政府の初動の悪さが生んだ大量の被曝者
2011.05.04
SPEEDIによるデータを公開しなかった理由は「パニックを恐れて」と聞いたが、SPEEDIによるデータをちゃんと利用せずに適切な避難指示を出さなかった国の責任は重い。
私の記録では、30キロ圏外でも浪江町や飯舘村の一部では、3月18日の時点で150μS/hという高い放射線が観測されていた(文部科学省発表の公式データ←【追記:URLを追加しました】)。当時、国は「ただちに健康に影響の出るレベルではない」と言っていたが、文科省が今回使った8時間屋外、16時間屋内(屋外の40%の放射線量)という数値を使って計算すれば、そのあたりに住む人たちは、妊婦や子供も含めて、3月18日だけで2.2mSの外部被曝を受けていたという計算になる。
今は30μS/h以下に下がっていることから考えると、その差(約120μS/h)は半減期の短い放射性ヨウ素からのものと考えて良いので、3号機から大量に放射性物質が放出された3月14日から今日までの放射線の強さはエクセルを使って簡単に計算できる(放射性セシウムからの分を一定とし、放射性ヨウ素の分だけを1日ごとに0.917倍して行けば良い。0.917=1/2^(1/8))。
19日の被曝量は18日の被曝量から逆算して、2.0mSv、逆に17日は2.3mSvという計算だ。これを使って3月14日から今日(5月5日)までの積算を計算すると51mSvとなり、外部被曝だけで、今回文部省が「緊急時に一般人が1年間に被曝して良い上限」の20mSvをはるかに超えてしまっている。放射性物質を含んだホコリを吸い込んだために起こる内部被曝を加えれば、もっと高い値になるはずだ。
ちなみに、この計算によると、実際に積算被曝量が20mSvを超えたのは、9日目の3月23日。SPEEDIのデータの公開うんぬんよりも、18日の時点で150μS/hという高い放射線が30キロ圏外で観測された時点で、少なくともその地域から妊婦と子供だけでも避難させるべきであったのは明確である。原発災害での初動の大切さはまさにここにある。
専門家を抱え、18日の時点でそういうデータを持ちながらも、浪江町や飯舘村の高汚染地域に避難命令を出さなかった政府は怠慢としか言いようがない。「パニックを起こさないために公開しなかった」というのは単なる言い訳に過ぎない。浪江町や飯舘村の人たちに外部被曝だけで既に50mSvを越す被曝をさせてしまった国(特に保安院を抱える経済産業省、子供たちを守るべき文部科学省、そして国民の健康を守るべき厚生労働省)の責任は重い。
はてブの左翼の擁護っぷりが気持ち悪い
Posted by: 2chねら | 2011.05.05 at 15:12
リンクを掲載していただきありがとうございます。
Posted by: ssuguru | 2011.05.05 at 16:25
国家は、パニックが起こるパニックに陥っている。
著名なエンジニアによる、こうしたエントリーは、非常に心強い。
Posted by: chikaram | 2011.05.06 at 06:22
文部科学省の「16時間屋内(屋外の40%の放射線量)」は怪しいです。
一般的な木造家屋の低減係数は0.9。ほとんど効果がありません。
http://www.city.omaezaki.shizuoka.jp/bosai/bousaikeikaku/data/shiryo/020003.htm
*0.4ではなく*0.9で再計算すべきでしょう。
また、文部科学省は内部被曝(吸入、食料品)の考慮をほとんどしていません。汚染地域での吸入での内部被曝は外部被曝と同等以上になりますので、上記再計算の数値が最低2倍以上になります。
そこに水食料等の経口摂取分の内部被曝をさらに上乗せ。
20mmとして議論されている場所の内部外部併せた被曝量は、実際には20mmどころではないという事です。
子供の場合、放射線に対する感受性は数倍で考える必要があります。
数年後、いわゆる「20mmライン」前後の子供はとんでもない発病率となるでしょう。
Posted by: AT | 2011.05.07 at 01:19
うわ、恥ずかしい。
20mSv/hです。申し訳ない。なんでこんなミスを。吊りたい…。
Posted by: AT | 2011.05.07 at 01:20
慌てて訂正して、さらに墓穴。
20mSv/年のライン、ですね。
もう最悪。ごめんなさい、消して下さい…。
Posted by: AT | 2011.05.07 at 01:22
SPEEDIは地震でモニタリングポストが壊れてデータなんかなかったんですよ。細野豪志が説明してたでしょ。
Posted by: ogayuki7 | 2011.05.10 at 06:40
原発関係の記事で、私が説得力あるなぁと感じたものをご紹介します。
http://diamond.jp/articles/-/12199
これも、多数ある記事のなかの、「あるひとつ」にすぎませんが。
出所がはっきりしているデータを元にしているのが、説得力につながっているのでしょうか。
Posted by: yasyas | 2011.05.11 at 21:46