あらゆる文章は実践あるのみ
極上のインプットはアウトプットの化学反応から生まれる

会話におけるアウトプットの重要性

9月22日発売の「結局、人生はアウトプットで決まる 自分の価値を最大化する武器としての勉強術」からの引用です。

◉私の考える「良い会話」とは(190ページ)

会話においてもっとも大切なことは、「相手の言っていることをきちんと聞く」こと、そして「聞いていることを明らかにする返事をする」ことです。

当たり前の話かもしれません。しかし、こんな当たり前のことができていない人が意外と多い。それは、世間的に「コミュニケーション上手」と思われている人であっても当てはまります。

何しろ、国民的報道番組の元メインキャスターでさえ、会話の基本を押さえられていなかったのです。具体的な個人名は伏せますが……。番組内で、そのキャスターが、専門家やアスリート、事件の関係者などにインタビューする企画が何度もありました。しかし、その聞く姿勢がどうも気になってしまうのです。

インタビューとはいえ、1対1の会話であることに違いはありません。会話は本来、こちらが質問をして、それに相手が答えたら「なるほど」や「そうですか」などと受け答えするのが常識です。しかし、彼の場合、そういった受け答えが一切ありません。驚くほどそっけなく、次の質問に行ってしまうのです。

本人としては、ちゃんと話を聞いているつもりなのでしょう。しかし、お茶の間の私ですらマズいと思っているのですから、現場のインタビュー相手はもっと思っていたはず。これでは聞いていないも同然ですし、インタビュー相手に対して、とても失礼だと感じました。

また、意外な答えが出てきたり、知らない情報が出てきたら、それをさらに深掘りするのがインタビューの基本。いや、むしろそれこそが人と人とのコミュニケーションであり、気持ちの良いコミュニケーションのはずです。よく「会話のキャッチボール」とたとえられますが、良いコミュニケーションとはこういったことを指すのです。反対に、禅問答のように聞きたいことだけ聞いて終わりというスタイルは、褒められたものではありません。

一方、「ニュースステーション」でメインキャスターを務められていた久米宏さんは、このコミュニケーションがとても上手な方でした。インタビューでは、事前に質問を用意していくものです。テーマの方向性やおおまかな着地点などもあらかじめ決めていくのが基本です。だからこそ、先に触れたキャスターは淡々とインタビューを進めたのではないかと思うのですが、久米さんはそれでもインタビュー相手の話をきちんと聞いている姿勢が見られました。久米さんが聞きたいことを聞くために話題を変えるにしても、丁寧にワンクッション置くのです。

また、やや明確さに欠ける部分をきちんと詰めたり、適宜アドリブも入れながら、それでいて自分の聞きたいことは聞いていくスタイルでした。見ていてもとてもわかりやすく、とても心地よかったのです。私がこう思うのですから、インタビューされている側も話しやすかったはずです。

この話の「インタビュー」のノウハウは、「日常会話」にそっくり当てはめることができます。

聞きたいことが多すぎて、前のめりになってしまうこともあるでしょう。聞きたいことが多いと、その先が知りたくなるものです。しかし、いったん落ち着いて「わかります」や「そうなんですか?」などの一言でもよいので伝えることが大事なのです。

こちらが話そうとするのであれば、それ以上に相手の話を聞かないといけません。ざっと、聞く:話す=7:3くらいという目安を持っていたほうがいいでしょう。

ここまでは最低限押さえておくべき会話の基礎編ですが、せっかくなので少し応用したものをご紹介しましょう。

これは知人と話していたときのことです。その人は、運転中に急な割り込みをされたそうです。かなり危なっかしいものだったらしく、私に「あの人はなんで、あんなことするんだろう……」と話しかけてきました。

この文章は、文字通りに取ると「なぜ、あの人は急に割り込んだんだろう?」という「Why」から始まる質問になります。「なぜなのか」と〝理由〟を聞かれたのだと考えた私は、「たぶん、急いでいたんじゃないかな」と答えました。ところが、相手は何やら腑に落ちない表情です。

似たような経験をした人は多いと思いますが、私が求められていたのは、「なぜ割り込んだのか」という答えではありませんでした。「あの割り込みは許せない!」という怒りを〝共感〟してほしかったのです。ですから、私の答えは相手からすれば見当はずれ。私としては、状況をきちんと判断するためにも当時の混雑具合なども聞きたいところですが、正解は、「ほんと、ヒドいよね」なのです。

相手が何を求めているのか、きちんと見極めることもコミュニケーション能力の一つということです。

 

◉初対面の話題に天気はいらない(195ページ)

食事会やイベント会場など、初対面の方とコミュニケーションを取る機会がたまにあります。初対面の人との会話でよくあるのは、最近の時事ネタだったり、天気や気温を話題にすることでしょう。

私はというと、形式的な挨拶は省き、いきなり「その人がふだん何をしているのか」、「どういう仕事をしているのか」といった部分から聞くようにしています。これは、なるべく早いうちに相手がハマっていることを聞き出し、それと同時に自分がハマっている対象もいち早く伝えることで、会話に意味を持たせたいからです。

誰でもそうですが、突っつくといくらでも出てくる「話題のツボ」があります。話し下手と言われる人でも、承認欲求がありますから、自分がハマっている趣味や分野に関しては話題が出てくるものです。私は、初対面の人のそんなポイントを極めて素早く突っつくようにしています。

そのポイントは、黙っていてわかるものではありません。話してもらわないとわからないのです。その話題を振ってさえいれば会話が盛り上がってビジネスや深いつき合いにつながったかもしれないのに、別れ際や、後から知ったりするのは非常にもったいない。だからこそ、とりあえず自分の好きなこと、そして相手の好きなことを話し合うというスタンスをとっています。要は、お互いしゃべりやすくなる環境を作っているのです。

普通、人間は興味のあることが複数の分野にまたがっているはずです。私だったらプログラミングやコンピューターの話だけでなく、テニスや料理の話など、ざっと10個くらいはあるわけです。そういうお互いの興味のあるところを披露しているうちに、マッチするものがあれば深掘りしていきます。

面白いのが、特に興味を持っていなかった話題でも、意外と盛り上がること。たとえば、先日、ある食事の席で医師の方と出会いました。彼は、バイオエンジニアリングについて研究している人ですが、その内容で話に花が咲きました。

私は基本的に理科系一般の話に興味がありますが、バイオ分野に関する興味はこれといってありませんでした。しかし、以前「市販されている薬がその人に合うかどうか、DNA検査によって調べることができる」という話を聞いたことがあったので、彼に投げかけてみたのです。すると彼は、DNA検査の話やその他のバイオテクノロジーの話を喜んで話してくれました。

さらに、「DNA検査をはじめ、最新テクノロジーの登場によって医学がものすごく進歩しているのに、当の医者があまり勉強していない」という医療現場の問題点まで打ち明けてくれたのです。何気ない会話がきっかけでしたが、私にとって勉強(インプット)になったのは言うまでもありません。

こうやって、会話が思わぬ方向に向かうことで、かえって盛り上がることも珍しくありません。だからこそ、自己紹介などの会話の早い段階で、まず「自分が深掘りできる話題」を出してみましょう。そして、相手が食いついてきたら躊躇なく、会話を展開していく。そんな会話こそが、良いインプット、ひいてはアウトプットにつながっていくのです。

 

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