私にとってのブログと有料メルマガの違い
2012.08.23
有料メルマガのポジショニングに関してさまざまな議論が盛り上がっているので、私なりの意見を表明しておく。
ブログを書くことは私にとっては基本的にエンターテイメント=「遊び」である。
ブログにはてなブックマークが付きはじめた時には楽しくて、どうやったら「はてなのホットエントリー」に私が書いた記事を3つ同時に載せることが出来るかを試みた(2つは何度も達成できたが、3つは非常に難しく、たった一度だけ達成した)。
「皆が漠然と感じていることを分かりやすく表現する」というのもある意味ではゲームである。
もし日本のメーカーがiPhoneを発売していたら... などは典型的な例だ。説明を一切書かず、疑似広告一つで日本のメーカーの問題点を端的に表現できるかという実験でもあった。
とある家電メーカーでの会話:クラウドテレビ編 とか 福島第一の「冷温停止」について は、対話形式である明確なメッセージを伝えることが出来るか、という課題を自分に与えた結果のものだ。
この手のことは、オープンなネットの場でしか出来ない。できるだけ大勢の人に読んでもらうことを狙い、出来るだけ分かりやすく、シンプルなメッセージを発信し、それをちゃんと伝えることができるか、どれだけ沢山の人に理解してもらえるかが、この「ブログを書く」というゲームのゴールでもある。
ブログを書く際には、読む人を楽しませることを意識してはいるが、それは読者のためではなく、自分のためである。「自分が書いた文章を読んで楽しんでくれる人がいる」ということが自分にとって楽しいから、ブログを書くのである。
これと比べると、「有料メルマガ」を書く時の意識は大きく違う。私にとって、「有料メルマガ」を書くという行為は「遊び」ではなく、「仕事」である。お金を払ってまで私のメルマガを購読してくれている読者に対し、十分な「価値」を提供すること、それがメルマガを書く時に私が意識することである。
先週は、Apple と Samsung の特許闘争に関する英文の記事を勉強の題材として取り上げて解説した。しかし、その記事を読みこなすには「"standard essential patents" とは何か」を理解することが必須だ。ブログではそんな面倒なトピックはあえて避けるが、大半のメルマガの読者にとってはそれは「新しい知識」だろうし、逆に私から見れば「業界で働くのであればぜひとも理解して欲しい言葉」である。
それならば、「この記事を題材に、今週はメルマガ読者全員に『"standard essential patents" とは何か』を理解するという価値を提供しよう」という発想になる。これは今までのブログに対する私の行動とは明らかに違う。
では、お金を出して買ってもらう書籍の執筆と同じかと言えば、それとも少し違う。書籍はある意味で「売りっぱなし」だが、メルマガは読者との関係は継続的で、かつ、双方向である。一度でも大きく期待を裏切れば、そこで購読を打ち切られてしまう。
「メルマガ書き」という商売は、私のようにまだ現役でバリバリとソフトウェアを作っている人間にとっては決して簡単な仕事ではないが、そこにある意味で心地よい緊張感が生まれる。以前よりも時間をもっと大切に使う様になった。ネットの記事をより真剣に読むようになった。
なんだか散文的になってしまったが、これがメルマガ「週刊 Life is besutiful」を書きはじめてもうすぐ1年になる私にとってのメルマガである。
Comments