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誰にでも分かる「クラウド」

 ここの所、「クラウド」という言葉が一人歩きしているようなので、言葉の定義を明確にして業界関係者間のコミュニケーションをスムーズにすることを試みてみたい。

クラウド・コンピューティング

 もともとは、すべての計算をクライアント側で行う「デスクトップ・コンピューティング」に対して、(しばしば雲の形で図式化される)ネット上のサーバー側で計算してしまうことを表すために生まれた言葉。しかし、後述の「クラウド・サービス」の普及とともに狭義・広義・誤用・バズワード化が進み、今や「ユビキタス」と同じぐらい使っている人によって意味が異なる言葉になりつつあるので要注意。

クラウド・サービス

 アマゾンのec2、GoogleのApp Engineのようにサーバーの能力を従量課金方式で提供するサービスのこと。自社サーバーやレンタルサーバーと比べて、初期投資の面でもスケーラビリティの面でも優れていることが特徴。

クラウド・デバイス

 単なる「ネット端末」のこと。クラウド・コンピューティングがバズワード化するに従い、それに便乗しようと作られた「便乗用語」の一つ。

クラウド・スパコン

 一度は事業仕分けで凍結されそうになった予算をなんとか確保するために役所の人たちがでっち上げた造語。実際は何の意味もない言葉なので「グリッド・コンピューティングとはどう違うの?」などと真面目に突っ込むのは時間の無駄である。ちなみに業界関係者の間では、SMAPの「世界で一つだけの花」のメロディーに乗せて「世界一でなくても良い、世界で最初のクラウド・スパコンになれば良い」とカラオケで歌うのがはやっているらしい。

自治体クラウド

 日本のITゼネコンが、自治体からさらなるIT予算を引き出そうと作り上げた言葉。「これからはクラウドの時代」という合い言葉とともに、自治体から複数年度にまたがるサーバー運営の保守管理契約をせしめよう、というのが本来の狙い。GoogleのApp Engine上で作れば無料Quotaの範囲内で十分に運営できてしまうぐらいのサーバーの運営費がITゼネコンに頼むと年間数百万円、というのは良くある話なので注意が必要。

クラウド冷蔵庫・クラウド洗濯機・クラウドエアコン・クラウドテレビ・クラウドレコーダ

 このクラウドブームに便乗して2010年に日本で発売されると予想されるさまざまな家電製品。数年前の「ファジー家電」「カオス家電」「AI家電」と同じく、最先端のバズワードを使うことにより一見付加価値が高そうな製品というイメージを作り出して消費者の購買意欲をそそろうという家電メーカーの苦肉の策である。

Comments

J

私のようなIT門外漢までもが、クラウド・コンピューティングをキーワードに御上からお金をせしめようと企画書を書いているところでしたので、失笑してしまいました。

調べるにつれ、いろいろ制約の多いPaaSのGoogle App Engine (GAE)よりも、IaaSのAmazon Elastic Compute Cloud (EC2) に既存のリレーショナル・データベース (SQL) を使った環境を作ったほうが、スケーラビリティは生かせ、移行が簡単で、開発者も多く良いのではないか、と思えてしまったのですが間違った考えでしょうか?

Microsoft Azure、Sun Cloud Computingなど選択肢が多くなるにつれ迷いますが、BigTableへの移行は冒険かな?と。

takezaki

私もクラウドのまとめを書いてみました。
「2009年振り返りとクラウド事例と記事のまとめ」
http://blog.virtual-tech.net/2009/12/2009.html

ochi

IBMのCMがさらに定義をあやふななものへとさせている

eed3si9n

URL が crowd computing ですが、雲計算の方は cloud computing です。紛らわしいことに、タグなど群集に管理の一部を任せてしまうことを crowd sourcing などといいますが。ただサーバで計算するだけならクライアントサーバー型とか Unix端末とか色々あったと思いますが、今になってクラウドって言葉がでてきたのは web services とか SaaS が浸透して事前に根回しをしなくても異種(ヘテロ)のコンピュータ同士がインターネットを通じて計算なり、容量なりのリソースを交換できる時代が到来したってことじゃないでしょうか。これがブラウザ相手なら SaaS で、機械相手なら Platform as a Service (PaaS)であると。で、ポイントは曇っていうのはモヤモヤしてて中身が見えないってことだと思います。「見える化」の逆で、バックアップがどうとか、内部でのデータの形式とかっていうのは雲の向こうでやってくれてることだから気にするなと。スケーラビリティと高可用性のベストエフォートを手にする代わりに細かいことは見えないし約束されないっていうのがcloud computingだと思います。それでも中小企業の素人が自前でやるよりは早く安く旨いものができるから成り立っていると。 

Ken

確かにBuzz Word的な臭いがしますよね。Cloudという概念はどうしても昔からある物のスケールが違うだけになった気がします。

ところで全く関係ないのですが、仕事で昔IEのチームでDirect X関係をやっていたRong Chenさんという方(今は中国)とお話されていたら、その時中島さんがIEのアーキテクトでとても有名だったという話をされていて、懐かしそうでした。彼自身もとてもプライドのあるエンジニアという感じでしたが、中島さんの話をされたときに見えるリスペクト度合いが凄く印象的でした。中島さんはやはり凄い方なんですね!^^;

kaoru watanabe

中島さん、初めまして。いつも購読しています。とても勉強になります。
クラウドについてですが僕は違った見方をしています。あくまでコンピュータパワーという一面に絞れば、クラウドコンピューティングは新しい産業の新しいエネルギー源(言い換えれば電力と電気)に相当するものだと思っています。電力=コンピューティングパワー、電気=アプリケーション処理能力。電力発電所で100の電力を作ったとして、家庭来る電気は10くらいです。90は送電中にロスします。エネルギー移動効率が悪いんですね。100の電力を100のコンピューターパワーに変換して(エネルギーのデジタル化)インターネット網を介して利用すれば仮説上100の電力を地球の裏側に送っても100のパワーを使えます。事実僕はAWS(EC2)をそのように活用しています。ここから得られる回答は、日本でどんなに巨大なクラウドコンピューティングを作ったとしてもエネルギーコストで決して米国と競争できないということです。同じ能力、同じ性能、同じサービスで競争した場合、コンピュータパワーのコスト競争で負けるわけです。したがって真の意味でのクラウドコンピューティングを定義する場合には、電気エネルギーのコスト構造まで含めた考察が必要かと考えるに至りました。

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