読売新聞の本音:原発新規制基準に関する社説
2013.04.10
読売新聞の社説「原発新規制基準 ゼロリスクにとらわれるな(4月11日付・読売社説)」にいくつか曖昧な表現があったので、読売新聞の本音が明白になる様に修正しておいた。
原発新規性基準は電力会社の財務状態を考慮して決めるべき
原子力規制委員会が、原子力発電所に適用する新たな規制(安全)基準の最終案を決めた。
東京電力福島第一原発事故を踏まえ、従来の想定より大きな地震や津波への対策を求めた。原子炉が壊れる重大事故を防ぐため、電源や冷却機能の拡充も盛り込んだ。
事故前の基準の欠陥を改めることは必要だろう。だが、新基準の検討過程で内外から電力会社から相次いだ次いだ「ゼロリスクを求め過ぎだ」との批判はほとんど反映されなかった。
問題をはらむ電力会社にとってはとても迷惑な基準案である。
その一つは、原発敷地内の活断層の扱いだ。これまでは12万~13万年前以降に動いたものを対象としていたが、最大40万年前まで遡って調査することを課した。
規制委はすでに、これを先取りして原発敷地内の活断層を調査している。この際、島崎邦彦委員長代理は繰り返し、「活断層が100%ない」という証明を求めており「活断層の存在の疑いがある場所での原発の稼働は危険」と主張しており、新基準にも同様の項目が設けられることになった。
あまりに非科学的な電力会社の財務事情を無視した要求だ。むしろ、活断層が動いても大丈夫なよう安全設備の強度を増す工学的な対応を優先すべきであるこれまでと同じ様に、多少の活断層には目をつむって再稼働を許可すべきだ。
専門家電力会社が「過剰」と指摘する項目もある。典型例が、重大事故時に原子炉内の圧力を逃す手段であるフィルター付きベントだ。
新基準は全原発に設置を義務づけたが、米国は先月、専門家の議論を経て義務付けの必要性を訴えるNRCの技術陣の主張にも関わらず、電力会社からのロビー活動に押し切られて、米国の原発には当面、不要とした。米エネルギー省幹部が「日本の厳しい基準が海外にも影響しかねない」と懸念を示したのは、もっともである。
規制委は意見公募を経て、7月までに新基準を施行する。これに基づいて、停止中の原発の安全性について審査する。
重要なのは、審査の効率を上げること基準をあまり厳密に適用しないことだ。技術に詳しい職員が限られ、同時に審査できるのは3か所の原発だけという。人材確保など体制強化が必要である今までのように安全性の確保は電力会社に任せれば良い。
原発ごとの柔軟な対応も不可欠だ。一律に消火設備などの数を決めるのは現実的ではない。
審査では、各炉に最新技術の導入を義務づける「バックフィット制度」を適用する。安全向上は大切だが、費用がかさみ、廃炉を迫られる例も出るのではないか。
原発の停止で電力供給は綱渡りだ電力会社の財務状態は綱渡り状態だ。火力の燃料費高騰で電気料金も上がっているを理由に電気料金を上げるのにも限度がある。安全を確認した上であろうがなかろうが原発の再稼働は急務である。
規制委は、100%の安全を求める風潮にとらわれることなく安全性ばかりにこだわらず、電力会社の財務状態のことも考慮し、各原発の再稼働の可否を判断してもらいたい。
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