iPad Air による IGZO 採用報道に関するまとめ
2013.11.06
月曜日に、GIZMODO の記事に iPad Air に IGZO が採用されていることがあたかも周知の事実の様に書かれていることを発見した私が、メルマガの読者に向けて「これって既に確認された情報でしたっけ?」と尋ねたところ、何人かが協力してくれたために、一気に情報が集まった。
明確になったことを箇条書きにすると、以下の通りである。
- 実際に分解した人達のレポートによると、ディスプレイを製造していることが確認出来たのは、LG と Samsung。シャープ製のディスプレイが採用されている iPad Air を発見した人はまだいない。
- Apple が IGZO を採用するらしいという噂はこれまでも何度か流れているが、Apple 自身はそれを認めてはいない。
- 分解した人によると、バックライトのLEDの数が、一世代前の84個から36個に減っている(参照)。輝度の高い LED を使っている可能性はあるが、それよりも、ディスプレイの透明度が高くなった/開口部が広くなった、と考える方が納得できる(これは IGZO の特徴)。
- シャープは、最初に IGZO の大量生産に成功した会社で、かつ、IGZO の商標登録を持ってはいるが、IGZO のパテントを所有・管理しているのは、科学技術振興機構。
- 科学技術振興機構は、シャープ以外にも IGZO のパテントを分け隔てなくライセンスしている(参照)。科学技術振興機構は Samsung がライセンスしたことを発表しているし(参照)、LG が大型ディスプレイの生産を開始した、という報道もある。
- 製造装置に関しては、Applied Material が IGZO 向けの製造装置を既に発表しており(参照)、製造に関するシャープの先行者利益はもはやないと考えた方が良い。
- 一部の人は、シャープのみ IGZO を使い、Samsung と LG は使っていない、という混在型だと予想しているが、これだけ特性が違うものを混在させるのは難しいというのが専門家の見方である。
結局のところ、これらの状況証拠を根拠に、MacRumors、GIZMODO などが iPad Air には IGZO が採用されていると推測した上で、この件に関してはほぼ確実と「決めつけている」というのが現状のようである。
Samsung が IGZO をライセンスしたのが 2011 年であることを考えると、シャープがAppleにIGZOのメリットを説明→Appleが採用を決定→サプライヤーを一社に絞りたくないAppleがIGZOベースのディスプレイを作るように他社に指示→SamsungとLGがIGZOを科学技術振興機構からライセンス、という流れがあったと予想できる。
もっと深く読めば、Apple が IGZO を採用することを知った鴻海が、IGZOディスプレイの製造パートナーとなるべく、シャープに資本参加を打診していたが、予想よりも早く Samsung や LG も IGZO ディスプレイの生産体制を確立してしまったために、シャープに資本参加するメリットが薄れて手を引くことに決めた、とも解釈出来るが、これは想像力を働かせ過ぎかも知れない。
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