iPadアプリ作成日誌: CloudReaders 1.03
2010.04.15
今回のCloudReadersのアップデートは、何と申請から48時間以内に承認されるというスピード承認。前回のアップデートの承認が1週間近くかかったのと比べると格段のスピードアップだ。
今回のアップデートの目玉は三つ。(1)米国ユーザーからの要望が多かったCBRファイル(JPEGファイルの集まりをZIPではなくRAR圧縮したもの)のサポート、(2)巨大な画像ばかりを持つPDFファイルを読み込ませるとアプリが落ちるという問題点の回避、(3)UIの微調整だ。
今回のアップデートで一番苦労したのは、「巨大な画像ばかりのPDF」ファイルの扱いだ。PDFは本来文字データとベクターデータを扱うのが得意なフォーマットだが、雑誌や本をスキャンしたものをPDF化した場合、各ページにスキャンしたままの解像度の画像が貼付けられたページが作られることになる。
そんなPDFファイルをiPhone OSのAPIを使って画面に表示させると、やたらとメモリを消費するのだ。CloudReadersのユーザーの一人から送っていただいたPDFファイルの場合だと、1ページを表示するたびに約26MBが消費され、かつ、次のページに移っても解放されないのだ。そんなファイルをCloudReadersの1.02で開くと、3〜4ページ見たところでメモリ不足でアプリが落ちてしまう。
私から見ればどう考えてもシステム側のバグなのだが、この件に関してAppleは「これはシステム側が画像データをキャッシュしているだけ。キャッシュを解放してほしかったら一度PDFドキュメントを一旦閉じてる必要がある」というスタンスだ(参照)。キャッシュはあくまでキャッシュなんだから、メモリが不足してくれば自動的に解放すべきなのだが、そうは作られていないようだ。
そこで仕方がないので、以下のような回避策を施した。
- PDFドキュメントを開くたびに、メモリの監視を開始する
- メモリ不足の通知がシステムから来ると、一度PDFドキュメントはクローズする(ただし、ユーザーにはクローズしたことが見えないようにしてある)
- PDFドキュメントをクローズ後にユーザーがページ送りをした場合は、再びオープンして必要がページの情報を取り出してドキュメントをクローズするという「Safeモード」で各ページを表示して行く。
ちなみに、これから自分で本をスキャンしてCloudReadersで読もうと考えている人には、PDFではなくて、JPEGファイルをZIP圧縮した形にしておくことをおすすめする。ZIP形式であれば、上に述べた無駄なメモリも消費しないので、(Safeモードの)PDFファイルよりもずっとサクサクと動く。ただ、逆に青空文庫のように文字データからiPad向けの電子書籍を自作する場合、PDFが最も適したフォーマットなのでそこは勘違いしないでいただきたい。「本をスキャンした場合ZIPファイル、文字データから作る場合はPDF」と覚えておけば間違いない。
【追記】
「電子書籍を作るならAppleのiBooksもサポートしているePub」との考えの人も多いと思うが、私はそれには賛成しかねる。iPadのように十分に「1ページ丸々のデータ」を一度に表示できるデバイス向けに電子出版をする場合、レイアウトも含めた形でPDF化(文字中心の書物の場合)もしくはZIP化(画像中心の書物、特にマンガの場合)してしまうのが「おもてなし」の面でもっとも優れているからだ。ePubはどちらかというと、携帯電話のように解像度の低くてかつ端末によって解像度がまちまちの場合に文章を「流し込み」形式で提供するのに向いており、iPadのように十分な解像度と画面の大きさを持つデバイスに向けた電子書籍を作る場合には、出版側が100%レイアウトをコントロールした方が良い。
AppleがiBookにPDFでなくePubを採用したのは、「ePubの方が優れている」という理由ではなく、「Adobeがコントロールするフォーマットに永遠に縛られたくない」という政治的な理由と考えた方がしっくりと来る。
Tried installing on pc, can't run app.
Posted by: Amy | 2010.04.15 at 19:37
私も電子書籍はPDF化あるいはzip化してしまった方が良いと思います。
組版そのものがデザインであり、コンテンツの一部なのだから、これを出力デバイス側で改変してしまうのはひどすぎる。
もちろん「私は大きい文字で読みたいのだ」という人もいるでしょうが、そういう人は文庫本を読むときに、いちいち拡大コピーを取っているのでしょうか? ルーペを使うでしょう。
そういった需要には、コンテンツを提供する側が何種類かのフォーマットを用意すれば良いと思います。どうせデジタルデータなのですからコストは変わりませんし。
iPadが、電子書籍のフォーマットを見直すきっかけとなってくれれば良いのですが……この辺りの雲行きは怪しそうですね。
Posted by: 青井十九 | 2010.04.18 at 07:27
PDF、画像ViewerとしてのCloudReadersには文句はありませんが、ePubどうのこうのは???です。
レイアウトされたPDFの方が優れているというのは、PDFを作る人が皆正しく読みやすい組版、レイアウトができることが前提となってしまってますよ。みんなそうでしょうか?
iBooksでPDFを採用しないのは、Adobeじゃなくて出版側の技量によって、ユーザーの読書体験にもの凄い差が出るからとも言えませんか?
そして、デザイナーじゃない人が組む程度のレイアウトをプログラムで行うことはできませんか?
(技術だけじゃなくて組版の知識も必要ですから簡単ではないでしょうが…)
青井十九さんの言う「…いちいち拡大コピーを取っているのでしょうか? ルーペを使うでしょう」もちょっとひどいと思います。文字を拡大する機能がルーペの代わりですよ。
実際に新聞や書籍をルーペを使って読む人を見れば、その切実さがわかりますよ。
デジタルデータだから複数フォーマットを用意するコストは変わらないというもおかしいです。
制作側に立てばわかると思いますが、コストが0になる事はないです。
iPadにはePubは合わなと無理にこじつけないで、CloudReadersはPDFを読むものだかからePubには対応しないってことでいいじゃないですか。せっかく良いソフト、サービスを作られても蛇足すぎて残念な気持ちになりました。
Posted by: hey | 2010.04.18 at 10:19
iBookがePubなのは表示対象がiPadだけではないからでしょう。
(いずれiPod nanoでもiBookが読めるようになるかも。)
特定のデバイスで読むならそのデバイス用にレイアウトされたものが見やすいのは確実。
十分な解像度があって本と縦横比が近いiPadならそのままのレイアウトで問題ないからスキャンした場合は固定レイアウトのフォーマットの方がふさわしいというだけではないでしょうか。
Posted by: nosawa | 2010.04.19 at 00:06
>hey様
ご指摘ありがとうございます。不快感を与えるような書き方をしてしまい、申し訳ございませんでした。全体的に、あまりにも投げやりな言葉だったと反省しております。
私としてはiPadは……というよりも、電子書籍のフォーマットとして「流し込む」ものを主流にするのは如何なものか、と思うのです。
現在において、紙のサイズには複数の規格が存在していますが、中身の体裁はまちまちです。たとえ同じ紙のサイズであったとしても、やはり体裁には大なり小なりの差異がある。しかしそれは、コンテンツをよりよく楽しんでもらおうとする製作側の意図であり、ストレスなく文字を読みたいという消費者側の希望でもあると思うのです。
(例えば、村上春樹の1Q84は各章のタイトルが美しくデザインされていますよね)
せっかく本と同じようなサイズであるのだから、美しさや使い勝手の面でも読書体験とイコールであってほしい。そのためには、書籍のジャンルに応じたプロの組版が必要なのだと私は考えます。
とは言え「電子書籍と紙媒体の書籍は別物」と言われてしまうと反論の余地はありません。結局のところ、私の意見など読書好きのたわごとでしかないのでしょう。
Posted by: 青井十九 | 2010.04.19 at 04:56
横方向にしたときに見開き表示っぽくなりますが、2ページずつ送りたいです。ご検討いただけるとうれしいです
Posted by: nihondo | 2010.04.19 at 06:15
初めまして.大阪で働いている医師の佐藤健一と申します.
Twitterでもフォローさせていただいています(ken_satohです).
リハビリ医療分野でも訓練にiPadが活用できると思うのですが,どなたか興味を持たれる方はいないでしょうか.
アイデアがあってもプログラミングが出来ない分,実現には程遠い状態です.
このようなデバイスが発表されると特にアメリカでは医療分野でもすぐにソフトが作成され,実用化されていくのですが,日本では非常に足取りが重く,ほとんど発表されることがありません.まして障害者に向けたものは皆無です.
日本でも障害者向けの訓練+機能維持デバイスがもっと作られて欲しいです.
Posted by: 佐藤健一 | 2010.04.19 at 19:07
CBR and CBZ are displayed out of order
Posted by: User | 2010.04.19 at 20:39
Hi, I am from Hong Kong. Your Cloudreader app is excellent! I can't believe it is free. It renders PDF extremely fast! I would like to contribute some idea to improve your already excellent app:
1) in-app brightness control
2) brown paper overlay to give a 'paper' tone, like the Kindle App
3) please keep the speed! It's a strong merit over all other pdf readers at ipad
Posted by: Pasu | 2010.04.20 at 10:11
Thank you for using great app.
When I read 200MB zip file it crashed soon.
I wanna know how many MB file can handle stably.
please add brightness control in app like ibook .
Posted by: Sangjun | 2010.04.21 at 03:36
Hi, I am come from china. Cloud reader is a wonderful app run on iPad. However, it seems hard to handle below issues:
1. Pic resolution may bigger than 1024x768 , app will crashed
2. .zip or cbr file packages have folders, app can open it but just blank in dark.
I wish you can keep improve this great comic reader!!!!!!!!
Posted by: Steven | 2010.04.21 at 05:10
Cloudreader iPad is great
Can u add an option for cbz cbr where only one image is displayed
especially in portrait mode
Currently the image is indented to the side and a portion of the next image is seen
Thank you!!!
Posted by: Jf | 2010.04.21 at 11:29
cloudreaders使わさせて頂いてます!現状のiPadで一刻も早く、世の中に雑誌コンテンツを表示させるにはjpgのZIP形式が最速で低コスト。無料のcloudreadersも強い味方です。すばらしいアプリをありがとうございます。弊社サイトでも、cloudreadersの使用を推奨させて頂いてます。
ちょっと質問ですが、A3サイズなどの大きな誌面や、見開きで1枚のjpegを作った時などの解像度設定がなかなか上手く行きません。PCで見ると拡大して文字がはっきり見えているのに、cloudreadersに取り込んでみると、ぼやけて文字が読めなくなります。取り込み時に自動リサイズなどが掛かるようになっているのでしょうか。メールでも結構ですので、ご返信頂けるとウレシイです。
Posted by: hideaosan | 2010.06.29 at 00:46
CloudReadersを使用させていただいております。
資格勉強用の各種資料を閲覧するのに大変役立っています。
使い方について質問させてください。
タグ付けを一度したものの、そのタグ名に記載ミスがあり、該当タグを削除したのですが、
Bookshelfで文書を一覧すると、文書に旧タグ名が残ってしまっています。
これを修正することはできないのでしょうか。
また、不使用となったタグの削除のやり方があれば、教えてください。
Posted by: umetama | 2010.12.26 at 00:12