マーケティング:SMARTな目標設定

 University WashingtonでのMBAの授業も既に二年目に入った。4月に二つ目のベンチャービジネスを始めたばかりの私としては、授業で聞いたことをすぐに実践できるのでとても良い勉強になる。「MBAは何年か実務を経験してからこそ受ける価値がある」という話は良く聞くが、自分でビジネスをしながら受けるMBAの授業は格別である。

 今回ためしたのは、マーケティングの教授が口をすっぱくして繰り返す "S・M・A・R・T" な目標設定。いかなるマーケティング活動をする場合においても、まずはその目標設定をしっかりすることが大切で、その際に大切なことは、

  • Specific: 目標は具体的でなければならない
  • Measurable: 目標が達成できたかを計ることができなければならない
  • Atteinable: 目標は(たとえ難しくとも)十分に達成可能でなければならない
  • Relevant: 目標はそのビジネスにとって意味のあるものでなければならない
  • Timebound: 目標はその時間軸が明確に定まっていなければならない

 あたりまえと言えばあたりまえの話だが、この手のフレームワークを使うと、自分たちがやっていることが理にかなっているかどうかのチェックが簡単に出来て良い。

 今回はBig Canvasとして4つめのアプリOilCanvasをリリースしたわけだが、PhotoShareユーザーとの約束(PhotoArtistのレビューが40個以上集まれば無料にするというもの)にもとづいて、期間限定で無料で配布することになった。

 せっかく無料で配布するのであれば、PhotoSharePhotoArtistの宣伝に最大限に活用するためにも、米国の連休を利用して今週末に出来るだけたくさんの人たちに一気にダウンロードしてもらおうというもの。そこで、上の"S・M・A・R・T" に基づいて今回のリリースの目標を定めてみた。

  • Specific: OilCanvasを5万人の人にダウンロードしてもらう
  • Measurable: iTunes storeからのレポートでこれは可能
  • Atteinable: 世界中にiPhone/iPod touchは数百万台あるんだから、5万ダウンロードは十分に可能なはず
  • Relevant: OilCanvasからはPhotoShareへ作品が直接投稿できるしくみが入れてあるし、PhotoArtistSmallCanvasの紹介もしてある。OilCanvasを無料で配布することにより、PhotoShareのユーザーが増え、PhotoArtist、SmallCanvasの売り上げに繋げるのが究極の目的。
  • Timebound: これから29日の23:59まで(5日と少し)

 こうやって目標を設定した上で、それをどうやって実現するかをいろいろと考えて来たわけだが、その一つがYoutubeへのプロモーション・ビデオ(そして、このブログエントリーそのもの)。「iPhone/iPod touchを持っている人が見たらダウンロードせずにはいられない」というビデオを作ったつもりなのだがいかがだろうか?


「ページビューを稼ぐにはやはりブクマだよね」を検証してみた

 昨日のエントリーに引き続き、今日もブログのページビューの統計解析。今日は、一週間あたりのブックマーク数とページビューの相関関係をプロットしてみた。

Bookmarks

 これもしっかりと相関関係が出ている(一つだけ例外的に480近くもブックマークを集めたにも関わらずページビューが極端に低い週があるが、これは年末で例外的にトラフィックが低かった週のデータ)。

 最小二乗法で求めた直線の方程式は、Y=53595+45X(Y:ページビュー、X:ブックマーク数)。Coefficient Determination(R^2)は37%。相関関係はエントリー数よりも強い。"45X"の項目は、ブックマークが一つ増えるとページビューが45増えることを示しており、ページビューを稼ぐためにはブックマーカーに受ける記事を書くことが一番の近道だ、ということを表す。

 ◇ ◇ ◇

 さて、ここまで読んでいただいて、あなたはどう感じただろうか?「そうか、やはりページビューを稼ぐにはブックマーカーに受ける記事を書くに限る!」と頭から信じてしまった人は、少し気をつけた方が良いと思う。まさにこれが「統計のワナ」だからである。

 このデータが示すことは、単にブックマークの数とページビューに相関関係がある、ということを示すだけの話であり、どこにどういう因果関係があるかは教えてくれない。

 解釈としては、

  1. ブックマークが増えると、その結果ページビューが増える
  2. ページビューが多いと、その結果ブックマークの数も増える
  3. ある条件が整うと(たとえば「多くの人にとって読む価値のあるエントリー」を書くと)ページビューも増えるしブックマークも増える

の三通りがあり、さらにその組み合わせ、という可能性すらあるのだ。ブロガーとしては、「それなりのエントリーを書くとページビューもブックマークも増え、その結果ブックマークや引用が増えると
その相乗効果としてさらにページビューが増える」というのが実感である。

 ◇ ◇ ◇

 結局のところ、統計学を学べば学ぶほど明らかになって来るのは「この手の統計データを見た時には、一見どんなに説得力があろうと、基本的には頭から疑ってかかるべき」という話と、それと表裏の関係にある「実際にはあまり意味を持たないデータから、グラフなどを使って一見説得力のある資料を作ることは統計学の知識さえあれば結構簡単で、それで騙される人は結構多い」という話である。


このブログを統計解析してみた

 去年の秋から始めたMBAも4月第三期目に突入。ここのところiPhoneのSDKに夢中なのでなかなか勉強する気になれないが、何も予習をせずに行くと痛いめに会うのでしぶしぶ勉強開始。

 科目の一つは既にある程度知識がある統計学なので思いっきり手を抜いて臨む予定だが、宿題だけはやって行かないと話にならないので、順番に消化開始。その宿題の一つが、

自分の仕事と関連のある統計データを三つ集めて来てヒストグラムを書いた上で分析せよ。

というもの。手短かに手に入る統計データとして思いついたのは、Google Analyticsなどで集まるこのブログに関するデータ。漠然とベージビューの平均値ぐらいは認識していたが、日々のベージビューがどのくらいのばらつきを持っているかなどは調べたことがなかったのでちょうど良い機会だ。

 最初に集めたのは、Google Analyticsから分かる日々のベージビューの変化。去年の4月の頭から今年の3月末までのページビューをExcelに取り込んだ上で、StadPadという統計処理用のプラグインを使ってヒストグラムを作るとこんな感じになる。


Pageviews

 興味深いのは、ページビューの平均値が9000であるにも関わらず、ピークは7500付近にあること。このブログを訪れる人が常連さんとサーチエンジンから来る一見さんだけで成り立っている7500付近を中心にしたきれいなベルカーブになるはずだが、何週間かに一回出す「ヒット作品」による特殊なトラフィックが重なってこんな形になったもの、と想像できる。

 次にヒストグラム化したのが、Google Adsenseにおける日々のクリック数の統計データ。

Adsense_2

 平均クリック数は5にも関わらずピークは2と3の間にあり、ページビューの偏りだけでは説明できない偏りだ。これを見る限りで言えることは、Google Adsenseは毎日でないにせよ、たまに「クリックする価値のある広告」を選び出して貼付けるため、日によっては30クリックを超える日もあるということぐらいか。

 次にヒストグラム化したのは、アマゾン・アフィリエートで売上げのあった書物のそれぞれについて、何冊の売上げがあったかのデータ。

Amazon

 とヒストグラム化してみたものの、1冊しか売れなかった本が大量にあるため、その偏りのためあまり訳にたたないグラフになってしまった。「これぞロングテールの力」と言っても良いのだが、テールが左上にあるのでこれでは恐竜には見えない。そこで仕方がないので、ヒストグラムではなく、純粋に売れた数順に書籍を並べて棒グラフ化したのがこれ。

Amazon3

 こうすれば、ちゃんと左上が頭、右下がしっぽのロングテールになってくれる。


あるはずのない「カジノでの必勝法」が実はあったという話

 ずいぶん前に「ギャンブルの心理学:攻略法と必勝法」というエントリーで、どうして「パチンコや競馬には必勝法がある」と思い込まされている人たちがなぜこれほどたくさんいるのかについての考察を書いたが、今回は本当の必勝法の話。それも実際にそれをビジネスにしている会社でしばらく働いていたMBAのクラスメートから聞いた話なので、かなり信頼できる。

 ビジネスモデルは至ってシンプル。「カジノが提供するJackpot付きのスロットマシンでの$1の投資に対する期待値が$1以上になったところで人を送り込んでマシンを占領し、Jackpotが出るまでスロットマシンをまわし続けること」である。

 「Jackpot付きのスロットマシン」とは、数台〜十数台のスロットマシンをつなぎ、それぞれのマシンからの売り上げの3〜5%をJackpotに貯めておき、最初にJackpot(特定の数字の組み合わせ)を出したスロットマシンにそのお金を全部払うという仕組み。たまたましばらくJackpotがどのマシンでもでなかったりすると、10万ドルとかのお金が溜まることもある。

 カジノが提供するギャンブルは、長く遊べばかならずカジノが儲かる様に出来ている。スロットマシンでも、ルーレットでも、ブラックジャックでもそれは同じで、$1を投資した時の期待値は原則として$1以下(たとえば97セント)になるように作られている。そのため、一人のギャンブラーを見た時には儲けたり損したりしているのだが、ギャンブラー全員を合わせたら必ずカジノ側が儲かるようにできている。

 フロリダにあるこの会社が目をつけたのは、Jackpot付きのスロットマシンだけに関して言えば、Jackpotに十分にお金が貯まった時に、その期待値が$1をわずかだが上回る瞬間があること。ただし、そんな状態にはなかなかならないので、一個人がそれだけを目指してギャンブルをすることは基本的に不可能。

 そこでこの会社は、低賃金で従業員(主に学生)を30人ほど雇い、携帯電話を渡してフロリダの14カ所のカジノに文字通り「24時間の張り込み」をさせる。そして、どこかのカジノでこの「期待値が$1を上回った状況」が起こると本部経由で全員に連絡が入り、全員がそのカジノに集合してそのJackpotに繋がったスロットマシンすべてを占領してJackpotが出るまでひたすらスロットマシンをまわす。そして、Jackpotが出たらそこでプレーをやめ、ふたたび別々のカジノにちらばって「張り込みモード」に戻る。

 このシンプルなビジネスモデルで、この会社は3年間に300万ドルの元手を、2000万ドルにまで増やしたそうである(それもちゃんと従業員に給料とボーナスを払い、税金も払った後での話)。

 このビジネスモデルがうまく行った理由は、カジノからお金をかすめ取っているのではない点につきる。カジノとしては、この会社がやっていることは十分承知しながらも、直接の被害を受けるわけではないので黙認していたという(厳密には、他のギャンブラーからかすめ取っていることになる)。

 テラ銭がやたらと高い日本のギャンブル(競馬、競輪、パチンコ、宝くじなど)ではこんな仕組みは難しいだろうが、テラ銭がわずか2〜3%の米国のカジノでは、Jackpotのような仕組みの導入のおかげで、こんな「隙間産業」が成り立つのだ。

 ちなみに、最近はこの業界も競争相手が増え、Jackpotに繋がったすべてのスロットマシンの席を全部占領することが難しくなり、あまり儲からないようになってしまったそうである。「マーケットの効率化の法則」(=儲かる産業には競争相手が集まり、いつかは他の産業と同じくらいの利益率に落ち着く、という法則)は、こんなところでもちゃんと働いているようだ。


ジョブズの本当の偉大さは彼が引退してから分かる

 University Washington での Executive MBA プログラムの集中授業が始まった。予想通り、授業は基本的に講義ではなく、ディスカッション形式。予習を十分にしていかなければ、発言できないどころか、他の人が何を話しているのか分からず、全くついて行けない。

 最初の「Teamwork & Managerial Effectiveness」はまだたいしたことはなかったが、午後の「General Management & Strategy」は、まさに「消防車のホースに口を付けて水を飲む」という表現がぴったりの授業。常に脳みそを全開状態にしておかないと話についていけないし、次々に質問を投げかけられるので、まったく気を緩められない。

 会議にしろ授業にしろ、出席するのであれば最大限に参加しなければ損というポリシーの私にはピッタリのスタイル。アドレナリンを上げっぱなしの3時間というのは、なかなかできない体験。

 授業の最後の方に、「企業が持つことのできる最も価値の高い差別化要因は、パテントとか商品・サービスそのものではなくて、そういったものを組織だって作り出す能力そのものにある」という話に及んだ時に、私がポケットからiPhoneを取り出して、「アップルがこんなにすばらしいものを作れるのは、本当に組織の力か?ジョブズがいるからこそ作れるんじゃないのか」という質問をしてしばし討論に。

 最終的には、「ジョブズが本当に偉大なCEOであれば、(ジャック・ウェルチのように)彼がいなくなっても引き続きすばらしいデバイスを作り続けることができる組織を作ってから引退するはず」という結論で決着。まさに期待していた通りの刺激的な授業であった。


ゴール設定の際に意識すべき四つの点

 会社を経営しているとしばしば「ゴール設定」の話が出てくる。会社全体のゴールであったり、グループのゴールであったり、従業員一人一人のゴールであったりもするのだが、そもそも何のためにゴール設定が必要なのかを理解せずいると、「できるだけ売り上げを伸ばす」とか「誰よりもがんばる」みたいなあいまいで抽象的なゴールを設定してしまう。

 そもそもゴール設定が必要なのは、三年後とか五年後とかに会社が実現しようとしている大きな目標に向かって進む時に、その目標までの距離の大きさ故に方向を見失ったり、自信を失ったりしないためである。大きな目標に向かって、長期・中期・短期のいくつかのゴール設定をしておくことは、方向性を失わずに着実に一歩ずつ前進していくのに必要不可欠なのである。

 ゴール作りの際には以下の四つの点を強く意識する必要がある。

1。ゴールは明確に定義されており、達成できたがどうかが明確に計測できるものでなければならない。

 高い山に何日かかけて登る場合、「初日からがんばってできるだけたくさん登る」というあいまいなゴール設定では、食料をどのくらい持っていって良いのかが決められない。「初日は少なくとも三合目まで登る」という明確なゴールを設定してこそ食料その他の計画が可能になるし、そのつどちゃんと計画通りに進んでいるかどうかのチェックができる。

2。ゴールは会社が持つ「大きな目標」にとって必要不可欠なものでなければならない。

 同じく登山で言えば、「景色の良いところがあったら記念写真を取る」はゴールではない。そのあたりが明確になっていれば、「三合目のキャンプ地にカメラを置いて来てしまったが、一度そこまで戻るべきか」という質問への答えが明確になる。

3。ゴールはチャレンジングでありながら実現可能でなければならない

 設定したゴールは簡単すぎてもだめだが、現実的でないほど難しいものではやる気をなくしてしまう。がんばって効率良く仕事をしてこそ何とか到達できる、ぐらいの所に設定する必要がある。

4。ゴールを達成するべき時期は明確に指定されていなければならない

 当たり前の話だが、「β版を公開する」とか「10万人のユーザーを確保する」などのゴールに「いついつまでに」という日付の設定は必須である。「いつかは100万人のユーザーが使うサービスに育てる」というのは単なる「希望」に過ぎず、「2008年の3月末までには10万人の登録ユーザーを確保する」はゴールである。

(今日のエントリーの元ネタは、Hill & Jones の「Strategic Management Theory」。)


チームとは (The Discipline of Teams)

 今日紹介するのは、Harvard Business Reviewの記事の中でも特に評価の高い、Katzenbach & Smith による「The Discipline of Teams(このリンクをたどれば全テキストが原文で読める。日本語で詳しく読みたい人は右に紹介した「好業績チームの知恵」を参照)」。彼らは「単なる人の集まりはチームと呼ぶべきではない。メンバーそれぞれの力を合計した以上の力が出せる人の集まりだけをチームと呼ぶべきだ」と主張し、チームを以下のように定義する。

a small number of people with complementary skills who are committed to a common purpose, set of performance goals, and approach for which they hold themselves mutualy accountable
 "performance goals"とか、"accountable"などの重要でありながら日本語にものすごく訳しにくい言葉が入っているので、分かりやすくするために思いっきり意訳すると、
 共通の目的と、目的達成のためのいくつかの達成すべきゴールとを共有し、かつそれぞれがチームに対してどんな役割と責任を果たして行くかについて共通の認識を持ち、お互いを補完する能力を持った少人数の集まり
となる。

 ここで大切なのはチームの目的(=存在理由)が(たとえ最初はそれが上司から与えられたものであったとしても)メンバー全員でしっかりと共有された、彼ら自らが望むものであること。「なんでこんなことをやらなければならないか分からないけど、上司から言われたからしかたなくやっている」のではモチベーションも上がらないし、「全員の力を合わせた以上の力を出すこと」など不可能である。

 そして次に大切なのは、その目的に向けたいくつかの明確なゴール設定をし、それを達成することにメンバー全員が全精力を費やすことを約束すること。目的がいくらしっかりしていても、自分たちが着実に目的に向けて駒を進めていることを実感できるゴールをこまめに設定しなければ前には進めない。そうやって設定したゴールを一つづつ着実に達成して行くことで成功が実感でき、モチベーションが上がる。

 そしてもう一つ大切なことは、それぞれのメンバーがチームのためにどんな役割と責任を果たして行くかに関して十分に共通の認識を持つこと。それぞれのプロジェクトで誰がリーダーシップをとるのか、それぞれの得意分野は何か、誰が何を担当するのか、などを常に明確にして働けば、不要なミーティングの数も減らせるし、仕事の効率が圧倒的に上がる。

 自分のマイクロソフト時代の経験を思い出してみると、たしかに成功したプロジェクト(Windows 95, IE 3.0/4.0)の場合は、目的がものすごく明確だったし(それぞれ、Windows 3.1とコンパチブルな32-bit OSを作る、Netscapeを抜く)、こまめにマイルストーンを設定して着実に駒を進めていたし、役割分担もものすごく明確でほとんどミーティングなどしていなかった。逆に失敗したプロジェクト(Cairo, Netdocs)の場合は、目的そのものが途中で揺らいでしまったし、アーキテクトが何人もいて誰がリーダーシップを取るのかが不明だったため、ミーティングばっかりして、肝心のもの作りがおろそかになってしまっていた。


リーダーに必要とされる感情知性(Emotional Intelligence)

 MBAプログラムに参加したおかげで、大量の論文を読まされることになったのだが、頭の中を整理する意味で文章にするのは役に立つし、それがブログのちょうど良いネタになる。今日のエントリーは、Daniel Goleman という人の書いた”What Makes a Leader?” という論文の要約。

 筆者は(企業などの)リーダーになるためには、ただ高い知性と専門知識を持っているだけでは不十分で、筆者がEmotional Intelligence(感情知能)と呼ぶ能力を持っていることが不可欠だという。

 Emotional Intelligenceには5つの要素がある。

Self-Awareness
 自分のムードや感情を常に冷静に把握しており、それが他の人に与える影響を十分に認識していること。Self-Awarenessが低い人は、自分の性格の欠点を指摘されたりするとそれを「個人攻撃」と見なして不必要な自己弁護を始めるが、Self-Awarenessのしっかりした人は、自分の弱さや過去の失敗について気楽に話すことができる。

Self-Regulation
 Self-Regulationとは、その場の一時的な感情に支配されずにいられる能力。Self-Regulationの弱い上司は失敗をした部下をよく考えもせずその場で怒鳴りつけてしまったりする。Self-Regulationが弱い上司の職場は、しばしば「かけひき」や「内部抗争」にエネルギーが削がれ、全体としての効率が下がる。

Motivation
 すべての優秀なリーダーに共通するもう一つの性格は、Motivationである。彼らは、地位だとかお金のような小さなことのためではなく、自分自身や周りの人々の期待を上回る結果を出すことそのものに喜びを感じる。そんな人は、常に自分の目標を引き上げるし、その結果を具体的な数字(○○億円売り上げた、わずか○○日で仕上げた、など)で表すのが大好きである。

Empathy
 「Empathy(感情移入)するリーダー」とは言っても、決して「部下に同情する」などという意味ではなく、仕事上のさまざまな決定をして行く過程で、部下の感情をきちんと考慮して行動するリーダーという意味である。優秀な人たちをつなぎ止め、彼らのモチベーションを上げるためには、どんな決定を下せば良いのか、どんな言葉で話すべきか、を常に考えているのが優秀なリーダーである。

Social Skill
 ここで言うSocial Skillとは、「仕事は一人では成し遂げられない」ということをしっかりと認識した上で、「必要なときには自分に協力してくれる人たちのネットワーク」を組織や会社をまたがって築く能力のことである。

 なかなか考えさせられる文章であった。自分なりに反省してみると、やはり4番目のEmphathyが弱点か。どうしても結論を急いでしまう性格なので(これは2番目のSelf-Regulationの問題でもある)、相手が私のメッセージをどう受け止めるかを十分に考慮せずにストレートな発言してしまい、相手を傷つけたり、誤解されたりすることがあるのだ。

 ちなみに、この筆者の著書は既に「EQリーダーシップ 成功する人の『こころの知能指数』の生かし方」というタイトルで日本語に翻訳されているので興味がある人はどうぞ。


私がMBAを取得することにした10の理由

 人がある行動を取るときには、色々な方向に自分を引っ張っていこうとするさまざまなモチベーションが合わさった結果、合同ベクトルとして一つの方向に進ませる、と考えた方がしっくりとくる。私を「MBAを取得する」という行動に駆り立てたのも、さまざまなモチベーションが合わさっての結果だ。

 ということで、頭に浮かんだモチベーションを列挙してみる。

1.MBAを持たずに企業経営をすることにハンデを感じたから
2.MBAの連中が話すMBA用語をちゃんと理解できるようになりたいから
3.他のエグゼクティブたちとコネクションを作りたいから
4.UIEの起業を通して学んだことを頭の中でもう一度整理したいから
5.メインジョブ・エンジニア、サポジョブ・MBAというのが最強だから
6.これからいくつもいくつも会社を作りたいから
7.私だってMBAぐらい取ろうと思えば取れることを証明したかったから
8.MacBookやAdobe CS3が学割で買えるようになるから
9.飛行機の免許を取るよりは実生活に役に立ちそうだから
10.ブログのネタになるから

 まあ自分の車を改造して「最速マシン」を作るために時間とお金をたくさん費やす人たちがいるのだから、こんな風に自分自身に投資をするのも悪くはない、と思う私である。


9月からUWのMBAプログラムに参加します

Mba 日本に暮らす人たちから考えれば、私ぐらいの歳になってから今さら学校に行って勉強するとなどということのはめったにない話かも知れないが、「生涯教育」がシステムとして確立している米国では、それほどまれなことでもない。

 特にUW(University of Washington)の場合、通常のMBAプログラムの他に、働く人向けのExecutive MBA Programというのがある。月に一度だけ三日から四日の集中授業を受ければ二年間でMBAが取得できるという特別コースだ。

 このプログラムの存在を知ったのは、去年の夏のことだが、去年の分に関しては、既に申し込み期限を過ぎていたため、今年の9月からのプログラムに応募したのである。

 GMATというテストをぶっつけ本番で受け(得意の数学のおかげでそこそこのスコアが取れた)、書いたエッセイは知り合いに添削してもらい、マイクロソフト時代の同僚・最初にUIEに投資してくれたベンチャーキャピタルの知り合い(UIEの元会長)・今の会社の腹心の部下(UIEの現社長)にrecommendation letterを依頼し、卒業した大学から英文の成績証明書を取り寄せて願書を出したのが5月の頭。

 ところがマイクロソフト時代の同僚に頼んでいたrecommendation letterの一つが大幅に遅れ、書類がぜんぶそろったのが6月のなかば。「これで結果を待つだけ」と思いきや、6月の末になって「米国の大学を出ていないので、TOEFLを受けてもらう必要がある」との連絡が来る。「17年もアメリカに暮らしているのにいまさらTOEFLはないでしょう」と掛け合うが、「規則は規則」と譲ってくれない。しかたなくTOEFL受験の申し込みをすると8月まで受験できないという。再びUWに連絡すると、「TOEFLの代わりにMichigan Language Testを受けても良い」と教えてくれ、それを受験したのが7月12日。

 先週になってそのテストの結果が出、最終面接をしたのが今日。家に帰ってみると合格通知がメールで届いていた、というしだいだ。

 なぜいまさらMBAを取得しようと思ったか、などについては次のエントリーで。