Google TVを作ってソニーに何の得があるのだろう?
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共著「Google Chrome OS」出版のお知らせ

 先日のセミナーでも少し触れた、「Googleのコモディティ戦略」。インプレスからこのたび出版される「Google Chrome OSー最新技術と戦略を完全ガイド」の「戦略」の部分に共著者の一人として寄稿したのでここで紹介させていただく。

 Chrome OSにせよAndroidにせよ、OSをGoogleが無料で提供するには深い意味があるのだから、それをちゃんと理解した上で、自社のデバイスに採用するかしないかを「経営判断」として決めるべき。「他のメーカーも載せはじめたから」とか「自分だけ乗り遅れたくないから」ぐらいな安易な気持ちで始めると、「実際やってみたら得をしたのはGoogleだけ」という結末になりかねないので慎重にすすめるべき。

 2年ほどiPhone向けのアプリを作って来た結果、最近強く思うのは、テレビなどの据え置きがたの家電にアプリをダウンロードして走らせる、という発想自体が根本的に間違っているんじゃないかということ。せっかくブラウザーがここまで進化して、常時接続状態が実現になってきたのだから、すべてを(JavaScriptとHTML5を最大限に駆使して)ウェブサービスとして提供すべき時代が来つつあると思う。

 その意味では、AndroidのJavaアプリというのは方向性からして間違っているし、Google全体が目指している方向とも違う。AndroidのLinuxとかWebkitの部分は良いとして、Android向けのアプリをごりごり作って差別化をはかろうという作戦だけはどう考えても間違い。

 まあ、iPhoneアプリがあれだけ成功しているのを見れば、自分でも同じことがしてみたいという気持ちになることは分かるが、「今、成功しているもの」を真似するんじゃなくて、「次に起こるだろう・起こるべきこと」をちゃんと見極めて、その変化を起こす立場にならないと、この業界ではリーダーシップは取れない。

 今後、デバイスがどうなって行くのか、OSはどこが主導権を握って行くのかは誰にも読めないけれど、HTML5が標準になってパソコン以外にも広がって行くこと、そこではWebkitがデファクト・スタンダードとなってパソコン以上に標準化が早く進むこと、iPhone/Android/Palm OS/Symbian などのすべてのOSで動くアプリを作る唯一の現実的な答えはHTML5+JavaScriptだということ、だけはこの業界にいてちゃんと目を開いてものを見ている人ならば誰でも知っていること。

 GoogleがAndroidのサポートをある時点で突然辞める可能性は少なからずあるが、彼らがHTML5を捨てることは100%ないのも明々白々。実際、もし私がGoogleの経営陣の一人だったら、AndroidというOSは出したが、JavaVMは載せずに、全精力をブラウザーを最高のものにすることに使っただろう。あのJava VMは経営判断ではなく、一部のエンジニアの趣味で作られたものなことを忘れてはいけない。

 こんな状態で、Androidアプリで差別化をするのが正しいと判断する経営者がいたとしたら、その会社はかなり危ないと思う。アプリを戦略的な財産として蓄積して行くなら特定のOSやVMに依存しない形の、ウェブ・アプリケーションとして作るのが明らかに正しい方向。エンジニアを育てるのであれば、JavaじゃなくてJavaScriptが書けるエンジニアを育てるべき。

 まあ、「技術的に細かなことは技術者まかせ」の日本の大会社の経営者には「馬の耳に念仏」なんだろうな、こんな話。本当は全然「細かなこと」なんかじゃなくて、戦略を立てる上で中核になる話なんだが...。まあ実際のところ、この業界にいながら Java と JavaScript の違い(それも言語の違いだけでなくて、マーケットでの位置づけだとか戦略的な意味だとか)が分からない経営者もたくさんいるわけで...困ったものだ本当に。

Comments

心は萌え

とりあえず、WebKitのJavascriptを押すならARM用とMIPS用とSH用のJITコンパイラを誰が書くのか?って話にはなるでしょうね。現状x86しかJavascriptをアセンブラ化して実行しなかった気がします。
あと、同製品毎のデバイスドライバ対応なんかもありますし、メーカーならJavaのデバイスへの移植、WebkitのJSのデバイスへの移植に耐えられるようにC++と各チップのアセンブラができる人を育てる方が良いと思います。あと、ハードの基盤その物を見られるソフトウェアンジニア。
JavascriptとHTML5は、この先外注で安く使えるところが鬼のように増えると思っています。外注で安く作れる物をわざわざ正社員で育成コストまでかける経営者というのは少ないのではないでしょうか?

だ

久しぶりに「気持ち」の入ったエントリーですね?

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