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iPhoneに関するアンケート調査結果

 昨日のアンケート調査に対してたくさんの人からの回答がいただけたので(現時点で708人)、さっそく結果を発表したいと思う。

 まず最初の質問は、「iPhoneを持っていない理由を教えてください」だが(注:このアンケートはiPhoneを持っていない人たちにたいするアンケート)、結果は以下のように「ソフトバンクでしか使えないから」が大半という結果になった。予想外に低かったのが「今持っている携帯で満足している」と答えた人。これを見る限りでは「まだ買い替えの時期じゃないから」と合わせると80%もの人がiPhoneの潜在ユーザーということになる。NTT DoCoMoがiPhoneを採用することになれば、iPhoneの普及率が一気に伸びる事はほぼ間違いなさそうである。

IPhone1

 次の質問は「iPhoneをさわったことがありますか」という質問。興味深いのはこの「ちょっとだけある」というユーザーの多さ。他の携帯の数字がないので比較しようがないが、友達が持っていたりすると「ちょっとさわらせて」となるのがiPhoneの強みなんだと思う。

IPhone2

 三番目の質問は、「iPhoneのことをどう思いますか」というこのアンケートの核になる質問。このブログの読者という多少偏った層であるとは言え、「すごく欲しい」と感じている人が39%というのは驚異的な数字だ。最初の質問への回答と組み合わせれば、相関グラフを作るまでもなく「すごく欲しいけどソフトバンクだからiPhoneを持ちたくても持てない」というユーザーがかなり多い事が分かる。

 一つ注目すべきは「私には難しそう」と感じている人が極端に少ないこと。しばしば最新の技術を集めたデバイスが「私には難しすぎて使えない」と敬遠される中で、「最新の技術を集めているからこそ使いやすい」というポジショニングをとることに成功したiPhoneはある意味で特異な存在である。

IPhone3

 四つ目の質問は、「iPhoneを持っている人のことをどう思うか」というもの。「新しい物好きが持つiPhone」というイメージが一番強いのは当然だが、「うらやましい」と感じている人たちが29%もいるのは注目に値する。

IPhone4
 最後は、「iPhoneの一番良いところはどこだと思いますか」という質問。私は「使いやすそう」がトップにくると予想していたのだが、その予想に反して「アプリがたくさんあるから」が34%でトップ。興味深いのは「他の携帯と違うからこそiPhoneが魅力的」と感じている人たちが19%もいること。あえてマスを取りに行かず「こだわる人だけが持っているアップル製品」という商品戦略の効果がここにもしっかりと現れている。

IPhone5

 ちなみに、Google Docsを使って「ちゃちゃっ」と作った集計フォームでこれだけ興味深いデータを集めることができるのはとてもうれしい。フォームからの入力データがリアルタイムでスプレッドシートに反映されて行くところは見ているだけでも楽しい。これからも活用させていただこうと思う(ただし、データをエクセルファイルとしてExportとした時に漢字が文字化けするバグだけは直して欲しい→Googleの人)。

Twitterの有効な使い方、その1

Twitter_fail_whale  ブログに関しては、Early Adaptorとして早くから有効に使わせていただいている私だが(このブログを始めたのは2004年、その前にも一つ別のところにブログを書いていた)、Twitterに関しては「どうもいまいちピンと来ない」というのが正直な感想。

 今年に入ってからメディアに異常なほどにもてはやされていたTwitterも、「Twitter is a Fad - Business Week」、「セカンドライフとTwitter」など、「Twitterは一時的な熱狂にすぎない。セカンドライフと同じ道をたどるんじゃないか」という冷めた意見も多く見られるようになった。

 私自身もPhotoShareからの連携で写真へのリンクを自動投稿する以外はほとんどアクセスしなくなってしまっていたのだが、今回、開発者向けのあるウェブサービスをリリースすることになり、Twitterが有効に使えるケースがあることに気がついたので備忘録も兼ねてここに書いておく。

 やりたいことはいたって典型的。まずは「プライベート・ベータ」版のサービスを"invitation only"で提供し、ある程度テストをしながらマーケティングをして期待感を高めてから正式なサービスをローンチすること。

 こんな時に悩むのは、このプライベート・ベータ期間中にサイトに訪れて来てくれた人たちをいかに正式番のリリースの際に呼び戻してユーザーとして確保するか、という点。

 今までは、サイトにメアドの登録ページを用意しておき、正式版のアナウンスを登録してもらったメアドに送るというのが一般的だったが、メールでの通知はスパム扱いされる可能性が高いし、メアドを登録するというだけで敷居が高くなってしまい、ユーザーを逃してしまう。

 そこで有効に使えるのがTwitter。トップページに「正式版のリリースはTwitterでアナウンスするので、○○○をフォローしてね」と書いておくだけのことだ。

 サービス側にとってはこの仕組みを提供するコストはほとんどゼロだし(そこがセカンドライフとの大きな違い)、通知がスパム扱いされる心配もない。ユーザー側にとってもメアドの登録と違って敷居がずっと低い。特に、今回の場合はTwitterの利用率が高い開発者が相手なので、とても有効だ。唯一の難点は、Followしている人の数とユーザー名が公開されてしまうぐらいか。

 というわけで、こんな風に潜在顧客との関係を築き上げる段階で、簡単にとぎれてしまいがちな関係をプッシュ型で維持する、というケースにはTwitterは結構使える、と思ったしだいである。

 ちなみに、「新しいサービスを提供するときは、ドメインだけでなくTwitter名を同時に確保しておきましょう」というのが今回の教訓。近いうちにドメインサーチとTwitter名サーチを同時にしてくれるサービスがどこかから出るような予感がするぞ、と。

Apple Tabletと教育市場と現実歪曲空間と

Tablet540

 Gizmodoが"Apple Tablet in Your Life"なる面白そうなコンテストを提案していたので乗ってみた(上の合成写真が応募作品)。PhotoShopの腕をためすには絶好の機会だが、オリジナルの写真(iPhoneで撮影)のピントが少し甘いせいで、どうしてもデバイスが浮いてしまうのが難点だ。完璧を目指すなら一眼レフで素材から撮影し直すべきなのだろうが、そこまで時間をかけたくはないので今回はこれでよしとしよう。

 Apple Tabletに関しては、エンジニアとして「出して欲しい、早く手に入れたい」という思いはあるのだが、ビジネス面から見るとどうもマーケットがあるとは思えないでいた。"Tablet PC"という市場はニッチに過ぎないし、"eBook"もまだまだ立ち上がるとは思えない。それならば、ポケットに入るiPhoneでできるだけのことをした方が理にかなう。

 しかし、このコンテストのために「自分がスティーブ・ジョブズの下で働いていたらなにを提案するだろう」と真剣に考えてみたところ面白い案が浮かんできた。

 eBookの市場を真剣に取りに行くのであれば、ターゲットは学生だ。それもAmazonのようにちまちまとコンシューマー向けに一台一台売るのではなく、全米の公立高校および大学・大学院と直接交渉して「すべての教科書を一気にデジタル化」することにより、従来型の教科書を一気に入れ替えてしまうのだ。

 大学生ともなれば、年間に支払う教科書代は少なくとも数百ドル。紙代・印刷費用・流通費用の節約および持ち運びの簡便さを考えれば、小売り価格500−800ドルのデバイスは決して高くない。学校に「うちの学校では、これからは教科書の配布はすべてオンラインで行います。入学時にApple Tabletの購入が義務です」と言わせれば勝ちだ。

 音楽ビジネス・通信ビジネスにこれだけの不連続な変化をもたらす力(別名:ジョブズの現実歪曲空間)があるアップルだからこそできる力わざだが、逆に言えば「これぐらいのことをしなければApple Tabletを出す価値がない」というのが私の見方。せっかくやるならiPhone並みの成功をするように十分に準備してから出すべき。Apple TVのようなおよび腰ではだめだ。

Palm Preの苦戦とAppleのiPod touch戦略

 今朝、最初に目についたのがZDNetの「Sales of Palm Pre have slowed, could drag down company」という記事。Palmとしては社運を賭けた商品だけにこれが失敗すると会社の存続そのものが怪しくなる。

 この記事によるとローンチした6月には20万台を売ったものの、7月の売り上げが10万台に落ち、今四半期の売り上げ予想40万代の達成が難しくなったという。

 ビジネス向けにやたらと強いBlackberry、セクシーさで消費者の心をすでにつかんでいるiPhone、という二強がいる米国のスマートフォン市場にかかんにチャレンジしたわけだが、やはりかなりきつかったようだ。ポジショニングとしては、かなりiPhoneに狙いを定めたマーケティング戦略にでたのだが(下に貼付けたのTVコマーシャルを見るとよくわかる)、これまた社運を賭けてiPhone/iPod touchのマーケティングに力を入れているアップルの横綱相撲に片手で土俵の外にはねとばされた感じだ。



 しかし、PhotoShareユーザーの動向などを見ていると、今年になってiPod touchのユーザーが急激に増えていることが分かる。それもほとんどがティーンエージャーで、さまざまなiPhoneアプリに触れるうちに、彼らの間には「いつかは私も(WiFiがなくともネットにいつでも繋がれる)iPhoneに切り替えたい」という思いが強まっている。つまりiPod touchユーザー全員がiPhoneの潜在ユーザーなのだ。数年後に彼らが自分で携帯電話料金を払う年齢になった時に、iPhoneを選ぶ可能性はかなり高いと予想できる。

 iPhone 2Gの発売以来、AppleがiPhoneを2600万台以上売ったことはいろいろな所に書かれているが、それに加えてiPod touchも1800万台売ったことにももっと注目すべきだ(参照)。わずか二年で4500万台というのはプラットフォームとして驚異的な数字。Nintendo DSが持つ2年と10ヶ月で5000万台達成という記録を上回るペースだ(PS2やNintendo DSと比べてどうなのかを一度グラフにしてみると面白いかもしれない)。

 例年のようにこの時期になると「新学期に向けてMacBookを今買うとiPod touchがおまけでついてくる」という"Back to the school"キャンペーンを繰り広げているアップルだが、そこには単に「MacBookを学生にたくさん売ろう、iPod touchの在庫を一掃しよう」という短期的な戦術だけでなく、「将来のiPhoneユーザーを増やそう」という長期的戦略が見える。

 それもこれも、アップルがMacBook, iPod, iPod touch, iPhone という数が少ないながらもみごとに調和のとれたラインナップを持っているからこそ取れる戦略で、PalmやMicrosoftが簡単にまねできる戦略ではない。

iTunesストアで酒井法子の曲が売れている件について

Topsong 今朝、iTunesストアを開けて気がついたのだが、酒井法子の曲が一位になっている。これってやはり、

・覚せい剤容疑の逮捕で彼女の名前がメディアにたくさん出る
・「そういえば酒井法子っていたよな。最近は何をしていたんだろう」と調べる人が増える
・結果的に彼女の曲が売れる

という流れの結果なんだろうか。

 この事件が報道される前のランキングや彼女の活躍を知らないのでなんとも言えないが、「悪いニュースであれ、芸能人はメディアの露出度をあげてなんぼ」の商売であることはまちがいない。

 それに加えて、

・普段は芸能ネタを書かないブロガーまでが、彼女の曲が売れている理由を考察したブログエントリーを書いてさらに露出度を高める

からさらに面白い。





「官僚たちの夏」と「ガラパゴス携帯」と

 知り合いの勧めで録画したままにしてあった「官僚たちの夏」を今になって見ている私だが、あのドラマを単純に「なぜ戦後の日本はあれほどの急成長をとげたのか」という視点から見るだけでなく、「その同じ日本でなぜガラパゴス携帯ができてしまったのか」を考えながら見るとより面白い。

 「今の官僚や企業が(あのころの官僚や企業とくらべて)だらしないから」という見方もあるかも知れないが、私としては「そもそも官僚主導の産業政策が今の時代に合わなくなっている」と見る方が正解に近いように思える。

 もちろん、その場その場で異なる状況があるので、あまりに単純化して見るのは危険だが、少なくともアナログ方式からデジタル方式に移行した2Gケータイの時代に霞ヶ関主導で「モトローラやノキアなどの海外メーカーに席巻されることを嫌い、あえて日本独自の方式を採用して国内の携帯機器産業を保護・育成しようとした」ことは歴然とした事実である。それがNTT DoCoMoを中心とした「運命共同体」的な業界を作り、それが故に「海外では通用しないガラパゴス携帯ビジネス」を作ることになってしまったことは非常に興味深い。

 じゃあなぜ高度成長期の自動車産業やテレビ産業の海外進出がうまく言ったのに、最近のパソコンやケータイ産業になるとさんざんなのか、という点が大きな疑問として残る。答えとしては、

(1)当時は欧米が日本を見下していたため隙をつくことができた
(2)官僚主導で作る「非関税障壁」という裏ワザが完全に見破られてしまっている
(3)情報・流通の速度が上がったため「最初は国内で育て」などと流暢ペースでは戦えない
(4)グローバリゼーションの時代に「日本独自方式」はそもそも合わない
(5)日本人がハングリーでなくなった
(6)中国・台湾・韓国などの追い上げが激しくなった
(7)そもそも保護主義は長期的には国内産業を弱体化させる

などが考えられるが、いずれにしろ「官僚主導で国内産業を育てて海外に進出させる」という高度成長期にとても有効だった手段(この部分に関しての官僚の役割に関しては意見も分かれるところだが、結果だけ見ればすばらしい成長を遂げたことだけは事実)が必ずしもうまく機能しなくなっているというのが現状である。

 そんなことを考えながら、「じゃあ、これからはどんな形が良いのか」などを妄想を膨らませながらこのドラマを見るといっそう楽しめる、思った私である。

GoogleのAndroid向けのアプリビジネスはなぜ魅力的ではないか?

 PhotoShareをiPhone向けに提供して早くも一年になるが、もっとも良く投げかけられる質問は「PhotoShareはAndroidとかの他のプラットフォームに移植しないの?」というものだ。

 少し前までは、「まだiPhone以外のビジネスが十分に大きくないから今はまだ早い」、「iPhone上でやるべきことはまだ沢山あるから」、などと答えて来たのだが、最近は少し見方が変わってきた。

 今の勢いでHTML5が進化・浸透してくれるのであれば、わざわざ移植コストをかけてAndroidやWindows Mobile向けにネーティブ・アプリを開発するよりは、少なくともUIの部分をすべてHTML+Javascriptにまかせたアーキテクチャでのインタラクティブなアプリの開発というのも十分に可能性があるように思えてきたのだ。

 この「HTML+Javascriptですべて出来るじゃん」という発想は、そもそもマイクロソフト時代のInternet Explorer 4.0やNetDocs(90年代の終わりに開発していたマイクロソフト版Google Docs)のころから持ち合わせて来たもの。パソコン向けではWindowsの成功が故に日の目を見なかった発想が、数多くのプラットフォームが混在・競合しているスマートフォンの時代になって大きな意味を持ってきたというところが興味深い。

 そもそも、「Googleがモバイルプラットフォーム」を発表する、と聞いた時には、「ついに超高速・超小型のJavascriptエンジンの開発に成功したか」と過大な期待を抱いてしまった私にとって、JavaVMもどきのAndroidははっきり言って期待はずれの拍子抜け。明らかにGoogleの「ウェブアプリケーション中心」というの基本路線から外れており、せっかくAndroid向けのアプリを作った開発者がGoogleに途中ではしごを外されて途方にくれる可能性は大きいと私は見ている。

 現時点で、最新のハードウェア向けのアプリを作りたければiPhoneがAndroidよりも魅力的なプラットフォームなことは火を見るよりも明らかだし、どうしても「アっプルに縛られたくない」のであれば、標準になりつつある、HTML5上でJavascriptを駆使した本気のインタラクティブなアプリを作るノウハウを蓄積しておく方がよほど魅力的に思える。もちろん、現時点でもっともすぐれたHTML5の実装を持つモバイル端末はiPhoneだが、ちゃんと作っておけば、Android端末でもPalm Preでも動くはずなので、投資効率は高い。

 ということで結論から言ってしまえば、「移植性を無視して最新のハード向けにばりばりのネーティブコードを書きたかったらiPhone向けのアプリをObjective Cで作り、さまざまなデバイスへの移植性が重要ならHTML5+Javascriptでインタラクティブなアプリを作ってiPhone上のSafariでテストしておく」というのが現時点でのスマートフォン向けの開発投資の仕方としては、最も賢い選択肢だと考えている私である。

 ちなみに、JavaとかFlashとかはどうなの、という質問が来そうなので答えておくと、「スマートフォン向けではなく、現状の端末向けのアプリの開発であればまだまだJava、BREW、Flash liteは健在。ただし、3〜5年後にそれらのプラットフォームがHTML5によって駆逐されてしまう可能性は大」というのが私の見方。もちろん、「ガラパゴス携帯」とか「Windows Mobile」という局所的な抵抗勢力はそれなりに残るだろうけど、WebKitがモバイル端末でさくさく動くことをAppleが証明してしまった今、世界の流れはHTML5に一気に向かっている。