極端な安定指向は、結果として日本の国力を奪う
2011.11.14
Wall Street Journal に Youg Workds Like Facebook, Apple and Google という米国の就職人気ランキングに関する記事が出ていた。日本のそれと比べてみる。
順位 | 米国 | 日本 |
1位 | オリエンタルランド | |
2位 | Apple | 伊藤忠商事 |
3位 | 味の素 | |
4位 | U.S. Department of State | 資生堂 |
5位 | The Walt Disney Company | JR東海 |
6位 | Amazon | JR東日本 |
7位 | FBI | JTBグループ |
8位 | Microsoft | 三菱東京UFJ銀行 |
9位 | Sony | ANA |
10位 | CIA | 明治グループ |
若干アンケート対象が違うとは言え(米国は1〜8年の仕事の経験のある人、日本は新卒)、この違いは興味深い。
日本の場合は一部上場の大企業ばかりが並んでいるのに対し、米国の場合は、Google、Apple、Facebookなどのハイテク企業(Facebookは未上場)とFBI、CIAなどの官僚機関が互い違いに並んでいる点が興味深い。
米国にも安定志向の人たちがいるのは当然だが、日本があまりにも安定志向なのはちょっと問題である。それも米国の方は官僚機関以外はすべて外貨を稼ぐグローバル企業なのに対し、日本は主に内需指向の会社だ。
米国の場合、未上場のFacebookが3位にランキングされているのに対して、日本の場合、ソフトバンク、楽天、mixi、DeNA、Googleなどのハイテク・ベンチャー系の企業がトップ100に入っていないどころか(すでにベンチャー企業とは呼べないソニーがかろうじて33位)、海外進出に本気に取り組んでいるファースト・リテイリング・グループ(ユニクロ)まで圏外なのが驚きだ。
このブログでも、日本政府の大企業優遇政策が企業の新陳代謝を遅らせ、ベンチャー企業の躍進を拒んでいることは何度も指摘して来たが、それが結果的に、日本の未来を担うべき若い人たちまで安定指向にしてしまい、国力を奪っているという点は多いに問題視すべきである。
ちなみに、ベンチャー精神の盛んな米国の場合、Google、Appleに行く事すらも安定指向と見られる。野心的なトップクラスのエンジニアたちは、すでに株価が高くなってしまっている Google や Apple を避け、未上場のベンチャー企業に就職してストック・オプションをもらったり、自分でベンチャー企業を起こして、買収もしくは上場時の一角千金を狙う。
日本人から見れば「拝金主義」に見えるかも知れないが、そんなハングリー精神が優秀な人たちのモチベーションを上げ、それが新しいビジネスを作り出す原動力となり、国力を高めて行くのだ。
【追記】
ちなみに、せっかくの機会なので、私が会長をつとめる UIE ジャパンでは常に優秀は人を求めていることを追記しておく(人材募集のページ)。UIEvolution Inc. は未上場の小さな会社だが、Walt Disneyやトヨタなどの大きな顧客向けに、ユーザー・エクスペリエンスの設計やソリューション・サービスを提供するベンチャー企業である(本社は米国シアトル)。
敷居も高いし仕事も簡単ではないが、海外でも通用する実践力がつくことだけは保証するので、腕に自信のあるソフトウェア・エンジニアの方にはぜひともチャレンジしていただきたい。
売り上げと利益だけを見れば日本のマザーズに上場する実力は十分にある企業だが、私も含めた株主はそれほどあわてて上場する必要はないと考えているので、「入社したとたんに即上場で一角千金」のような甘い話ではない。それよりもビジョンを共有し、会社の価値を何倍にも高めてくれるようなメンバーを求めているのでよろしく。
いつも楽しく拝見しております。
日本の場合は安定志向というだけではなく、自分の興味を優先した就職先(オリエンタルランドやJR、ANA)や、ブランド志向の就職先(伊藤忠商事、三菱東京UFJ銀行)という見方もあるのではないでしょうか。
大企業優遇政策がいけないというのは、まったくもって同意であります。
Posted by: Mikiya Okuno | 2011.11.14 at 13:50
(エントリの趣旨には大きく影響はしないかもしれませんが)この2つのリストを比べるのは無理があるような気がします。
WSJのリストは "college graduates under the age of 40 with one to eight years of work experience" と、ある程度社会人経験のある母集団への調査な一方、就職情報会社「学情」のリストは社会人経験の無い学生への調査のため、自ずと調査結果に差が出てくるように思えます。WSJの調査結果と比べるなら、転職情報サイトによる調査の方が妥当な気がします。
Posted by: clicklog | 2011.11.14 at 14:34
米国の就職ランキングというのは、初見でした。有益な情報をありがとうございます。
「安定志向」という面に関しては、トップテンに3件も公務員がランクインしている米国にこそ驚きました。これはどう理解すればいいのでしょうか。
米国では、公務員は「安定志向」の職業ではないのでしょうか。例えば、有期契約であったり、解雇が民間企業と同等かそれ以上にあるのかなど。
また、日本において、「公務員になりたい」などと言う社会人がいたら、「こいつは民間ではついていけないから公務員にい逃げようとしている」とみなされるかと思います。米国では、「公務員」という職業の社会的位置づけが日本と異なるのでしょうか。
Posted by: ishihara | 2011.11.14 at 16:38
日本でも転職先としての人気企業ランキングがありましたのでご参考までに。
http://doda.jp/guide/popular/
(URLがアレなのでいつ置き換わるかわかりませんが…)
1.グーグル
2.トヨタ自動車
3.ソニー
4.パナソニック
5.オリエンタルランド
6.資生堂
7.任天堂
8.ベネッセコーポレーション
9.楽天
10.全日本空輸
グーグルは一位で、楽天も入っています。
Posted by: こじま | 2011.11.14 at 18:18
「事業に失敗したら、自殺して生命保険で金返せ」が日本のシステムです。
まずそこを変えずにベンチャー志向を煽るのは、若い死人が増えるだけなのでいただけません。
Posted by: AT | 2011.11.14 at 18:39
日本の場合、最初からグーグルやら楽天やらに入るより、大企業で新卒で
入ってそこで徹底的にスキルだの語学だのコネだのを身につけて転職する
方がはるかに有利だからでしょう。
Posted by: kishibe | 2011.11.15 at 04:50
日本の新卒が職業イメージを具体的に持てないことがすべてじゃないでしょうか?
「仕事とは」を教育では教えないし、B2Cの領域しかイメージしづらい社会になっている中で、辛うじて漏れて見えるのが上位ランカーの企業だというだけで、安定的・挑戦的といった俎上に載っていない印象です。
Posted by: airara | 2011.11.15 at 09:01