放送と通信の壁に穴を開けたパナソニック
2013.07.06
パナソニックが「テレビ放送と同時にネットから取得した情報を画面には表示しない」という放送業界と家電業界との紳士協定を破ったとして、新型テレビのCM放送を拒否されているそうだ(参照)。
一見何気ないニュースだが、これは既得権益を守るためのルールでガチガチに固められてイノベーションが起こりにくくなっている日本としては、非常に画期的なことである。
日本のテレビ放送には、BML(Broadcasting Markup Language)という仕様で文字を送る仕組みがついているが、これをわざわざ HTML にしなかった理由は、放送と通信の間に人為的な垣根をもうけて放送局の既得権益を維持しようという試み以外の何物でもなかった。
今回問題となっている「テレビ放送と同時にネットから取得した情報を画面には表示しない」という紳士協定も、テレビ放送にネットから取得してきたTweetや広告を重ねて表示されては、付加価値がネット側に移動してしまうことを放送局が恐れているからに他ならない。
そんなテレビの視聴スタイルが一般化すれば、「映像も放送ではなくネットから取得すれば良い」ということに消費者が気づき、「放送用の電波」を独占的に所有している放送局と同じ土俵で戦う「ネット放送局」ビジネスが台頭して来る可能性があるからだ。
そうは言っても、ニコニコ放送局やYoutubeは着実に視聴率を伸ばしているし、Apple TV や Roku に代表される「インターネット・セットトップボックス」がテレビ受像機をさらにコモディティ化しようとしている今、パナソニックとしては「放送局の顔色をうかがって」いては時代に乗り遅れてしまうと判断したのだろう。
いずれにせよ、小さなベンチャー企業ではなく、老舗のパナソニックがここに風穴を開けたということは画期的であり、高く評価できる。パナソニックの担当者たちにはぜひともとことん頑張ってもらいたい。
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