Life is beautiful

このエントリーは、登場人物も場所もすべてフィクションです。実際に何が起こったかについては、ウォールストリート日本語版の記事「配布されなかった安定ヨウ素剤」を参照してください。

２０１１年３月１４日　福島県川内村、村役場（福島第一原子力発電所から約２５キロ）

若い村役場の役人が、村長室にあわただしく駆け込む。

役人A：村長、福島第一でまた爆発があったようです！

村長：私も、ニュースで見ているところだ。おとといの爆発より大きいらしい

役人A：やはり、安定ヨウ素剤をくばりましょう。

村長：君は昨日もそんなことを言っていたね。

役人A：はい。すでに住民の服からは防災マニュアルで規定された1万3000cpmをはるかに超える放射性物質が検出されていますし。

村長：しかし、ヨウ素剤の配布は国からの指示があってから、という規則になっているんだよ。

役人A：でも、ヨウ素剤は住民が放射性ヨウ素を含んだ空気を吸い込む前にあらかじめ服用しておくことが大切なんです。早くしなければ間に合いませんよ！

村長：しかし、規則は規則だし。

役人A：防災マニュアルは無視するんですか？そっちだって規則でしょう。

村長：それに関しては、昨日も県と話をしたところだ。基準を10万cpmにまで引き上げることを検討しているそうだ。今日にも引き上げが発表されるはずだ。

役人A：基準の引き上げって...おかしくありませんか？この村の子供たちは、今この瞬間にもどんどん被曝しているんですよ！

村長：しかし、国からの指示がないかぎり配布はできないんだ。しかたがないじゃないか。

役人A：村長！

そこに、ジャックが血相を変えて駆け込んで来る。

ジャック：何をのんびりしているんだ、すぐに安定ヨウ素剤の配布にいくぞ！

村長：いやいや、ヨウ素剤の配布は国からの指示があってからだ。

ジャック：そんな悠長なことを言っていたら、間に合わなくなるぞ！

村長：だめだ、国の指示をもらってからしか配ってはいけないことになっているんだ。

ジャック：村の子供たちが甲状腺がんになってもいいのか！

村長：しかたがないじゃないか、国からの指示がないんだから。

ジャック：ふざけるな！倉庫の鍵を渡してくれ、俺が配って来るから。

村長：だめだジャック。これ以上騒ぐと、また停職にするぞ。

ジャックがおもむろにピストルを懐から抜き出し、村長に向ける。

村長：な、なんだそれは！

ジャック：おとなしく鍵を出すんだ。

村長：ちょ、ちょっと待ってくれ。話せばわかる。

ジャック：（役人Aに向かって）おいお前、そこの紐で村長を椅子に縛り付けるんだ。

役人A：え？

ジャック：早くしろ！

役人A：でも...

ジャック：子供たちを被曝させたいのか！他に選択肢はないんだ（We have no choice）！

役人A：はい（と村長を椅子に縛り付ける）

ジャック：倉庫の鍵はどこにあるか知っているか？

役人A：はい。今ここに持っています（と、ポケットから鍵を出す）

ジャック：準備がいいな。よし行くぞ！