ソフトウェア・エンジニアから見た「機械化やAIによって豊かになった人間社会」のあるべき姿
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Tesla は自動車業界にとっての iPhone か

先日の朝、会社に行こうと Model X に乗り込んだら、こんなメッセージが表示されました。

待望の HW2 向けのソフトウェア・アップデートです。Tesla は10月から完全自動運転を可能にするハードウェア(HW2)をオプションとして提供し始めましたが、12月に入手した私も、当然のようにそのオプションを選びました。

しかし、ソフトウェアが追いついておらず、HW2 を搭載していないモデルで動いている、オートパイロット機能すら動かない状態で出荷されていました。 従来の車であれば、8000ドル(約90万円)も余計に支払って入手したオプションが機能しない状況で出荷されるなど許される話ではありませんが、Tesla が優秀なソフトウェアエンジニアを抱えていることを理解しており、かつ、(ディーラーに行かずに)Over-the-air でソフトウェアのアップデートが可能であることを知っていると、なぜか許せてしまうし、それどころか、逆にアップデートが来るのをワクワクして待つようになってしまいました。

この「ワクワク感」は、ちょうど10年前に初代の iPhone を入手した時の感覚と似ています。iPhone が単なる「高性能な携帯電話」ではなく、「携帯電話機能のあるコンピュータ」であったのと同じように、Tesla は単なる「自動運転機能の電気自動車」ではなく、「自動車機能つきのコンピュータ」なのだと思います。

iPhone を見て、日本の携帯電話メーカーのエンジニアたちは口を揃えたように、「うちだってあんなデバイスは簡単に作れる」「うちも前から同じようなデバイスを計画していた」と言いましたが、結局は Apple に大きく市場を奪われてしまいました。

そして、その一番の原因は、現場の技術力でも発想力でもなく、トップのビジョンにあった事実は未だにちゃんと理解されていないと思います。Tesla の Model S/X が自動車業にとっての iPhone であると私が感じる一番の理由は、高らかなビジョンを掲げてエンジニアたちを引っ張り、消費者たちを虜にする Elon Musk にあるのです。

iPhone の登場を「黒船」に例えた人がいましたが、まさに Tesla は、自動車業界にとっての「黒船」なのです。

*この文章は、メルマガ「週刊 Life is beautiful」からの引用です

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