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ある電力会社OBのインタビュー:エイプリルフール編

(このエントリーは、2011年のエイプリルフール向けのものであり、ここに書いてあることは、すべてフィクションなので誤解しないでいただきたい)

私:今日は、お忙しい中、インタビューの時間を使っていただきありがとうございます。

OB: 気にしなくてもいいよ。こっちは引退した身だし、家にいても原発のニュースばかり見ているだけだしね。

私:ありがとうございます。さっそくですが、福島第一での事故に関してどう思われますか?

OB: 正直言って、私が現役の時に起こらなくて良かったと胸をなで下ろしているところだよ。まだ臨界状態にはなっていないようだが、それを除けば「考えられる限り最悪の事態」だよ。

私:今回の事故に関しては「人災だ」という意見もあるようですが、どう思われますか?

OB:君も知ってると思うが、日本の原発は耐震性に関してだけ言えば世界一だよ。今回は、たまたま1000年に一度の巨大津波が来て電源系統がおかしくなったからこんなことになったけど、津波さえなければマグニチュード9.0の地震にも耐えた、という部分に関しては評価して欲しいな。

私:しかし、津波の危険性に関しても以前から指摘した学者もいるわけでして...

OB:確かにそんな学者もいたのはたしかだけどね。しかし、今回の巨大津波みたいに「めったに起こらないこと」のために予算を使うのはとても難しいんだよ。万が一隕石が頭に落ちた時のために常にヘルメットをかぶっている人なんていないのと同じだよ。

私:でも「いつかはそんな巨大津波が来るんじゃないか」とは思わなかったんですか?

OB:そりゃ、まったく思っていなかったと言えば嘘になるけどね。漠然と「少なくとも私の現役中には来るはずがない、来ないで欲しい」とは感じていたと思う。まあ、実際に私の現役中には来なかったんだがね(笑)。

私:ちなみに少し話しは変わりますが、元福島県知事の佐藤栄佐久氏のことはご存知ですか。

OB:もちろんだよ。彼も最初は原発に賛成していたんだが、プルサーマルの導入のあたりから反対に回ったんだ。本当にけしからんやつだよ、彼は。

私:その佐藤氏の収賄疑惑に関してはどう思われますか?

OB:どう思われますかって言われても困るな。収賄疑惑そのものについては新聞に書かれていることぐらいしか知らないよ。でも、彼が知事を辞める事になったおかげでうちの会社が助かったというのは事実だよ。あのままだと、プルサーマルどころか、原発そのものを止めろという話になりかねなかったからね。

私:あの事件と担当した前田検事とは面識はありますか?

OB:そう来たか。うちが前田検事に頼んで佐藤くんを失脚させたとでも言いたいのか?残念ながらそんなことはないよ。前田くんは政治家を取っ捕まえるのが趣味なんだよ。小沢一郎の件も彼がしかけたそうじゃないか。それだけのことだよ。

私:しかし、あの事件で佐藤氏の弟さんから土地を購入した水谷建設って、福島第二の残土処理事件で問題になった業者ですよね。

OB:よく勉強してるね。水谷建設の連中とは私も何度も会ってるよ。

私:残土処理に関しては水増し請求だったのではないかと疑惑があがっていましたが、その件に関しては何かご存知ですか?

OB:確かにあれだけの土を運ぶのに60億円というのは水増しと言われてもしかたがないが、私企業間での取引なんだからなんのやましいところはないよ。勘違いしてもらっては困るが、あれは水増し請求が問題になったんじゃなくて、水谷の所得隠しが問題になっただけなんだ。

私:税務署としてはあのお金の使い道にかなり不透明な部分があったと解釈したようですが。

OB:あんなものは水谷が最初から使途不明金として処理していればなんの問題もなかったんだよ。税金を払うのがいやだったばかりに、架空のコンサルタント料とかをねつ造するから税務署ににらまれた。

私:実際にはどんなところに使われたんでしょう?

OB:そこまでは把握してないし、知りたくもないよ。うちとしては、福島での原発の建設をスムーズにするためにあれだけのお金を水谷に払っているだけの話で、それをどう使うかは水谷しだいさ。

私:「裏金」と解釈してよろしいでしょうか。

OB:そういう言い方は辞めて欲しいな。水増し請求の件だって、単に「残土処理代金」と呼んだからケチがついたわけで、「残土処理代金+コンサルタント料」と呼んでおけば誰も文句は言えなかったんだから。

私:ちなみに、水谷建設の接待攻勢はすごかったというのは本当でしょうか。

OB:確かに、私も接待は何度も受けたが、それも私企業間の取引で許される範囲のこと。リベートのようなものだけは一切受け取っていないよ。私だって後ろに手が回るのはいやだからね。

私:佐藤栄佐久氏の収賄疑惑はでっちあげだった、という説もあるようですが、どう思われます?

OB:君は、どうしてもうちが佐藤くんを失脚させるために水谷建設と前田検事とぐるになって収賄容疑をでっちあげた、というストーリーを聞きたいようだが、そんなきたないことにうちが直接手を染めるはずがないじゃないか。

私:では、間接的にはあると。

OB:とんでもないよ。確かに水谷の連中には、「県内の原発反対派を何とかして欲しい」とは頼んだけど、佐藤くんの弟からの土地の購入は水谷建設が勝手にやったこと。私の知るところじゃないよ。だいたい、あの時の購入価格は適正価格だったということで裁判所で決着がついたそうじゃないか。収賄でもなんでもないものを収賄にしたてあげたのは前田検事。彼の暴走だよ。

私:しかし、あの収賄疑惑のおかげで佐藤氏は知事の座を失い、その結果として福島第一でのプルサーマルも実現したわけで、御社としてはメリットがあったと言えますよね。

OB:そんな「風がふけば桶屋がもうかる」みたいなことを言われても困るよ、君。

私:ちなみに、小沢一郎氏の収賄疑惑でも水谷建設の名前が出ているようですが、何かご存知ですか?

OB:私が知るわけがないだろう。まあ、小沢一郎ぐらいになると敵も多いだろうから、しょうがないんじゃないのか?

私:しかし、佐藤氏の収賄疑惑と小沢氏の収賄疑惑件には妙な共通点があるのが不思議でしかたがないんですよね。両方とも前田検事が担当しているし、収賄側はどちらも水谷建設だし。

OB:何が言いたいんだね、君は?前田検事が水谷建設が組んで収賄をねつ造しまくっているとでも言いたいのか?考えすぎだよ。

私:本当に前田検事とは面識がなかったんですか?先ほど「前田くん」と呼ばれていたようですが...

OB:ないといっただろう。しつこいな、君は。もうそろそろインタビューを終わりにしてくれないか。

私:最後にひとつだけ。プルサーマルに関してはどうお考えですか?

OB:あれは霞ヶ関の連中が作り出した詭弁(きべん)だよ。高速増殖炉があんな状態になったたためにプルトニウムがあまっているから、しかたがなくウランと一緒に燃やすだけの話だよ。電力会社としては、あんな危ないもの本当は欲しくないんだ。

私:ほしくもないのに、なぜ地元の反対を押し切ってまでプルサーマルを推進するんですか?

OB:それはプルサーマルと使用済み核燃料の処理がセットだからだよ。日本の原発では、毎年1000トンの使用済み核燃料が発生しているんだ。日本にはそれを捨てる場所がないから、六ヶ所村の再処理施設に引き取ってもらうんだが、そこで精製したプルトニウムを買い取らなければならないんだ。

私:義務なんですか?

OB:厳密には義務ではないけど、いったん原発を始めてしまった日本の電力会社は運命共同体だよ。原発の結果できたゴミを捨てる場所がないから、再処理場でプルトニウムという形でリサイクルして、それをまた原発で燃やすしかないんだよ。

私:でも本当にリサイクルできているならいいじゃないですか?

OB:そこが難しいんだが、再処理をする時に、プルトニウムの他に大量の放射性廃棄物がでるんだ。

私:それはどうしているんですか?

OB:低レベルのものは埋めたり海に流したりしているけど、高レベルのものはとりあえず保管してあるらしい。

私:とりあえず保管、って将来はどうするんですか?

OB:地下に巨大なゴミ捨て場を作ってそこに捨てるという構想はあるらしいけど、莫大なコストがかかるんで、実現はまだしばらく先だよ。

私:それって、問題の先送りじゃないんですか?

OB:そういう言い方もあるな。実際のところ霞ヶ関の連中も頭を抱えていると思うよ。

私:そうなんですか。

OB:じゃあ、そろそろいいかな?

私:はい、最後にもう一つだけ。これからの日本の原発はどうなるんでしょう?

OB:難しいだろうね、今のまま進めるのは。福島第一だけでなく、他の原発も止めろという話にならざるをえないんじゃないかな。

私:そうですか。今日は本当にありがとうございました。

(ここでインタビューは終了。ここからはオフレコ)

私:今日は、お疲れさまでした。良い勉強になりました。ちなみに、このたび何か新しいビジネスを始められるということですが、どんなビジネスでしょうか?

OB:もちろん「廃炉ビジネス」だよ、「廃炉ビジネス」。原発を一つ廃炉にするだけで数百億のビジネスになるからね。これから十数年の間に、1兆円以上の金が「廃炉ビジネス」に落ちるのは確実だよ。今日もこれから中国に飛んで、下請け業者との交渉に入るんだ。厚生労働省も日本人の被曝量に関しては「なんたらシーベルト」とか、うるさく言って来るが、外国人なら甘く見てくれるからな(笑)。

 

◇ ◇ ◇

冗談はさておき、岩波書店がいくつかの貴重な資料を無料で公開しているので、ぜひともお読みいただきたい。

原発震災 ー  1997年に書かれたものだが、今回の事故を予見するような「原発にとって大地震が恐ろしいのは、強烈な地震動による個別的な損傷もさることながら、平常時の事故と違って、無数の故障の可能性のいくつもが同時多発することだろう。とくに、ある事故とそのバックアップ機能の事故の同時発生、たとえば外部電源が泊まり、ディーゼル発電機が動かず、バッテリーも機能しないというような事態がおこりかねない」という適切な指摘がある。最後には「そもそも民意が政策決定に反映されにくい日本では、政府が原発推進を堅持し、原子力産業の圧力が強大で、立地地域の経済が原発にどっぷりと依存させられているため...」と書いてある。

最後にキヨシローからひと言。


これであなたも原子力安全・保安院

Scouter
放射線量や被曝量がドラゴンボールのスカウターの数値のように一桁づつ大きくなるにも関らず、「健康には影響がない」と言い続ける原子力安全・保安院。何度も聞いているうちに、あるパターンがあることに気がついた。「被曝量を記者会見で話す時にはこうやって説明する」という虎の巻のようなものがあるに違いない。そこで、その虎の巻を彼らの過去の発言からリバース・エンジニアリングしてみた。

1μSv (マイクロシーベルト)

胸部X線検診1回に受ける放射線量(50μSv)の50分の1。健康には全く影響がない。

10μSv(マイクロシーベルト)

胃のX線検診1回に受ける放射線量(600μSv)の60分の1。健康には全く影響がない。

100μSv(マイクロシーベルト)

胸部X線CTスキャン1回に受ける放射線量(6.7mSv)の約70分の1。健康には全く影響がない。

1mSv (ミリシーベルト)

放射線業務に従事する人の年間被曝量(50mSv)の50分の1。健康には影響がない。

10mSv (ミリシーベルト)

厚生労働省が特別に設定した、福島第一原発で働く人たちの許容被曝量(250mSv)の25分の1。健康にはほとんど影響がない。

100mSv(ミリシーベルト)

リンパ球が減るとされている被曝量(1Sv)の10分の1。ただちに健康に影響が出るレベルではない。

1Sv (シーベルト)

48時間に死亡するとされる被曝量(50 Sv)の50分の1。ただちに生死にかかわる状態になるレベルではない。

10 Sv (シーベルト)以上

被爆者はすぐに病院に運ばれたが、正確な被曝量は不明。

 

◇ ◇ ◇

 

冗談はさておき、実際に健康に影響が出ると言われているレベルは100ミリシーベルトなのでこの数字は覚えておくと良い。平常時に放射線業務に従事する人の年間被曝許容量が50ミリシーベルトに定められているのはこれが理由(ただし、妊娠可能な女性は5ミリシーベルト、妊婦は1ミリシーベルト。参照)。

放射線を浴びるとその被曝量に応じた数の細胞が破壊されるが、人間には細胞の修復能力があるので、すべての細胞が癌になるとは限らない。同じ100ミリシーベルトでも、短期間に被曝した場合と、長期に渡って少しずつ被曝した場合では、前者の方が危険性が高いのはその修復が間に合わなくなってしまうから。

福島第一原発ではすでに17人の人がわずか数日の間に100ミリシーベルト以上被曝してしまっているという状態で、彼らは日本国民のためにまさに「命がけ」の戦いをしていると言える。

ちなみに、被曝量の単位はミリシーベルト(mSv)だが、放射線の強さは毎時ミリシーベルト(mSv/h)なので誤解しては行けない。少し前に福島第一原発から30キロメートル離れたところで毎時100マイクロシーベルトの放射線が計測されたが、これは1時間あたりの被曝量なので、そこで10時間外に立っていると1ミリシーベルト(1000マイクロシーベルト)の被曝を受けるという計算になる。

その意味では、毎時100マイクロシーベルトは確かに「すぐに健康に影響が出るレベルではない」が、そんな環境で1日10時間のペースで農作業を100日すると、「健康に影響が出る」と言われている100ミリシーベルトになってしまうので、注意が必要だ。

ちなみに、こんな原発災害を繰り替えさないためには、私たち一人一人がもう少し原発問題をちゃんと理解する必要がある、という呼びかけ No More Fukushima (ノーモア・フクシマ)をしているので、そちらもぜひとも参照していただきたい。 


脱原子力宣言

今回の原発災害についていろいろと調査・考察を積み重ねて行くうちに、一つのことが明らかになってきた。私自身を含めて、これまで大半の日本人(特に首都圏に住む人たちが)が、原発問題を「特定の地方の問題」として軽視して来たという不都合な真実である。

今回の原発災害の根底にある問題をきちんと見つめれば見つめるほど、これは決して他人事ではなく、電気を消費する立場にある日本人全員がもっと真剣に向き合わなければいけない重要な問題だという事が明らになる。

そこで、私自身も含めた「今まで原発問題を他人事として軽視して来た人たち」に向けたメッセージを書いて見たので、ぜひともご一読いただきたい。

脱原子力宣言

当然、賛成される方も反対される方もあるとは思うし、私が見逃している点もあると思うので、活発な議論をお願いした。ただし、コメントはこのエントリーにではなく、リンク先のFacebook Noteに直接お願いする(Facebookへの登録が必要)。


この危機的状況にブロガーとして出来る事は何か

今朝、「AMNの徳力氏からAMNというブロガーネットワークとして何ができるか」というメールが届いていたので、それについてここ数日考えて来たことをまとめて見たいと思う。

私はそもそもあまりボランティア活動とかには積極的に参加するタイプではないが、さすがに今回は「自分に何ができるだろう」と考えさせられた。

そうは言ってもあまり大それたことを考えても思考停止に陥ってしまいそうなので、まずは自分が一番得意とすること(=理科系うんちく)を活用して、福島原発危機に関しての解説をFacebookページで始めた(参照)。

最初は、「もっと何か直接役に立つことができるはず」と考えながら書いていたのだが、訪れる人のコメントを読んでいるうちに、実はこれ(=情報の提供)が私にできる最も有用なことだ、と気がついた。

人にはそれぞれ得意なことがある。人並みはずれた体力を持ち、災害救助で10人力の働きが出来る人。被災地の人の心が良く分かり、話すだけで精神的なケアを与える能力を持つ人。日本全国にネットワークを持ち、被災地への物資の流通の改善に大きく貢献できる人。

そう考えてみると、私の場合、

  1. プログラムを書くこと → これは何の役にもたたない
  2. 理科系頭なこと → 原発危機に関して短期間で専門家に近い知識を吸収すること可能
  3. 人に何かを分かりやすく解説すること → 政府や東電から発信される分かりにくい情報を噛み砕いて説明することができる
  4. 多くの理科系読者を持つ → 彼らを通じて私が学んだ情報を広めることができる

というロジックで考えば、「福島原発危機に関しての理科系うんちく」はまさに私がすべき仕事だということが分かる。

もちろん、それぞれのブロガーで得意なことは違うだろうから当然「できること」「すべきこと」は違って来ると思うが、役に立ちそうもないブロガーにもできることはある、ということを伝えたいと思ったしだいである。

ちなみに、せっかくだから書いておくが、東電も政府も精一杯のことをしているので、彼らの言う事を信頼して、冷静に行動するべき、ということを強調しておきたい。特に被災地以外に住んでいる人は、(1)できるだけ節電をする、(2)生活必需品の買い占めはしない、(3)やたらと政府や東電の批判をして回りの人の不信感・不安感を高めない、ことが大切。「政府の言う事は信頼できない」と皆が疑心暗鬼になっていると、いざという時にパニックに陥り、逆に被害を甚大にする。


福島第一原発での事故についてFacebookで解説をしています

今回の災害について、いろいろと思うところもあるが、津波や災害救助の方は私の専門ではないので、今回は福島第一・第二原発でのトラブルについていろいろと勉強しつつ、わたしなりの解説・コメントをFacebookでし始めた。できるだけ分かりやすく解説しているつもりなので、東電や政府からの報告だけでは理解しがたいと感じている人はどうぞ。コメントやディスカッションも歓迎である。

ちなみに、今回のトラブルに関しては、東電の技術者の方たちに頑張っていただきたい、のひと言である。機械的に開けることができなくなったベントを手動で解放した時に、多量の放射線をあびてしまった人など、文字通り命がけの仕事をしているので、ここは彼らの成功を祈るしかない。

今回の事故が、スリーマイル程度の事故で済むのか(レベル5)、チェルノブイリなみの事故に発展してしまうのか(レベル7)は、地元の人々への影響はもちろんのこと、日本だけでなく世界のエネルギー政策に大きな影響を与えることは確実。「今回の事故を教訓に原子力発電をより安全なものにする」という前向きな方向に進むのか、「やはり原子力は危ない」という消極的な方向に向かうのかを決める正念場だ。

 


出版のお知らせ:「エンジニアとしての生き方」本

インプレスから「エンジニアとしての生き方」という本を出したので、宣伝させていただく。前にもここで紹介した「逃げ切りメンタリティ」という言葉を最初に使った書籍である。

ブログのエントリー、雑誌のコラム、そして書き下ろしの文章から構成された本だが、主となるメッセージは「これからはソフトウェア・エンジニアという職業はますます重要になる。自分の人材市場における価値を高く保ち続けるための努力を惜しまず、上司や政治家に頼らずに自分の道を自ら切り開いて行こう」というストレートなものだ。

日本には、ものすごく優秀なのに低賃金でこき使われているエンジニアもいれば、逆にソフトウェアのことが好きでもない人が「つらい、厳しい」と文句を言いながら長時間ソフトウェアを書いていたりもする。一方米国だと、優秀なエンジニアは引っぱりダコだが、まともなソフトウェアが書けない人はすぐにクビになる。

必ずしもどちらが良いとは簡単には言い切れない話だが、常に広い視野を持って、自分が本当は何がやりたいのか、自分の才能を活かすにはどんな仕事に就くべきか、どこで働くべきかを考えておくことはとても大切だと思う。日々の仕事に負われているエンジニアたちが、ちょっと立ち止まって自分自身のキャリア・パスのことを考えるきっかけに本書がなってくれれば最高である。

ちなみに、このタイトルだが、私は「ガラパゴス脱出論:日本を捨てて日本を救えーこれからのグローバル・エンジニアの生き方」を提案したのだが、「それって、ベストセラー狙いのダイアモンド社の書籍のタイトルみたいですよね」と軽く却下されてしまい、結局このタイトルに落ち着いたという経緯がある。私は、あの女子マネの「ドラッカー本」を企画した人は天才だと思っているのだが...


Facebookに「Life is beautiful」ページを作りました

Neu-2.Draw ずいぶん前から、「ブログより手軽で、Twitterよりもちゃんと双方向のコミュニケーションが取れるメディア」というものを探していたのだが、なかなか良いものが見つからないので、しばらくFacebookのWallで代用してきた。

私のFriend-listに入っている人としかコミュニケーションできないとは言え、手軽さもそこの生まれるコミュニケーションもちょうど良い案配だ。

とはいえ、そこで生まれる会話を一般公開しないというのももったいないので、プライベートなものを除く、Facebook ページという形で外に流すことにした。

ページのURLは、http://www.facebook.com/fb.life.is.beautiful。Facebookアカウントを持っている人は、「いいね」ボタンを押した上で、ディスカッションに積極的に加わっていただきたい。

基本的には、私が気になると思った記事(多くの場合が英語の記事)のリンクに簡単に日本語で解説もしくは意見を書くという形で、このページのWallエントリーを一日にいくつか書くつもりだ。それを単にROMしていただいても良いし、コメント欄を使って意見表明やディスカッションをしていただければなお良いと思う。

ソフトウェア・ウェブ・モバイル・家電・ゲームなどのさまざまな業界の人たちが活発にコミュケーションできる「場」が作れれば良いと考えている。


CloudReaders 1.21の「非公式」動画サポート機能について

1.20でBluetoothを使ったiPad/iPhone間の「P2Pファイル転送機能」を可能にしたCloudReadersだが(詳細)、いくつか細かなバグが報告されて来たのでそれに対応したものを 1.21 としてリリースしたので今日はその報告(iTunesストアへのリンク)。

具体的には、

  • 一つしかファイルを転送していないのに、二つエントリーが出来てしまう場合がある
  • ファイル転送したときにファイル名が維持されない

という二点のバグの修正である。特に最初の方のバグは、Wifiを使ったアップロードの際にも生じることがあることが報告されていたのだが、なかなか再現できず困っていた。しかし、今回のバグレポートに基づいていくつかの例を試したところ、再現が可能になり、おかげでバグを修正することができた。大変ありがたい(ちなみに、バグの原因は、iOSのファイルシステムが日本語の「濁点」を勝手に正規化してしまうのが原因であった。再現しにくいわけだ!)。

ちなみに、今回のリリースは、予定していたものではないので、公式には1.30に入れる予定だった動画サポートが入っている。サポートするフォーマットは、iOSがネーティブでサポートしている(つまりポットキャストビデオで採用されている)、mov、 mp4、 m4v の3種類。もちろん「P2Pファイル転送機能」を使って、iPhone/iPad間で動画の交換も可能だ。また、CloudReadersは各書籍に「どこまで読んだか」を示すインジケータをもうけているが、それをそのまま「どこまで観たか」として流用しているのも特徴だ。

まだテストが不十分なので、何か不具合が見つかった場合はこのエントリーのコメント欄にでも報告していただけると助かる。他のアプリからファイルを渡す "Open with..."はまだサポートしていない。

ちなみに今回は、バグを修正した部分だけをアップルに審査してもらい、一日でも速くをユーザーの皆さんに届けることを優先するためにこうなったのだが、結果として「新機能を非公式な形でリリースする」という結果になったのはなかなか興味深い。常に使える手段ではないが、場合によっては幅広くベータテストをする「裏技」として意図的に使うのも悪くないかも知れない。