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無料アプリの提供とブログ執筆の共通点

 今日、Twitterにいくつか「CloudReaders」の文字が流れたので読んでみると、Darging Fireballという著名なブログを書く John Gruber という人が「So what's the best PDF reader for iPad?」と書いたことに対する返答として、CloudReaders を薦めてくれた人が何人かいるのだ。ありがたいことだ。

 John 本人はまだ GoodReader しか試していないようだが、「I'd say PDF iPad reader is a ripe market for apps. GoodReader is functional, but the UI makes my nose crinkle. Poor next/previous page UI.」と書いている様に、PDFリーダーがiPadのキラーアプリの一つとの認識は持ってくれているようだし、GoodReader のページ送りは気に入らないようだ(ページ送りのスムーズさには自信がある)。

 私としても、PDF・マンガリーダーがiPadの普及・成功の鍵を握るとの認識は共有しているわけで、そんなレッドオーシャンなマーケットに会社としてではなく、個人として、それも仕事ではなく趣味で、思いっきり力を入れて開発したアプリを無料で提供する、というのは何とも言えずに楽しい。

 そう考えてみると、無料アプリの提供とブログを書くことは、その根底に流れるモチベーションのようなものは同じだな、とつくづく考える今日このごろである。ブログを書きはじめのころは、妙にはてなブックマークの数が気になっていたが、それと同じで今はiTunesストアでのランキングを見るのが毎日の楽しみ(現在、総合ランキング61位)。

 こんなことを書くと「やっぱり仕事じゃなくて趣味だったのね」と妻に指摘されそうだが、こんなことをしているうちにひょっとしてビジネスに結びつくという可能性もゼロじゃないので、まあ長い目で見てほしいな、と。



iPadアプリ作成日誌: CloudReaders 1.04で輝度調整を追加

Brightness

 些細なバグのために、二回ほど審査に落ちたために手間取ってしまったが、CloudReaders 1.04 がようやくiTunesストアに並んだ。今回のバージョンアップはいくつかの細かなバグフィックスと、メモリ効率の向上(かなり大きな画像を含んだCBR/CBZファイルを読み込んでも耐えられるようになった)と、輝度調整だ。

 iPadはAmazonのKindleとは違って、バックライトの液晶。ハード的な輝度調整機能がないので、暗い部屋で電子書籍を読むと、そのバックライトが明るすぎる。そこで追加したのが、ソフトウェアによる輝度調整機能(上の図)。

 仕組みはとても単純。UIを表示するUIViewの上に、画面いっぱいの大きさの真っ黒なUIViewを表示し、それの透明度を20%〜100%の間で変更しているだけだ。

 しかし、アップデートのたびに、iTunesストアでのユーザーによる評価が徐々にだが上がって行くのがとてもうれしい。ユーザーが書いてくれるレビューも好意的だち、ランキングも総合で60〜70位、書籍部門で6〜7位となかなかの健闘をしており(米国のiTunesストアでのランキング)、とても励みになる。

 ちなみに、次の1.05でさらなる「読み心地の向上」を目指す。今のバージョンは、iPadを縦にして見た時に、次のページが少しだけ見えるようにしてあるのだが、これが気になって現在のページに集中できない、という意見が複数のユーザーからよせられたのだ。今の左右にサクサクめくれる読み心地を損なわずに、この要求を満たすにはどうしたら良いかを実験中なので期待していただきたい。

 それに加えて、1.05には試験的な「HTML5を活用した拡張機能」を付け加える予定なので、それにも期待していただきたい。CloudReadersを作りながら「電子書籍の将来像」などを考えているうちに、CloudReadersそのものを色々と実験に使えることに気がついたのだ。

 ちなみに、5月25日に日経エレ主催の「iPad徹底解剖」というセミナーが開かれるのだが、そこで講演をすることになったので、この場を借りて告知させていただく。題名は未定だが、私がiPad向けのアプリの開発を通じて学んだこと感じたことを語りながら、iPadのインパクトだとか、電子出版の将来像に関して語る予定である。





iPadアプリ作成日誌: 口コミ・マーケティングの力

 iPad向けに配布しているCloudReaders、総合100位に入ってから78〜80位あたりを数日間うろうろしていたが、今週に入って62〜67位となかなか健闘をしている。私自身、特にマーケティングらしいマーケティングはしていないのだが、いくつかのブロガーに取り上げられたのが幸いしているようだ(下のリンクはここ二日で書かれたブログエントリー)。

 iTunesストアでのレビューもおおむね好評だし、良い感じで「口コミ・マーケティング効果」が作用しているようだ。

 ちなみに、CloudReadersには Google App Engine で作った「クラウド本棚」から無料でPDFファイルをダウンロードできるようにしているが、このサイトへのアクセスを見ると、どのタイミングでユーザーが増えたかがリアルタイムで分かってとても面白い。例えば、下の図が今日のアクセスログだが、6時間ほど前からアクセスが増加していることが分かる。これは上のスペイン語のブログエントリーが書かれたタイミングと一致している。

Access
 現在の60位台から抜け出すには、ある程度メジャーなブログで取り上げられる必要があるのだろうが、あまり一気にクラウド本棚へのアクセスが増えても困るので、とりあえずはこまめにアップデートをしながら様子を見ることにしようと思う。



iPadアプリ作成日誌: CloudReadersがベスト100入り

 ここでも何回か書いて来たiPad向けのPDF/コミックリーダー、CloudReaders。ようやく当面の目標であったベスト100入りを果たしたので報告させていただく(米国・総合・無料アプリ)。

 iPadの発売日に会わせてリリースしようとしたのに、ちょっとした誤解で1週間ほどリリースが遅れてしまったり、日本でのiPadでの発売が当初より大幅に遅れる、など色々とあったが、(世界で唯一iPadを自国で購入できる)米国ユーザーの間での認識度も順調に上がり、今回のベスト100入りの達成である。

 Microsoftを辞めて以来、UIEvolution、Big Canvas と二つのベンチャー企業を立ち上げて来たが、最近益々強く感じるのは「個人の力」。クリス・アンダーソンの「FREE」にも書かれているが、ネットのおかげでデジタル・コンテンツの流通コストがここまで下がると、作家やプログラマーといったクリエーター本人が、まさに「腕一本の力」で、その低コストを武器に会社組織と対抗することが十分に可能になったと言える。

 それならば、会社組織としてではなく、私個人として、どこまでこの「iPad革命」に加担できるかをとことんやってみようというのが今回の試みである。「出来るだけ多くの人に喜んでもらえるソフトを無料で配布して、iPadをより魅力的なデバイスにする」ことが今回のプロジェクトの第一目標である。

 その目的の達成のための最初のマイルストーンとして、このベスト100入りは本当にうれしい。次のマイルストーンは、日本でiPadが出た時の日本のiPadストアでのベスト10入り。まだまだやらなければならないことはたくさんある。

Top100


iPadアプリ作成日誌: CloudReaders 1.03

 今回のCloudReadersのアップデートは、何と申請から48時間以内に承認されるというスピード承認。前回のアップデートの承認が1週間近くかかったのと比べると格段のスピードアップだ。

 今回のアップデートの目玉は三つ。(1)米国ユーザーからの要望が多かったCBRファイル(JPEGファイルの集まりをZIPではなくRAR圧縮したもの)のサポート、(2)巨大な画像ばかりを持つPDFファイルを読み込ませるとアプリが落ちるという問題点の回避、(3)UIの微調整だ。

 今回のアップデートで一番苦労したのは、「巨大な画像ばかりのPDF」ファイルの扱いだ。PDFは本来文字データとベクターデータを扱うのが得意なフォーマットだが、雑誌や本をスキャンしたものをPDF化した場合、各ページにスキャンしたままの解像度の画像が貼付けられたページが作られることになる。

 そんなPDFファイルをiPhone OSのAPIを使って画面に表示させると、やたらとメモリを消費するのだ。CloudReadersのユーザーの一人から送っていただいたPDFファイルの場合だと、1ページを表示するたびに約26MBが消費され、かつ、次のページに移っても解放されないのだ。そんなファイルをCloudReadersの1.02で開くと、3〜4ページ見たところでメモリ不足でアプリが落ちてしまう。

 私から見ればどう考えてもシステム側のバグなのだが、この件に関してAppleは「これはシステム側が画像データをキャッシュしているだけ。キャッシュを解放してほしかったら一度PDFドキュメントを一旦閉じてる必要がある」というスタンスだ(参照)。キャッシュはあくまでキャッシュなんだから、メモリが不足してくれば自動的に解放すべきなのだが、そうは作られていないようだ。

 そこで仕方がないので、以下のような回避策を施した。

  1. PDFドキュメントを開くたびに、メモリの監視を開始する
  2. メモリ不足の通知がシステムから来ると、一度PDFドキュメントはクローズする(ただし、ユーザーにはクローズしたことが見えないようにしてある)
  3. PDFドキュメントをクローズ後にユーザーがページ送りをした場合は、再びオープンして必要がページの情報を取り出してドキュメントをクローズするという「Safeモード」で各ページを表示して行く。

 ちなみに、これから自分で本をスキャンしてCloudReadersで読もうと考えている人には、PDFではなくて、JPEGファイルをZIP圧縮した形にしておくことをおすすめする。ZIP形式であれば、上に述べた無駄なメモリも消費しないので、(Safeモードの)PDFファイルよりもずっとサクサクと動く。ただ、逆に青空文庫のように文字データからiPad向けの電子書籍を自作する場合、PDFが最も適したフォーマットなのでそこは勘違いしないでいただきたい。「本をスキャンした場合ZIPファイル、文字データから作る場合はPDF」と覚えておけば間違いない。

【追記】

 「電子書籍を作るならAppleのiBooksもサポートしているePub」との考えの人も多いと思うが、私はそれには賛成しかねる。iPadのように十分に「1ページ丸々のデータ」を一度に表示できるデバイス向けに電子出版をする場合、レイアウトも含めた形でPDF化(文字中心の書物の場合)もしくはZIP化(画像中心の書物、特にマンガの場合)してしまうのが「おもてなし」の面でもっとも優れているからだ。ePubはどちらかというと、携帯電話のように解像度の低くてかつ端末によって解像度がまちまちの場合に文章を「流し込み」形式で提供するのに向いており、iPadのように十分な解像度と画面の大きさを持つデバイスに向けた電子書籍を作る場合には、出版側が100%レイアウトをコントロールした方が良い。

 AppleがiBookにPDFでなくePubを採用したのは、「ePubの方が優れている」という理由ではなく、「Adobeがコントロールするフォーマットに永遠に縛られたくない」という政治的な理由と考えた方がしっくりと来る。


iPadアプリ作成日誌: CloudReaders 1.02 はUSB経由の高速ファイル転送が可能に

 Apple自身のiBook、AmazonのKindleと競合のひしめくBook部門で13〜15位とそこそこの健闘をしているCloudReaders。ユーザーからのリクエストで追加したUSB経由での高速ファイル転送の機能を追加したバージョン1.02をリリースしたので報告させていただく。

 本を一冊スキャンしてZIPファイルにまとめるとすぐに50MBとかになってしまう。WiFi経由での転送は一応可能だが、一つのファイルを転送するのに数分かかるので、複数のファイルを転送しようとするとかなり時間がかかってイライラする。

 そこで、iPhone OS 3.2から可能になったUSB経由での File Sharing の機能を使って、複数のファイルをDrag&Dropで高速に転送できるようにしたのが、今回のアップデートである。

 少し使い方が分かりにくいので、以下に簡単に解説する。

(1)iPadをUSBケーブルでPC/Macに接続する

(2)PC/Mac上でiTunesを立ち上げる

(3)iTunesの左サイドバーでiPadを選ぶ

   Left_pane  

(4)上部のタブで「Apps」を選ぶ

   Apps 

(5)スクロールダウンして、Filre Sharing の下のAppsからCloudReadersを選択する

   File_sharing
(6)右側に「CloudReaders Document」 が表示されるので、ここにファイルをDrag&Dropする(複数ファイルを同時にDrag&Dropも可能)

 以上である。iPadが繋がっていれば、Syncボタンを押す必要もなく、数十MBのファイルでも瞬時にトランスファーされるのでぜひお試しいただきたい( 初めてテストをした時は、あまりにも早くて動いていないんじゃないかと思うぐらい早かった)。

 ちなみにVersion 1.00からアップグレードした場合、この「CloudReaders Document」に library.txt, viewstate.txt, tmp.txt などの管理ファイルが見えてしまうが、Version 1.02には不要なファイルなので、無視していただきたい(消してしまっても問題ない)。


iPadアプリ作成日誌: CloudReaders リリース

 一日遅れのアナウンスメントになってしまったが、iPad向けPDF/マンガリーダーであるCloudReadersがiTunesストアに並んだので報告させていただく。

 米国でのiPadの発売(4月3日)に合わせてリリースしようと準備を進めて来たのだが、ちょっとした行き違いのために、6日遅れとなってしまった。

 β版SDKでの審査には一発で合格したので安心していたのだが、最終版をテストしたアップルの担当者が「クラウド本棚」に1冊しか本が置いていないのをバグと勘違いして差し戻して来たのだ。私としては、あまり本がたくさん置いてあってはテストが大変だろうと気を使ったのだが、それが裏目に出たわけだ。

 結局、「クラウド本棚はクラウドにあるんだから、私が本を置いた数だけ見えるのが仕様」と説明して承認してもらっただが、そのやりとりに6日かかったというわけである。

 今のところiTunesストアには5つレビューが書かれていないが、「5つ星」が4つに「4つ星」が1つとおおむね好意的。とても良い励みになる。どれも英文だが、下にそのまま貼付けておく。

 ちなみに、レビューで指摘されて気がついたのだが、iPhone OS 3.2から iTunes を使ってUSB経由で高速にファイルをアプリに転送することが可能になった。この仕組みを使うと、今までWiFi経由で数分かかっていた50MBぐらいのマンガファイルもあっという間に転送できてしまう。さっそくその機能を追加したものをVersion 1.02としてアップルに提出したので、乞うご期待。

【追記】サーバーへの負荷を測定するために、クラウド本棚には現時点でまだマニュアルを入れて6つしか置いていない。ほとんどがstaticファイルなので、CPUへの負荷は少ないが、各ファイルのサイズが大きいため、Outgoing Bandwidthを使いつくすのが心配。まだユーザーが少ない現時点でもGoogle App Engineの無料Quoteの14%。サーバーの構成をちょっと考え直す必要がありそうだ。

   ◇   ◇   ◇   ◇ 

Well done! - ★★★★★ by Lord John Whorfin - Version 1.00 - 09 April 2010

The only thing I would criticize about this app is its name which does not reflect the extent of its capabilities, not only comic books but also a very convenient PDF reader. Areas of improvement include the library (displaying covers and arranging books in themed bookshelves is a must) and file transfer, which while very cleverly implemented is still tedious (but the author has a great update waiting for approval by Apple) Bottom line, it does a lot, does it well, and best of all it's free and ad-free! Nice job, I can't wait for the updates!

Simple, works great and FREE :) - ★★★★★ by Nirwana - Version 1.00 - 09 April 2010

This is a nice PDF reader, very simple to use. The WiFi file transfer is cool, but I wish the app supported drag/drop in iTunes instead; much simpler.

Great App - ★★★★★ by @ttddyy - Version 1.00 - 08 April 2010

Now, I got a good comic viewer for my iPad. I really think it is a cool idea to send files to ipad via wifi. Well, as feature suggestion, it would be nice if it can do drag and drop, multiple file uploads, etc. Nice app, Thanks.

Wonderful app - ★★★★ by 1sttimereviewer - Version 1.00 - 08 April 2010

This is exactly what I was looking for. Very easy to use. I only wish it would let me import CBR files and allow me to up in batches, not just one at a time. Perhaps the next update will utilize the iTunes drag and drop. Otherwise this app rocks!

thank god the 1st great PDF reader app for FREE - ★★★★★ by Cloudlover1234 - Version 1.00 - 08 April 2010

This is the 1st iPad app for PDF readers that actually works wonderfully and is for FREE

Great app, I like it! - ★★★★★ by Juncao - Version 1.00 - 08 April 2010

Two suggestions: 1. support for TXT files. 2. When I flip through pdf files, auto-center the pages will be very helpful.


iPad購入ガイド:購入するかしないか悩んでいる人のために

 米国でのiPadの発売までついに2日と迫ったが、iPadを購入するかしないか悩んでいる人のために、簡単なテストを作ってみた。まずは各質問を読み、YES/NOで答えていただきたい。

  1. 新しいデバイスを持ち歩いて注目されるのが好き
  2. Apple製品を少なくとも一つ持っていて、それにとても満足している
  3. ガラパゴス携帯より、スマートフォンが好き
  4. この業界(パソコン、ケータイ、ウェブサービス、IT、ゲーム、家電)で働いている
  5. 出かける時にノートパソコンを持ち歩くことが多い
  6. コピーした書類や論文を持ち歩くことが多い
  7. スキャンしたマンガをパソコンやスマートフォンで読んでいる(読みたい)
  8. テレビを見ながらインターネットをすることが多い
  9. iPadに5万円使っても、食うのには困らない
  10. 私のブログを頻繁に読んでいる

 6つ以上YESがあるならば買って損はないと思う。特に8つ以上YESの人は絶対に買うべきだろう(ただし、質問9への回答がNOの人は除く)。YESの数が3〜5の人はiPadがある程度普及してから他のユーザーの意見を聞いてからでも遅くはないと思う。

 参考までに言うと、私自身の得点は11点。当然、即注文だ。「10点満点のはずなのになぜ11点か」って?実は、隠されたもう一つの質問があるからだ。

 11. 時代の進歩を傍観するんじゃなくて、イノベーションを起こす側に立ちたい

 特にビジネスプランがあるわけでも無いのに、iPad向けのeBook/マンガリーダー(参照)を作って無料で配布したりするもの、単にユーザーとしてだけでなく、アプリの開発者としてiPadが可能にする「人々のライフスタイルの変化」を起こす側に立ちたい、という理由があるからだ。

 ちなみに、私が悩んでいるのは、今持っているフラットベッド・スキャナーを自動給紙式のスキャナーに買い替えるかどうか。自分で本をスキャンしている人たちのブログとかを読んで回った限り、買うならばFujitsuのSnapScan S1500がベストの選択肢なようだが、まだ本格的に「本の裁断→スキャン→iPadで読む」というライフスタイルにコミットできていないのだ。