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Brookhaven National Labの被曝モデルを福島に適用してみた

原発事故による健康被害(=放射線被曝の結果増える癌や白血病による死者の数)の予測に関して、読んでいた論文から引用されていた"A safety and regulatory assessment of generic BWR and PWR permanently shutdown nuclear power plants (Travis, R.J. ; Davis, R.E. ; Grove, E.J. ; Azarm, M.A. [Brookhaven National Lab., Upton, NY)" という論文に目を通してみた。この論文そのものは、停止した後に原子炉建屋内の使用済み核燃料プールに事故が起こった場合の影響をさまざまな条件に基づいて予測しているが、そこで使っているモデルは福島第一のように原子炉そのものにメルトダウンが起こった場合にもそのまま適用できる。

この論文では、被害者の数を予想する際に "Social Dose (単位は person-rem)" という値を使っているのだが、これは人件費を人月で計算するのと同じく、被曝量に人数をかけたもの。1rem=10 mSvなので、10 mSvの被曝をした人が100人いれば、Social Dose は 100 person-remとなる。

Person

論文中の表4.2には、福島第一の4号機のように、まだ停止してからまもない「熱い」燃料で一杯のプールの使用済み燃料が事故ですべて外部に放出された場合のSocial Doseは 327x1,000,000 person-rem、被害者の数は 13万8千人と予想している。他の数字を見ていただいても分かるが、ここで使っているのは Social Doseに被害者の数が比例するというリニアなモデル。1,000,000 person-remあたり422人の被害者というモデルだ(米国のDepartment of Energyもほぼ同じモデルを使っている)。

日本政府が「健康には影響がない」と主張する年間の外部被曝20mSvを福島県に住む200万人全員が10年間受け続けたと仮定すると Social Dose が計算できる(実際にはそこに住み続けるかぎり被曝はし続けるが、被曝量は毎年少しづつ減少するので、それも考慮して10年とした)。

10年 x 20mSv/年 x 2,000,000person = 400,000 Sv-person = 40,000,000 person-rem

となる。これに上記のモデルを当てはめれば、16880人が被曝による癌や白血病で死亡するという計算になる。

実際には、政府の計算には入っていない内部被曝もあるし、20mSv以上の被曝をすでにしてしまった人も、それ以下で免れる人もいる。汚染地域から避難する人がどのくらいいるかによっても結果が大きく変わり、Social-Doseの正確な計算は簡単ではない。

さらに難しいのは、この数字をどう判断するかという点。今回の事故による放射線被曝をたとえしなくても、200万人のうち今後10〜20年の間に癌や白血病に人は数万人から数十万人はいるだろうから、それと比べてリスクがどのくらい上昇しているか、という話になる。

高齢者にとって見れば、今後20年間に癌になる確率がたとえ10%増えたとしても住み慣れた町は離れたくない、というのももっともな話だし、逆に(通常だったら癌などには滅多にならない)お子さんを抱える家庭にとっては、とんでもなく恐ろしい話だ。

ちなみに、原子力安全保安院や原子力安全委員会がちゃんと仕事をしていると過程すれば、この手の論文はすでに読んでいるはずだし、今回の事故によるSocial-Doseの概算も被害者数の予測も既にしているはず。そういう解析結果をちゃんと公開した上で、「政府としては20mSvでも安全と判断した」としていだきたい(もし、このブログを読んだ人で政府と東電の合同記者会見に行く人がいたら、保安院に今回の事故による Social-Dose の概算はすでに試みたかどうか確認していただきたい)。

Comments

jinchan

> 16880人が被曝による癌や白血病で死亡するという計算になる。
> さらに難しいのは、この数字をどう判断するかという点。今回の事故による放射線被曝をたとえしなくても、200万人のうち今後10〜20年の間に癌や白血病に人は数万人から数十万人はいるだろうから、それと比べてリスクがどのくらい上昇しているか、という話になる。

ここで推定してみた。
『社会実情データ図録』
http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/2158.html
の『主な部位別がん死亡率の推移』から、10年間のがんによる推定死亡人数は、男女合計で、おおよそ、8万人/200万人と出た。
Brookhaven National Lab モデルによる、16880人は、確かに、どう判断するか、はむずかしいが、トータルで見ると、

  (8万人+16880)/8万人=1.216倍

となり、原発事故の影響が2割増しに出る、となれば、やはり問題と言えるでしょう。

柏崎原発の近くに住む住人

20msvって、かなり安全にたおした、数値では?

100msvも20msvも同じって、ロシアの研究者の方が来日してニュースになっていましたよね。


両方の数値を出すべきでは?

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