PhotoShare1.10の新機能とTwitterとのさらなる連携
2009.05.22
PhotoShareというサービスを開始して10ヶ月以上立つが、かなりユーザー数・投稿される写真も増えたので、そろそろ「人力によるカテゴリー分け」を試す時期が来たと判断して、Version 1.10 にいくつかの新機能を追加した。
PhotoShareというサービスを開始して10ヶ月以上立つが、かなりユーザー数・投稿される写真も増えたので、そろそろ「人力によるカテゴリー分け」を試す時期が来たと判断して、Version 1.10 にいくつかの新機能を追加した。
最近、こちら(米国)のメディアの人たちからインタビューされる機会が多いのだが、そんな時に必ず聞かれるのがBig Canvasのビジネスモデル。
「日曜の夜中までに5万ダウンロードを達成」を目標に期間限定で無料リリースをしたOilCanvas、ダウンロード数も順調に伸び、3日半で3万ダウンロードを達成したところだ(正確には30,454)。あと二日で2万稼がなければならないのでぎりぎりの所だが、週末を利用して面白そうなアプリを探すiPhone/iPod touchユーザーが増えてくれれば十分に達成可能な数字だ。
PhotoArtistをリリースした直後にも言った気がするが、この手のソフトをリリースした後の一番の楽しみは、PhotoShareに投稿されるユーザーの方々の作品を見ること。OilCanvasをリリースしてからわずか2日だが、すでに数百枚の作品が投稿されており、目を通すだけで大忙しだ。
左のグラフは、PhotoShareに対するトラフィックの変化を図にしたものだが、なにを表しているかお分かりだろうか。
PhotoShareを開始したのはAppleがApp Storeをオープンした7月の11日なので、もうすぐ3ヶ月である。ユーザーの数も順調に増えているが、何と言っても嬉しいのは、アメリカ人やフランス人の中にも定着して使い続けるヘビーユーザーが現れ始めたこと。
日本のユーザーに支持されていることは嬉しいのだが、せっかく世界中に向けて作ったサービスなので、色々な国の人に参加していただくことはとても重要。先日も、旦那が鉄道の運転手だというフランス人の女性が、運転席からのフランスの海岸の風景とかをリアルタイムで投稿してくれたのだが、そんな「体験のリアルタイムな共有」がPhotoShareならではの楽しみだ。
ちなみに、累計で投稿された写真の数が20万枚をちょうど超えたところだが、まったくの無名のベンチャー企業がiPhoneのみをターゲットにして3ヶ月で達成した数字としては悪くないと思うのだがいかがだろう。この調子で伸びれば、今年の末までには50万枚が達成できそうな勢いだ。
しかし、もっと興味深いのが写真に付けられるコメントの伸び。サービス開始当初は、コメントの数よりも投稿される写真の数の方が多かったのだが、8月の終わりぐらいから投稿されるコメントの数が投稿される写真の数を上回り始め、いまや写真1に対してコメント3ぐらいのペース。コメントの累計数はすでに25万件を超える。
ここでやっと種明かしをすると、左上のグラフは、1時間あたりに投稿される写真(緑)とコメント(青)の数を時間軸にそって描いたもの。写真よりもコメントの数の増減が激しく、ピーク時(日本時間の夜の11時前後)には、1時間あたり600ほどコメントが投稿される。
このグラフから見る限り、日中はポチポチと気が向いた時に写真を投稿しておき、一日の終わりに自分がフォローしている人の写真に一通り目を通してコメントを書いたり、自分の写真についたコメントに返事を書いたりしてから眠る、という使い方が多いのではないだろうか、と想像できる。
PhotoShareで作りたいのは、国とか言語の壁を乗り越えて世界中の人たちが写真を通してコミュニケーションをする場。英語が世界の共通言語だと信じて疑わないアメリカ人が日本人の投稿した写真に英語でコメントする場面は良く見られのは当然だが、それだけではなく、逆にアメリカ人の投稿した写真に日本語でコメントが付いて「これ誰か訳して」「こんな意味だよ」みたいな場面も良くあるところが楽しい。
「付き合って下さい」を「You're too beautiful to be sad (あなたは悲しくなるには美しすぎる)」と訳しているのもいい加減だが、それに対する返答が「U can read Chinese?!?(あなた中国語読めるの?!?)」というところが何とも...。
日本のiPhoneユーザーにはとても高い評価をいただいているPhotoShareだが、それもこれも「ケータイで日常的に写真を撮る」「通勤・通学途中には常にケータイで何かしている」という文化・ライフスタイルが既に浸透しているから。そんな文化のない米国のユーザーにちゃんと使ってもらうためには、まずはユーザーにそんなライフスタイルの価値を理解してもらわなければならない。
そのためのプロセスとしてPR会社数社に提案書を作ってもらっているのだが、そのうちの一社が書いて来た資料にこの問題点が的確に指摘してある。
Americans typically don’t use their camera phones as much as other cultures around the world such as the Japanese. PhotoShare’s value proposition has great potential to change the way U.S. consumers capture and share experiences “in the moment,” but this could be a slow evolution. Ultimately, mass user adoption will be the key driver in helping to change consumers behavior.
既に存在する市場に自社の商品を売り込むだけなら単なる「広告」で十分だが、消費者の行動を変えてまで新しい市場を作り出すためには、地道な「マーケティング活動」が必要。時間がかかるかも知れないが、潜在需要は絶対にあるので、ここはがまんのしどころ。
パラダイス鎖国と呼ばれるほどに独自の進化を遂げたケータイ王国日本に、黒船のように現れたiPhone。「これでケータイ市場も米国主導のグローバル・スタンダードの波に飲み込まれるのか」とネガティブに受け取る業界関係者も多いが、その結果がiPhoneを通じた「ケータイ文化」の逆輸出につながり、それが世界中の人のライフスタイルを変えるところまで行けばそれはそれで痛快だと思うのだがいかがだろうか。
リアルタイム・ライフロギングのために作られたPhotoShareは、Flickrとは根本的に違うという話は前にも書いたが、今まさにそれを身をもって示しているユーザーの方がいるので報告。こうやって私が見ているわずかな間に、5.5合目、6合目、6.5合目、7合目と一歩づつ富士山を上っている様子を実況中継してくれている(下の画像をクリックするとWeb版が見られる)。それをリアルタイムで世界中の人が共有できるとは数年前には想像もできなかった話だ。
常時接続のiPhoneだからこそ可能になる常時接続ライフスタイル。しかし、頂上でも電波はとどくのだろうか?
今日もいくつかPhotoShareに関するブログエントリーを見つけたのだが、その中でもとてもうれしかったのがこれ。
あとはタイトルを付けて「完了」ボタンをタップするだけ。めちゃくちゃ簡単に投稿できます。【 iPhoneのキラーアプリになりそうな写真共有アプリ「Big Canvas PhotoShare」(もとまかApp Selection 第7回) - もとまかのiPhone・iPod touch戯れ日記より引用】
増井君と一緒にPhotoShareのアーキテクチャの設計した際に、もっとも力を入れたのが「どうやったらこれ以上簡単にすることは不可能なぐらいに簡単に写真を投稿できるようにできるか」という部分。その意味では、「めちゃめちゃ簡単」という言葉は最高の褒め言葉。
この手のアプリを作っていると陥りがちなのが「機能のてんこもり」。特に他のサービスと比較されることを意識し始めてしまうと、「敵もやっているからうちも」と次々に機能追加してしまい、いつのまにかファミレスのように何でもあるけどどれもおいしくないアプリになってしまうから要注意だ。
今日も、二人でversion 1.02に関して相談していたのだが、二人の意見が一致したのは「できるだけメニューの数を増やさずにサービスの価値を高めて行こう」という点。タギングの機能だとか、GPSの機能だとかを要求してくるユーザーの声も聞こえてくるが、その手の機能追加がせっかくの「めちゃめちゃ簡単さ」を少しでも損なうのであればそれはマイナスである。
「そば屋の味はカレーライスを売り始めた時から下降線をたどる」というたとえ話は分かりやすいが、じゃあどの機能追加がカレーライスになってしまうのかを見極めるのが難しい。とくにカレー南蛮あたりが微妙だ。