特にはっきりとしたビジネスモデルがあるわけでもないが、「とりあえず良いものを無料で提供して、たくさんの人に使っていただいて、それから考えよう」とリリースした、iPad用の手書きメモアプリneu.Notes。とりあえず当面の目標の「仕事効率化カテゴリーで1位」を達成(日本のアプリストア)。瞬間風速かも知れないが、Evernote、Dropboxなどの強豪がいるこのカテゴリーでの1位はうれしい。
iPadアプリの市場は、私が予想した通りのレッドオーシャン。有料だろうが無料だろうが、たくさんの人に使ってもらってランキングに載らないかぎり試合に出れない野球選手と同じ。これだけの数の玉石混淆のアプリが並ぶ中で「目立つ」ためには、単に「良いものを付くる」だけでなく、「どいういうシナリオで使ってもらうのか」「どうやったら使い続けてもらえるのか」を考えつつ、ユーザーの声を反映させながらこまめにアップデートして行く必要がある。この状況で本当の意味の「黒字企業」はごくわずかだ。
このneu.Notesだって、この業界のベテランの私とPeteの二人が無給でフルタイムで3ヶ月働いてようやくここまで来たわけで。これが普通の会社だったら、給料+諸経費で既に数百万は使っている計算になり、資金回収は簡単ではない(もちろん、ITゼネコンに頼めば最低5000万円はかかるし、とうてい3ヶ月じゃできない、という話は別のところで...)。
継続的にビジネスとして行うためにも、早く有料版を出したいとは思うのだが、まだまだ無料版を使ってやりたいこと、できることがあるのでしばらくの辛抱だ。リリースしたばかりの、iPhone版のneu.Notesもなかなかの検討をしているが、こちらももう少しユーザーを増やす必要がある(現在、同7位)。
もちろん、バージョンアップも定期的にして行く。現在、罫線とマップとの連携(「いまココ」機能)をサポートした version 1.4 のベータ版をテストしている所なので、1〜2週間後にはiTunesストアに並ぶと思う。
ちなみに、neu.Notesと並行して開発を進めているのは、neu.Notesの「姉」に相当する本格的なベクター・グラフィックスの描画アプリ(名前はまだない。ノスタルジックにCANDYにするという案もあるが、やめておこう)。
「ささっとメモを書く」というシナリオに重点に置いているneu.Notesと異なり、「出来上がりのきれいなベクター画像を作る」というシナリオに重点を置いているので、「描画済みのものを選択してさまざまな変更を加える」などの複雑な操作を(かつ、直感的なUIで)サポートしなければならないので、UIデザインも開発も簡単ではない。先週になって、ようやくいくつかの技術的な障壁を突破できたので、一息ついている所だ。
現在悩んでいるのは、具体的な商品のポジショニング。パソコンで言えば、Illustratorを目指すのか、Visioを目指すのか、それともPowerpointの作図機能に対抗するのか、というあたりである。もし、iPadを色々なものの作図・作画に使いたいと考えているユーザーの方でご要望やご意見、もしくは既存のアプリへのご不満などがあるのであれば、ぜひともこのエントリーのコメント欄などに書いていただけると助かる。
ちなみに、この描画モジュールは思いっきり使い回しがきく様に作ってあるので、それを活用すれば「オフィス家具レイアウトアプリ」「4コマ・マンガ作成ツール」「福笑い」「プリクラ」のような特殊用途のアプリも簡単にできる。そのあたりの共同開発の話もぼちぼちと始めようかと思う。
iPadに関しては、「ウェブサイトを閲覧したり、電子書籍を読んだりという『メディアの消費活動』には適しているが、『何かを作る』という部分ではパソコンにかなわない」という評価が一般的である。そういう評価を聞けば聞くほど「そんな考えが間違っていることを俺が証明してやろう」と思ってしまうアマノジャクな私である。最終的に目指すところは、もちろん「パソコン上のIllustratorとマウスで描くより、neu.XXXを使って指で描く方がずっと簡単じゃん」と言ってもらえるものを作ること。簡単な話ではないが、少なくとも何ヶ月間はそれに没頭する価値のあるプロジェクトだ。