのでこの議論の展開は参考にさせてください。
自分なりに考えてみた案は:

1. Apple純正Skypeの提供(iChat AV for iPhone)
 これでキャリアは土管業種になる。国際通話もタダに。
 ただし政治的問題があるため次世代通信規格が載る3年後程度を想定。
2. AppStoreから生まれたキラーアプリをAppleがbuyoutする。
 WindowsでのOfficeのようにiPhoneにバンドル。
 みなそれを使うためにiPhoneを購入する的な物。
3. Apple TV強化
 AppStoreのアプリ&ゲームをTVでも動作させる。コントローラはiPhone/iPod touchか?
4. Netbook対抗のため、9inch程度のtouchデバイスを投入する。
 キーボードなしで$700程度。MacアプリもAppStoreアプリも動作可能とする。

【リスク】
JobsはH/Wメーカー志向、クローズドシステム好き、企業利益軽視なところがあるが、このあたりの絶妙なバランスが魅力的な製品とサービスを作り出している節がある。
iPhone+AppStoreが大きなシェアをとった場合、オープン化またはライセンス許諾圧力がかかりこのバランスが崩れないか。
またJobsが重要決定を行わなくなった場合、株主からのより短期利益を求める圧力に屈する可能性がある。
(例えば、iTunes Store/AppStoreからより利益を上げるとか、OSXを外部ライセンスするなど)

http://jbbs.livedoor.jp/business/3356/
http://blog.livedoor.jp/fukuyas/

Chik

いつも楽しく拝見しています。そしてアプリでモバイルアート作って友人にあげたりして、人生楽しませて頂いてます。なんどかコメントしたのですが、消えることが多いのはサファリのせい?今回は残るかな。。?

アップルがこんなディスラプションになるとは誰が想像したでしょう。USではATTとの縛りがありiPhoneの市場拡大に歯止めがかかるでしょうが、iPod Touchの伸びはその分あるかな?

一方世界的にはアップルに追い打ちをかけるべくノキアを含め携帯業界が束になって性能が高い(カメラなど)Touch UI devicesとアプリストアを打ち上げてきます。アーリーアダプター的にはアップルがメジャーになりすぎたら他社製品を使いたいというのもあるでしょう。

iPhone/Pod的には、今後はカラーバリアントなどpersonalization主体のポートフォリオ戦略でASPを下げながらマスに以降してゆき、ボリュームでレベニュー増を目指すのではないでしょうか。サムソンやらにその層をとられるのも癪でしょうし。

そうなると、iPhone Proのようなプレミアムバージョンを出し「ママも持ってるiPhone」イメージを払拭する必要がでてくるでしょう。

ソフト的には、GoogleがSaaSでエクセルなどをウェブ化しています。アップルもその辺を上手くやり、家ではPower Mac、外ではマックエアーかiPodのような体制を完成すべきと思います。最終的にはiPASSやCloudのようなブロードバンドプレイヤーと提携し、me.comユーザーは世界中のホットポイントを使えるようにすべきでしょう。

masamitsu

RSSでいつも最新postをチェックさせてもらって、楽しい刺激を受けています。

iPodの成功にはWindowsOSでiTunesが動くようにしたことが大きい。
「脅威」を「強み」へひきづり込むために、AndroidでもiTunesを利用できるようにする。
そうすると、Androidが新しく広げる顧客層は単なる脅威でなくなり、Appleの強みを発揮する領域の拡大につながる可能性がある。
iPhoneを使う人がMacを買いたくなる(買ってしまう)ように。

Apple製品を好む人はゲームユーザーも多いと感じる。iPhone/iPod touchがゲームデバイスとしての魅力を増しているので、iPhone/iPod touchをドッキングできるゲームステーションを作ってWiiにケンカを売る。
もしくはMacでAppStoreのゲームを動くようにする。

あとはAppleの領域の拡大。

若い層だけではなく、購買力のあるお年寄り層を狙うサービス&デバイス作り。
TV、TV ProgramRecorder(HDD/Blu-Ray Video)。

iPhoneでWirelessな領域を一気に広げたから、大きなアナログ領域である「紙」の置き換えを真剣に狙うかな?
新聞、雑誌、書籍。
いつでもどこでも簡単に安く読める。


maito

いつも楽しく拝見させていただいております。

次の一手として、appleが新しい会社を立ち上げて、netbookを販売する。
appleとしてnetbookをリリースしてしまうと顧客がみんなそちらに流れてしまい、結果的に、今リリースされているmac bookなどを購入する人が減るかなーと思ったので。
(また、ブランドイメージがぼやけてしまいappleにとってはよくないかなとも思いました。)

あと、地デジ対応のapple tvで、iPhoneのようにゲームアプリケーションのダウンロードを行い、テレビ内で遊んだりすることができるという仕様。

次の一手として、革命を起こしてほしいです。
appleを応援してます♪

houten

いつも楽しく拝見しております。

Strength(強み)をもっと強化するのか、「アップルが打つべき次の一手」だと思います。具体的には、コラボだとおもいます。他社と同じコンセプトのnetbook を自ら作るのではなく、例えば、sony vaio type P とアップルがコラボしたらどんな製品が出せるのか。モバイルパソコンの人気機種である、パナソニックのレッツノートをアップルとコラボしたら、あるいはThinkpad シリーズとアップルがコラボしてと、アップル風の製品にしてしまうこと。OS に関しても、MacOS のデザインの良さで、人々を魅了させてしまうことで、その結果、OS シェア拡大につながるのではないだろうか。人気機種とコラボしアップルが作るとこんな風にアレンジしますよというコラボ戦略はどうでしょうか。すでに市場のお墨付きある訳で、デザインが市場の人気を得られないようなリスクも下げることができるとおもいます。

同じ機種で、Windows のOS が好きとかMacOS がCool なんて言えるような製品を出してしまうことで、アップルは世界一すばらしいデザインだと認知させてしまうような大胆な戦略を期待しています。同様に、ipod もいろんなデザインのipod があってもいいのではないだろうか。sony のipod が好きとか、やっぱりアップルの方がいいよ、というようなデザインがすてき=アップルというブランドが広げることができるのではないだろうか。

今のアップルの製品を他社とコラボすることで、ブランドイメージを高めさらに市場を広げる。これが「アップルが打つべき次の一手」だと思います。

Shusuke

いつも楽しく読ませて頂いてます。

次の一手。

とりあえず、iPhoneでFlashが見れるようにしてほしいですね。
PCでインターネットを見てるとあまり意識しないですが、
iPhoneで見ると、青いダイアモンドマーク(Flashは見れないよマーク)
が表示されて、いかにFlashが普及しているかを思い知らされます。

Appleの仕事ではないかもしれないですが。。

KUWA

いつも参考にさせていただいております。
ちょうど、AppleとSonyの携帯音楽プレーヤービジネスについて、多面市場モデルを基に分析をしている所です。

Appleはこれまで、iTunes Storeをプラットフォームとするエコシステムを絶妙なバランスで作り上げて来たといえます。製品の完成度が低い時期は、ジョブス総帥の言うことなら何でも聴いてくれるユーザーを相手にし、Windowsへとユーザーベースを拡大すると、Musicストアを開設して総帥のメッセージだけでは納得できないユーザーにも分かりやすいベネフィットを提示。
Music Storeがグローバル展開し、音楽レーベルにとっても魅力的な市場としてiPodユーザー層をより拡大しなければいけなくなると、mini(後のnano)やshuffleを投入しました。
さらに、コンピューティングがどんどんモバイル環境に進出してきた段階で、iPhoneやiPod Touchを導入し、持ち歩くべきPC機能を切り出しそのエコシステムにアプリケーションソフトという新しい市場をくわえました。

【短期】
やはり、直近ではこのアプリケーションソフトのエコシステムを健全に発展させるための施策が今以上に必要だと思います。

【中期】
そして、次の手としてはiPoneによって、モバイルコンピューティングはなにもデスクトップPCが軽くなって持ち運べるようになったものでは無いことが明確になってきた中、大きなPC、中くらいのPC、持ち運べるPC、スマートフォンではない、モバイル機器の再構成が必要だと考えています。言われているように、Apple版キンドルも面白いかもしれません。

【要検討】
Apple TVについては、重点的な戦略のスコープに入れるべきかどうか、とりあえず検討の余地があると思います。現在のところ明らかにAppleのビジネスの中核はモバイルエンタテイメントにあります。
その為に必要な何かを提供するものなら積極的に開発投資すべきですが、今のところはお勉強程度に抱えている程度で良いのではないでしょうか?

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