私からの提案:おかえりなさいテレビ
2010.03.08
若干誤解してしまった人も少しいたようだが、私が「もし日本のメーカーがiPhoneを発売したら...」で指摘したかったのは、「広告一つでこんなにインパクトが違うのか」という単純な話ではなく、「どこに重きを置いてもの作りをするか」というもっともっと根本的な問題。
カタログスペック重視のもの作りは、確かに社内の稟議を通しやすいし、作る過程でも目標設定が簡単だ。量販店で横並びにされた時にも他社の製品に負けない。しかし、これがそろそろ通じなくなっていることは、日本のどのメーカーもひしひしと感じているはずだ。
確かに「ユーザー・エクスペリエンス(おもてなし)」とか「ライフスタイルへのインパクト」重視のもの作りは、定量化ができなし、大失敗の可能性もあるので、「出る杭は打たれる」型の日本の会社では難しいのかも知れないが、そろそろ意識を切り替えないと手遅れになる。「ユーザーにどんな体験をしてほしいか」をまず第一に考え、カタログスペックにこだわらずに魂のこもった商品作りをする。
具体例をあげれば、数年前に生産中止になってしまったソニーのCocoon。あの時点では確かに「すご録」の方が売れていただろうし、ライバルメーカーとの「カタログスペック争い」には適していたのかも知れない。しかし、今になって考えてみれば、「すご録」なんて世界の舞台ではまったく通用しないコモディティ。Cocoonみたいに魂のこもった商品を、長期的展望でしっかりと育んで世界に放つことができれば、日本のメーカーにもまだまだチャンスはあると思う。
ちなみに、私が数年前から暖めている商品のアイデアがあるので、ここで披露しよう。題して「おかえりなさいテレビ」。ターゲットは、毎日のように9時とか10時にならないと家に帰らない・帰れない会社員。わざわざ番組予約をして見るほどテレビは好きではないが、まわりの話題についていけるぐらいは、ドラマとかニュースとかスポーツ番組は見ておきたい、と感じている人たち。
操作はいたって簡単。家に帰ったら、スイッチをオンにするだけ。いきなりその日のテレビ番組のダイジェストが始まる。流れている映像に興味がなければ「スキップ」ボタンを押す、興味があれば「しばらく見る」ボタンを押す。それだけだ。最初はあまり賢くないが、使っているうちにだんだんと「この人は野球が好きだな」とか、「キムタクのファンなんだな」と理解して、ダイジェストの内容が充実してくる。その人が平均して何時ぐらいにテレビを消すのか(=寝るのか)も認識して、家に帰った時間から計算して適当な長さに編集してくれる。
これを実現するには、もちろん当然ネットに繋がなければならないし、マルチチャンネルを同時録画できる機能も持っていなければならない。衆合知を利用した学習機能を持ったクラウド・サービスも必要だ。しかし、決してそんなことは宣伝しない。クラウドとかマルチチューナーとかディスク容量を宣伝しなければ売れないようなら、その時点で負けだ。あくまでコンセプトは「おかえりなさいテレビ」。仕事に疲れたサラリーマンに、寝るまでのわずかな時間を充実して過ごしてもらう。それだけだ。
面倒な番組録画の機能なんてない。もちろん、EPGも表示しない。リモコンのボタンも5つぐらいで十分だ。ネットに繋がっていても、ブラウザーも載せてなければ、もちろんウィジェットもない。ネットは最高のおもてなしを提供するための、単なる道具に過ぎない。
どうだろうか。もちろん成功する保証なんてない。実現するためには色々と乗り越えなければならないハードルがある。リスクは低くない。しかし、このまま他の日本のメーカーと横並びでカタログスペック競争を続けて行くよりは、エンジニアのやる気も出るし、ソフトウェア重視のカルチャーを育てることができるかも知れない。本気で作る気があるところがあれば、私なりに協力をさせていただく。
おかえりなさいテレビは、SPIDER PROに学習機能をつけたイメージでしょうか?
ちなみにSPIDER PROのスクリーンセーバー機能、オススメです!
http://www.ptp.co.jp/spiderpro/function/index.html
Posted by: チンドン | 2010.03.08 at 03:04
昔、テレビ関連でソニーが出していた
Eマーカーというのが有ったんですが
早過ぎたアイディアだったのか
無くなってしまいましたね。
Posted by: wadia | 2010.03.08 at 03:42
24h 8ch 録画の X Video Station (SPIDER PROの前ですね)も
Eマーカーもどっちらも買いましたw
そして、どちらも消えましたね。
どちらも、面白いと思うのですが、日本人はみんなが持っているものが好きなので・・・
そう考えると、日本人にとってのライフスタイルへのインパクトはカラオケであり、プリクラなんでしょうね。
Posted by: kokorohamoe | 2010.03.08 at 06:55
すばらしい。見せ方はシンプルに、遊び心で。しかし、実は最高の機能性で裏付けられているサービス。そんな商品に魅力を感じます。それに近いものの一つとしてはDSやwii辺りではないでしょうか。
Posted by: T☆K | 2010.03.08 at 08:03
確かに面白いと思います。
でも、ユーザー側でマルチチャンネルを同時録画するんじゃなくて、ネットを介してテレビ局とかからダウンロードして見れるようにした方が便利かと思います。
その上でテレビを付けると「あなたが好きなタレントが出ていた番組はこれです」とか「twitter上でつぶやきが多かったのはこの番組です」とかの「お勧め」が出れば最高かなと思います。
それには法とか利権とか様々なハードルがあるんだとは思うんですけども、世界と勝負するためにも団結して取り組んで欲しいです。
Posted by: sawa | 2010.03.08 at 09:42
テレビにつけるセットボックス(言葉合ってるかな?)としてなら商品化はそれほどハードルが高くないのではないでしょうか。
また、パソコンなら地デジチューナーを操作するソフトウェアとしていけそうです。最近のパソコン(特にデスクトップ)は常時起動を念頭に置いていますので、デスクトップガジェットとして動いても良さそうです。
Linuxで専用OS作ってEeeBoxのような超小型PCに乗せれば、先に挙げたセットボックスはすぐにでもいけそうです。とすれば、ソフトウェア(衆合知を利用した学習機能を持ったクラウド・サービス)をPCのソフトとしてリリースし、軌道に乗った時点でセットボックス作成→テレビへの組み込みを売りこむ、なんてするとスムーズなんじゃないかと。
Posted by: pc4beginner | 2010.03.08 at 17:10
WEBの場合は、ビジョンを持ったリーダーの意志や企業のカルチャーがないとますます難しそうに感じます。
ビジョンドリブンで、強いリーダーがいて、UXをきちんと作れるチーム・方法論(定性・定量で仮説検証していける)があることが理想的だと思います。
(関連情報)http://www.lukew.com/ff/entry.asp?1008
Posted by: tmaeda | 2010.03.08 at 17:30
いま発売されている東芝CELLレグザはそういうコンセプトのテレビですね。
たとえばニュースボタンを押すと、勝手に録画された中からその時間に一番近い時間に放送されたニュースを見ることが出来たり。
Posted by: だし | 2010.03.08 at 18:54
中島様、はじめましてガラポン株式会社の保田と申します。そんなテレビ視聴機、作ってます!
もう少しでデモ機お見せできるようになります。
その際は、ぜひ、一度ご挨拶に伺わせてください。
Posted by: ガラポン.tv 保田歩 | 2010.03.08 at 18:58
Tivo的発想ですね。ユーザー視点で見ると良いアイディアだと思います。が、今のTV局のビジネスモデルを考えると、スポンサー離れが加速し、予算が集まらず、つまらない映像コンテンツが増える気がします。また、ユーザーの好みが良くも悪くも簡単に吸い上げられるため、コンテンツの画一化にも拍車がかかりそうです。問題はタダ(Free)でクオリティの高い映像コンテンツをユーザーにどう観てもらうか?ということで、現実的なソリューションとしては、局側はブロードキャストを捨てて、オンデマンドなストリーミング配信に徹することだと思います。そこに番組ダイジェスト機能を持たせれば、送受双方が利益を得られます。各TV局が(映像レヴェルに拘らなければ)配信サーバを持つこと自体、難しい技術ではありません。ユーザーインターフェースもPCは捨てて、TVリモコンで出来るようにすれば解決です。あと、問題は規格の統一とインフラですね。
Posted by: masa | 2010.03.08 at 21:17
実用化されていないようですけど、「未踏」のプロジェクトにありましたよ。
その名は「Goromi-TV」。
http://otsubo.info/contents/mitou/mitou.html
「とはいったものの」からが面白いです。
Posted by: ettem | 2010.03.08 at 22:48
携帯やスマートフォン、ミニノートに積んだTVにこの機能を付ければ電車通勤の人なら帰宅する間に見られるし、据え置きTVならボタンじゃなく音声認識でボタン要らず、録画した料理番組からネット経由で注文して帰宅時間頃に宅配してもらえれば料理も簡単。
つまらないテロップや大袈裟な笑い声をカット、不意に嫌いな有名人が出てきたらカットまたはモザイク・ミュートしてくれる機能が欲しい。
Posted by: びれてまん | 2010.03.09 at 00:04
要はyoutubeやらニコニコ動画のトップページが放送波になった「お一人様専用TV」ってイメージ?
いらんなぁ・・・と個人的には思います。
疲れて帰った時にTV見たいとは思いませんし、TVが勝手な基準で録画したのを見させられるくらいなら、全チャンネル丸撮りしたのをタイトルサーチした方がいいです。
番組を見る主導権は私にありますから。
Posted by: sinclair | 2010.03.09 at 04:23
読んでて、最初はあまりピンとこなかったのですが、
「しかし、決してそんなことは宣伝しない。クラウドとかマルチチューナーとかディスク容量を宣伝しなければ売れないようなら、その時点で負けだ。」
という文章を読んで、ああ、なるほどと思いました。
以前の記事(「とある家電メーカーでの会話:クラウドテレビ編」)と関連してて、読んでて楽しかったです。
Posted by: tavi | 2010.03.09 at 06:57
いつも楽しみに読ませていただいています。
今日の話題、「おもてなしのスタイル」を提案し買ってもらうというコンセプト及びその裏の技術やスペックは一切意識させないし宣伝もしないというのは非常に共感できます。まさに日本のメーカーがスペック重視に傾いて行き詰っている現状を打破する最適解だと思います。人はえてして裏の仕組みを知ってしまうと冷めてしまうもので、いったいどんな具術を使ってこんなことが出来るのだろうというぐらいがわくわくするものなのですよね(マジックショーと似てると思います)。
もうひとつの話題「おかえりなさいTV」ですが、おっしゃることはすごくよくわかりますしアイディアとしても面白いと思います。ですが、USENが始めた「GyaO」という完全無料ネット放送局の立ち上げから参加し、2年半あまり収益化に苦しんだ身としては、実現はかなり困難だと思います。GyaO時代に人がどのような考えでテレビをつけようとするのかという行動分析や人の「可処分時間」の使い方について調べに調べ番組を改変し、コンテンツを取り揃えてきたのですが、そのそもそも8時9時に帰る人たちがそれでもテレビを見ようとするのは逆に何かしらのコンセプトがあり、あまりザッピング視聴をしない、もしくはするひとがいてもニーズが非常に多様化しているため(それは番組嗜好の多様化ではなくそもそもなにかをしながら見るといった行動そのものの多様性)、それらを満たすためにさまざまな基盤をそろえるにはコストがかかりすぎるため、収益化は非常に難しいかと思います。もちろんそれはこのアイディアを否定するわけではなく、もし収益化するとすれば利用者のボリュームをかなり大きくし(少なくとも日本語環境の人口だけではだめでしょう)薄いニーズの積み重ねでも黒字になるような仕掛けを打たなければならないかと思います。ちなみにコストの高いもののひとつの著作権にまつわる処理だけでも相当ハードルは高いですよ。
Posted by: Osamu Miyama | 2010.03.09 at 20:02
「その日のテレビ番組のダイジェスト」
「適当な長さに編集」
この辺りをどう実現するかが難しそうですね。
ダイジェストだけで30分以上は耐えられないでしょうし、どこを省略するかを判断するアルゴリズムをどうするか。
Posted by: Osamu Mimaya | 2010.03.10 at 02:36
ニコニコのコメントだけ共有する形にすれば、著作権問題を完全にクリアします。
またコメントから、見たい箇所を願望する状態にはなるかもしれませんし、
そうする、そうなるために、コメントも相乗効果で洗練されていくかもしれません。
フォトフレームでの文字入力が問題ですね。iPadと連携がいいかもしれません。
ツイートにもなりますね。2ちゃんの実況スレみたいな感じにもなっちゃうのかな?
コメントから録画開始とかの逆方向も連携すればこそかもしれません。
取り遅れ対策はワンセグ7チャン全録画しかないのかな?
12セグ2チャンネル。HDDは安い3.5インチ1GBで・・・
って以前より、長く夢中になって疲れそう。それと、ニートの仕事が増えそうです。
朝の出勤後とか昼間とか、いい見所って確かに結構あるんですよね。捨てるのは確かに勿体無い。ミラクルは、いつももあるわけじゃないですからね。
でも今更だな。チューナーの買い替えには間に合いそうもありませんね。
Posted by: You'll stealing from as? | 2010.03.10 at 04:05
クリエイターサイドから言わせてもらうと、魂込めた作品を勝手に再編集されるのは、めちゃくちゃ腹が立ちます。
著作権法ってそんな感情から発生している部分もあると思います。
娘を強姦されたような気分。?。
Posted by: ojisan | 2010.03.11 at 01:22
多少は、意味が分かった人もいるんですね。毒にもならないものは薬にもならない。
あとはどう強制執行されないようにするかですね。ジョブズにしたら大した仕掛けではないですよ。音楽も現代生活には必需品ですが、コトノハも絶対欠かせない必需品です。
Posted by: You'll stealing from as? | 2010.03.11 at 20:23
> ojisan
再編集したサマリを動画サイトに投稿とかそういう話じゃなく、個人的に利用するだけなのでは?
Posted by: mmn | 2010.03.12 at 04:51
興味深いです。日本ではスペック重視の売り方に慣らされてしまっているだけなのか、そもそもエンジニア気質とはそういうものか、分かりませんが、アメリカ(たとえばアップル)ではどうなんでしょう?
エンジニアを個人レベルで見ていけばスペック重視な人が多いのでしょうか? つまり、ジョブズという、技術を知った上で、それをちゃらにしてライフスタイルから考えていく偉大な素人がトップにいるから強いのでしょうか? それとも個人レベルですら、ライフスタイルを提示して売っていくという考え方が浸透しているのでしょうか? トップだけの問題ならともかく、個人レベルの問題だとすると、なかなかキャッチアップは時間がかかりそうですね(ウォークマンや任天堂の成功を考えれば、トップだけの問題と思いたいですが)。
Posted by: knom | 2010.03.12 at 18:35
面白いと思いました。ですが何かが違うと感じました。数日考えていたのですが、
生活するー人生を生きる上で、洗濯機や冷蔵庫、湯沸かしやヒーターは今後も必要なもので、これらは今後もあらゆる変化を受け入れながら残っていくと思います。しかしテレビやオーディオステレオ、ビデオデッキは今後の大きな変化の末に残っていくかどうかを信じられずにいます。テレビ、ラジオから得えていた情報はほんの100年前にはほとんどないも同じで、あるいは新聞や出版から得ていた情報ですら500年前にはなく、手書きの書物がたくさんあったにしても、人々の生活はほとんど口伝えでの情報でありました。今、インターネットによってもたらされていることは口伝えの情報を優位にするような状況です。生活の上で重きをおくことはふだんの何気ない情報で、それらはパソコン、ケータイ、スマートフォンによって十分到達できて、テレビが必要な場面はこれまでよりもずっと少なくなり、極論すれば、情報メディアとして敗退したテレビは映画館やスポーツ観戦と戦うようになるのではないかと思っています。
今テレビが低価格化しても尚喘いでいる現状は明らかに情報メディア端末としての戦争に敗れようとしていることを表していて、そこにいくら新しい兵器を投入したところで情報が最も必要とする機動力で劣るテレビが勝ち抜くことは困難でしょう。それよりむしろ、テレビは真のエンターテイメント端末として存在を変えていくべきであり、全ての人が所有しなくても成り立つようなモデルになっていくべきだと思います。
Posted by: just a reader | 2010.03.13 at 01:48
差し支えなければ、CoCoonは現在Google Japanの社長である辻野さんがSONY時代に開発なさったものです。そして、すご録も辻野さんです。しかしながら、CoCoonは、辻野さんがコンセプトから開発までをご自分でつくりあげた未来型TV。そして、すご録は、そのコンセプトを理解しきれなかった会社がハードディスクレコーダーをつくるべしと号令をかけ開発されたものです。と、ソニーインサイドストーリーに書いてありましたw。おっしゃるとおりですが、ご本人はご自分の魂を入れた分、CoCoonを愛していらっしゃるのではと推測します。
Posted by: f | 2010.03.14 at 08:42
2chの実況から番組の視聴状況や勢いも鑑みてダイジェスト化するのもよさそう。
手軽にみんなが盛り上がってた場所をピックアップしてくれるだけでも有難い。
普段TV見ないけど、そういう機能があれば利用するなぁ。
みんなの興味のあったニュースとか。番組とか。
Posted by: tmp | 2010.03.14 at 08:58
たしかに、最近のテレビは、
「おかえりなさい」一言も言わずに、
自分の言いたいことを
大声で言ってるだけだ。
まるで、
アホな嫁のようだ。
Posted by: higekuma3 | 2010.03.17 at 03:01