モンゴルの人々が安倍総理の訪問に神経質になっている理由
2013.03.30
安倍総理が訪問したモンゴルでは、安倍総理に向けて「モンゴルはウランを売らないし、使用済み核燃料も引き取らない」というデモが繰り広げられたそうである(参照)。なぜこんな声が上がるかを理解するには、少し歴史をひも解く必要がある。
以下の3つの記事(いずれも英文)が良い参考になる。
2011年7月11日 US Promotes Nuclear Waste Dump in Mogolia
この記事は、
- ウランを輸出して外貨を稼ぎたいモンゴル
- 原子力発電所を持ちたいアラブ首長国連邦
- 原子力技術を輸出したい日本
- 使用済み核燃料の最終処分場を国内に作れずに困っている米国
の4カ国の間で、
- モンゴルにはウランの濃縮設備は作らない
- モンゴルには中間貯蔵施設だけではなく、最終処分場を作る
という条件の元にモンゴルから輸出したウランを日本もしくは米国で濃縮した形でアラブ首長国連邦に原発の燃料として運び、使用後は再びモンゴルに戻して最終処分する、という覚え書きが交わされたと報道している。
2011年8月23日 Official: U.S. in Early Talks About Int'l Nuclear Leasing Arrangements
この記事は、モンゴルでの使用済み核燃料の最終処分に関する報道を否定して来た米国政府が、ようやく公式に話し合いの存在を認めたが、あくまでこれは「モンゴルが自国で採掘したウランを他国に貸す」という「核燃料のリース・プログラム」であり、米国で行きどころがなくなった使用済み核燃料をモンゴルに押し付けるものではない、と報道している。
2011年10月17日 Mongolia abandons nuclear waste storage plans, informs Japan of decision
この記事は、モンゴル政府が、国内の反対派の声に押されて、使用済み核燃料の中間貯蔵施設および最終処分場の建設を中止し、日本に通達した、と報道している。
つまり、この Comprehensive Fuel Service (CFS) プログラムとも呼ばれる「核燃料のリース・プログラム」は、「ウランを輸出して外貨を稼ぎたいなら、最終処分場を作って使用済み核燃料を引き取れ」という日米によるモンゴルへの「核のゴミ」の押しつけプログラムなのだ。
この経緯を良く覚えているモンゴルの人々からすれば、日本の安倍総理が「エネルギー・資源問題を話す」ためにモンゴルを訪れているとなれば、CFSプログラムが復活してしまうのでは、と神経質になって当然なのである。モンゴルとのCFSプログラムがあれば、日本は原発を輸出しやすくなるし、あわよくば国内にたまった使用済み核燃料を「将来輸出するだろうウランに見合う分」などの方便で引き取ってもらえる可能性すらあるからだ。
【参考資料】
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