霞ヶ関にとって、政治家は「愚民の代表」でしかないのか?
今週の週刊 Life is Beautiful:9月11日号

政府が「将来の原発比率は0%」と宣言できない本当の理由

一昔前は、どこの新聞も同じような記事を書いていて面白くなかったが、福島第一の原発事故以来、新聞ごとの特徴が出てとても興味深い。

事故前と変わらずに、東電・経団連・政府側に立って原発を推進し続けようとしている御用新聞が読売新聞。逆に、電力業界からの広告費をきっぱりと捨て、原発の安全神話や使用済み核燃料の問題点をするどく指摘続けているのが東京新聞。同じテーマに関するそれぞれの社説を読み比べるととても勉強になる。

例えば、読売新聞の「再処理稼働へ『原発ゼロ』は青森への背信だ」 と東京新聞の「『ウラン節約』ウソだった 再処理『原発維持のため』」

読売新聞の社説は「将来は原発0%を日本のエネルギー政策として選択すると、青森の六ヶ所村に再処理のために中間貯蔵してきた3000トンの使用済み核燃料は行く先を失う。だから原発0%を選んではいけない」というのが主題だ。

逆に、東京新聞の社説の主題は「使用済み核燃料の再処理は詭弁にすぎない。本当の理由は『再処理路線でなければ、使用済み核燃料の受け入れ先がなくなり、原発が止まってしまうことになる』からだ。そんなデタラメをもう許してはならない」というもの。

全く同じ問題を表と裏から見ているだけだが、結論がまったく逆なところが興味深い。

先日の政府の発表資料を見ると、青森県、六ヶ所村、日本原燃(株)との間では「再処理事業の確実な実施が困難となった場合には、日本原燃は、使用済み燃料の施設外への搬出を含め、速やかに必要かつ適切な措置を講ずるものとする」という覚え書きが締結されていることが分かる。

「将来の原発比率を0%にする」という決断は、再処理事業の凍結を意味し、日本原燃は覚え書きに従って速やかに六ヶ所村にある3000トンの使用済み核燃料を各電力会社に返却しなければならない。しかし、日本中の原発の使用済み核燃料プールはすでに満杯状態。3000トンの使用済み核燃料は宙に浮くし、再稼働した原発からさらに生み出される使用済み核燃料の行き先もなくなる。

つまり、「将来の原発比率を0%にする」と決めたとたんに、今まで先送りしてきた「トイレなきマンション」問題が一気に顕在化し、安全が確認された原発の再稼働すら出来なくなる、という状況が関係者の頭を抱えさせているのだ。

読売新聞の社説は、この覚え書きの意味を理解した上で「だから原発は続けるしかない」と主張しているが、これは麻薬中毒者が「今、麻薬をやめたら禁断症状が出るからやめられない」と言っているのと等価である。

政府内部では、とりあえず選挙を乗り切るために、エネルギー政策の選定を三年ほど引き延ばし、国民には「脱原発依存」という曖昧な言葉でお茶を濁しつつ、再処理事業の凍結も宣言せずに、再稼働した原発により生み出された使用済み核燃料を六ヶ所村に送り続ける、という案が有効なそうだ。

野田総理が「将来は原発ゼロを目指すが、当面電気の安定供給と日本の経済のために安全なものから再稼働」と言ったとしても、私には「近い将来はダイエットする予定だけど、当面は元気を出して仕事をするためにもラーメンの替え玉はやめられないし、食後のドーナッツは欠かせない」と同じく戯言にしか聞こえない。

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