ナノチューブ・ラジオの動作原理

...the antenna and tuner are implemented in a radically different manner than traditional radios, receiving signals via high frequency mechanical vibrations of the nanotube rather than through traditional electrical means...【Nanotube Radioより引用】

 「ナノチューブ・ラジオの作成に成功」とのニュースを見たのだが、そこではその原理がちゃんと説明されてなかったので、もともとの論文にまで遡って調べてみた。

 これが革新的なのは、このラジオが物理的な「共振」の原理を使って、ラジオ信号を拾っていること。ナノチューブで作られた「アンテナ」は、その形状から決まる固有の振動数を持ち、その振動数と同一の周波数を持つ電波のみを拾うことになる。つまり、この「ナノチューブ・アンテナ」は、アンテナとチューナーの両方の役目を果たすのだ。このナノチューブの動きを電気の信号に変換し、増幅してスピーカーを鳴らすようにすればラジオの出来上がり。

 下の写真が、その「ナノチューブ・アンテナ」の顕微鏡写真。それが実際に動作している映像(当然、音声付き)がこれ


カリフォルニアの山火事の航空写真

 左の写真は、カリフォルニアで今起こっている山火事の航空写真。かなり大規模だということが分かる(クリックすると拡大する)。

 私は去年から今年にかけて何回かモンタナ州に行ったが、そこで感じたのは山火事の多さ。乾燥する夏場はさまざまな場所で山火事が発生し、道は閉鎖になるし、空気はうっすらと白い。一度だけ、ハイウェイのすぐそばまで迫った山火事のすぐ横を車で走ったことがあるが、何キロにも渡って広がってじりじりと民家に迫ってくる山火事の最前線で働く消防士たちの仕事が、気の遠くなるような仕事に思えたことを良く覚えている。

 文明がここまで進歩したとは言え、山火事をコントロールすることはまだまだ難しい。


ロッキー山脈の山火事が増えているという話

 今週末は私用でモンタナに来ているのだが、そこら中で山火事がおきているので、洲全体が煙に覆われている状態だ。University MontanaがあるMissoula市のローカル雑誌Missoula.comは読者からのニュース写真を募集しているが、そのほとんどが山火事の写真だ(参照、左の写真はそのうちの一つ)。

 モンタナ出身の知り合いに言わせると「毎年のことだよ」とのことだが、少し調べてみると80年代から徐々に増えているとのこと(参照)。ロッキー山脈では温暖化が進んでおり、万年雪が減少し、春が早く来るようになったため、山火事が起こりやすくなっているという。

Forestfire  このサイトに行くと、全米の山火事の状況がリアルタイムで見れるが、それを見ると、確かにロッキー山脈の各地で山火事がおきている(右図で赤い点が今燃えているところ、黒い点は鎮火したところ)。

 これが果たして二酸化炭素による地球温暖化の影響なのか、単なる局地的な気候の変化なのかは簡単に決め付けることはできないが、こうやって毎年のように山火事がいつ自分の所に来るのかを心配しながら煙の中で生きて行くっていうのはどうなんだろうと思った私である。


日曜の夜はペルセウス座流星群のピーク

 去年はこの流星群を見るために寝袋を引っ張り出して外で寝たりした私たち夫婦だが、あいにくすぐに月が出てしまい、あまりたくさんの流星を見ることができなかった。しかし、下の引用先によると今年は月もじゃまにならず、天気さえ良ければ一時間に60個は見ることができるだろうとのこと。ピークは今週の日曜の夜。これは見る価値があるかも!

It happens every year around August 12, but is often washed out by the moon. This year should be perfect: there is not much of a moon, and Mars is just below Perseus, giving you a great target. (the meteors are all over the sky, but all seem to radiate from Perseus). The peak will be Sunday night midnight through Monday morning at 2:00 AM (all times local) where you might see 60 meteors an hour.【Fun without Electricity: The Perseid Meteor Shower (TreeHugger)より引用】

【追記】日本の人にはこちらの方が有用な情報かも。

フィンランドのライチネン(Esko Lyytinen)らは、今年のペルセウス 座流星群は、日本時間で8月12日午前5時50分頃に、通常よりも活発な活動が見 られる可能性があると予測しています。この時刻には、日本では夜明けを迎え てしまっていますが、この予想が当たるとすれば、12日の明け方にかけて流星 数が増えていくことも期待されます。【今年のペルセウス座流星群は好条件より引用】


ナウシカファンなら一度は見学しておくべき地下の巨大施設

Naushika  digg.com経由で見つけたのが、左の画像(クリックするとオリジナルのサイズで見れる)。私が最初に思い出したのが、映画「風の谷のナウシカ」の1シーン。腐界がなぜ存在するかを主人公が理解するシーンだ。

 調べてみたところ、これは首都圏外郭放水路という地下施設で、見学も可能だそうである。一度機会があったら、ぜひとも行ってみたい施設だ。

 以下は、簡単な概要。

  首都圏外郭放水路は、あふれそうになった中小河川の洪水を地下に取り込み、地下50mを貫く総延長6.3㎞のトンネルを通して江戸川に流す、世界最大級の 洪水防止施設です。 日本が世界に誇る最先端の土木技術を結集し、現在まで全体のおよそ8割が完成。平成14年から部分的に稼動し、これまで約450万tもの洪水を安全に処理 するなどめざましい治水効果を発揮しています。【イントロダクション | 首都圏外郭放水路インフォメーションより引用】

 以前、「東京の地下技術—地面の下は「知」の結集、「技」の競演! 」という本を本屋で立ち読みしたことがあったが、この施設のことは書いてあっただろうか(と自分で買ってもいない本の宣伝をしてみるテスト)。

 この手の土木技術に関しては日本の技術は世界一、という話は他でも聞いたことがある。『3K産業』とのレッテルを貼られて以来、どうも若い人に人気がない業種の代表のようになってしまった土木産業だが、この手の映像をテレビ・コマーシャルで流して、土木産業のすごさをアピールするのは結構効果的ではないだろうか。


「はずみ車(flywheel)」を使ったエネルギー蓄積装置の話

Beacon_power 先週末に知り合いの家のパーティに行ったのだが、そこで妙に話し込んでしまった相手が、Puget Sound Energy(シアトル地域に電気・ガスを提供している会社)の元重役。

 色々と楽しい話が聞けたが、宿題としてもらってきたのが、「flywheel(はずみ車)」を使ったエネルギー蓄積装置についての調査。「地球温暖化への対処を考えたときに、どのあたりのテクノロジーに注目すべきか」、という私の質問に、「flywheelに期待している」という返事をもらったのだ。

 flywheelを使ったエネルギー蓄積装置とは、文字通り電気などのエネルギーを「はずみ車」の回転エネルギーに変換して蓄積しておく装置。電池などと違って、妙な化学物質を使わないので地球にやさしいし劣化もせず、エネルギー効率が90%ととても高いのが特徴だ。初期のモデルは、安全性・単位体積あたりのエネルギー蓄積量に難点があったそうだが、最近の技術の進歩のおかげで、そのあたりの問題も解決されつつあるらしい。

 左上の図は、Beacon Powerという会社のウェブ・サイトから拝借してきたものだが、こんなデバイスがビルやマンションの屋上で、安い夜間電力を使ってエネルギーを蓄積し、昼間のピーク時の不足分や停電時の電力を提供する、なんていう時代も近いのかも知れない。

【参考リンク】
Wikipedia: Flywheel Energy Storage


心暖まるラッコの映像

 バンクーバーの水族館で「手を繋いで水に浮かぶラッコ」が評判になっている。Youtubeに映像が上がっているので、下に張っておく。King5によると、実際に海でもこの行動に出ることがあるらしい。波に流されてはぐれてしまわないように、という行動と解釈されているそうだ。


タミフル雑感-インフルエンザにかかっているのを知りながら満員電車に乗るのは軽犯罪!?

Mumin

 ここのところ、このブログへ「タミフル」で検索して来る人が増えて、「親子丼」で検索する人の数を超えたので、調子に乗って追記記事(こうやって、このブログは「料理ブログ」から「医療ブログ」へ進化するのか?^^)

 タミフルに関する政府の方針変更を受けて、鬼の首をとったように騒ぎ立てるマスコミは相変わらずだが、本来マスコミがすべきことは、タミフルの危険性を必要以上に煽り立てることではなく、そもそも薬に頼りすぎた日本の医療システムの批判。

 タミフルに限らず、どんな薬にもある程度の副作用があるわけで、インフルエンザの症状をわずか1日ばかり早く回復させるだけのタミフルをこれだけ大量に処方していた日本の医療システムそのものが問題。

 今みたいな報道をしていては、タミフル騒ぎが収まり、新たなインフルエンザ治療薬が開発されれば、再び「薬づけ」治療が再開されるだけのこと。それよりも、「体力のある人は、風邪やインフルエンザにかかっても、医者には行かず、会社・学校を休んで家でゆっくり寝て直す」という生活習慣を国民に植え付けることが大切。特に東京のように人が密集している地域では、自分がインフルエンザにかかったことを知りながら満員電車に乗ることは、軽犯罪にしても良いぐらい迷惑だ(立小便よりずっと迷惑)。強毒性の鳥インフルエンザが突然変異で人→人感染能力を取得する前に(強毒性鳥インフルエンザに関しては、このエントリー参照)、この悪習慣だけは直しておかないと悲惨なことになる。

 ちなみに、タミフルに関する過去記事は以下の二つ。

日本のタミフル消費量が突出している理由
タミフルを普通の人にどんどん処方しているのは日本だけ


大人の男には「判断能力」があるのか?

Teacher  アメリカの法律では、未成年との性交渉はたとえ双方の同意のもとに行なわれたものでも「レイプ」とみなされて実刑判決は免れない。未成年の少年・少女には「まだ判断能力がないから」というのが理由だ。

 実刑判決を受けた人は、氏名も顔写真も公開されてしまうので、ほとんど「社会的に抹殺」された状態になる。少女売春を援助交際などという言葉のオブラートに包んでなかば放置している日本とは大違いだ。

 ほとんどのケースが、大人の男性と少女の間の話だが、まれに大人の女性と少年の間の話になるとメディアが大騒ぎをする。今朝のニュースでも、女性教師と関係を持った少年がインタビューを受けていた(左の写真は、その女性教師)。

 このニュースを見ながら、「男性ホルモンが体中にあふれている思春期の少年が、こんな先生にセマられたら『判断能力』をなくすよなァ」と私が茶化すと、「じゃあ、大人になったらちゃんと「判断」ができるようになるわけ?」と妻につっこまれてしまった。

 確かにこんな美人にセマられたら、「判断能力」を失ってしまう人は沢山いるかも知れない^^;(注:これはあくまで一般論だから決して誤解しないように→妻)。


優秀な主婦はイベント・ドリブン(event-driven)方式でパンを焼く

Sunset06 昨日のエントリーで、「人は一つの仕事を処理するときには、それを小さな仕事に分割して、順番に処理する」と書いたが、「パンを焼く」という仕事を例に取れば、こんな風になる。

1.イーストを30℃のお湯と一つまみの砂糖とまぜて15分間予備発酵させる
2.ボールに強力粉、予備発酵させたイースト、砂糖、塩を入れて良く混ぜる
3.こね板の上で生地をこねる
4.ボールにラップをして室温で1時間発酵させる(一次発酵)
5.適当な大きさに生地を分割し、丸めて形を作る
6.オーブンに入れ、30分発酵させる(二次発酵)
7.オーブンの温度を200度にして18分焼く

 これは、ソフトウェアで言えば「手続き型のプログラム」であり、人間が一連の作業を把握するのに最も適した記述の仕方である(その証拠に、実際のどのレシピブックを見ても、レシピは必ず「手続き型」で書かれている)。

 興味深いのは、このレシピにおける、「15分予備発酵させる」だとか「18分焼く」などの待ち時間を含むステップだ。

 ブクブクとあわ立ってくる予備発酵中のイーストを15分間じっと見続けていたり、パンが焼け上がるまでオーブンの前に座り込んでいるのは、初めての「パンを焼き」にチャレンジしている日曜日のお父さんぐらいで、いつもたくさんの仕事を同時に抱えた普通の主婦(もしくは主夫)は、そういった待ち時間を利用して、洗濯をしたり、夕ご飯のおかずを作ったり、韓国ドラマを見たり、子供を幼稚園に迎えにいったり、家計簿をつけたりしているものだ。

 そんな複数の仕事を同時にこなしている彼女たちにしてみると、自分がそれぞれの仕事のどのステップにいるか(つまりcontext)を常に完璧に把握しておくことは不可能に近い。手続き型のレシピのままで作業をしようとすると、それぞれの仕事において自分が何をしておくのかを把握しておくだけで頭がパンパンになってしまうし(memory overflow)、頭の切り替え(context switch)にやたらと時間がかかって作業効率が落ちてしまうからだ。

 そこで、パンの発酵中にはタイマーをしかけておき、タイマーが鳴ったところで「あ、キッチンでタイマーが鳴ってる。えっと、何のタイマーだっけ。そうだ、そうだ、パンの二次発酵中だったんだ。じゃ、次はオーブンの温度を上げてと…」というイベント・ドリブンな仕事の仕方をしているのだ。

 言い換えれば、彼女たちの頭の中では、上の「手続き型のレシピ」が、以下のような「イベントに応じた作業(event handler)」の集まりである「イベント・ドリブン型のレシピ」に変換されて実行されているのだ。

【スタート】
1.イーストを30℃のお湯と一つまみの砂糖とまぜてタイマーを15分間にセットする(予備発酵)
2.他の仕事に移る

【予備発酵終了のタイマーが鳴る】
1.ボールに強力粉、予備発酵させたイースト、砂糖、塩を入れて良く混ぜる
2.こね板の上で生地をこねる
3.ボールにラップをし、タイマーを1時間後にセットする(一次発酵)。
4.他の仕事に移る

【一次発酵終了のタイマーが鳴る】
1.適当な大きさに生地を分割し、丸めて形を作る
2.オーブンに入れ、タイマーを30分後にセットする(二次発酵)
3.他の仕事に移る

【二次発酵のタイマーが鳴る】
1.オーブンの温度を200度にしてタイマーを18分後にセットする
2.他の作業に移る

【焼き上がりのタイマーが鳴る】
1.焼きあがったパンをオーブンから取り出す。(パン焼き終了)
2.他の作業に移る

 実際には、これに加えて、他のさまざまな仕事から派生した「イベントに応じた作業」が記述されたプログラムの断片が、彼女たちの頭の中にはぎっしりと詰まっているのだ。例えば以下のようなもの。

【洗濯終了のタイマーが鳴る】
1.洗濯機の中のものを乾燥機に移してタイマーをセットする
2.他の作業に移る

【赤ん坊が泣き始める】
1.おなかが空いている時間ならミルクをあげる。そうでないならば、オシメが濡れてないかチェックする。濡れていれば交換する。
2.他の作業に移る。

 イベント・ドリブン型の利点は、それぞれの「イベントに応じた作業」が規格化・単純化されてているため、仕事の量がどんどん増えて行ったとしても、仕事の量に応じて忙しくなるだけの話で、それ以外のオーバーヘッドがとても少ない点だ(=linear scalability)。それぞれの「イベントに応じた作業」さえキチンと書かれていれば、その集まりには順番も秩序も必要がないので、色々な仕事のための「イベントに応じた作業」がごちゃごちゃに頭の中で混ざり合っていても何とかなってしまう点(system stability)もこの方法の利点である。

 つまり、これがソフトウェアで言うところの、「手続き型のプログラミング」と「イベント・ドリブン型のプログラミング」の違いである。手続き型は一連の作業の流れを把握するという意味ではとても分かりやすい記述の仕方だが、同時にいつくもの仕事を抱えてこなして行く時には、イベント・ドリブン型で処理した方が効率が良かったり、システムとしての安定度が高まるケースがある、という点が注目すべき点である。