私が事故後、脱原発派に転向した一番の理由
エンジニアの役割

脱原発への具体的な道筋

脱原発の話をすると、すぐに「脱原発派には具体的なプランがない」「再生可能エネルギーは高すぎて、補助金なしでは成り立たない」「狭い日本では、再生可能エネルギーは無理」「再生可能エネルギーでやっていけるという詳細な試算はあるのか」「CO2が増えてもいいのか」「大停電が起こる」「日本経済が失速する」などのヒステリックな答えが返ってくる。逆に、脱原発を主張する人の中には「危険な原発はすぐにすべてを止めて、それを太陽エネルギーで不足分はまかなう」などと極端なことを言う人もいるが、問題はそんなに簡単ではない。原発を止めるにしろ続けるにしろ、もっと冷静に、日本の将来を考えた議論をする必要がある。

現時点で最も大切なことは「現実的な脱原発」とは何かを良く考え抜いた上で、「簡単ではないが十分に達成可能なゴール」を設定し、「実行可能なプラン」を建てること。

そのためには、単に原発をヒステリックに止めるのではなく、「原発への依存度を減らしながら、どうやってここ数年間の電力需要をどうまかなうか」という短期的な問題を解決する現実的なプランと、「20年後、30年後の日本はどうあるべきか」という長期的なビジョンの両方を持つ事が必要である。そして「そのビジョンの実現に向けて、今何をしなければいけないか」を真剣に考え、かつ実行して行く必要がある。

(1)原発への依存度を減らしながら、どうやってここ数年間の電力需要をどうまかなうか

これに関しては、「安全が確認された原発を再稼働させながらも、原発を段階的に減らし、その不足分を天然ガスによる火力発電所の増設などで補う」というのが最も現実的な答えである。もちろん、原発を一切使わずに来年の冬と夏を乗り越えることができるのであれば、その方が好ましいが、それが現実的に可能かどうかは微妙なところである。

短期的にはCO2の排出量は増えてしまうしが、そこに関しては緊急事態ということで国際社会の理解を得るように努力するしかない。

ちなみに、原発の安全確認(ストレステスト)は、今の原子力安全保安院に任せていては全くだめである。来年の4月などと悠長なことを言わずに、すぐにでも経産省から切り離した形の新しい組織を作り、そこで「国民の安全」を最優先し、現存する原発すべての安全性を徹底的に検証する必要がある。老朽化したもの、福島第一と同じようなシビアアクシデントを起こす可能性があるものは容赦せず廃炉し、本当の意味で「安全」と確認できたものだけを火力発電による補充が整うまでのつなぎとして運転して行く。今までのように「必要だから安全」という詭弁はもう通じない。

火力発電所はゼロから作ったとしても、3年程度で本格稼働が可能になるので(参照)、長くても5年以内に(2016年末までに)、国内の原発のすべてを止めることは十分可能だ。

(2)20年後、30年後の日本はどうあるべきか

これに関しては、日本の将来を決めるとても大切なことなので、多くの議論を戦わせる必要があるが、「たたき台」として私が提案したいビジョンはこれ。

  •  太陽光、風力、地熱、小規模水力などの自然・再生可能エネルギーに積極的に投資し、10〜15年後(2021年〜2026年)までにそれらの発電コストが「火力発電よりも安い」「政府の補助金なしでも経済的に成り立つ」状態になんとしでも持って行く。これの実現可能性に関してはさまざまな意見があるが、今のペースで技術が進歩して行けば2013年〜2025年には達成できると多くの研究者が予想しており(参照参照)、「簡単ではないが十分に達成可能なゴール」としては設定するには適切なレベルである。また、そういう進化圧を与えることにより、コスト削減に必要な知恵や技術を知的所有権として蓄積し、将来の国力とする。
  • 利権が中央に集中しないように、太陽光、風力、地熱、水力などの自然のエネルギーを使う「自然エネルギー利用権」を、農業・林業・漁業などの第一次産業、および観光業などを営む人たちに分散して与える。目指すは「沿岸の漁業権を持つ漁協が風力を利用した洋上発電ビジネスを行い、温泉宿の経営者たちが共同で地熱発電所を経営する」などにより地方が潤い、地域格差や過疎化が解消される世の中だ。
  • 原発をすべて止めた2016年以降、エネルギーの自給率は必ず毎年、少なくとも2%上昇させる。 これを毎年着実に達成できれば、2050年には自給率は70%を超える。
  • 自然エネルギーの利用に必要な発電・送電・蓄電技術を21世紀の日本の輸出産業の中核に置き、研究投資を政府としても積極的に行い、民間からの投資も積極的に行われるような仕組みを作る。

(3)そのビジョンの実現に向けて、今何をしなければいけないか

まだまだ詰めなければならないことは沢山あるが、当面すぐにでも実行しなければならないのは、以下のようなもの。

  • 原子力安全保安院の経産省からの切り離し
  • 東電の破綻処理、発送電ビジネスの分離
  • 短中期の需要を補うための火力発電所の増設(ガス会社の発電ビジネスへの本格参入)
  • 今まで原子力に集中して投資して来た国の予算(年間約4000億円)を100%再生可能エネルギーへの投資に変更
  • 自然エネルギーの利用コストを下げるために必要なさまざまな法律の改正

 とにかく大切な事は「自然エネルギーの利用コスト」を1円でも安くするために、日本中の知恵を結集し、さまざまな投資を積極的にすること。政府からの補助金や固定価格買い取り制度は、永遠にあるものではなく「需要を人為的に増やして大量生産によりコストを下げる」ための道具にすぎないことを忘れてはならない。自然エネルギーの利用コストを下げてエネルギーの自給率を上げる事、そしてコストを下げるのに必要な技術を開発し知的所有権を蓄積することが、日本の国防上、そして国際競争力を高めるという面でとても重要である。

Comments

ももん我

>10〜15年後までにそれらの発電コストが「火力発電よりも安い」
「政府の補助金なしでも経済的に成り立つ」状態になんとしでも持って行く。

そんな近い将来に夢のような技術革新があるなら、
自然エネルギー関連企業の株は暴騰しているはずです。
太陽光のエネルギー変換効率の進歩は15年間で10%で、進歩は鈍っています。
自然エネルギーの推進に貢献されている方を尊敬していますが、
反対派の人や他人の税金で推めるのは問題があります。
補助金で食べている研究者の未来予測の信憑性に疑問を感じます。
実績を考慮しない予測に頼るのは大変危険ではないでしょうか。

Goro Otsubo

自然エネルギーの過去数十年に渡る発達の歴史を本当に自分で調べて意見を書いていますでしょうか?それがたった後2−7年で火力発電よりコストが下がり経済的に回るようになるとの主張にはとても賛同しかねます。
「なんとしでも持って行く。」では「大東亜共栄圏を構築し、自立を図る」という主張となんら変わるところはありません。

ペブルベッド

核廃棄物 核燃料リサイクル それもまた同じような時間で解決し、安全を獲得できるとも思えない。
たとえ新型原子炉を導入するとしても人災を防ぐ組織の仕組みや社会を実現してからお願いしたい。

スイーツ

「電気事業法の総括原価法式」が無駄な資産を増やすインセンティブとなり、安定的な利益拡大による利権者の拡大に繋がったと思っております。

また、議論を行う上で情報開示も必要と思います。
・発電のコスト計算(モデル計算ではなく実績値)
・電力の需要と供給の詳細分布(マイクログリッド化に必須)

もう考慮されての事かもしれませんが、
もしよろしければ当面急ぐべき末席にでもお加え頂ければ幸いです。


j_tano

逆に、ももん我さんに聞くけど、私が納めてる税金を可能性のうすい、もんじゅに使ってしまったのは、問題じゃないの?
個人の意思と違っても、国家として行ってる事業は腐るほどあるでしょうに。

それから中島さんが参考URLで使って15年後の目標に言及しているんだから、それを参照せずの反論は意味がありません。「引用されたURL にはxxという間違いがあります」という書き方できないかな。

ウランも輸入原料で、破棄はモンゴルに頼るしかない、国家安全保障的にどうなのよ、っていうことなんだから、自然エネルギーに原発並みの補助金つけて何が悪いのかな。自然エネルギー企業の株が上がらんのも、ドイツに抜かれたの国家の意思がないから

ももん我

レベルの低い見立てになりますが、 j_tanoさんにお答えします。
>もんじゅに使ってしまったのは、問題じゃないの?
当然問題です。wikiでは「掛かった総予算としては約2兆4000億円である」とありますが、
原発から自然エネルギーに置き換えた場合、日本の電力市場20兆円として今後10年、
毎年少なくとも2兆円の費用が掛かると思います。
2兆円をできれば高齢化、少子化、貧困問題の対策に向けて欲しい。
そうすることで、救われる命もあるのではないでしょうか。
エネルギ供給の長期予測は困難ですが、需要の方が省エネ・人口減・産業構造変化で
2割減は可能だと考えています。
※私は温暖化や電気自動車にも懐疑的な人間です。
あと、コメント欄のコメントがすべて見えていないので今後返信できない可能性があります。

播磨 伸

mainさんの意見に基本的に賛成です。この危険な原子力エネルギーに頼ることは、地震国日本としては、ダイマナイトを枕に寝ているようなものです。千年か数百年に一度の地震、津波におびえるのでなく、安全を絶対確保して原発を続けるべきという論理が出てきます。絶対安全とはなにですか?電源を高台へ移動、12メートルの防波堤を築くのですか?万里の長城のようなものをつくるのでうか?もし、これらをやれば現在の数十倍の資金が必要になるでしょう。決して低コストではありません。使用済み燃料棒の処理は?青森ももう満杯間じかといいます。仕方なく各原発の貯蔵庫に保管している状態です。トイレなきマンションといわれるゆえんです。モンゴルへ持っていくのですか?モンゴルはなっとくしますか?
絶対安全は、原発をなくすることです。
まず、発想の根本に安心・安全と原子力発電とを天秤にかけて論ずべきではありません。この論理でいくから経団連や商工会議所をはじめ、大手企業が「外国へ行くぞ」などと脅かしをかけてくるのです。企業が外国へ逃げていくのは、電力不測からではありません。低賃金と製品需要度からです。ここをまずはっきりしておくべきです。
危険と隣りあわせで暮らす日本には絶対にしたくありません。年限を明確にして目標を決め順次廃炉、自然エネルギーの活用に進めるべきです。

浜

IT系の人は、どうしても技術が指数関数的に向上することを期待してしまう傾向がありますね。
残念ながら、エネルギーの変換効率の技術革新は、そんなに簡単には伸びません。
それに、なんといってもエネルギー密度の低い発電方法は、あまりに日本の国土に不向き。

本気で自然エネルギーで日本のエネルギーを補おうと思うなら、世界の砂漠地帯に日本の資金で
メガソーラーを作りまくり、設置国から排出権を譲り受け、日本国内では火力で
「名目上は自然エネルギーで自給」という状態にするのが一番現実的でしょう・・・。

若だんなat新宿

中島さんの提案には概ね賛成で、自分のブログでも引用させていただいています。
ただ、「脱原発」か「反原発」か「原発維持」かという選択しは、議論を進めていかないのではないでしょうか。
私は、「脱原発」という言葉が、原発を必要悪と感じながらエネルギーについて考えている人たちに、感情的な反発を招いているのではないかと最近考えています。
自分でもその辺をブログに書いてみました。(「嫌原発」ではなく「縮原発」ですかね http://tf244.blog107.fc2.com/blog-entry-2339.html)
「脱」ではなく「縮」原発の道のりをどう「電気政策」に織り込むかではないでしょうか。あと電気システムとコンピューターシステムは今後類似した進化の道をたどるように予感しますので、中島さんのようなITの進化に貢献した方の発想は電気システムの進化に役立つのではないかと思います。

おさるさん

いずれにせよ,原子力を削減して自然エネルギーへの依存を高めていくという方向性では,国民の大多数の結論は得られていると思います.さすがに,今後も原発を増設していくという意見はごく少数でしょう.あとは,原発を即時停止するか,あるいは時間をかけて停止していくかという違いになると思います.しかし,点検中の原発を再稼働するために地元の了解を得るのはなかなか難しい状況ですから,このままだと本当にすべての原発が停止してしまうでしょう.そんな不安定な電源に頼るのは心許ないですよね.

Yamamoto

エネルギー利用権を一次産業や観光業に分散するというのは素晴らしいアイデアだと思います。
言ってしまえば新たな利権、既得権の誕生になるわけですが、本来当為としての利権とは
再配分による内需拡大と労働力の再生産が目的ですし、この案では食料安保も期待できます。

新自由主義の「みんなの党」が脱原発を掲げるのも、楽天が経団連を見限ったのも、
当為から外れつつある古い輸出利権の末路がきちんと見えているからでしょう。
鉄鋼、造船、自動車、家電、原発・・・新興国が次々参入して追い上げてくるレッドオーシャンに
「逃げ切りメンタリティー」でしがみついてももう高収益は見込めないですし、他人がまだ
やらない領域で知財を蓄え先行者利益を独占しないと借金が増える一方です。
Googleや孫さんにはすでに次のブルーオーシャンが見えているのでしょう。

他のプランもほぼ賛成ですが、「原子力予算を100%自然エネルギーにシフト」というのは
難しい所ですね。宇宙時代には必要になりますし、推進派が口ごもる「死の灰」の処理の問題も
ありますので、研究予算は維持したほうがいいかもしれないですね。

tmyymmt

自然エネルギーというと今の瞬間の選択肢しか考えられない方々へ。
短期的にも長期的にも技術革新の速度は、技術者の意欲と、予算の投入金額と、ダメだった場合の撤退タイミング次第では?
・「東大、色素増感型太陽電池で変換効率11.3%のセル試作」掲載日 2011年06月22日 http://www.nikkan.co.jp/news/nkx0720110622aaan.html
・「東大、量子ドット太陽電池の理論変換効率75%に」掲載日 2011年04月25日 http://www.nikkan.co.jp/news/nkx0720110425eaao.html
・マグマ発電 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9C%B0%E7%86%B1%E7%99%BA%E9%9B%BB#.E3.83.9E.E3.82.B0.E3.83.9E.E7.99.BA.E9.9B.BB

smilegoal

中島さんの意見におおむね賛成です。

ただ”利権を地方に”はどうでしょうか。
イニシャルコスト>ランニングコストである自然エネルギーにそれほどの利権があるのかどうか。
原発の立地している自治体でも気づき始めているのではないでしょうか。
むしろ経済産業省はじめ官僚に中央の利権をチラつかせたほうが政策転換に有効かもしれませんね。

なおももん我さんの
>2兆円をできれば高齢化、少子化、貧困問題の対策に向けて欲しい。
そうすることで、救われる命もあるのではないでしょうか。

これには反対です。
この国は未来に投資せず、過去の処理や目の前だけの問題に固執してきました。
”高齢者福祉で年1兆円の自然増”なんてばかげてます。
自分の金銭や健康管理もできない怠け者老人に投資してもムダです。
育児支援に名を借りた母親たちの金よこせ運動や、
単純労働しか出来ない者達の貧困問題など、
貴重な国費を「投資」するにあたらない問題です。

投資は「未来」にするものです。
中国になぜ勢いがあるのか考えましょう。

anonymous

私は山村に住んでいますが、河川にある現状の堰をそのまま利用して(=河川生態系に今以上の負荷を与えず)設置できる小水力発電所の適地はいくらでもあります。小水力発電所1カ所で10戸分くらいの発電量です。現在、それが実現しない理由は水利権、売電の規制など制度的な問題で、技術的には明日にでもできる話。

こういったことを少しずつ片付けていけば、蒸気機関への依存度はぐんと減らせるでしょう。蒸気機関の熱源に核燃料を使う野蛮な方式(制御できるつもりができなかったというだけで充分野蛮です)は、もうたくさん。

smile

自然エネルギーの中で地味な扱いされているのが水力発電ではないでしょうか。
水の密度は空気の密度の約1290倍ですから、風力発電より1000倍の威力があります。
①水力発電所の発電システムを最新のものに置き換え発電効率アップ。太陽光発電の効率アップより手っ取り早い。
②治水用として作られ、発電機を付けてないダムがあるが、そこに発電機を設置可能。
③発電用ダムとして作られたが、土砂が堆積して停止ないし発電量が落ちているダムがあるが、土砂を浚渫して発電量を取り戻す。ダムの土砂を浚渫する技術はある。
海外に比べて極めて恵まれた自然を有効利用したいものです。

romorom

基本的に大変共感出来る主張です。ただひとつ条件を付け加えるなら、送・発分離は必須ですね。
急場は化石エネルギーしか無いですね。コスト的のもかけすぎている課税をやめれば価格も安くなるし。原発のためにばらまいて来た保障費も節約できるし。
それに十数年シフトしてから、効率が良くなった自然エネルギーへ切り替えていけばよいし、同時に核融合の研究も進めていけば、世界有数のエネルギー技術大国になれます。
そこから枝分かれした細かい技術もお恐らくかなりの経済効果があると思われます。
現在日本が得意とする分野はすでに新しいものはなく今後は新興技術国に食われていく分野です。
今回の不幸を大きなターニングポイントそして、今後の日本を再興させるのが一番いいと思います。
直ぐに有望なのは地熱発電でしょうね。(これだけで賄えるぐらいだそうですが)
ついでにがん研究にも投資してガンを克服すれば今回の原発事故のデメリットはすべてメリットに変わります。

tano13

具体的な考えを進めていこうという姿勢に共感いたします

おおざっぱですが自分の具体的プランを。
前に犬吠埼沖に風力を作れば東電の消費電力をまかなえるとありましたが面積が非現実的でした。
http://togetter.com/li/116692

が、風力レンズ技術で発電効率が3倍
かつ風きり音の軽減と防鳥ネットの設置も可能
http://bit.ly/kC9YiK


さらに三陸沖に津波用防波堤 兼 風車を作る
津波被害にあった沿岸部も電力会社が買い取り、風車を作る

これがうまくいけば、東電消費電力の3分の1ほどの
電力は生まれるのではないかと考えています

tano13

具体的な考えを進めていこうという姿勢に共感いたします

おおざっぱですが自分の具体的プランを。
前に犬吠埼沖に風力を作れば東電の消費電力をまかなえるとありましたが面積が非現実的でした。
http://togetter.com/li/116692

が、風力レンズ技術で発電効率が3倍
かつ風きり音の軽減と防鳥ネットの設置も可能
http://bit.ly/kC9YiK


さらに三陸沖に津波用防波堤 兼 風車を作る
津波被害にあった沿岸部も電力会社が買い取り、風車を作る

これがうまくいけば、東電消費電力の3分の1ほどの
電力は生まれるのではないかと考えています

ハチタロス

元環境官僚で千葉大学法経学部総合政策学科教授の倉阪秀史氏が
「再生可能エネルギーによる原子力発電代替プランver.2」
という極めて具体的な政策提言をしています。
http://homepage3.nifty.com/kurasaka/
これによると、当面最優先で増やすべき自然エネルギーは
小水力(ダム建設しない流れ込み水力)、地熱、再生エネルギー熱(熱を熱のまま利用)の3つだということです。

再生可能エネルギーといえば推進派も慎重派も太陽光や風力ばかりを議論しがちですが、日本の特性を考えれば、まず優先すべきは水力(降雨量が多く、河川の高低差が大きい)、地熱(賦存量世界3位)です。

将来的には、適切な法整備を行って海流発電技術の実用化も目指すのが良いと思います。(黒潮は世界的にも際立って流量の多い海流)
http://t.co/1R7w28n
研究開発を行っているノヴァエネルギー社のサイトによると、4km四方の海上プラントで、1.6ギガワットの発電量(原発一基は1.3ギガワット)、工費は現状で原発の半額とのことです。資金さえ投入すれば実現可能性は十分あります。(少なくとも高速増殖炉よりははるかに現実的です。)

Shinsuke Ono

英語の参考記事リンク
Solar Energy Costs to Achieve Grid Parity by 2013
を読まずに原発推進の書き込みされる方が目立つので
勝手翻訳を用意しておきました。リンクは
http://ameblo.jp/shinx55/entry-10959550315.html
です。

嘉十郎

叩き台のおかげでだいぶ建設的な議論が可能になっていると思います。ありがとうございます。
差し当たっては火力で糊口をしのぎつつ代替エネルギー源の研究開発に注力、という大方針には概ね賛同します。

しかし、スパンに関しては見積もりが甘すぎるというのが私の意見です。
紹介していただいたリンクの内、Pikeの方はレジストレーションに詳細な情報登録が必要だったため元のリポートは読めていませんが、Lundさんの元論文(http://dx.doi.org/10.1088/1755-1307/6/19/192005)に関しては見つけて目を通しました。これは市場予測モデルに基づく経済学的なリポートであり、技術開発に関しては何ら考察が見当たりません。Pikeの方は元論文を読めていないので詳細はわかりかねますが、アブストラクトを読む限りソーラー部品の価格下落に伴う導入コスト縮小が主な論点と思われます。主導権がメーカーから需要サイドに移ったと論じていますが、その実、供給過剰で値崩れを起こしているに過ぎません。2011年7月4日の日経では、ソーラー部品のスポット価格が、需要の5割近くを占めるドイツの補助金廃止によって三か月で三割下落したと報じています。きつい見方をすれば、補助金で生じた環境バブルがすでにはじけてしまったと言えます。

技術革新の芽が無いと言うわけではないでしょう。しかし、ご紹介いただいた二つのリンクからは、その期待値を読み取ることができません。野心的な具体案ですが、やや楽観的に過ぎるのではないかというのが私の感想です。まあ、計画というのは野心的に100を狙って努力して、60~70達成していくものかも知れませんが。

tmyymmtさんが参照されているものは、試作段階であるとか、理論効率であるとかで、まだ国家の方針としてあてにするべきものでは到底ありません。

ハチタロスさんが参照されている、ミニ・マイクロ水力や地熱の活用は良い考えだと思います。どちらも社会の基幹電力源にするのは現状の出力では難しいかもしれませんが、活用を進めてゆくべきだと思います。

一方で、核燃料も放射性廃棄物も既に国内に存在して処理方法を検討していかねばならない状況で、中島さんがおっしゃる原子力技術の研究開発費を100%ほかに振り向けるというのは、極論だと思います。

もう一点指摘しておきたいことは、発電コストは技術間の差だけでなく、国・地域間のコスト格差も重要であるという点です。国際化が進んでいる現在、ある国が環境エネルギーでブレークイーブンを達成したとしても、火力・原子力のリスクを考慮せずに発電効率を上げる国との価格競争があった場合、いずれ同様の技術に回帰せざるを得なくなる恐れがあるということです。つまりCO2削減論議と同様、様子見のインセンティブが各国にあるゲームになり得ます。したがって、基盤エネルギー源のドラスティックな転換には、国際的な枠組み作りの努力が必要なのではないかと考えています。それは政治家や官僚の仕事ですね。

Yamamoto

smilegoal 様

> 中国になぜ勢いがあるのか考えましょう。

これは人口移動の統制等による見事な二重国家構造(沿岸3億人の「新興国」 + 内陸10億人の「植民地」)の成果です。
インドやブラジルも似たような側面はあるらしいですが、一国の内部でかつての大英帝国を遥かに凌駕する「帝国主義」を実現して
しまっているわけで、先進国で同じ事をやろうとしても植民地がないですし、国土のインフラ整備も生活必需品の普及も済んで
しまったので高度成長はもう無理です。

ですから老いた先進国には地方や貧困層のための新しい利権が必要なのです。資本主義も成長期を過ぎて、この星の残りの
パイを奪い合う「共食い」の段階に入りました。そんな老衰期に入った体にガン細胞みたいな「輸出ドライブ」による
貿易不均衡はもはや通用しませんし、実際日本はもっと内需を拡大しろと叩かれています。

結局、少子高齢化、地方の疲弊、貧困問題は資本主義の生産様式(剰余価値の循環的蓄積)そのものに起因する内在的矛盾で
あって、米国も欧州も、この解くことのできない問題に苦しみながら財政破綻に向かっています。そして解けない苛立ち故に
「怠け者老人」「母親たちの金よこせ運動」「単純労働者」と口汚く罵ってしまうのでしょうが・・・「未来に投資」したって
未来の労働者(=消費者)がどんどん減っていくので回収できません。

今必要なのは痛み止めを打ちながらゆっくり安らかに落ちていく資本主義の末期治療で、その間に次のシステム
(地産地消経済など)を試行錯誤で構築していくことではないでしょうか。実際、多くの方にとって今回の事故が
それを考える契機になったと思いますし、日本(やドイツ)が再び時代を先行するチャンスでもあります。

Shinsuke Ono

英語の参考記事リンク2
Wind energy just 15 years from grid cost parity
を読まずに原発推進の書き込みされる方が目立つので
勝手翻訳を用意しておきました。リンクは
http://ameblo.jp/shinx55/entry-10959676122.html
です。

methane

この方針に賛成です。すこし目標が厳しすぎる気はしますが、技術革新の速度が目標に間に
合わなかったとしても、火力発電の寿命が伸びるだけです。

日本の火力発電の技術は素晴らしく、原発を止めて火力に振り替えたことによるCO2増加分は、
国内の火力発電整備が一段落してから海外の旧式の火力発電を新型に置き換える支援をすることで
ある程度相殺できるはずです。

長期的には、2020年だと厳しくても2050年までには、補助金なしの自然エネルギーで大部分のエネルギーを
補うことが可能だと思います。

methane

この方針に賛成です。すこし目標が厳しすぎる気はしますが、技術革新の速度が目標に間に
合わなかったとしても、火力発電の寿命が伸びるだけです。

日本の火力発電の技術は素晴らしく、原発を止めて火力に振り替えたことによるCO2増加分は、
国内の火力発電整備が一段落してから海外の旧式の火力発電を新型に置き換える支援をすることで
ある程度相殺できるはずです。

長期的には、2020年だと厳しくても2050年までには、補助金なしの自然エネルギーで大部分のエネルギーを
補うことが可能だと思います。

skedic

ウランだって所詮有限資源なんだから、自然エネルギーにシフトしていくのは必然でしょうに。自分が生きている間持ってくれればそれでいい?

K

中島さんありがとうございます。具体的なプランを示していただいて、建設的な意見交換がしやすくなりました。いくつか論点がちりばめられていると思いますが、その中で最も意見が分かれそうなのは、将来代替エネルギーにとって代わるまでのつなぎ策ではないでしょうか。(安全でクリーンで安定して安いエネルギーが確立できた時、それを拒む理由はないでしょう)私なりにまとめると以下3点が意見の分かれるところかなと思います。

(1) 一定の安全を確保した上で再稼動した原発を2,3年間だけ使い続ける
 ・理性的に考えれば短期的原発稼働は避けられないオプションだと思います。ただ、ご周知のとおり原発を抱える地区にとって生活基盤をかけた非常にシビアな問題です。数年だけ再起動(原発再稼働の恐怖、廃炉という負を長期的に抱きながら雇用的恩恵は限定的)という形を自治体が容認するのかどうか。

(2) 短期的に原発はすべて廃止して代わりに新規に火力発電所を作り、代替エネルギーに完全置換されるまでのつなぎにする
 ・廃炉・新規火力発電設置(含む用地確保)にどのくらいの費用&時間が要するのかによると思いますが、①いずれ代替エネルギーにとってかわるつなぎにすぎない、② (1)で原発におても一定の安全が確保さている、という状況下でそれでも火力への一時置換を行うべきかどうか。
 ・逆に代替エネルギーへの転換は不確定要素。仮に長期的に火力発電が必要になる場合、CO2排出や燃料の安定確保は大丈夫なのか。

(3) 原発への投資を一切廃止し自然エネルギーへの段階的置換を年数パーセントという形で強制する
 ・代替エネルギーへの促進を促すという意味では有効かもしれないが、技術の確立はあくまでも不確定要素。強制することで国民負担としては大きなリスクを負う。
 ・隣国はこらからも原発を中心しにたエネルギー開発をするなか、せっかく最先端をいっている原発事業を放棄することが得策なのか。(隣国は大喜びで更新国に原発事業の輸出をおこなうことでしょう)自然エネルギーが大成すればよいが、もしその実用化に時間がかかってしまった場合、国内産業にどのくらいの影響があるのか。

個人的にはベンチャー企業的な革新論・理想論は好きですが、倒産の許されない日本という超巨大組織を考えると、効率至上よりリスク分散という姿勢が正しいような気もします。

K

中島さんありがとうございます。具体的なプランを示していただいて、建設的な意見交換がしやすくなりました。いくつか論点がちりばめられていると思いますが、その中で最も意見が分かれそうなのは、将来代替エネルギーにとって代わるまでのつなぎ策ではないでしょうか。(安全でクリーンで安定して安いエネルギーが確立できた時、それを拒む理由はないでしょう)私なりにまとめると以下3点が意見の分かれるところかなと思います。

(1) 一定の安全を確保した上で再稼動した原発を2,3年間だけ使い続ける
 ・理性的に考えれば短期的原発稼働は避けられないオプションだと思います。ただ、ご周知のとおり原発を抱える地区にとって生活基盤をかけた非常にシビアな問題です。数年だけ再起動(原発再稼働の恐怖、廃炉という負を長期的に抱きながら雇用的恩恵は限定的)という形を自治体が容認するのかどうか。

(2) 短期的に原発はすべて廃止して代わりに新規に火力発電所を作り、代替エネルギーに完全置換されるまでのつなぎにする
 ・廃炉・新規火力発電設置(含む用地確保)にどのくらいの費用&時間が要するのかによると思いますが、①いずれ代替エネルギーにとってかわるつなぎにすぎない、② (1)で原発におても一定の安全が確保さている、という状況下でそれでも火力への一時置換を行うべきかどうか。
 ・逆に代替エネルギーへの転換は不確定要素。仮に長期的に火力発電が必要になる場合、CO2排出や燃料の安定確保は大丈夫なのか

(3) 原発への投資を一切廃止し自然エネルギーへの段階的置換を年数パーセントという形で強制する
 ・代替エネルギーへの促進を促すという意味では有効かもしれないが、技術の確立はあくまでも不確定要素。強制することで国民負担としては大きなリスクを負う。
 ・隣国はこらからも原発を中心しにたエネルギー開発をするなか、せっかく最先端をいっている原発事業を放棄することが得策なのか。自然エネルギーが大成すればよいがもしその実用化に時間がかかってしまった場合、国内産業にどのくらいの影響があるのか。

ベンチャー企業と比べて、日本という超巨大組織においては、効率や理想はある程度おさえてリスク回避も重要なのかなと思いました。
ところで「再生エネルギー特別措置法案」はどうなんでしょうか。ここでの主義に照らし合わせると、電力需要と供給に関係なく再生エネルギーは買い取り義務化というのはどうも正しくないかなと思います。送発電分離した場合でも、送電企業に再生エネルギーは無条件で買い取りを義務化するべきなんでしょうか。

smilegoal

Yamamoto様

ご意見ありがとうございます。

表現については過激なものをあえて使わせていただきましたが、
このままでは国家が安楽死を迎えるのは必然です。
そこで痛み止めでごまかすか、外科手術を施すかは意見の分かれるところでしょう。

企業の再建にかかわったのでわかるのですが、
企業再生には、高齢者や女性の首切り、周辺業務のアウトソースが不可欠なのです。
これは過去の延長線ではなく、あるべき姿で考えられる発想が必要なので、
それらを阻害する人材やコストをまず排除することが再建の近道なのです。
(高齢者や女性はいわゆる抵抗勢力になりがちなのです)
その上で新たに従業員を雇うことで、その企業は過去と決別し、新たな道を歩みます。

中国はその成長の限界を知っていて、アフリカ諸国など後進国に巨額な投資を始めています。
いわば国外に”植民地”を確保しつつあるのです。
日本もODAなど行っていますが、世界戦略に基づいてとはいえず、既に遅れをとっています。

ここから巻き返すには、農業技術と再生可能エネルギーならなんとか世界に比肩できそうですし、
(やや周回遅れになってそうで怖いですが)
それらの充実のため、未来の世代に投資すべきなのです。
消費者が減るなどと日本国内だけの狭い了見に縛られないほうがいいと思いますが・・・。

K

中島さんありがとうございます。具体的なプランを示していただいて、建設的な意見交換がしやすくなりました。いくつか論点がちりばめられていると思いますが、その中で最も意見が分かれそうなのは、将来代替エネルギーにとって代わるまでのつなぎ策ではないでしょうか。(安全でクリーンで安定して安いエネルギーが確立できた時、それを拒む理由はないでしょう)私なりにまとめると以下3点が意見の分かれるところかなと思います。

(1) 一定の安全を確保した上で再稼動した原発を2,3年間だけ使い続ける
 ・理性的に考えれば短期的原発稼働は避けられないオプションだと思います。ただ、ご周知のとおり原発を抱える地区にとって生活基盤をかけた非常にシビアな問題です。数年だけ再起動(原発再稼働の恐怖、廃炉という負を長期的に抱きながら雇用的恩恵は限定的)という形を自治体が容認するのかどうか。

(2) 短期的に原発はすべて廃止して代わりに新規に火力発電所を作り、代替エネルギーに完全置換されるまでのつなぎにする
 ・廃炉・新規火力発電設置(含む用地確保)にどのくらいの費用&時間が要するのかによると思いますが、①いずれ代替エネルギーにとってかわるつなぎにすぎない、② (1)で原発におても一定の安全が確保さている、という状況下でそれでも火力への一時置換を行うべきかどうか。
 ・逆に代替エネルギーへの転換は不確定要素。仮に長期的に火力発電が必要になる場合、CO2排出や燃料の安定確保は大丈夫なのか

(3) 原発への投資を一切廃止し自然エネルギーへの段階的置換を年数パーセントという形で強制する
 ・代替エネルギーへの促進を促すという意味では有効かもしれないが、技術の確立はあくまでも不確定要素。強制することで国民負担としては大きなリスクを負う。
 ・隣国はこらからも原発を中心しにたエネルギー開発をするなか、せっかく最先端をいっている原発事業を放棄することが得策なのか。自然エネルギーが大成すればよいがもしその実用化に時間がかかってしまった場合、国内産業にどのくらいの影響があるのか。

ところで「再生エネルギー特別措置法案」はどうなんでしょうか。自然エネルギー促進のためとはいえ、電力需要と供給に関係なく再生エネルギーは100%買い取り義務化というのはどうも正しくないかなと思います。送発電分離した場合どうなるのでしょうか。

kintarou

 やたらと長い文章ですが、要するに「安くなれば
みんな使うよね」ということでしょうね。宇宙旅行も安くなればみんながいけるようになるでしょう。
 普通「開発のスピードを上げる」「英知を集める」とかやると、補助金問題も含めてコストは上がると思うんですけどね。いわゆる「採算度外視」というやつ。シベリア鉄道や万里の長城の様な強制労働じゃないので、英知を集めるのはものすごくコストが上がると思うけど。
 どうも根本にあるのは、「国が東電の利権を守るために再生エネの普及を妨害してきた」という、フリー記者や朝日あたりが振りまくデマにある気がするわけです。私が言うまでもなく、実態は逆でして、サンシャイン計画で数兆円の金を突っ込み、高い電気を無理やり買わせてきたというのが実情でしょう。
 それでも補助金は期間限定というあたりは、さすがに見識があるなあ、と思います。
 まあ、本当に安くなれば消費者としてはありがたい話なので頑張って欲しいですけどね。パネルメーカーは困るだろうけど。
 ということで、実現できればいいですね!

ななめ読み

いくつ突っ込めるかな?
ながながと書いていたらエラーになったので短めに。

まず、自然エネルギー発電所の立地をどのように考えていますか?
日本にそんなにたくさんの適地があるのか?耕地や果樹園、茶畑などの農地として既に使っている場合、そうしたものとのバッティングや補償をどう考えるのか?
海上の風力発電に関しても、漁業権との兼ね合いもあるでしょうし、風力発電所の建てられそうな場所は既に近海漁業や沿岸漁業の漁場だとは考えられないでしょうか?

また、環境アセスメントには数年を要しますし、問題があれば何十年も揉めるケースもあります。すでに訴訟になったり、問題が大きくなって撤退した風力発電所もありますが、そういった問題にはいかに対処しますか?

適地は思いのほか、残っていませんよ?

ななめ読み

発電所への依存は都会の方が田舎よりも高いのに対して、立地は田舎に依存するといった現象は現在の原子力発電所と同様でしょう。その問題に対して、地方交付金や特別な協力金の分配で補償する。そのためには国が面倒を見る体制が必要になります。発電所に対しても、その技術を開発する企業に対しても、金を出しても口を出さないということはありえない。そして、利害関係の異なる関係者の調整には行政のほかに政治家も口を出す。
この光景、原子力ムラと呼ばれる風景と一緒だと思いませんか?

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