米マイクロソフト本社で目の当たりにしたビル・ゲイツの決断力
日本語とオブジェクト指向

デカルトは「困難を分割せよ」と言い、ビル・ゲイツは「問題を切り分けろ」と言った

6月1日に発売したなぜ、あなたの仕事は終わらないのか スピードは最強の武器であるですが、ブログでの宣伝が功を奏して2日にはアマゾンのベスセラーランキングで総合1位の快挙を成し遂げましたが、あまりにも一気に売ったために品切れになってしまいました。文響社さんの素早い対応で、再び購入できるようになりました。

今回、引用するのはビル・ゲイツから学んだ「仕事」や「責任」に関する教訓です。

◇ ◇ ◇

花さえ用意できれば、 裏で昼寝していてもいい

友人との待ち合わせならともかく、仕事の締め切りに遅れてしまうのは絶対に避けたいものです。私はマイクロソフトにいたころ社長のビル・ゲイツと仕事をしていました。そのため彼の考えはよく知っているのですが、彼は待ち合わせや締め切りに遅れた人がする言い訳をこの世で一番嫌っていました。とくに論理的に言い訳する人を嫌うのです。どういうことかお話ししましょう。

たとえばあるパーティーがあるときに、ビル・ゲイツがあなたに花を用意してほしいと頼んだとします。あなたは花屋に電話をし、パーティー会場に花束を届けるように注文します。しかしパーティー当日、花屋から、雪のせいで配達が遅れるという電話が来ます。

あなたは花が遅れるという旨をビル・ゲイツに伝えます。こういうとき、彼は尋常じゃないほど怒ります。その怒りは、人が変わったのではないかと思うほどです。それだけ締め切りまでに仕事を終えることを重視しているのです。

あなたが命じられた任務はパーティーに花を用意することであり、花屋に注文をすることではありません。注文をするだけなら誰にでもできます。あなたは花を用意するために雇われているのです。であれば、いかなる理由があっても花を用意することができなかったのは100%あなたの怠慢であり、責任を負うべきだというのです。

ですから、もし花屋が雪の影響で配達が遅れるというならば、あなたはなんとしてでも花をパーティー会場に用意するための手段を考えなければいけません。車で近くの花屋まで行くとか、ほかの花屋に至急注文をするとか、そういった第二第三の案をただちに遂行しなければなりません。

あなたの任務は花を用意することです。花さえ用意できれば、パーティー会場の裏で昼寝をしていてもいいのです。だからこそ花は絶対に用意しなければならない。花屋に注文をすることは任務の一部でしかありません。言い訳をする人はそこを勘違いしています。

待ち合わせの例でいえば、大抵の人は 10 時前に到着する電車に乗ることだと思っています。しかし本当の任務は、 10 時に待ち合わせ場所に着くことです。

このように自分の中で任務を再定義することが仕事においても重要です。私はビル・ゲイツほど厳しい人間にはなれませんが、自分の中で絶対にやらなければならないものとは何かを真剣に考えることは大事なことだと思っています。

ルーがなくてもカレーは作れる

ビル・ゲイツは複雑な問題をいくつかの独立した問題に分けるのがとても上手な人です。「困難は分割せよ」とはフランスの哲学者・デカルトの言葉ですが、分割術を最も実践的に行っているのはビル・ゲイツでしょう。

たとえば、こんな例で考えてみましょう。ある日、ビル・ゲイツがカレーライスを作ろうとしたとき、なんとカレールーとニンジンがありませんでした。これではいつものカレーライスが作れません。しかしよく考えてみてください。ルーがないと絶対にカレーライスは作れないでしょうか? ニンジンがないとカレーライスは作れないでしょうか?

そんなことはありません。ルーは市販のカレー粉で代用できるし、ニンジンはなくても一応カレーライスにはなります。つまり、ルーがないという問題と、ニンジンがないという問題は独立しています。だからここは慌てず、「ルーをどうするか」「ニンジンをどうするか」という分割された課題に、別々に当たればいいわけです。

ビル・ゲイツはその後、カレー粉とじゃがいもを使ってカレーライスを作っておいしくいただきました。

やや抽象的な話だったので、現実にあった事件を例に挙げます。マイクロソフトがパソコンメーカーにソフトを依頼されたとき、ある技術的な問題により、パソコンメーカーから苦情が来たことがありました。クライアントがたいそう怒っているということで、社内は混乱していました。とにかく、原因の技術的問題を解消しなければこの問題は収まらない。マイクロソフトの社員はみんなそう思い込んでいました。

そんなとき、ビル・ゲイツは困難を分割しました。技術的問題はクライアントの怒りからは独立した問題だと。どうやらクライアントが怒っているのは技術的問題よりも、担当者との性格の不一致に原因があったようです。そうして担当者は替えられ、クライアントをとにかくなだめる任務に就くことになりました。他方で技術的問題はエンジニアたちが全力で解決に向かってまい進していました。

こうしてクライアントとマイクロソフトの関係は、なんとか立ち直ったのです。技術問題と外務問題を切り分けることで、この事件は終息を迎えました。ビル・ゲイツが「その問題とこの問題は独立している」とよく言っていたことを覚えています。こうした課題の分割は、複雑な問題を効率的に解決するうえで重要なことだと思っています。

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