一流のプレゼンターが必ずやっていること
アウトプットにおいて「プロデューサー魂」を持つことの大切さ

プレゼンが人間力を高めるのに最適な理由

9月22日発売の「結局、人生はアウトプットで決まる 自分の価値を最大化する武器としての勉強術」からの引用です。

◉プレゼンの主役はスライドではない。あなた自身だ(239ページ)

さて、ここまでの話を踏まえて、冒頭にお伝えした悪いプレゼン例を思い出してみてください。日本人のほとんどが、スライド上にある文字を順番に読んでいくだけでした。これでは、聞いている人にきちんと伝わっているのかがわかりませんし、そもそも、データや書かれた文字を読み上げるだけでは、聞いている人の記憶にすら残りません。

そして、プレゼンが評価されない多くの人に共通するのが、「プレゼンはスライドは主役」と勘違いしていることです。主役は、あくまでプレゼンをしている本人。社内の企画会議であれ、顧客に対するセールスであれ、一番強く印象づけるべきは、提案する企画や商品ではなく、「プレゼンする自分自身」なのです。

もちろんプレゼンの中身も大切ですが、本当に重要な情報はどのみち文書で別途提出することになるので、プレゼンの段階で重要となるのは、とにかく自分を印象づけ、「彼の提案する企画に社運を賭けてみよう」、「彼女を見込んでこのテクノロジーを導入してみよう」などと思わせることなのです。

やたらと文字ばかり並べたスライドを読み上げるだけの人がいますが、それでは、貴重な時間を使ってプレゼンをしている意味がありません。「大切なことは自分の口でアウトプットする」というのが正しいプレゼン方法なのです。

「プレゼンの主役は自分である」ということに気づかされたのは、アメリカで受けたプレゼンの授業がきっかけでしたが、同じような話を、先日お会いしたチェロ奏者の方からも聞くことができました。たまたま彼のパフォーマンスを耳にしたのですが、とてもすばらしい演奏でした。彼はチェロの演奏がうまいだけでなく、表情を巧みに変えたりして、とても表現力が豊かだったのです。そんなことを彼に伝えていたら、私にこう言ったのです。

「僕はチェロを演奏してるんじゃない。チェロで僕自身を表現しているだけ。チェロは道具にすぎないからね」

素直にかっこいいなと思いました。チェロは道具で、主役は自分。だから彼は、チェロの演奏者でもないと言いますし、お客さんは、自分のチェロの演奏ではなく、僕の表現を聴いてくれている。彼はそう言ったのです。

ですから、プレゼンも同じです。パワーポイントやスライドといった資料は、あくまで道具。主役はプレゼンターなのです。

私はコミュニケーションに強いこだわりを持っていますが、日本人のプレゼンを見ていると残念でなりません。正直、一筋縄ではいかない問題ですので、この章ではしつこく「良いプレゼン(講演)とは何か」ということについて取り上げていこうと思います。

 

◉つまるところ、プレゼンとはジャズである(272ページ)

「講演中はどんなことに気をつけていますか?」とよく聞かれるので、ここで一通りまとめてみたいと思います。

私は早口になりやすいので、話すスピードには気をつけています。マイクがあるので声の大きさに気をつけることはありませんが、ふだんの生活では、声が小さいと「声が小さいのは自信がないのかな」と、聞いている側の印象も悪くなってしまいます。

私の話にうなずいてくれる人を見つけたらしめたもの。その人を見ながら話すようにしています。その人自身も喜んでくれるし、わかりやすくリアクションしてくれるようになるので、こちらの気分も乗ってくるのです。会社内のプレゼンだと、キーパーソンがいるでしょう。彼らに積極的に伝えることも重要ですが、自分の気分を乗せていくためにも、リアクションの良い人を見たほうがいいでしょう。自分の気分が乗れば、結果として良いプレゼンになるからです。

とはいえ、ここまで言ってきたことは、いわば枝葉の部分。自信を持って話したり、相手を見て話したりするのも大切ですが、正しいプレゼンとはすでにお伝えしたとおり。聞いている人に自分のメッセージをきちんと伝えることなのです。ですから、講演中に意識することがあるとすれば、相手が理解しているかどうかの部分。そして、状況に応じて臨機応変にアドリブを入れたりしてあげることが重要。これを意識していれば、良いプレゼンに近づいていくのです。

私は、時間配分をきっちり決めることはしません。何度も言っているように、伝えたいことがきちんと決まっていさえすれば、時間配分は楽にできるからです。観客が理解しているならば、思い切って話題を飛ばしてもいい。知っていることを何度も言われるのはストレスですし、テキストと違って読み飛ばすこともできません。だからこそ、せっかくスライドを用意していても、理解してもらえたとわかれば堂々と飛ばせばいいのです。

アドリブが思いのほか盛り上がり、気づいたらあと5分だったというときも珍しくありません。しかし、そんなときでも、慌てる必要は一切ありません。伝えたいメッセージははっきりしているのですから、スライドを飛ばすなり、メッセージを繰り返すなりすればいいのです。まじめな人ほど、事前に決めたものをきっちりかっちり伝えようとしますが、私がやっている方法のほうが、よほど観客のためになるのです。

私の即興性を大事にするプレゼンスタイルは、音楽でたとえるとジャズと言えます。反対にかっちり内容を決めて挑むのは、クラシック。ジョブズのようなプレゼンならまだしも、プレゼン初心者がやるべきはジャズ的なプレゼン。もはや「プレゼンとはジャズである」と言い切ってもいいくらいです。

プレゼンや講演のあとには、質疑応答の時間が設けられることが多いですが、私はこの時間を大切にしています。先に、青山学院大学で講演した際の質疑応答で、アマゾンダッシュボタンという最適解を得たお話をしたように、私にとって貴重なインプットになるからです。また、質問が来るということは、聞いている人がどんなことに興味を持っているのかということや、私の話の中でわかりづらかった部分を教えてくれるわけですから、自らの後学のためにも役立ちます。

こんな感じで、観客の質問は講演している側にもメリットが多いので、遠慮することなく積極的に質問をしてください。「こんな初歩的なことを聞いて、登壇者が気分を悪くしないだろうか」と不安になるかもしれませんが、そんなことはありません。また、何度も言うように、講演の内容を理解できなかったのはあなたではなく、登壇者の責任。堂々と聞けばいいのです。

私も取材などを通して、思い出したり、気づいたりすることが多くあります。質疑応答も似たようなもので、質問されることで思いがけず開く「中身の詰まった引き出し」だってあるのです。そうやってふだん使っているのとは違ったトークの引き出しが開けば、質問者にとっても講演している側にとっても、良いことずくめなのです。

講演とはジャズであり、観客であるあなたも、バンドの一員。観客としてのアドリブを積極的に入れていきましょう。

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