今週の週刊 Life is Beautiful:8月27日号
2013.08.26
今週のメルマガ「週刊 Life is Beautiful」の配信準備が整ったので、内容を簡単に紹介する。
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今週のざっくばらん
AKB商法によって歪められた日本のメディアビジネス
CNN Moneyの"Devoted CD buyers aren't a dying species. At least not in Japan."という記事によると、CDやDVDなどの「物理メディア(physical media)」の売り上げが勢い良く落ち込む先進国の中で日本だけが特異点となっている点が指摘されています。この記事によると、音楽の売り上げのうち物理メディアの占める割合は、米国では 34% にまで落ち込んでいるにもかかわらず、日本ではまだ 80% を保っているとのことです。この記事によると、「日本人は(手にとって触ることのできる)物理メディアが好き」とのことですが、私はかなり疑わしいと思っています。
この記事にも少し触れられていますが、「AKB商法」と呼ばれる握手券や投票券との「抱き合わせ商法」による CD の売り上げはばかにならない数にまで伸びており、その数字を考慮せずに日米の数字の違いのみを直接比較することにはあまり意味がないからです...
表現力の一つとしての3Dモデリングツール
先週は、3Dプリンタを活用するために、Blender という3Dモデリングツールの使い方の勉強を始めたと書きましたが、3Dモデリングツールを使いこなせるようになりたかった理由はもう一つあります。「表現力」の拡大です。
自分のアイデアを他人に伝える際には、文章だけに頼らず、グラフや図や写真を使うことにより、直感的に理解できるような資料を作る様に心がけていますが、その際に「3次元のイラスト(もしくはデッサン)を書きたい」と感じたことは今までしばしばあります。絵心のあるデザイナーが自分のアイデアをサクッと描いてしてしまう手腕には憧れていました...
責任重大な日本の水産庁
私はシアトルに来てから20年以上になりますが、この20年間で米国人の食生活は大きく変わりました。その中でも際立っているのが「魚を食べる文化」の広まりです。20年前には、この海岸沿いの街であるシアトルにも魚を食べるアメリカ人はごく一部しかいませんでしたが、最近は「日本食好き」「寿司好き」の人も数多く見かけるようになったし、魚料理を出す日本食ではないレストランも増え、繁盛もしています。それと共に、鮮度の良い魚も流通するようになり、鮮度の悪い魚しか手に入らなかった20年前と比べて不自由を感じなくなっています...
私の目に止まった記事
Needed at Microsoft: A Catch-Up Artist
Microsoft の Steve Ballmer が引退を表明したことに関しては、色々な記事が書かれていますが、Microsoft が抱える一番の問題を的確にしているのが、この New York Times の記事だと思います。
IBMやAppleが「生まれ変わる」ことに成功したのは、本業が危機に瀕して会社の存続に関わる状態にまで追いつめられていたからであり、相変わらず Windows と Office が莫大なキャッシュフローを生み出している Microsoft にとっては...
On The Future of iOS and Android
これまでも、Android のフラグメンテーションの問題やら、スマートフォンのチップビジネスに関して書かれた記事を数多く紹介して来ましたが、包括的に全体像を捉えている、という意味でとても良い記事なので紹介します。特に注目すべきなのは、古いバージョンの OS を搭載したスマートフォンがいつまでも市場に存在している、という Android 特有の問題が、単に開発者を悩ませるだけでなく...
Report: Apple's Future of TV Is an Actual Television
Apple が単に Apple TV のアップデートではなく、実際のテレビを開発している、という情報です。この情報は、去年から私のところにも入って来ており、少なくとも研究開発をしていることだけはほぼ確実だと考えて間違いないと思います。
Apple がテレビを売る場合...
日本語の記事ですが、ストックオプションからの収入に関わるとても大切な話が書いてあるので、紹介します。
ある外資系企業のストックオプション保有者が1株50ドルで権利を得て、1株90ドルになったときに権利行使した。しかし、そのまま持っていたら、株価が30ドルくらいに下がってしまった。にもかかわらず税務署から、「90ドルで行使して40ドル儲かっている。その分の税金を払いなさい」と言われた。それで自己破産した人が何人もいた。
当時(2000年前後)は「ストックオプションとは何か」がちゃんと理解できていない人も多かったので仕方がないとは思いますが、ストックオプションとは、会社が社員に対して与える「自社株を(市場価格に関わらず)特定の価格で買う権利」のことです。
このケースでは、1株を50ドルで買う権利をもらっていた人が市場価格が90ドルの時に行使をしたため、(その時に株を売ろうが売るまいが)税法上は1株あたり40ドルの利益を得たことになり...
エンジニアのための経済学:混沌とするゲーム業界
この業界で長く働いていると、「徐々に衰退していく Windows パソコンビジネス」「iPhone と Androidケータイの間に挟まれて苦しむ既存の携帯電話メーカー」などの大きな流れがはっきりと読める場合と、「インターネットテレビが引き起こす放送革命」のように一触即発の進化圧がかかっていることは明らかなのに、まだどちらの方向にどのタイミングで変化が起こるのかが読みにくい場合とがあります。
その意味では、ゲーム業界はモバイル・ゲーム、ソシアル・ゲームの台頭でまさに「先の読みにくい大きな曲がり角」に来ており、今年のクリスマス商戦は業界全体の流れを読む上でとても重要な分岐点になると思います。
そこで今週は、ゲーム業界全体で起こっている一見バラバラな「事象」や「進化圧」を包括的に見ることにより、この「曲がり角」の先でどんなビジネスが可能なのかを考えてみたいと思います...
読者からのご質問・ご意見コーナー
今週はこんな質問が来ました。
7/23のメルマガで『Weak PC Market Catches Up to Microsoft』について書いて おられましたが(Microsoftは、エンタープライズ市場に集中すべきという内 容)、今後、Microsoftがタブレット事業を続けていくとしたら、Windows RTは 捨てて、Windows 8のみに絞るべきだと思いますか? (それ以前に、Microsoftはタブレット事業を続けるべきか?という問題があり ますが)。
また、TechCrunchに「Microsoftが第2世代のSurface RTをさらに大きく価格を 下げて発売する可能性は十分ある。結局Microsoftは、たとえ誰も買いたいと思 わない製品であっても、やりたいことは何でもやる会社なのである」 http://jp.techcrunch.com/2013/07/19/20130718microsoft-finally-reveals-that-no-one-wants-the-surface-rt/ とまで、書かれていますが、元Microsoftの従業員として、やはりそういう(や りたいことはやる)社風だと思われますか?
まず二つ目の質問の方の「たとえ誰も買いたいと思 わない製品であっても、やりたいことは何でもやる会社」という部分は正しくないと思います。性格に言えば「たとえライバルにどんなに差をつけられていても、あきらめずに良いものを作り続ければいつかは勝てると信じて作り続ける会社」という方が正しいと思います...
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