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「vs 若手エンジニア討論会」 Ustream 配信のお知らせ

先日告知した1月28日(土)の「vs 若手エンジニア討論会」、事前登録者の数が定員を超えてしまったので、当日の模様を Ustream でライブ配信にすることにした。配信ページは以下のURL

http://ustre.am/GLKl

ちなみに、当日のお題(質問、意見、トピック)を募集しているので、ハッシュタグ #vssatoshi で前もって Tweet していただけるとありがたい。全部にお答えできるとは限らないが、できるだけ幅広く網羅したいと考えている。

私のメルマガの読者の方は、私に直接メールで質問していただいても結構だが、その場合は「討論会向けの質問」であることを明記していただけると助かる。


neu.Notes+ 中級編:ベクター・エディターを使いこなす

大好評の neu.Notes+ 、5日連続で「有料iPadアプリ」の第一位である。開発者としては、こうやって数多くの人に使っていただけるのが何よりもうれしい。

そこで今日は、「ベクター・エディター」の使い方を解説する。

一例として、スティーブ・ジョブズのサインをベクター化してみる。

まずは、インターネットをサーチして、元になる画像を探し出して貼付ける。クオリティは悪くても良いので、キャンバス一杯に広がるように拡大して配置する。

写真 1

次に、これをペンでなぞる。色はとりあえず作業しやすい半透明のピンクなどにしておく。正確さはそれほど必要ないが、一筆書きで描くべき部分は一つのエレメントで描く必要がある。この場合は、5つのエレメントで構成されている。

写真 2

次に、それぞれのエレメントを微調整するために、拡大してからダブルタップして、「ベクター・エディター・モード」に入る。

写真 3

青色で表されたそれぞれの点をコントロール・ポイントと呼ぶが、これの数が多いと作業が煩雑になるし、きれいな線が出ないので、不要なものをまず消去する。消去する際には、消去したいポイントを選択し、すぐそばに表示される矢印アイコンをタップしてメニューを表示させ、ゴミ箱をタップする。

Screenshot 2012.01.16 17.57.18

コントロール・ポイントの数はぎりぎりまで減らした方が、より自然な線が再現される。

写真 4

次に、コントロール・ポイントの位置を微調整する。

写真 5

この "t" の横棒の場合には、コントロール・ポイントは3つで十分だ。

Screenshot 2012.01.16 18.02.00

全てのエレメントの微調整が終わったものがこれ。

Screenshot 2012.01.16 19.08.38

背景の画像を消去し、描いたエレメントを黒く、かつ、少し濃くしたものがこれ。

Screenshot 2012.01.16 19.13.50

これをグループ化すれば、色々と遊べる。

Screenshot 2012.01.16 19.23.57



neu.Notes+ 中級編:消しゴムを使いこなす

neu.Notes+ には、「描いたものを消す」役目を果たすツールが二つある。

一つは「スウィーパー( Sweeper)」で、タッツしたエレメントを丸ごと消して行く。間違って描いてしまったエレメントをまとめて消すときなどに便利だ。

もう一つは「ホワイト( White)」で、キャンバス上のエレメントの一部を「覆い隠して消す」のに使う。

ホワイトを使って覆い隠した部分もエレメントの一つなので、後から選択して移動せたり、ダブルタップして、ベクター・エディター・モードにして形を変更することも可能である。

Screenshot 2012.01.15 16.12.59

しかし、これだけだと、「白いペン」で描いた時との違いがないように思えるが、実際は大きな違いがある。

一つは、キャンバスに描かれたものを PNG 画像として出力した場合。ホワイトで塗りつぶした部分は、PNG 画像として出力した時には「白」ではなく「透明」になる点。

もう一つは、イメージ・エディター・モードと組み合わせて、写真の任意の場所を「切り抜く」ことが出来る点。

デモンストレーションのために、画像を二枚貼付けてみよう。

Screenshot 2012.01.15 16.18.22

この状態から、上にある方の写真のダブルタップして、イメージ・エディター・モードに入る。

Screenshot 2012.01.15 16.19.10

ここで、「ホワイト」を選び、適当なものを描く。

Screenshot 2012.01.15 16.21.44

この状態では、白いペンで描いたのと違いはない。しかし、ここで右下のクローズボタンをタップして、イメージ・エディター・モードから抜けると、違いが明確になる。

Screenshot 2012.01.15 16.22.19

「ホワイト」で覆い隠した部分が透明になっていることが分かると思う。それぞれの写真は、独立したエレメントなので、それぞれを選択して移動や拡大縮小も可能だ。

Screenshot 2012.01.15 16.25.26

つまり、イメージ・エディター・モードで「ホワイト」を使うと、写真の任意の部分を「抜く」ことができるのだ。

また、この機能を活用すると、写真から人物や動物を「切り抜く」ことも可能になる。上の写真からペンギンを切り抜く場合は、こんな操作になる。

まず、左側の不要な部分を切り抜く。「ホワイト」で描いたものを選択してから、塗りつぶし色を指定すると、広い範囲を一度に切り抜くことができる。

Screenshot 2012.01.15 16.30.52

切り抜いた結果がこれだ。

Screenshot 2012.01.15 16.31.44

次に右側の不要な部分を切り抜く。

Screenshot 2012.01.15 16.33.53

そしてその結果がこれだ。

Screenshot 2012.01.15 16.34.07

 

細かなところに切り残しがある場合は、それをさらに切り抜く。こうしておけば、切り抜いた人や人物をペタペタと別の写真に貼付けることが可能になる。

 

Screenshot 2012.01.15 16.39.21

 

 

 

 

 

 


今週の週刊 Life is Beautiful : 1月17日号

今週号の「週刊 Life is Beautiful」の配信準備ができたので、簡単に内容を紹介する。

Windows95誕生ものがたり(5):プレゼン

SmallTalk のレフレクションを駆使したアーキテクチャのおかげで、「次世代OS」のプロトタイプの開発は順調に進み、約6ヶ月後(90年の終わり)には、かなり形になって来ていた。アプリケーションが自由に拡張できるコンテキスト・メニュー、二つの異なるタイプのオブジェクト間のドラッグ&ドロップ、アプリケーションがタブを追加できるプロパティ・シートなど、後にWindows95に採用されることになる多くの機能が実装されたOSのプロトタイプであった...

エンジニアのための経営学
Balance Sheet (2)

それでは、Balance Sheet に関してもう少しイメージを掴みやすいように、会社を自己資金100万円で設立した場合に Balance Sheet がどうなるかを見て見よう。会社を登記し、銀行口座を作り、100万円を自分の口座からその口座に振り込んだと仮定する...

ブログには書けない話・書かない話
私が Internet Explorer の開発に関った理由: その9

以上のような経緯で、Jeremy がInternet Explorer 2.0を元にした「HTMLビューアー」を、そして私がその「ブラウザー・フレーム」を作ることで始まった Internet Explorer 3.0 のプロジェクト。Internet Explorer 2.0 の開発がまだ終わっていなかったために主要なメンバーはそちらにかかり切りで、たった二人で開発を進めることができたのは、大人数での開発が不得意な私にとっては幸いであった...この時点ではは私自身、あまり強く意識してはいなかったのだが、この時に採用したアーキテクチャが、後に Internet Explorer と Windows Explorer を融合させた、Windows 98 のベースになったのである...

読者からの質問コーナー

読者の一人の方から、こんな質問が来ていました。

...しかしTachCrunchなどで西海岸のベンチャーの成功例を紹介する記事などを読んでいますと、そのほとんどが開発の初期段階で投資家から資金を得て優秀な人員を増やし開発を急加速させるているような話ばかりがでています。シリコンバレーのWebやスマートフォンアプリビジネスの世界では私たちのようなアプローチは幼稚なものなのでしょうか?それとも成功例に出てくるようなベンチャーでも投資を入れる前の段階では我々と同じような地道なアプローチを繰り返していたのでしょうか?また我々もサービスがある一定のユーザーに使ってもらえるようになった時にいつかは今のアプローチを変えなければ行けない時がくるのでしょうか?

もっともな悩みだと思います。結局のところは「最終的に何を目指すのか」「そのゴールの達成のためにどのくらいのリスクをおかす気構えがあるのか」によって答えは変わって来ると思います。「あまり大きなリスクはとらずに、地道でも良いので、着実にユーザーと売り上げを増やしたい」のであれば今のアプローチのままでも全く問題はないと思います。「大勝負」をする気持ちもないのに投資家からお金を集めても、あなた自身も投資家も不幸になるだけです...


neu.Notes+ 中級編:写真のトリミング

有料版の neu.Notes+ だけに備わったもう一つの機能が写真の「トリミング」である。それも、四角だけでなく、任意の形に写真を切り抜くことができるのが特徴である。

まず、キャンバスに写真を貼付ける。

Screenshot 2012.01.14 06.19.57

 

次に、この写真をダブルタップする。

Screenshot 2012.01.14 08.33.32


すると、「イメージ・エディター・モード」に入るので、右下の「トリミング」ボタン (Cc_crop_40)をタップする。

Screenshot 2012.01.14 06.29.38

 

この状態で表示されるボックスの大きさや回転角度を調整してトリミングする範囲を指定する。ちなみに、右上と左下のアンカーは縦横比を固定したまま拡大縮小する時に使う。

Screenshot 2012.01.14 08.35.15

 

ここまでなら、ほとんどの「写真加工アプリ」で可能な操作だが、neu.Notes+ならではの機能は、シェイプを使ったトリミング。上の状態で、シェープメニュー( Editor_icons_50@2xEditor_icons_06@2x)から星形を選んでみる。

Screenshot 2012.01.14 07.42.46



すると、トリミングの形が星側に変わるので、これの位置や大きさを調整してトリミングの範囲を指定する。さらに工夫をしたい場合は、ダブルタップ(星形の中ではなく、外をダブルタップする)でベクター・エディター・モードに入る。

Screenshot 2012.01.14 07.51.22

ベクター・エディター・モードからは、それぞれのコントロール・ポイントの位置や属性も変更できるし、コントロール・ポイントの追加や削除も可能だ(iPhone の場合、画面サイズのために若干機能が制限されている)。

Screenshot 2012.01.14 07.57.11

トリミングの形が決まったら、右下のクローズ・ボタンをタップする。

Screenshot 2012.01.14 07.58.22

ほんの数年前までは、パソコン上の、それも高価な Photoshop とかを購入しなければできななかったこんな操作が、今や iPhone や iPad で誰にでも手軽にできるようになったのである。私がソフトウェア・エンジニアとして iOS アプリの開発に夢中になる理由はまさにここにある。


neu.Notes+ 中級編:グループ・エレメント

「期間限定、新春特別セール」がとても好評で、neu.Notes+ のダウンロード数が急激に延びている。おかげさまで、日本ではiPad向け有料アプリ総合部門で二日連続でトップだ。

ユーザー数も増えたことなので、このブログでも少し neu.Notes+ の機能について解説して行きたいと思う。ペンで書くとか写真を貼付けるなどの、基本的な機能は説明しなくても分かる様に作ってあるのだが、グループ化、ベクターエディター、写真のトリミングなどになるとやはり少し説明が多少必要だ。

そこで、「neu.Notes+ 中級編」として、何回かに分けて解説を書くことにした。今日はトピックは「グループ・エレメント」の使い方だ。

まずは、キャンバスに適当なものを描く。

Screenshot 2012.01.13 13.55.56

ここでは、見栄えを良くするために、シェイプとベクターを組み合わせて描いたが、手書きのものでももちろんかまわない。

これをグループ化するには、すべてのエレメント(neu.Notes+では、キャンバス上に描くすべてのものをエレメントと呼んでいる)を選択する必要がある。

Screenshot 2012.01.13 14.15.54

複数のものを選択するには、選択モード( Editor_icons_08@2x)にしてから、(1)選びたいものを囲む様に斜めに指をドラッグする、(2)一つの指で一つのエレメントにタッチしたままもう一つの指で別のエレメントを次々にタッチしていく、(3)キャンバスの何もない部分にタッチして、ポップアップメニューから「全選択」を選ぶ、の3つの方法があるが、このケースでは(1)が一番楽だろう。

ちなみに、斜めにドラッグする際、上から下に向かってドラッグすると「ドラッグ範囲」に触れているエレメントすべてが選択されるが、下から上に向かってドラッグすると、「ドラッグ範囲」に完全に含まれているエレメントのみが選択されるので覚えておくと重宝だ。

選択したエレメントをグループ化するには、拡張ツールバーの「グループボタン( Group)」をタップする。

Screenshot 2012.01.13 14.21.38

グループ化によって作ったエレメント(グループ・エレメントと呼ぶ)は、通常のエレメントと同じように、サイズを変更したり、回転したり、上下関係を入れ替えたり、コピーしたりということが自由自在にできる。

Screenshot 2012.01.13 14.32.01

グループの解除は、グループ・エレメントを選択した上で「アングループボタン( Ungroup)」をタップすれば良い。

グループを解除せずに、グループ・エレメント内のエレメントを編集したい場合は、グループ・エレメントをダブルタップする。

Screenshot 2012.01.13 14.32.08

すると、グループ・エレメント内を別々のエレメントとして編集出来る「グループ・エディットモード」に入る。基本的な使い方は、通常のモードと同じだ。

Screenshot 2012.01.13 14.33.19

編集が終わったら、右下のクローズボタンをタップする。

Screenshot 2012.01.13 14.37.25

グループが使いこなせる様になると、色々と面白いことができるので、ぜひとも楽しんでいただきたい。

 


ぜひとも起こしたい「教科書革命」

アップルが1月の19日に何やら「教育関係」のアナウンスメントをするという話が報道されていたが(参照)、これを見て思い出したのが、私が少し前から漠然と考えている「教科書革命」。

教育はどの国にとってもとても重要だが、今の教科書の在り方は色々な意味で時代遅れである。

まず第一に、教科書はすべてデジタルで配布されるべきである。特に成長期の小中学生に重いカバンを持たせることは、背骨の発育上とても良くない。すべてデジタル化し、子供たちはタブレット一枚を持って、もしくは手ぶらで(タブレットは家と学校に一枚づつ持っておき、ネット経由で同期すれば可能)学校に通うという時代を実現すべき。

ここまでならば多くの人が既に考えているだろうが、同時に私が実現したいのは、義務教育機関中の教科書すべてのパブリック・ドメイン化である。パブリック・ドメインであれば、子供たちが無料で手に入れることができるだけでなく、教育者自身が自由に改良・改変・再編集することが可能になる(もちろん、改訂部分の著作権は自動的にはパブリック・ドメインにはならない)。学校の先生が、「教科書から子供たちがその週に読むべきページだけを取り出し、重要な部分に線を引いたりコメントを付け加えたりした上で、練習問題を付けて配布する」などが自由にできるようになる。

公立学校で使う教科書は、毎年、公募で集められた(パブリック・ドメインの教科書を改訂して作られた)新しい教科書の中から各地方自治体の教育委員会が選択する。その際に、選ばれた教科書の改訂者に対して「パブリック・ドメインに対する寄与費」のようなものを各地方自治体から支給し、選ばれた教材をパブリック・ドメインにする(つまり、毎年少しづつパブリック・ドメインの教科書が改良されて行く)。

今まで必要だった、紙代や印刷代や流通費用が99.9%節約できるので、教科書を作っている人たちにはきちんとした寄与費を払いながら、全体としては教育費を削減することすら十分に可能である。もちろん、昔ながらの出版社はこんな革命には抵抗するだろうが、「出版社の既得権」と「子供の教育」を天秤にかければ、答えは明らかである。

先日の「今、日本のメーカーに一番必要なもの」というエントリーで、その答えは「人々のライフスタイルを変える」という明確なビジョンだと指摘した。タブレットのマーケットでAppleと対抗する気があるならば、ここに書いたような「教科書革命」を日本だけでなく、世界中の国で起こすぐらいの気概が必要だ。こんな革命を起こせるのであれば、私自身も喜んで協力したいと思う。

アップルが起こした音楽業界への革命を指を加えてみていたメーカーの経営陣のみなさん、教育革命までアップルに主導権を握られてしまって良いんですか?


スティーブ・ジョブズに学ぶプレゼンの秘訣

ベスト・セラー「スティーブ・ジョブズ 驚異のプレゼン」の著者で、Business Week のコラムニストでもある Carmine Gallo が書いた "10 ways to sell your ideas the Steve Jobs Way!" という資料を手に入れたので、簡単に内容を紹介する。

1. 最初は手書きで考えをまとめろ

いきなりパワポの資料を作らず、まずは紙やホワイトボードなどで(訳注:neu.Notes+ でももちろんかまわない^^)、プレゼンの大まかな「流れ=ストーリー」を作るべき。つまらないプレゼンでは、観客はすぐに飽きてしまう。語るべき「ストーリー」がないうちにパワポの資料を作っても意味がない。

2. Twitter 向きの短いフレーズを使え

Twitter の「口コミ効果」に関しては、いまさら強調するまでもないが、それを最大限に活用するには、140字以内に収まる、短いキャッチフレーズを使うことが大切。2008年に MacBook Air を発表したときのフレーズは、"The world's thinnest notebook"。

3. 共通の敵を明確にしろ

1984年のテレビ広告ではIBMを、2007年のiPhoneのローンチでは「使いにくい携帯電話」をターゲットにしたように、消費者とアップルにとっての共通「敵」を明確にすることにより、消費者との間に「共感」を作り出した。

4. 「利点」にフォーカスしろ

フォーカスすべきは、製品の機能ではなく、その製品を得た時の何が得られるか。製品の機能だけ並べ立てて、どんな利益が得られるかは見る人の推察に任せるのは間違い。

5. 「三つの法則」を使え

スティーブ・ジョブズは、新製品の特徴を語る時には、常に三つの利点を語る。だらだらと利点を並べたてても聞いている人の頭には入って行かないし、一つや二つではバランスが悪い。

6. 「製品」ではなく「夢」を売れ

アップルが2001年にiPodを発売した時、MP3プレーヤーはそれまで単なる「携帯音楽プレーヤー」でしかなかった。スティーブ・ジョブズは、「iPodが音楽業界に風穴をあけ、人々のライフスタイルを変える」と心の底から信じており、その「夢」を消費者たちと共有したのである。

7. ビジュアルなスライドを作れ

文字を並べたスライドは最悪。ストーリーを語るのはプレゼンターの役目。スライドは、あくまでそれを補うものでしかない。スライドには、プレゼンを効果的にするための画像や数字だけを置き、大切なメッセージは(スライドに文字で書かずに)かならず自分の口で語れ。

8. 意味のある数字を使え

スティーブ・ジョブズは、「iPodはこれまで2億2千万台売れた」などの数字を効果的に使い、印象を強める。

9. 親しめる言葉を使え

スティーブ・ジョブズは、iPhone 3G のローンチの時につかった "Amazingly zippy" という言葉に代表されるように、普通の会社の背広を着た重役連中が決して使わないような親しみのある言葉を効果的に使う。

10. 「これは!」と思わせる瞬間を演出しろ

スティーブ・ジョブズは、iPhone のローンチの際に、「今日は、三つの革命的なデバイスを発表します。新しい iPod と、画期的に使いやすい携帯電話と、いつでもどこからでもネットの繋がることのできるインターネット・コミュニケーターです。」と三つの製品をローンチするように見せかけて、最後に「本当は三つの別々の製品ではなく、一つの製品なんです」とiPhone を紹介することにより、そのローンチをよりドラマチックなものにした。

おまけ. リハーサルは徹底的にしろ

スティーブ・ジョブズのプレゼンは天才的だが、それは用意周到な準備と、時間をかけたリハーサルの結果であることを忘れてはいけない。


今、日本の家電メーカーに一番必要なもの

今週はラスベガスでCESが開かれているが、CESの時期になるとトラフィックが増えるエントリーが二つある。

どちらも2010年のCESに参加した後に感じたことを率直に書いただけだが、その状況は2012年になってもあまり変わりがないようである。

日本の家電メーカーや携帯電話メーカーの本質的な問題がどこにあるかを理解したければ、Simon Sinek の "How great leaders inspire action" というビデオを見るのが一番良い。アップルにあって、日本のメーカーに欠けているのは、作り手と消費者の間の「目的意識の共有」である。

戦後の高度成長経済には、「家電三種の神器」と呼ばれたテレビ・冷蔵庫・洗濯機に代表される「もの」を持つことにより生活を向上させることが人々の夢だったために、その手の「もの」を人々が購入できる価格で提供することそのものが家電メーカーの存在目的であった。そのころの日本人は、誰もが「先進国なみの生活を手に入れる」という目的意識を共有していたのである。

90年代には、デジタルカメラ・DVDレコーダー・薄型大型テレビが「新・三種の神器」として同じような役割を果たして来た。その意味では、パソコンも携帯電話のビジネスもほぼ同じような形で立ち上がったと言える。

しかし、2012年の今、状況は少し違って来ている。表向きはスマートフォンやタブレットや超薄型ノートブックが同じような役目を果たしているようにも見えるが、「もの」と「情報」があふれる今、消費者は単に「ものを手に入れる」以上の理由を必要としているのだ。

どのメーカーもが、同じようなスペックのデバイスを同じような値段で売ることが出来るようになり、単なる「何メガピクセルのカメラを搭載しているか」とか、「CPUのクロック数がいくつだ」などのカタログスペックだけでは勝負できない時代に突入しつつあるのだ。

2012年の消費者の心を動かすには、カタログスペック以上の「何か」が必要である。そして、その「何か」とは、「それを作っている企業が何のために存在するか」「そのデバイスは何を目的に作られたのか」という企業の存在目的であり、デバイスに込められた魂なのである。

多くの人々がアップルの製品を発売日に行列してまで手に入れたがるのは、アップルのデバイスに「込められた魂」に共感しているからである。そこを理解せずに、「うちも家電メーカーとしてタブレットぐらい作らなければならないから」とスペック重視のもの作りをしていても、誰も見向きもしない。

今、日本の家電メーカーに一番必要なものは、「どんなライフスタイルを人々に提供したいか」というビジョンとパッション(=熱い思い)だと思う。どのOSを使うのかとか、何メガピクセルのカメラを搭載するとかは、何らかの目的を達成するための「道具」に過ぎない。そして、売り上げとか利益とかマーケットシェアは「結果」にしか過ぎない。

「はっきりとした目的意識を持った、魂のこもったもの作り」が必要とされているのだ。


オランダはどうやって自転車天国になったか

このビデオ、色々な意味で感動したので貼付けておく。

一つは「市民運動」の力。高度経済成長とともに都市を自動車に最適化しようとしていたオランダ政府に、人々がまったをかけたのだ。日本ではこれまでは「市民運動=左翼」というレッテルを張られてしまって来たが、今回の原発事故以来、少し変わって来た様に思う。日本の未来を決めるのは、政治家でも霞ヶ関の官僚でもなく、私たち国民だという意識を持って、発言すべきときは発言すべきだとつくづく思う。

そしてもう一つは、電気と石油を使いまくる「経済成長」がかならずしも国民の幸せに繋がるとは言えないこと。その意味で、「自動車にとっては天国だが、年間400人もの子供が自動車事故で死ぬ国」よりも、「自動車で生活するには不便だが、誰もが安全に自転車に乗れる国」を選んだオランダは、今後の日本のエネルギー政策を考える上でもとても参考になると思う。