米国空軍がPS3 2500台で380TFLOPSのスパコンを作ることにしたらしい
2009.12.15
日本でスパコン産業支援のための予算が事業仕分けで見送りになった件については、Twitterとかでつぶやいても来たが、そろそろ「産業支援のありかた」を根本的に見直すべき時が来ていると思う。特にIT産業においては、勝負すべきレイヤーが大幅に変化している時期でもあり、過去の産業構造に捕われた支援の仕方をしても税金が無駄になるだけ。
特に今朝米国で報道された「なぜ米国空軍がPS3を2200台を追加発注したのか」という記事は、この業界の変化を顕著に表すもの。要約すると、
1. 米国空軍はさまざまなシミュレーション(空軍なので、弾道ミサイル、迎撃ミサイル、戦闘機の性能シミュレーションと考えられる)にスパコンを使って来ているが、現時点では、(IntelのチップやGPUよりも)CELLチップで構成したスパコンがもっとも現実的である。
2. ただ、CELLチップを二つ搭載したサーバー(1チップあたり200GFLOPS)は$8,000するがPS3だと二台で$600なので(1チップあたり150GFLOPS)、1ドルあたりのFLOPS値で計算すると PS3 を使うと約10分の1のコストで済む
3. 米国空軍はこれまで336台のPS3を繋げて試験を行って来たが、このたび2200台の追加発注をしたという。
となる。単純計算すれば、150GFLOPS x (336+2200) = 380TFLOPS、と地球シミュレータの10倍の性能のスパコンを、ハードウェアコスト1億円以下で作っていることになる。
ここで注目すべきは、米国空軍はソニーやIBMのビジネスを支援しようとしてこんなことをしているわけではなく、単に「できるだけ早いスパコンをできるだけ安価に作りたい」という純粋に経済的な理由でPS3をハードとして選択しただけ、という点。
そして、米国政府の狙いは「国内のスパコン産業を育成する」ことなんかには全くなくて、それよりも「どの国にも勝る軍事技術を持つことにより『強い米国』の地位を維持し続ける」ことにある点も忘れてはならない。
こんな時代に、「国内のスパコン産業支援のために700億円」という目的も効果もはっきりしない説明でのは国民の理解を得られなくて当然と思う。「日本としてどこで勝負したいのか」という明確なビジョンを示して国をリードして行かないかぎり、国民の指示は得られないし、本当の意味での強い産業は育たない。
今仮にPS3を3000台買ったとしても、29800*3000=¥89400000
1億もかからない。
ぼやけた根拠で700億は支援できませんね、やはり。
Posted by: ochi | 2009.12.23 at 17:46
PS3の価格設定ってコンテンツを買ってくれることが前提なので、SONYにとっては、いい迷惑ですね。
Posted by: ibushi | 2009.12.24 at 19:25
ソニーにとっては良い宣伝になったのでは?
Posted by: hiroz | 2009.12.26 at 23:00
最近ゴードン・ベル賞を受賞した長崎大学のスパコンは3,800万円で158TFLOPSということですから、コストパフォーマンスならそっちの方がすごい。
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/item/136999
って、そんな単純な話なんですかね。
Posted by: michi | 2009.12.29 at 08:03