今週の週刊 Life is Beautiful : 3月20日号
新 iPad と旧アプリの相性問題

IAEA、原発事故300キロ圏内の農畜産物の出荷停止を提言

御用学者たちの間では未だに内部被曝の危険を出来るだけ低く見せようという試みがされているが(参照)、御用学者の集まりでもある IAEA(International Atomic Energy Agency) ですら、2005年の時点で「(チェルノブイリ級の)重大事故の後は300キロ圏内の農蓄産物は出荷停止にすべきだし、放射性物質を含んだ食物の摂取に関しては厳格な制限が必要」との提言を出していたことは注目に値する(参照)。

2005年当時、これを国際標準とすることに猛反対したのが、日本の原子力安全・保安院と原子力安全委員会だ。そんな国際標準ができてしまえば、万が一の事故の際に莫大な被害を国全体にもたらすことが明らかになってしまい、原発の安全神話が崩れてしまうからだ。

典型的な「安全神話作り」の歴史だが、いざチェルノブイリ級の重大事故が起きてしまった今となってしまっても、未だに安全神話の維持のために内部被曝のリスクを過小評価し、その結果、数十万人の人たちに不必要な被曝をさせつづけている、というのが今の現状である。

内部被曝を外部被曝と同じシーベルトに変換することには意味がない。外部被曝を起こすガンマ線と、内部被曝を起こすアルファ線・ベータ線とではDNAに対する影響のしかたが大きく異なるからだ。

外部被曝と異なり、体内に取り込まれた放射性物質は、たとえごく少量でもその近傍の細胞を確実に傷つける。傷ついたすべての細胞が癌化するわけではないが、傷つく細胞の数が多ければ多いほど、その損傷がもとで癌・白血病・心筋梗塞などの疾病を引き起こす可能性が高くなる。内部被曝による疾病を避けるためには、摂取する放射性物質を可能な限り少なくすることが必要だ。

ちなみに、1ベクレル(Bq)とは1秒間に1つの原子核が崩壊して放射線を出す放射性物質の量。100Bq/Kgの放射性物質を含む米1キログラムは、1秒間に100回放射線を出す。そんな米を80グラムを含む一膳のご飯を食べると、それがお腹の中にある間に1秒間に8回放射線を出す。1日だけお腹の中にとどまったとしても69万回だ。

ICPP(国際放射線防護委員会)の研究によると、1日あたり10ベクレルの放射性セシウムを含む食事を2年間続けると(つまり100Bq/Kgの米を毎日1膳ちょっと食べ続けると)、体の中に1400ベクエルのセシウムが常に残留した状態になるという(参照)。

そんなご飯を食べるか、と言われてもちょっと食べる気になれないのは当然だ。それを「風評被害」と呼んで過小評価することは、「少女売春」を「援助交際」というオブラートに包んだ言葉に包んで過小評価するのと同じ行動だ。

Comments

通りすがり

IAEA、ですよね?

りんご

では、カリウム40による内部被曝をまず防ぐべきなんですね?
セシウム137よりとても多いですから。

> 内部被曝を外部被曝と同じシーベルトに変換することには意味がない。
もちろん、Bq→Svの変換で、内部被曝と外部被曝を同じに変換してはいけません。
セシウム137の場合、内部被曝は外部被曝の約2倍のシーベルトに変換します。
数百倍とか数万倍とかいう説明が出回っていますが、それは科学的事実に基づきません。

事実を無視して感情によって過大評価することこそが、「風評被害」を引き起こしています。
感情を無視して事実を押し付ける事が、意固地な反原発派を生んでいます。
この問題はどう解決するべきでしょうね・・・。

shiro

Sv換算した時点で、「DNAに対する影響のしかたが大きく異なる」分は考慮されていると理解していました (線量換算係数)。
「内部被曝を外部被曝と同じシーベルトに変換することには意味がない」というのは、現在の線量換算係数がおかしいということでしょうか。それともそもそも、係数を掛けて換算することはできない、別の尺度を設けるべき、ということでしょうか。もう少しだけ詳しく説明して頂けたらうれしいです。

yukiyagi7

いつも、原発関連以外でも、共感する御意見が多々あり、興味深く拝見しています。
今回の記事、是非拙ブログにて御紹介したいので、転載の御許可を御願いします。

蓮華withにゃんこ達 http://ameblo.jp/yukiyagi7/

ヨロシクお願いします

カリガリ博士

ちなみに、バナナは130Bq/Kgですので、中島さんが例に出されたお米の「100Bq/Kg」より大きい訳です。
あと、普通のお米も33Bq/Kgくらいありますよ。
そもそも100Bq/Kgのお米って、どっから出てきた話なんでしょうか?

だからと言って、バナナを食べるなという意味ではありません。
セシウム(Cs137)もカリウム(K40)も代謝で排出されますので、ベクレルではなくSvで計算すべきでしょうね。
生物学的半減期は核種によって異なるので(セシウムの方が長い)、カリウムを例に出して大丈夫と言う訳ではありませんが、ベクレルだけで物事を語るのは良くないと思います。

中島さんは英文をスラスラ読めるお方なので、パンダジェフスキー氏の海外での評判なんかも取り上げていただけると嬉しいです。

M

りんごさん
ガリガリ博士さん

カリウムなどホメオスタシスが効いているものは、過剰に摂取してもごく短時間で排出され、摂取量にかかわらず体内にはほぼ一定濃度で存在するので、自然放射線と同様に考えていいのではないかと思います。すると、追加で摂取した放射性セシウムによる被爆と健康リスクは、原発事故のせいと言うことになると思います。
それとも、セシウムとカリウムは同じアルカリ金属なので、セシウムも同じくホメオスタシスが効くということを主張されているのでしょうか?
そういった話は軽く調べた限りでは見つからなかったので、体内のカリウムが放射性セシウムに置き換わった場合に増加する被曝量がごく微量ということを確認できる資料などを示していただければ助かります。

ただ、K40はベータ崩壊するので、自然状態でも無視できない量の内部被爆はある、というのは確かにそうですね。

fukuyas

「外部被曝を起こすベータ線」? そんなの気にしなくていいような?

カリガリ博士

>M 様
私は「生物学的半減期は核種によって異なるので(セシウムの方が長い)、カリウムを例に出して大丈夫と言う訳ではありませんが」と書いていますので、KとCsが同程度に排出されるとは考えてはいません。
M様はホメオスタシスが効かないものは、体外からまったく排出されず蓄積されるとお考えなのでしょうか?
私が反論したかったのは「300キロ圏内の農畜産物の出荷停止」が大げさだという事で、Kが安全だからCsも安全と言う事ではありません。

扱っているのがデリケートな話題ですから、反論があるなら、本来ならコメント欄ではなく、ブログにトラックバックを飛ばすべきでしたね。
失礼しました。

>中島様
コメント欄を汚して申し訳ありませんでした。
以後気をつけます。

りんご

間違いを書いてしまいました。
> セシウム137の場合、内部被曝は外部被曝の約2倍のシーベルトに変換します。
セシウム137の場合、内部被曝の影響は、カリウム40の約2倍相当です。
うろ覚えで書いていました。申し訳ありません。

なお、内部被曝した場合のBq→Svの変換係数(実効線量係数)は既に知られております。
http://search.kankyo-hoshano.go.jp/food2/Yougo/j_senkeisu.html
生体半減期なども考慮されている数値です。(つまりホメオスタシス考慮済み)
なのでこの数字を見て、過大評価なのか過小評価なのか、冷静に判断する事が求められます。
過大評価は風評被害に、
過小評価は健康被害に、それぞれ結びつきます。

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