ブロッケン現象、初体験

Adjusted_4 「二重虹(ダブルレインボウ)」というエントリーに寄せられたコメントのおかげで「グロッケンブロッケン現象」のことを知って以来、「死ぬまでに一度は肉眼で見たいものリスト」に入れておいたのだが、今日、以外とあっさりと見ることが出来たのでここに報告。

 ブロッケン現象は、雲とか霧に映した自分の影の周りに見える小さな虹色の輪のことである。原理は通常の虹とは大きく異なり(説明はこちらを参照)、それを見るための条件は虹よりもずっと厳しい。太陽を背にして、自分の影を雲か霧に映さなければならないのだから大変だ。しょっちゅう山に登っている登山家ならまだしも、私のような生活をしている人には、雲や霧を見下ろす位置に自分を置くチャンスはめったにやって来ない。ブロッケン現象を見るためだけに山に登ってみることも考えてみたが、登山家ですらめったに見ることの出来ない希(まれ)な現象を、一度や二度山に上っただけの私に見せてくれるほど山の神様は甘くない。

 そんな私に突然チャンスが到来したのが、「シアトル→東京便」に乗ったわずか数時間前のこと。この時期のシアトルらしく、低く雲が垂れ込めた飛行場を飛び立ったNW7便が雲の上に顔を出したとたん、窓際に座っていた私の席に太陽が差し込んできた。いつもなら、ノートパソコンを画面を見やすくするために日よけを下げる私だが、その時はまだパソコンを開いていなかったので、何気なく外を見たのだ。すると、飛行機が旋回するにつれ、雲に映った飛行機自身の影が見えて来るではないか。

 ブロッケン現象を見るための絶好の条件だ!既にほぼ離陸後の旋回は終えているので、少なくとも数十分はこの絶好の条件が続くはずだ。

 そこで初めて飛行機に乗った子供の様に窓におでこを押し付けて雲に映った飛行機の影を見つめていると、以外にあっさりと「ブロッケン現象」を観察することが出来た。飛行機がかなりのスピードで動いているため、なかなか安定した形では見えてくれないが、数秒から数十秒に一回、丁度良い厚さの雲の上に影が来た時に、かなりはっきりとした虹色の輪が見える。

 あわててカバンから取り出した携帯電話で撮影したのが、この写真(【注】良い子はまねしないように。飛行機の中では携帯電話の電源は切っておくのが規則。)。ジェットエンジンのすぐ前にうっすらと赤みがかって見える円形のものがグロッケン現象だ。肉眼だともっとはっきりと虹色の輪に見えるのだが、携帯電話の受光素子ではこれが限度なのだろう。

 太陽の相対位置が変わって見えなくなるまでの20分ほど観察して分かったことだが、雲と飛行機の距離はあまり遠くない方が良いようだ。つまり、離陸後すぐの高度があまり高くない時期が観察には適している。また、雲が厚すぎても、薄すぎても見えない。写真のようにとぎれとぎれになっている雲の上に飛行機の影が来た時に一番良く見える。

 今の時期に、NW7便に乗る人には、ぜひとも窓際の「J」の席をお勧めする。離陸後の旋回の終わったころに雲に映った飛行機の影を見つけることが出来れば、たぶんかなりの高い確率でその周りに「ブロッケン現象」を観察することができるはずだ。


二重虹(ダブルレインボウ)

050814_074955  シアトルはここのところさわやかな快晴続きでとても気持ちが良い。昼間の気温は30度近くになるのだが、湿度がとても低いし、朝晩は冷え込むのでとても過ごしやすいのだ。亜熱帯と呼びたくなるような気候の日本から戻ったばかりなので、その差が際立って感じられる。

 左の写真は週末に偶然撮影した二重虹。庭に水を撒きながら、「どうやったら虹が見えるのかしら」と見当違いの方向に水を撒いている妻に、「太陽を背にして水を撒くと、自分の頭の影を中心に虹ができるんだよ」などと得意の理科系うんちくを展開しながら、ポケットに入っていた(シアトルではデジカメの役目しか果たさない日本の)携帯電話で撮ったのがこの写真。撮影中には気がつかなかったが、写真には外側の虹(副虹)が写っている。狙って撮影したわけでもないので、何か儲けた気分だ。

 ちなみに、内側の明るい方の虹を主虹(しゅこう)と呼び、赤が外側で紫が内側である。一方、外側の暗い方の虹は副虹(ふくこう)と呼ばれ、赤が内側で紫が外側である。色の順番が逆になるのは、主虹の光が外から内側に向かって曲がりならが水滴の中で一回だけ全反射して目にとどくのに対して、副二次の光が水滴の中で入射光とクロスする形で二回全反射して目にとどくため屈折の方向が逆になるためである。

 ところで、写真でもはっきり分かるが、二つの虹の間が他の部分より若干暗く見える。これは、屈折と反射の関係で光の粒から反射してくる光が全く無い部分で、「アレキサンダーの暗帯(Dark Alexander Band)」というりっぱな名前が付いている。Alexander of Aphrodisias というアリストテレス学派の哲学者が最初にこの現象を指摘したため(科学的な説明が付いたのはずっと後のこと)、こう呼ばれるそうである。「彼の生きていた時代(紀元2~3世紀)には、肉眼で見える身近な現象を『指摘』するだけで、自分の名前を付けられたのか~」などと少しうらやましく思ってしまった私である。

[参考文献]
Y.AYA's Garden
The Rainbow and the dark Alexander Band

[追記]
 読み直しをしている時に気がついたのだが、Google AdSense がこの記事に合わせて見つけてきたのが、「日焼けした畳が蘇る」という畳クリーナーと、「太陽光発電表示装置」の広告。「虹」というキーワードだけで、引っ張ってきたのだろうか、なかなかするどい。


立体視 3Dブログ第二弾、ジョーク編

 先日の、「世界初、3Dブログ」は大好評で、久しぶりに一日のページビューが1万を超えた。「雨の日はライトセーバー」以来のヒットだ。技術系の記事をいくら丁寧に書いても、高々3~4000ページビューなのと比べると大違いだ。やはり世の中にはエンジニア以外の人が多いようだ(あたりまえか^^;)。

 そこで、調子に乗って「3Dブログ」の第二弾。今回は、ジョークの「落ち」を読むには立体視をしなければならないという、世界初の「立体視ジョーク」である。ちなみに、並行法だと「落ち」が浮き上がって、交差法「落ち」が沈み込んで見える。モニターのドットピッチによっては難しい場合があるので、うまく出来ない場合は、拡大や縮小をしてから見ると良いかも知れない。

3d_quiz


世界初?立体視、3Dブログエントリー

 シアトル行きの飛行機の中で、PhotoShop で作ったのが、下の「シークレット・メッセージ入り」3Dブログエントリー。マジックアイなどで知られる3D視(立体視)をしない限り絶対に見破られないように作るのに少し工夫が必要であったが、一度テクニックを開発したら製作そのものは以外と簡単であった。ちなみに、自分でも作りたいと思う人は、「マジックアイ、3D絵本の作り方」も参照いただきたい。([追伸]第二段、「立体視ジョーク」もエントリー済みなので、そちらもどうぞ)。

3d_message

[追伸] このシリーズの秘密文書の作成に参加していただける人を募集しています。プログラムやPhotoShopの知識は必要ありません。ユーモアのセンスがあれば誰でも可能です。詳しくは、こちらへ(mix のアカウントが必要です)。


マジック・アイ、視力の良くなる(?)3D絵本の作り方

Magic_eye_practice_thumb 先日、本屋に行くと、「マジック・アイ・エクササイズ」などの、「立体視」(「3D視」)の本が山積みになっていた。ずいぶん以前からある技術だが、最近「視力が良くなる」などの触れ込みで一部の人たちに流行っているようだ。

 この手の技術を見ると、「この本で視力を良くしてみよう」という消費者の立場ではなく、「どうやって作るのだろう」、「私にも作れるに違いない」と、製作側の立場に立って考えてしまうのが私の性分である。

 そこで(本は買わずに、家に帰って)早速作ってみたのが、左の習作(左の絵は、縮小画像なので、3D視は無理。クリックして大きな図を開き、画面の少し先を見るようにすると「3D視」ができる)。

 3D視用の画像を作る時に大切なことは、リファレンスとなる繰り返しパターンをバックグラウンドに置くこと。これを省くと、「3D視」をするのが極端に難しくなるので要注意。出版物の中にも、この辺りをキチンと理解せずに作っているものがあり、「3D視には練習が必要です」などと書いてあるので困る。ここでは45度傾けた市松模様にしたが、もちろん別のパターンでもかまわない。この際、繰り返しパターンの幅は、画面(印刷した場合は紙)の上で2~3センチぐらいにしておくこと。あまり細かいと、2つ以上ずらして見てしまうことがあるし、あまり幅が広いと目線をそこまで広げられない。

 ちなみに、この作品だが、一番上の列には、比較のために青い長方形をリファレンス・パターンと同じ間隔で配置してある。こうしておくと、左右の目には同じ像が写るので、3D視をしても、青い長方形は浮かんで見えたりして来ない。

 二番目の列には、青い長方形をリファレンス・パターンより少し狭い間隔で配置してある。こうしておくと、3D視をした時に、右の目には左の目より少し左にずれた位置に青い長方形が見えるため、結果として浮かんで見えるのである。「3D視画像」の基本中の基本テクニックである。

 三番目の列の青い長方形は、それぞれの間隔を微妙にずらして配置してあるため、それぞれが異なった浮かび上がり方をして見える。長方形の間隔は、計算して決めたのではなく、3D視をしたまま画像を編集して作った。結構簡単に思ったような浮き上がり方に長方形を配置できる。

 とりあえず今日の所は、分かりやすくするために、あえて単純化したケースのみにとどめて置いたが、これを応用して、さまざまな奥行きを持つ3Dオブジェクトを見せたり、3D視したときだけに浮かび上がる隠し絵を作ったりすることもできるので、皆さんにもぜひ試していただきたい。

 ちなみに、これを作っていたら、妙に目が疲れてしまった。本当に「3D視」に視力を良くする効用があるのか少し疑問である。


Arestin - 歯周病の新しい治療法

Arestin  久しぶりに歯医者に行った。私の医者は、新しい治療法を積極的に取り入れるので、毎回どんな治療法を仕入れたのか聞くのが楽しみだ。今や「電動歯ブラシ」の代名詞になってしまった Sonicare を広く知られる前から紹介していたのもこの医者だ。

 今回、その医者が新しく導入したのが、歯周病の新しい治療法 Arestin。マイクロカプセルに詰めた抗生物質を歯と歯茎の間に注入することにより、歯周病の原因となっている菌を約21日間、集中的に抗生物質攻めにするという手法だ。内服では副作用が多すぎて使えず、塗り薬としても使えなかった抗生物質をマイクロカプセルを利用することにより口の中で使えることを可能にしたすぐれものだ。

 ただ一つだけ問題がある。今までは、「歯周病がひどくなると手術しなければいけないんですよ、ちゃんと磨いて下さいね」と言う医者の言葉に重みがあったので、その後は数週間だけでも懸命に歯を磨いていた私だが、この新しい治療法を知ってしまった私には、もうその言葉は通用しないのだ。


恋の連立方程式、「パートナー探し」の最適化アルゴリズムに関する一考察

050619_094709 「自分にできるだけ相応(ふさわ)しいパートナー」を見つけることは、我々人間にとって、人生の最も重要なのテーマの一つでもある。しかし、そのプロセスである「恋愛」や「お見合い」に関して、なぜか今までシステマティックな考察がされて来なかったように思える。そこで、今回はその「パートナー探し」のプロセスをモデル化・数値化することにより、最適なアルゴリズムを見つけようと思う。

 まずは、「自分にできるだけ相応しいパートナーを探す」というあいまいな問題を、もう少し明確にモデル化された問題に単純化する。もちろん、単純化するとはいえ、あまり現実とかけ離れていては役に立たないので、現実味を壊さない程度の単純化を行う。

[モデル化された問題]
 結婚適齢期の女性が、これから10人の男性と順番にお見合いをして、その中から結婚相手を見つけることにしたとする。相手の意思は無視して良く、「この人と結婚したい」と宣言した時点で結婚できるものと仮定する。ただし、順番に一人づつしか合うことしかできず、今合っている人を「パス」しなければ次の人に合うことが出来ない(「ふたまた」禁止)。また、一度「パス」した人に戻ることも出来ない(「後戻り」禁止)。この条件でその10人のうちの誰かと必ず結婚しなければならないと想定した場合に、最適な戦術を求めよ。 

 これでかなり、問題として扱いやすくなった。次に、数値化のために、以下の条件を加える。

[数値化のための条件]
 お見合いで男の人に合うたびに、お見合いおよびその後のデートなどにより得られる容姿・性格・収入・家族構成・自分との相性などの情報を基にして、相手に100点満点で点数を付けることが可能だと想定する。その際、0点から100点まで、どの点数の人も同じような確率で現れるように採点する(均等分布)。この条件で先の「モデル化された問題」を与えられた時に、選ぶ結婚相手の点数の『期待値』を最大にすることこそが、最適な戦術であると規定する。 

 複雑な証明と計算式を後回しにして、この条件下での最適なアルゴリズム(手順)を書くとこうなる。

[最適なアルゴリズム]
・お見合い1回目→相手が85点以上なら結婚する、それ以下なら断る
・お見合い2回目→相手が84点以上なら結婚する、それ以下なら断る
・お見合い3回目→相手が82点以上なら結婚する、それ以下なら断る
・お見合い4回目→相手が80点以上なら結婚する、それ以下なら断る
・お見合い5回目→相手が78点以上なら結婚する、それ以下なら断る
・お見合い6回目→相手が74点以上なら結婚する、それ以下なら断る
・お見合い7回目→相手が70点以上なら結婚する、それ以下なら断る
・お見合い8回目→相手が63点以上なら結婚する、それ以下なら断る
・お見合い9回目→相手が51点以上なら結婚する、それ以下なら断る
・お見合い10回目→目をつぶって結婚する

 こうすることにより、期待値を約86点までに引き上げることができるのだ。

 このアルゴリズムは「ふたまた」と「後戻り」は禁止、かつ必ず結婚しなければならない、という条件下であれば恋愛結婚にも応用できる。その場合、最適なアルゴリズムは、

・たとえ今付き合っている人と別れたとしても、あと9回ぐらい恋愛する体力・気力・年齢的な余裕がある
 →今付き合っている相手が85点以上なら結婚する、そうでなければ別れる。
…(中略)…
・たとえ今付き合っている人と別れたとしても、あと2回ぐらい恋愛する体力・気力・年齢的な余裕がある
 →今付き合っている相手が63点以上なら結婚する、そうでなければ別れる。
・今付き合っている人と別れたとすると、年齢的に考えても、その次の恋が『最後の恋』だと思う
 →今付き合っている相手が平均点以上と思えるのなら結婚する、そうでなければ別れる。
・これが『最後の恋』→何がなんでもその人と結婚する。

となる。

 ちなみに、最適なアルゴリズムを使ったとしても、期待値を90点にするには15回の、期待値を95点にするには34回のお見合い(もしくは恋愛)をしなければならない。つまり、「あまり高望みはしない方が良い」と言う事が、初めて数学的に証明されたことになる。

 このアルゴリズムを思いついた時には、「これで何か商売が出来ないか」という邪悪な考えが一瞬心に浮かんだが、全人類の幸福を優先し、ここに公開することとした。ぜひとも、結婚適齢期の人たちにはこのアルゴリズムを活用して『最適なパートナー探し』に活用していただきたい。ただし、それによって「婚期を失う」などの結果になったとしても、私は一切責任を負わないので、そこだけは了承して自分なりに判断して行動していただきたい。

[参考文献]
浮気で生みたい女達 竹内久美子著
BC!な話―あなたの知らない精子競争 竹内久美子著
アルゴリズムの設計と解析 A.V.エイホ
東京ラブストーリー 柴門ふみ
パンツをはいたサル 栗本慎一郎

【付録:アルゴリズムの解説】
 これからk回のお見合いをする場合の最適なアルゴリズムが既に分かっていると場合、その期待値をF(k)とする(ただし満点を100ではなく1とする)。するとその一回前のお見合いにおいては、相手の点数がF(k)未満の場合には、「パス」することが(その場合の期待値はF(k))、そうでない場合は「その相手と結婚する」ことが最善の手である(その場合の期待値は(1+F(k))/2)。可能性は、それぞれF(k)、(1-F(k))なので、

 F(k+1)= F(k)*F(k) + (1+F(k))/2)*(1-F(k))

となり、これを整理すると

 F(k+1)=(1+F(k)*F(k))/2

となる。それに、「最後のお見合いではどんな相手でも必ず結婚しなければいけない」ので、その期待値はおのずと平均点の0.5点となる。

 F(0)=0.5

この二つ並べて書くと、

 F(0)=0.5
 F(k+1)=(1+F(k)*F(k))/2

となる。これを「恋の連立方程式」と呼ぶ。後は電卓を使い、F(k)を順番に求めて行けば良い。

 F(0)=0.5
 F(1)=0.625
 F(2)=0.695
 F(3)=0.742
 F(4)=0.775
 F(5)=0.800
 F(6)=0.820
 F(7)=0.836
 F(8)=0.849
 F(9)=0.861
 …

この0.5から始まる数字の列を、「恋愛数列」と呼ぶ。この数列は認知度も応用範囲はまだ「フィボナッチ数列」などにはまだまだかなわないが、今後研究が進むにつれ、そういったものもどんどん広がると期待されている。もしこのブログを読んだ方で動物行動学を専攻されている人がいたら、ぜひともこの数列が動物の生殖に関わる行動に現れているか、などの実験をしていただきたい。


「あなたにも出来るクローン実験」開始

050616_024501  以前に、「江戸時代から続くクローン技術」について書いて以来、「あなたにも出来るクローン実験キット」のようなものがあるか探してみたが見つからない。しかたがないので江戸時代から続くクローン技術の方を私の家でも試すことにした。…簡潔に言えば、ソメイヨシノを苗木から育てることにしたのだ。

 ソメイヨシノの苗木を近所の植木屋(nursery)では見つけることができなかったため、インターネットで Greenwood Nursery という所を見つけ出し、ネット通販で買う。

 それがやっと昨日届いたので、早起きして庭に植えることにした。根が乾かないようにきちんと梱包してあったとはいえ、すぐに植えてあげなければかわいそうだ。苗木はわずか70センチぐらいで、根っこは少しついているが、明らかに「挿し木」により作られた痕跡がある。

 「これが江戸時代に作られたたった一本のソメイヨシノから挿し木によるクローニングを繰り返して作られた、世界中にあるすべてのソメイヨシノと全く同じDNAを持った苗木か~」

と妙に感動をしながら大切に植える。まだ、うちの犬が誤ってぶつかっただけで簡単に折れてしまいそうなぐらい情けないが、これがいつかその下で花見が出来るぐらいに大きくなるのかと思うと楽しみである。

 ちなみに、人間のクローニングが実用化されてしまうのも時間の問題だが、どうなんだろう。最初は、事故で脳死状態になってしまった子供のクローニング、などと言った一見人道的に許されそうなケースから始まり、次第に、億万長者が自分のクローンを養子にするケース、クローンを臓器ドナーとして育てておくビジネス、有名なアスリーツのクローンを養子として販売するビジネス、まで発展してしまうのだろうか。SF小説のテーマや酒のさかなとしては最適だが、実際にやってしまうのにはどうも賛成できない。「今年のマスターズは、タイガー・ウッズのクローンが12人も出場!」なんて新聞の見出しは見たくない。


動物行動心理学のケチャップのパッケージへの応用

050531_104736 日本ではどうか知らないが、米国ではここ数年の間に condiments (ケチャップ、マヨネーズ、ドレッシングなど、食べ物に味を付けるもの総称。英和辞書では「薬味」と訳されているが、少しニュアンスが違うと思う)のパッケージが大きく進化した。

 本体が squeezable (=中身を絞り出すことが出来る)なペットボトルになったのは当然だが(日本では考えられないが、米国では数年前まではガラス瓶に詰めて売られていた)、ここ2~3年は、フタを下にして置くことを前提にしたパッケージが主流になりつつある。

 使おうとしてすぐ出るようにするために、もしくは最後まできちんと使うために、ケチャップなどをフタを下にして冷蔵庫に入れておく行為は多くの人が既にしていることだ。そういったユーザーの声を反映し、最初からそれを前提にし、フタを大きくして座りを良くし、かつ、商品名の印刷も逆さにしてしまったのだ。

 このパッケージは主婦たちに大評判だが、一つ問題がある。私も含めた男たちは、ここまでしてもらっても、つい今までの習慣でフタを上にしてしまってしまうのだ。「フタがあるものを置く時は、フタを上にして置く」という行動を何十年もしてきた私にとっては、フタが大きくなったり、印刷が上下逆になったぐらいでは、幾ら妻に文句を言われようと、行動を変える事は不可能なのだ。特に冷蔵庫に何かを戻す時は、脳の大半は(仕事だとか、ゴルフだとか)他のことを考えているケースがほとんどなので、こんな細かなことに注意を払うのは不可能に近い。

Fish_eye  この問題は、動物の行動心理学を応用すれば簡単に解決出来ると私は思う。ヒントは、熱帯魚に良くみられる、眼状斑だ。後ろから近づこうとする敵を混乱させるために、小さな魚が体の後方に持つ目玉模様の斑点のことである(左の写真参照)。

 それを応用し、本当のフタは中身と同じ色(ケチャップであれば赤、マヨネーズであればクリーム色)にしておき、底の方の何センチかをわざとフタっぽい色(例えば青)に塗ってしまうのである。そうしておけば、私のような人間が、特に何も考えずに冷蔵庫に戻しても、きちんとフタが下になって置かれる、という仕掛けである。

 「動物の行動心理学を人間に応用するなんて不謹慎だ」と思う人もいるかも知れないが、ユーザー・インターフェイスを開発をしている現場の人間は、常にこんなことばかり考えているものだ。

 (と、単なる「科学うんちく」を、一見仕事に関係があるように見せかけてきれいに終わらせた最後の段落が、実は眼状斑そのものだっていうことに気づく人は何人いるだろう…)


右脳と左脳の連携

Yomichi 最近、一緒に仕事をしているエンジニアの一人が面白いことを彼のブログに書いているのを見つけた(プライバシーを好むかもしれないのでリンクはあえて張らないで置く)。彼は、自分は「右脳人間」だが、右脳がある結論に達した時には、どうやってその結論に達したかのロジックを説明してくれないので人に説明出来なくて困る、と言うのだ。そのまま結論だけを周りの人に伝えても、単なる「直感」で結論に達したとしか思ってもらえないので、一生懸命に左脳を働かして、なぜ右脳がそんな結論に達したのかを「後付け」で説明しなければならない、と言う。

 これは今まで耳にした右脳・左脳に関する説の中でもとても面白い方の考え方だと思う。このブログの「科学うんちく」コーナーには絶好のテーマだ。

 一般的には、右脳は芸術だとか感性だとかを担当し、左脳は論理思考を担当する、と言われている。そのままストレートに考えると、芸術家は主に右脳を使って仕事をしており、エンジニアは左脳を使って仕事をしている、という解釈となる。しかし、彼の説によると、エンジニアでも右脳を使って仕事をする(もしくはする人がいる)というのだ。

 自分の仕事の仕方を考えて見ると、彼の言う説も最もだと思う。ソフトウェアを作っていて、ある「命題」が与えられたときに、あまり深く考える前に、いきなり「答えらしきもの」が見えることがある。それを人によっては「直感」と読んだりもするのだろうが、それは決して「第六感」のような超能力的なものではなく、過去に解いた似たような問題に照らし合わせて、脳が短絡的に「もっともそれらしい答え」をはじき出しているのだと思う。その手法は、全然ロジックの積み重ねでは無くて、どちらか言うと「パターン・マッチング」のような処理を行っているのだと思う。

 もちろん、それは「答えらしきもの」でしかなく、実行に移す前に、それが「正しい答」であるかどうかをロジックを使って「検証」しなければならない。そのステップを飛ばしてしまうと、他の人に「直感で行動している」と言われたり、「思わぬ思い込み」で痛い目にあったりする。ただし、優秀なエンジニアであるばあるほど、その「答えらしきもの」が実際に「正しい答」であったり「正しい答に近いもの」であったりする可能性が高いので、全てをロジックの積み重ねで解決するより、遥かに時間の節約ができるのだ。それは囲碁の名人が、考えられうる全ての手を読まずに、わずかな時間で「最適に近い手」を見つけることが出来るのと似ている。

 コンピューターの能力が飛躍的に進歩したにも関わらず、相変わらず人間の脳の方が圧倒的に優れている理由は、この「瞬時に答らしきものを見つけてしまう能力」にある。与えられたプログラムに従って、一つ一つのロジックを順番にしか実行することのできない今のアーキテクチャーのコンピューター(これを「ノイマン型コンピューター」と呼ぶ)は、人間の左脳的な作業は得意だが、右脳的な作業は全く不得意なのだ。

 ちなみに、私はソフトウェアを作っていて行き詰った時には、「寝る」ことにしている。なぜなら、行き詰ったときには頭を幾ら振り絞ってもあまり良い効果は得られず、逆に、さっさと寝てしまって頭を休めた方が、良い結果が得られることが多いからだ。これも考えて見ると右脳の働きと関係しているような気がする。行き詰った状態とは、「答らしきもの」が見えなくなっている状態を指し、そんな状態になったときには、どんなに左脳をやみくもにフル回転させても正しい答は見つからない。そんな時は、「寝る」ことによって左脳がストップし、右脳が活躍し始めるからではないだろうか。だからこそ、夜に(左脳を使って)どんなに考えても見つからなかった答が、朝になるとすっきりと見えていたりすることがあるのではないだろうか。