電通とリクルートと無料アプリビジネスと
2011.04.29
成田空港の本屋で時間つぶしをしている時になにげなくタイトルに引かれて買った本だが、久しぶりに中身のある、得るところの多い本だったのでここで紹介。
広告やマーケティングに関する実用書は巷にあふれているが、SEOだのソシアル・マーケティングだのの「小手先のテクニック」を述べたものばかり。その手のテクニックを学ぶことにもそれなりの価値があるが、「なぜそんなテクニックが効果的なのか」という本質的な部分を知っているのと知らずにいるのとでは、応用力や適用力に大きな差が出る。
そんな広告の「なぜ」の部分を一歩も二歩も踏み込んで理解を深めたい人にはこの本は最適だ。マスメディア広告の王者である電通と、インターネット以前から「情報誌」という形で「消費者が自ら読む広告」ビジネスを作り出したリクルートを題材に、マスメディアからインターネットへの広告ビジネスの移り変わりを描く本誌は、ネットビジネスや無料アプリビジネスに関る人に、いくつかの重要な「気づき」を与えてくれるはずだ。
たとえば、本文中のこんな文章(181頁)。
たしかにマス広告におけるコミュニケーションとは、ある意味「いい加減」なものである。美しい女優が宣伝している化粧品を買ったのに「あんなにきれいになれない」と嘆いたりクレームをつけたりする人はいない。それが偽リアリティの約束だからだ。しかし、ネットランキング上位の化粧品がきにいらない人の嘆きは深い。…(以下略)
美しい女優を使い「夢」を売るマス広告は、誰もが夢を見ていた高度成長期には効果的だったのかも知れないが、物があふれ、たとえ多くの物を手に入れたところでそこにはテレビコマーシャルで描かれているような世界が広がっているわけではないという現実を知ってしまった今の人たちには、「実際に肌がきれいになるのか」「どの店が一番安いのか」という情報の方がはるかに重要であり、購買意欲をそそるのである。
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