日本のケータイが「ガラパゴス化」した本当の理由
逃げ切りメンタリティ

「ガラパゴス問題」に対する少し前向きな一考察

昨日の「日本のケータイが『ガラパゴス化』した本当の理由」には沢山のコメントをいただいたが、その中には、「じゃあ、日本はこれからどうすれば良いのか」という質問があったので、私の考えを少し書いてみる。

まず、ケータイやテレビのように消費者向けのデバイスを作るのであれば、世界規模でビジネスをすること以外は考えない方が良い。先のエントリーで書いた通り、日本の携帯メーカーは、単に「ソフトウェアの開発能力・デザイン・おもてなし」で負けているだけでなく、ビジネスの規模の違いから、部品の調達コスト・製造コストでAppleに大きく引きはなされているのだ。「悪かろう高かろう」では勝てるわけがない。

もし、日本のメーカーがAppleやSamsungと本気で戦おうとするのであれば、(1)コスト面での徹底的な合理化をはかり(役員のお抱え運転手を廃止する、年功序列で給料だけが高くなってしまった人たちに辞めてもらう、系列会社からのなあなあの部品調達をやめる、製造は中国にアウトソースする、ミーティングと仕様書作りに時間をかけるのをやめる、ボーナスを現金ではなくストックオプションで支払う、など)、(2)ソフトウェア重視の会社に大きく変革し(トップをソフトウェアが分かる人にする、ソフトウェアの開発を子会社や派遣社員に任せるのはやめて正社員に自らソフトウェアを書かせる、GoogleやMicrosoftから理工系の修士号・博士号を持ったトップエンジニアを高給で引き抜く、など)、(3)最初から海外でのマーケットシェアを死にものぐるいで取りに行く(AppleやSamsungに匹敵する規模での部品調達をして一気に勝負をかける)、ぐらいの極端なことをするべき。

しかし、そんなことをするとハードウェア全盛の時代に働き盛りだった40代50代の人たちは自分たちの居場所がなくなるし、万が一失敗した場合は自分たちの退職金も危うくなるわけで、今の経営陣にこんなことを言っても馬の耳に念仏。彼からからすれば、とにかく自分が円満退職するまで会社が存続してくれることがなによりも大切。余計な冒険などせずに、問題をできるだけ先送りにして、今のままの形で次世代にバトンタッチするのが一番の得策。そんな「逃げ切りメンタリティ」が今の日本をだめにしている。

などとネガティブなことばかり言っていてもしょうがないので、もう少し建設的なことを言うと、「ガラパゴス状態であるからこそ、世界にない進化をとげた技術・商品・サービス」に目を向けて、それを本気で海外でビジネスとして展開すべき。

ちょっと考えただけで、お財布ケータイ+スイカ、ウォシュレット、ワンセグ、瞬間湯沸かし器、コンビニ、やたらにおいしい果物(桃、イチゴなど)、などがある。日本に住んでいるとあたりまえすぎて気がつかないかもしれないが、日本企業が日本国内で「世界に誇るべきおもてなし」を提供している分野はまだまだたくさんある。それぞれのお国事情があるので、必ずしもそのままの形で普及するとは限らないが、すくなくともやってみる価値はあると思う。

特にお財布ケータイは米国でもかなり注目されており、ここ1〜2年が勝負(ひょっとするともう遅いかもしれないが)。日本のメーカーは例によって「技術力と実績」で懸命に売り込みをかけているとは思うが、大切なのは政治力とスピード。本気で取りに行くなら、「VISAとQualcommとの三者で合弁会社を作って力技でAT&TとVerizonに押し込む」みたいなことをするべき。お財布ケータイ回りのパテントと、強い円の力を持ってすれば、Qualcommあたりをたらし込むのは十分に可能だと思うんだがいかがだろう。

Comments

Kokorohamoe

リストラをしようとしても、妨げるのは正社員を守る法律。
その法律を守っている民主党を支持しているのは、労働組合。
その労働組合を支持しているのは、まさに、逃げ切り世代。
投票をするのも、組合を組むのも、何をするにも数が多いのが逃げ切り世代。
 
さて、そういう状況の中で、リストラをしても組合に裁判を起こされて無効判決が出たことがあるのが日本です。
したがって、現状の日本では構造的にJALのように破綻させるか、どこかの企業のように経営が危なくなる以外
大メーカーでリストラが行われるのは経営者がリストラしたいと願っても難しいとおもいます。
 
どこの企業もすでに数億円近い年収をすでにもらっており、いまささら、多少の金銭を逃げ切りを狙う経営者も多くはないと思います。
 
むかし、とんとんとからいと隣組、という制度が日本にはあったように。
隣の人の頭を抑えているのは、偉い人ではなく、隣の人の嫉妬と自己保身でした。
今の時代も同じです。
経営者がどうにもならないレベルの制度そのもの、同じ労働者そのものが、労働者そのものの頭を打っているのだと思います。
 

Tsurusawa

おサイフケータイについて言えば、海外のケータイメーカーにはFelicaはスルーされてます。彼らが主に開発を進めているのは、ISO/IEC 18092(NFC IP-1)の中のFelicaではないISO/IEC 14443 Type Aというプロトコルを使うもので、組み込み、SIM実装共にこちらが使われます。

欧州のオペレータもその方式で実証実験や商用導入を進めており、NYでパイロット試験されたり、at&t, Verizon, T-mobileが合弁会社(Isis)を作って推進するのもこちらの規格です。また日本でも免許証やパスポートに入っているのはFelicaじゃないですね。

【参考】
http://www.nfc-world.com/about/index.html
http://www.paywithisis.com/
http://www.readwriteweb.com/archives/iphone_payments_go_live_in_new_york_city_subways_t.php


ウォシュレットは自分も何故日本のメーカーは海外展開しないんだろう?と思ってましたが、欧州に住んでみて分かったのは、どこに行っても水洗タンクが壁に埋込みで、日本のようにタンクと配管がむき出しでないので数万円のウォシュレット付けるのに恐らく倍以上の工事費がかかるので、一般家庭への普及は難しいのだと思います。

たまに洗面台が近かったり、古い建物で便座の真横にビデ用の配管があるところは工事できなくもないと思いますが、それでも簡単ではないですし、一般人には敷居が高いと思います。

瞬間湯沸かし器は、スゴイという時間感覚がどの程度が分かりませんが、こちらの電気ポットは1Lくらいの水だと1分で沸きますよ。これを10秒でと言われてもなかなか良さが伝わらないかも知れませんね。

以上、ご参考まで。

TAK

新年あけましておめでとう御座います。関係者の方が 次々に亡くなられていますので、この場をお借りして 「ガラパゴス以前」の事実を 紹介申し上げます。

携帯電話の原点は 米国AMPSにあり、ベル研は その特許を無償公開、しかし 米国無線市場は 90% モトローラ社が占有していた為、その牙城を突き崩す為に、日本メーカー各社を OEM入札に招待。それ以前に ベル研出入りの 沖電気 及び その後 ベル研 シカゴ自動車電話試験に参画した 日立製作所の2社を選択。

一方 ノキア社は 会社が左前になり 社長さんは 首吊り自殺をしましたが、その当時 米国 RadioShack社との 韓国での AMPS車載電話合弁工場に注目して、事業を 自動車電話に切り替えたのが発端です。

上記 国内メーカー 2社は 電電公社の自動車電話市場より 閉め出されていました。

その後の市場は 今の携帯電話ですが、長い歴史から見ると、携帯電話は「過去の電卓」であり、その基地局は「過去のパソコン」に同じです。何れも 集積されたIC部品に 開発されたソフトを放り込むと製品化され、大手企業 及び IBM他 これらの事業より 撤退しており、Bメーカーに 市場は移管されています。

sis

これはホント日本のほとんどの産業に言えることですよね。
ウェブサービス作るにしても、最初から日本市場しか狙ってないところばかりだし。ドメインも当然.jp。ネットショップも海外配送・英語対応してるとこは皆無と言っていい。paypal対応も99.99%ない。
農業も自由化に文句言うばかりで、自分たちで輸出したりして新しい道を切り開こうとしてるとこなんてほとんどなくて、国からの援助を待つのみ。

なんか、基本的なところで、英語が出来ないことで、わざと外を見ないようにしてるとしか思えない。英語できるようになるだけでも海外市場の捉え方が容易になりそうな気がする。

世界市場でやれば、たとえ自国でうまくいかなくても別の国で成功する可能性もあるのにな。

PowerYOGA

ちょっと話は違うのですが、国家公務員のボーナスもストックオプションみたいなもので払うことができれば、国の借金問題も快方に向かうような気がするのですが...。

la dolce vita

面白かったです!

FeliCaについてはちょうど去年末に書いたので、ご興味あればぜひご覧ください。
http://www.ladolcevita.jp/blog/global/2010/12/felica3---1.php

>「VISAとQualcommとの三者で合弁会社を作って力技でAT&TとVerizonに押し込む」
アメリカで「モノ売り」ではなく「サービス」しようと思わないとこの発想にはならないですね。

D

今回は、的確な考察だと言えないと思う。

自分のおじいさんが、零戦の設計に関っていたので、日本の強み、弱点をよく知ってられた。

それによると、設計は、イギリスの設計図を辞書で翻訳しながら設計し、それをドイツ製の発電機で電気を起こし、アメリカ製の工作機械で加工するという感じだったそうだ。

ついでに、超々ジェラルミンは、海外から情報は流れていたそうです。

その、何かを改良したり、改善したり、安く作ることは、得意だったんですね。

創意工夫とか。

それで、僕が話したいのは、クオーツショックだと思う。

1970年代、日本の時計が精度、価格でも圧倒的に優勢だったのに、老舗メーカーに持ち直されたのは、戦略の違いだと思う。

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