コラム「独自フォーマット戦略の終焉」
2011.01.19
少しまえに、技術評論社のWEB+DB PRESSに「独自フォーマット戦略の終焉」というコラムを書いたのだが、それがウェブ上で公開されたので、ここにリンクを張っておく。
言いたい事は一通り書いておいたので、それに関してはそちらを読んでいただくとして、このコラムを書いた後に二つの新たな動きがあったので補足しておく
シャープが海外では ePub をサポートすることに決めたこと
これは当然と言えば当然だが、相変わらず日本国内では独自フォーマットのXMDFという戦略には私は賛成できない。「コンテンツを囲い込みたい」という気持ちも分かるが、コンテンツ・プロバイダーも賢くなっている今の時代、結局は自分の首を絞める事になると思う。それよりも、シャープという会社として、ePubなりHTML5のオープンなスタンダードに日本語特有の機能を実装して行くための人的資源を提供してそこでリーダーシップを取るという戦略の方が、業界全体のためにもなるし、シャープの業界での地位も上がるし、とても良い戦略だと思うのだがいかがだろうか?
前にも書いたが、この業界は「実装したもの勝ち」である。「アメリカ人にいくら縦書きの必要性を訴えても理解してもらえない」と愚痴をこぼしていても一向に改善しない、ePubやHTML5を実装する側に人を送り込んでどんどん実装して既成事実化するのが一番だ。
参考:XMDFの不幸
GoogleがH.264のサポートをストップすることを宣言したこと
Googleは「今の段階で H.264 をHTML5のビデオタグの標準として固めてしまうとイノベーションがストップしてしまう」という理由で H.264 をChromeブラウザーから外すことを宣言したが、これに関しては私も少し首を傾げている。せっかくMicrosoftもHTML5をサポートすることに決めたのだから、まずは H.264 をすべてのブラウザーでサポートして HTML5を(ビデオコーデックも含めて)広めること(ブラウザーの普及率を高める、HTML5を利用したコンテンツを増やすなど)が最優先だと思う。特にビデオコーデックに関しては、ハードウェア・アクセラレータの話もあるので、ユーザーのことを考えればまずは H.264 で手を打っておくべきに思えるのだが。
ただ、深読みすれば、H.264のパテントを持っているグループに対する「ごたごた言わずにパテントを完全にパブリックドメインにしちゃえよ」というプレッシャーを与えているブラフとも受け取れ、それはそれで面白い試みである(ちなみに私は「ソフトウェアパテント廃止」論者である)。しかし、このごたごたでHTML5のビデオタグが広く使われるようになるまでの期間が伸びるのはよろしくないと思うしだいである。
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